1月21日 紋の国 カクさんと合流した。
おそらく平成27年1月21日
剣暦××年12月21日
紋の国オーバーフラッグ
横一文字街道 第6宿場町
町の宿場なんかで寝泊まりしていては、いつ見つかって逮捕されるのかわからないので、第7宿場町の付近の森の中で野宿をしている。
今朝も寒くて風邪をひくかと思ったが、ギリセーフ。
頑丈に生まれてよかったと思う。
僕を逃がしてくれたタマちゃんたちを置いて逃げるのは嫌だと思い、今日は宿場町にある役人の詰所に出頭することにした。
逮捕されるつもりで、宿場町に入るのだが、約一週間の野宿潜伏生活で服は薄汚いし体は臭いし、髭は伸びっぱなし。
せめて、身支度くらい整えてから掴まろうと思い、まず服を川で洗い、綺麗にしてから焚火の火で乾かす。ちょっと生乾きだけれど、日が大分昇ったので着る。
宿場町に入る時に、番兵に見られるが、特に不審がられず、デカイ図体を奇異な眼で見られたくらい。剣語で『こんにちは』と挨拶したら喋れることにびっくりしたのか『オークじゃなかったのか……いや、失礼』なんて返されたくらい。
床屋に行き、髭を剃ってもらう。こういうところの壁には手配書なんて張ってあったりするものだけれお、僕の人相書きは出ていないようだった。
その後歩いていると風呂があったので、しっかり体を洗う。どうやら洗濯してくれるサービスもあるらしかった。こういう宿場町は信用が大事だから、まあ大抵そのまま持ち逃げはされないだろう、と誰かが言っていたし、ここで洗ってもらった方が綺麗になったかもしれないが、仕方ない。
きれいさっぱりになったところで、一杯ひっかけたいところだけれど、僕は捕まりに行くのであって。
早速、宿場役人の詰所を見つける。
しかしいざ、自首をと思うとなかなか決心がつかず、足踏み。
詰所を盗み見れる物陰でうろうろしていると、誰かに肩に手を置かれた。
内心、めっちゃびびった。
正直、自首なんて考えるんじゃなかった、どっちかと言うと、魔女郵便とか使って草国に助けを求めるとかの方がずっと頭がよかったよなあ、なんて気付いたり。
「ヵンテラさん?」
僕の後ろにいたのは、カクさんだった。
あれ? 僕を逃がして皆捕まったんじゃないの?
立ち話も何なので、目の前にあった定食屋に入る。
獣頭人御断りの店だったらどうしようかと思ったが、結構ガラの悪い連中の集まる店みたいで、「お客様獣頭人の入店はお断りしております」みたいなことは言われなかった。ただ、デカい図体に奇異な視線が集まって、黒豹人の眼光の鋭さに皆目をそらした。
話してみれば、カクさんは畏怖から最も離れたところに立つ人種だとわかるのにね。
肉入り焼きそば大盛りを食べながら、カクさんから説明を受ける。
・僕を逃がした後、皆無事に散り散りに逃げおおせている。
・カンテラ (僕)は放っておいてもどうせ悪目立ちして位置がわかるだろうから、近くにいる誰かが迎えに行く。
・どのような状況になっても第1宿場町に剣暦12月31日までに集合すること
よかった、皆無事だった。
なお、僕の手配については、どうやらされていないらしい。
カクさん曰く「外務卿ブレイズ公、御自ら追手になって、獣頭人にけちょんけちょんに返り討ちにされたなんて話が国中に広まるのは風聞が悪過ぎるので、なかったことにするでしょう」だってさ。
……ブレイズ卿、何がしたかったんだろう。
その後、意気揚々と出発。
第6宿場町を目指す。
カクさんと二人旅。
旅の途中、都合3度山賊とか、なんか金で雇われた風なゴロツキに襲われるが、カクさんが吠えると一目散に逃げて行った。
多分、カクさん本人は「が、がおー」とか言ってるつもりなのだろうけれど。
僕達には「グッ! グワガラギャオウウウウ!」にしか聞こえないのだから、致し方ない。
第6宿場町も平和そのものだった。
観光でもしたいが、仕方ない。明朝出発である。
ちなみに、宿屋では獣頭人でもフード被って顔を隠していたら泊めてくれた。
やっぱそういうものなんだな。