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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
エルフの国へ行こう! 獣頭13部族大集合編
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12月30日 草原の国 冒険中の家人の始末


 おそらく平成26年12月30日

 剣暦××年11月30日


 草原の国グラスフィールド

 王都バーミューダ 僕の屋敷



 明後日から、エルフが統治する火国フロッグワードに向けて旅立つ。

 猫頭人のタマちゃんに改めてよろしくとお願いしたら、照れてた。

 しかし、困ったことも知る。

 

 フロッグワードまで旅をして帰ってこようとすると、下手したら半年くらいかかるかもしれないんだって。

 それほど長い間留守になるとは思っていなかった。

 いや、他国まで行って帰って半年で済むってのは、地球規模で考えたら狭いんだろうけれど、僕の感覚ではものすごく長い。

 その間の屋敷の世話とか、デミトリやイオちゃんのこととか、何にも考えてなかった。


 慌ててデミトリに相談すると、わかってなかったのは僕だけで、デミトリと執事見習いのピコくんは、オリガ侯爵夫人のところにしばらく厄介になるということで話がついたらしい。それにダークエルフメイド達はかねてからの話通り、家政婦養成所にて半年間研修を受けることになっているそうだ。

 知らないのは、僕だけか。


 そして、さらに困ったこと発覚。


 デミトリ達と一緒にフレイムロード侯爵家に居候するはずのイオちゃんが、どうしてもこの家から出るのを拒んでいる。

 そこまで義理立てしなくてもいいのに、と思うのだが、イオちゃんは何がなんでも僕の役に立ちたい。最早脅迫観念じゃないかと思うが、さすがにそこまでは言えない。


 一つ、嘘をついた。

 イオちゃんは納得してくれた。

 まあ、方便ということで。



 ※※



「嫌や! 旦那さんの帰る家を放っておくなんて、できん!」

 

 メイド長のイオちゃんを呼び出す。

 僕が旅の間、もしかしたら僕が秘宝やそれに関する情報を隠し持ってるとか勘違いした誰かが屋敷を襲うかもしれないので、避難していて欲しいと伝えた結果、怒られた。

『けれど、イオちゃんが危険な目に合う 僕は嫌』

 ちゃんと理由を言えば、納得してくれる子だと思うのだけれど、どうしてもこの家から離れたくないらしい。

「私、旦那さんの仕事には何の力にもなれんから」

 ……、旅のことだろうか。僕が、外国を巡って冒険するのについていけないから、家くらいは自分の手で守りたいと。

 いやいや、今年の8月フレイムロード侯偽物事件の時に、大活躍してましたがな。イオちゃんがいなかったら、秘宝盗まれて、この王国倒れかけてましたぜ。

 イオちゃんも待ってるだけは辛いのかな……。



 ……よし。

『イオちゃん イオちゃんを屋敷から出す 本当の理由 ある』

 イオちゃんの食いつくような反応。

『イリス王女 持ってはいけない本 隠してる それを 見つけて欲しい』

「持ってはいけない本。まさか『禁書』を?」

『僕の冒険に 関係する とても大事な本 どうしても 読みたい。僕が旅に出る。その間に 姫様からもらってきて欲しい これ イオちゃんにしか頼めない』

「私に、城に入って、それを探してこいって?」

『そう、だから、フレイムロード侯爵 そのツテ。侯爵夫人と仲良くなって 城に自由に入れるようになって欲しい』

 イオちゃん沈黙。


 よっしゃ。これはいくらイオちゃんでもかなり難易度高い。

 けれど、僕に頼まれたら絶対に断らない。

 つまり、イオちゃんは僕の頼み通り屋敷を出てフレイムロード家に行くことになるけれど、城に入るために工作するのに夢中で僕の屋敷から離れてくれる、という計画。


「わかった。旦那さんの言う通りにする」

 納得してくれてよかった。


 嘘をついたのは、ちょっと心苦しいけれど、方便ということで。


「必ず『禁書』を見つけて、エルフの国まで追いかけてでも、旦那さんに届けます」


 ……あれ?


『イオちゃん、来なくていいよ。フレイムロード侯爵の家にいてくれれば』


「だって、必要なもの。わたし、必ず見つけます」


 ……あれ?


 まあ、いっか。いくら姫様でも『禁書』をおいそれと他人に見せたりはしないだろう。

 王族がそんなものを個人所有しているなんてバレたら、国際問題だもの。



 でも国際問題好きだからな、あの姫様。


 少し不安になったけれど、イオちゃんの顔が晴れてくれたから、まあいっか。

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