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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
既に一年経過! カンテラの人となりに触れる編
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4月28日から5月31日までに起きたこと


 その後、僕が眼を覚ましたのは、5月11日。地球ではゴールデンウィークなんてとっくの昔に終わってしまった穏やかな昼下がり。


 猫頭人アーラマ・マーマレード族の暮らすキャンプ村であった。

 猫頭人は基本小柄なので、僕がはいるくらいのサイズのテントと言えば、でっかい集会用のテントしかなかったらしく、猫頭人の子どもたちが集まって国語の勉強している横でいびきをかいて、大人たちが夜な夜な集まって会議をする横でいびきをかいてしていたそうだ。

「すっごくうるさかったです」

 との感想。

 そもそも、ホビットの国の森の奥深くでダークエルフにお腹を刺された僕がなんで猫の顔した獣人さん達に匿われているのか? 超展開にも程がある。

 猫頭人さん達は神語(日本語)喋る人達だったので、詳しく事情を訊くと

「ある日、村の前に倒れていたので匿いました。お腹に傷があり、手当てもされていました」

 ……そっかー。


 どうやら、アーラマ・マーマレード村は移動式テント村で、今は僕が刺された森から地球換算で100kmくらい離れた、ドワーフの国の針葉樹林の中にある。

 マジで、何が起きたんだ?

 しかし、起きてしまった事は仕方がない。

 僕は、何がなんでも死ねないのだ。もうけもんと思うことにした。

 荷物はなくなっている。財布も護身用にと無理矢理渡されたナイフも、お守りも。

 手帳と鉛筆だけは懐に残っていたので日記は書ける。

 ただ、今は記録をつける。


 大体、どこの村でもそうなのだが、旅人は歓待する習慣がある。彼ら自身も旅人の集合体であるために、親切にし合う文化があるということだろう。

 助けてくれて嬉しいけれど、あいにく手持ちがないことを伝えると、「もし礼がしたいというのでしたら、あなたが体を癒し、なすべきことをなした時、その時手元に残るものがあるのでしたらいただきます」と返された。

 こんちくしょう、この猫さん達かっこええことを……。

 よし、いつか僕も誰かに親切にして同じ返しをしてやろう、と心に決めて、すっかり全てを頼ることにする。


 猫頭人は人間とほぼ同じものを食べるので、とろとろに似た何かの山菜と形状のわからない魚を食べさせてもらったり、包帯を取り変えてもらったり、寝汗を拭いてもらったり、トイレに行くのに肩を貸してもらったり。

 ふっきれた僕は赤子のように猫頭人にお世話になりっぱなしになった。

 とにかく、眠る。


 一人で起きられるようになったのは、5月27日。

 余りの回復にみんなからびっくりされた。

 ばあちゃんが髄膜腫の切除手術をした時も手術から2日後には立って歩いていたし、そんなもんかなと思っていたが、抗生物質も痛み止めもリハビリ器具もない異世界では、致命傷に近い傷が短期間で完治するのはおかしなことだそうだ。

 もしこんなことを可能とするならば、『魔道具』がかかわっている可能性が高い。

 ……もしかして、僕が刺された現場の近くに『魔女』がいたのだろうか?


 とにかく、一人で離臥床して、服を着替えてトイレにも行けるようにする。

 体を治して。

 まずは草原の国に帰るのだ。

 なすべきことをなして、猫頭人にお礼をしなければ。



 ……お礼って何がいいんだろうか? 鰹節とか食べるのかな……。

 そもそもこの世界、鰹っているのかな?


 

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