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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
エルフの国へ行こう! 獣頭13部族大集合編
175/363

12月31日 草原の国 今日はテ・ケロムーチョ楽兵団の演奏会の日

 おそらく平成26年12月31日

 剣暦××年11月31日


 草原の国グラスフィールド

 王都バーミューダ 僕の屋敷



 今日は、王都に住んでる知り合いに挨拶周りに行って来た。

 現ティフトン通り町内会総帥マダム・ニーヤン

 ドワーフ軍団駐在武官レミィ・アンダーテイカーちゃん

 王立図書館司書アンネ・サンダーボルト男爵夫人

 守衛のジョンさん

 貸切馬車の自由契約御者ジョッキー・リードさん

 外務卿チャームプライド公爵

 法務卿アーマライト公爵

 オリガ・レギオン・フレイムロード侯爵夫人

 城下町北門警備詰所のドンさん

 天女亭の踊り子テトラさん

 小人ホビットがたむろする酒場の店長

 代筆家墨豊シュバイネハクセさん


 姫様には、会えなかった。

 厳重に警護されて、僕も会わせてもらえない。

 外務卿から聞いた話では、エルフの国からの密使が持ってきた姫様宛の親書を受け取り、勝手に返書を送っていたことが発覚してらしい。内容は不明だが、おそらくあの姫様のことだ。『自分が秘宝を見つけるからその代わりに草王家の時期王位を決める時期には自分を後押しするように』とか言うようなことを送ったのだろ。おかげで、軟禁から監禁へとレベルアップしたらしい。

 危険人物だなあ、あの人も。

 

 さて、今頃ドワーフの国では「テ・ケロムーチョ楽兵団」のコンサートが開催されていることだろう。

 行きたかったな……。



 ※※



 かつてあった、大戦争。

 四人組の傭兵が、一人の少女を拾った。

 自分達とは違う顔立ち、衣服。全く違う言語を用い、この世界の常識を知らない彼女が異界「地球」から来た人間であることに気付いた彼らは、彼女を匿い、世界を旅した。

 人間が二人、小人が一人、大鬼が一人。国家から、社会から、それぞれ爪弾きにされて流れ着いた四人組の流浪者には、この世に味方が一人もいない、信じる神もいない少女がまるで自分達のように思えて、売り飛ばしたりこき使ったりできなかったのだ。

 

 それから数年の月日。戦争は未だ続く中。

 五人組の傭兵が、戦地でコンサートを開いた。

 あまりにも、戦い過ぎて疲弊した民を、兵を、見るに見かねて、この世界の言葉も知らぬ異界の少女は音楽を頼った。

 種族も国も関係なく、どこにでも行き、どこででも演奏する境界を無視した音楽団。

 武器しか持ったことのない四人の兵士に、無理矢理楽器を持たせて、楽譜もない辺境の村で、初めての演奏会。 

 それは、散々な出来で、味方から、村人からブーイングは飛ぶわ、物は投げられるわ。

 

 やるんじゃなかったと後悔する四人の屈強で、居場所のない傭兵に、異世界人は頭にトマトをぶつけられたまま、にっこり笑ってこう言ったそうだ。

「テ・ケロムーチョ」


 それから一年。

 異世界の言葉と、下手くそな楽兵団を残して少女は死んだ。

 後に残された4人の下手くそな楽器吹きは、同じようなことをしている連中と出会う。

 国家も種族も関係なく、戦場で傷ついた人々を問答無用で助ける集団。


 二つは融合し、紅蓮十字救命団慰問音楽隊「テ・ケロムーチョ楽兵団」は、誕生した。

 紅蓮十字が消滅した今も、そいつらは世界中を回って音楽を続けているらしい。


 ただ、未だに下手くそで、よく物をぶつけられたりブーイングされたり「出ていけ」の横断幕があったりする。

 しかし、かれらは全く挫けないそうだ。

 そんな彼らにコアなファンも存在して、それなりに大人気。


 世代交代をしながら、何百年と続けているそうだ。


  

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