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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
エルフの国へ行こう! 獣頭13部族大集合編
170/363

12月24日 草原の国 男3人いかがわしい店に行く

 おそらく平成26年12月24日

 剣暦××年11月24日


 草原の国グラスフィールド

 僕の屋敷 



 今日は色んなことが起きた。

 まず、チャームプライド公のところに行き、スケさんカクさんタマちゃんの三人を使節団に随行させることに成功。

 そこで、使節団が僕を入れてたった7人であることが判明。少数精鋭ということらしい。

 使節団のメンバーとなった近衛伝令騎兵のアームさん、フッドさん、ノーズさんに挨拶に行く。

 夜、アームさんとノーズさんと昨日出会った踊り子のテトラさんが働いている店に飲みに行く。やっぱりいかがわしい店だった。しかしノーズさんは常連だった。


 テトラさんのダンスは、煽情的だが、技術的にも光るものであり、そのことを褒めると『変な奴』と笑われた。

 そして、アームさんが、テトラさんに求婚しだした。

 あと、テトラさんがエルフと人間のハーフであることが判明。

 マジっすか、の連続だった。



 ※※



 今日はクリスマスイブ。もちろん、こちらの世界にはそんな日はないけれど。

 試しに、剣祖の誕生日とかを祝う風習がないかイオちゃんに訊くと、「ない」と言われた。そもそも、剣祖は世界が生まれる前よりいたという伝説の持ち主なので、誕生日などないんだってさ。

 同じ話題を獅頭人のスケさんにしてみると「国によって世界誕生の伝説は少しずつ違うのである。統一した祝福の日というのは、ないのである」だってさ。

 ちなみに、スケさんが続けるには、エルフの文化では、今日は『弓の日』という祝日になるらしい。剣祖が世界を切り開き、武具を次々に生みだして、そして最後に弓と矢を人々にお与えになった日として、歌と祈りをささげるそうだ。

 この世で最も弓を扱うのがうまい種族が、『弓の日』の夜の一番冷え込む時間帯に、世界に天と地と月と日と音楽があることを祝う。

 この世で最も美しい容貌と歌声を持つ種族が行う、最も神聖な五つの儀式の一つ、祝福弓日儀式エルフセレモニー

 ……何故だろう、何故神様は僕にそれを見せる機会を作ってくれないのだろう。見たい。すごく見たい。見たら泣ける自信ある。

 しかし、今は僕は草原の国にいるので仕方なし。



 さて、昼間チャームプライド公に会って、案内を頼む獣頭人随行員の選抜が済んだのかを訊く。

 なんと難航していたらしい。獣頭人職人組合は、今回のエルフ騒動にできるだけ関わらないという方針を固めたらしく、有能な獣頭人の派遣を渋っているそうだ。

 そこで、スケさんとカクさんとタマちゃんを推薦する。

 獣頭人序列一位レヴァンティン族の出身で、職人組合『元』副出納長の肩書を持つスケさん。案内人をした経験はないことは伏せる。

 エルフの国への入国経験もある、選んでおけば鉄板という有名所、沈黙の黒豹こと、カクさん。人見知りが激し過ぎてまともに会話できないことは伏せる。

 この僕と共に冒険をしてきた現カンテラの案内人、猫頭人の異端児、タマちゃん。免許を持ってない非公式獣頭人であることは伏せる。

 チャームプライド公は、感激して喜んでくれた。


 さて、使節団の全容についてだが、まずエルフの国は冒険の難しい国であるため、異国での任務を経験したことのあるベテランを集めようとしたと言う。

 しかし、草原の国で異国を旅したことのあるものはほとんどいないらしい。

 というわけで、なんと、この前一緒にホビットの国を旅した近衛伝令騎兵のアームさんとフッドさん、それにノーズさんの三人が僕の随行員になったそうだ。

 ……え、三人だけ?

 それと、僕が推薦した三人の獣頭人。

 ……本当に、とりあえず集めましたみたいな面子になったね。

 理由を訊くと、本当の入国目的は公表できないから、学者の派遣という名目であり、それに大人数は避けないし、未知の土地に素人連れてっても迷惑なだけだから、精鋭に任せるんだってさ。

 ……、ぶっちゃけその人数なら今すぐ出発してもいいのだけれどな。




 そんなこんなで、チャームプライド公の屋敷を出て、王城へ向かう。

 近衛兵舎に行き、アームさん達に挨拶をしてきた。

 皆元気そうで何よりだった。

 アームさんは僕を見つけると、嬉しそうに背中をばんばんしてきた。痛いやめれ。

 フッドさんは、そのちっちゃい体のどこから出るのかというくらい大きな声で僕を歓迎してくれた。

 ノーズさんは、何を考えてるのかよくわからない顔をしていたけれど、なんか、頷いていたから歓迎してくれているのだろう。

 三人にこれからよろしくと伝えて、交流を深めるために、今夜飲みに行かないかと誘う。

 皆ノリ気だったが、僕が花売街道の昨日会った踊り子のテトラさんがいるパブに行きたいというと、フッドさんは『不潔』と怒ってぷんすかどっか行った。

 どうやら、いかがわしいというイメージのある店なのだろう。

 アームさんは『いきなりそのチョイスとは、お前もなかなかやるなあ』とニヤついていた。

 ノーズさんは何考えているのかわからない顔で『もしや、あの踊り子がテーブルの上に乗って眼の前で踊ってくれる【天女亭】のことか?』とか言い出す。……詳しいな。



 帰宅後、メイド長のイオちゃんに『仕事先の人と飲んで来るから夕飯いらないからね』と伝えると『もしかして、あの踊り子がテーブルの上に乗って眼の前で踊ってくれる【天女亭】に行くん?』とか訊いてきた。詳しいな。

