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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
新パーティ結成! 紋の国横断編
178/363

1月3日 草原の国 夜営の時に、僕の世界の正月について話す

 おそらく平成27年1月3日

 剣暦××年12月3日


 草原の国グラスフィールド

 南方平原で野宿



 あんまり野宿はしたくないのだけれど、人の住む町がそんなに近くにないので、時間短縮のために平原をまっすぐ突っ切ってる。

 そういう安全配慮を欠くとあとで痛い目にあうというのを何回も味わって来たのだが、今回の案内人である豹頭人のカクさんが言うには

「その……この一帯は、安全なほうだから……」

 だそうである。案内人がそう言うのなら、それでいいんだろう。

 そもそも、獅頭人と豹頭人のいるパーティを襲える盗賊がいうのなら、それはそれですごいガッツだと思う。


 さて、今日は平原で夜営。

 騎兵さん達が荷馬の手入れをしている間に、テントを建てる。

 僕や獣頭人チームは馬に乗れないので、騎兵さん達も徒歩。

 馬は、旅で必要な荷物を運ぶ、スピードはないけれど、体力のある種類を連れてきている。

 いつもと勝手の違う馬だけれど難なく世話しているようだ。

 ブラッシングしたり、マッサージしたり、体に異常がないか調べたり。

 兵士って言うか、馬の専門家だなあ。



 食事は、簡単に鍋にする。

 包丁が使えないカクさんやタマちゃんは素手でちぎった野菜やら何やらを鍋にブチ込んで、煮てる。

 獅頭人のスケさんは、おそらく家事なんてしたことないのだろう。黙っておとなしく座っていた。

 僕? 昔鍋の底に穴をあけてから、調理道具に触らせてもらってない。


 夕食を食べながら、この世界の新年の祭りについての話を聞く。

 基本は、家族と過ごすもののようだ。

 ただし、年がら年中案内人として旅をしているカクさんや、そもそも一族を飛び出して家族と連絡をとっていないタマちゃんは例外。

 そんな中で、騎兵のノーズさんは、友達と飲み明かして過ごすんだと教えてもらった。

 無口で、何を考えてるのかわからないってタイプの人だから、意外だった。

 詳しく訊いたら、先日一緒に行った露出の激しい服か布かわからんものを着た踊り子のいる店で年を越すのが毎年の定番だったんだってさ。

 それを若い女性のいる前で躊躇いなく言うあたり、突き抜けてるな。

 それを聞いた若い女性代表のフッドさん、顔をしかめる。

 若い女性の猫頭人タマちゃんは、呆れる。

 多分、若い女性なんだと思うカクさんは、鍋を食べるのに夢中で聞いてないようだ。


 それで、話が僕の実家、地球のことになった。

 僕は、自分が地球にいた時のことを話してみた。

 まず、大みそかの夜は地元青年団の活動で、神社で蕎麦を振る舞う。

 年が明けたら、帰って一度寝て、日の出と共に神棚と仏壇に拝む。

 で、本家に挨拶に行き、叔父さん夫婦に挨拶を済ませてお年玉を渡されて、数の子と黒豆と田作りを食べる。

 本家に挨拶に来る人がたくさん来るので、お茶を出したりお酒の相手をしたりして、夜にはぐっすり眠る。

 ……そう言えば、元旦に御餅を食べないんだな、僕って。



 そこまで説明すると、色々と質問された。

 まず、神社って神殿とは違うのか?

 蕎麦を配るって、貧困救済事業なのか?

 家の中に祭壇があるのはいいが、何故二つある?

 本家ということはお前は貴族か何かなのか?

 数の子黒豆田作りとはなんだ?

 何故本家の親族であるお前が奉公人のように茶や酒を配るのだ。いじめられてたのか。

 だから、御餅ってなんだ? 等々……。


 質問漬けである。

 しかし、なんだか新鮮だった。自分の元の世界のことについて話すことなんて、随分久しぶりな気がした。

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