 デミトリが漏らしたらしい。あの爺さん、ろくなことしないな。

 そこの踊り子と知り合いになったから、挨拶に行くんだよと説明したら『挨拶に行って、お友達になるん?』だって。

 逃げるように出掛けた。



 夕方、アームさんとノーズさんと待ち合わせ。

 早速花売街道を目指すが、道がやっぱわからない。

 けれど、何故かここら辺の地理にくわしいノーズさんの先導ですいすい目指す天女亭とやらに着いた。

 常連なのかもしれない。

 その店はえらく派手な装飾で、中からも喧騒が聞こえる。

 中に入ると、店内は日が暮れたばかりだというのに、混雑していて、座れるかわからなかったが、なんとここでアームさんが店の人に僕を紹介して『こいつが巷で有名なカンテラです』とか言い出した。

 こんなところで、異世界人カンテラのネームバリューなんて通じるのかと思ったが、見事に通じて、二階のVIP席みたいなところに案内された。

 僕が来たというのが、それなりの箔になるらしい。

 やだなあ、僕御用達のいかがわしい店とか、姫様に知られたら殺される。

 とりあえず、ボーイさんらしき人に、テトラさんに挨拶に来たことを伝えると、読んできてくれることに。

 二階の窓から下をのぞくと、1階のホールではなんか露出の多い服なんか布なんかわからないものを身に付けた綺麗な女性が、各テーブルの上で踊ってて、飲んでる人達が囃したてたり、服なのか布なのかわからんものにチップを挟んだりしていた。

 こんな世界にも、こんな店あったんだなあと思いながら眺めていると、なんか見覚えのあるような背の低い髭面が見えた。

 ……あれドワーフじゃねえかな。異人も来てるのか、って言うか、一番盛り上がってるよね。


 アームさんとノーズさんとちびちびやっていたら、VIP席の扉が開いて、女の子が一人入ってきた。

 昨日見かけた、快活な女の子、テトラさんだった。

『いらっしゃい、あんた偉い人だったんだってね。カンテラってのは通り名だって? そう言ってくれたらもっと熱心に誘ったのに冷たいなー』

 昨日のように、さばさばして、けれど昨日のような町人服でなく、露出の激しい服なのか布なのかわからんものを身に着けていた。

『せっかくの縁、しっかり楽しんでいってちょうだいね』

 昨日のような身のこなしでふわりと飛び上がると、足音一つさせずに机に着地した。

 照明に蓋をかぶせて、薄暗がりが演出されると、音楽に合わせてテトラさんが躍り出した。

 ああ、なるほど、いかがわしい腰付きと表情で華麗に踊り続ける。

 なんと言うか、ポールダンスってこんなのじゃなかったっけ。

 しかし、それよりもその踊りの技術に舌を巻いた。

 足をあんなに高く挙げて、空中でぴたりと止めたり、体をあんなに低い体勢にしているのに、足の裏以外が地についていなかったり。

 技術と言ってもいいんじゃないだろうか。1階で踊っている子もうまいけれど、テトラさんのダンスは、一つ上である。

 どれくらいの間見惚れていたのだろうか。音楽が終わり、照明が明るくなると、テトラさんはテーブルから降りた。

 額に玉の汗が浮かび、息づかいが聞こえるほど呼吸も乱れていたが、笑顔だけは元気少女のままだった。

『どうだった? 私の踊り。エロかった?』

 拍手。素直に褒めた。

『あれだけの体捌き、そうそう見れるもんじゃないよ。すごいね』

 感激の仕方を間違えたせいか、テトラさんは変な顔をした。

『あんた、やっぱり変な人だね。ま、嬉しいけど』

 テトラさんがノーズさんの方を見やる。彼は、何考えてるのかわからない顔で、鼻息荒々しく、大きな拍手をしていた

『あんな風に喜んでくれたんで十分なんだけどね、おや、そっちの彼は楽しめなかったかい?』

 こういうの一番喜びそうなアームさんが、何故か黙ったまま。

 どうしたんだろう?

 と思うや否や、アームさん突然立ち上がり、テトラさんの前まで歩み寄り、その両手を奪うように握りしめて、一言。

『惚れた! 結婚してくれ!』


 ぽかんである。


 テトラさんはそういうの慣れたものなのか、やんわりと手を解いて『そこまで言ってくれるとは嬉しいね、ありがと』なんて言ってその場を離れようとするが、アームさんはガチらしい。

 おかしいな、アームさんだって、それなりに遊びなれとるでしょうに。

 すると、テトラさんの様子がおかしい。

『そんなに惚れたわけ?』

 アームさんも負けない。

『そうだ!』

 テトラさんの攻撃。

『あんたさ、私が人間様とエルフの混じりだって言っても、平気なの?』

 アームさんは負けない。

『関係ない!』

 テトラさんの攻撃。

『なら……エルフの国にね、私の親父がいるらしいのよ。結婚の許可をもらってきてくれるなら、一緒になってもいいけど。でも、そんなこと無理よね 無理でしょ?」

 アームさんは、負けなかった。

『大丈夫だ! 来月から俺は任務でエルフの国に行く!』


 テトラさんの『はぁっ?!』という素っ頓狂な声が、何故かツボに嵌まって笑ってしまった。


 ノーズさんは、やってきたボーイに何か知らない名前の酒を3つ注文していた。ここの名物とのことだ。やっぱり常連だったか。

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