12月20日 草原の国 オリガ夫人の襲撃
おそらく平成26年12月20日
剣暦××年11月20日
草原の国グラスフィールド
王都 僕の屋敷
昨日の夜は日記を書くどころではなかった。
オリガ・レギオン・フレイムロード侯爵夫人が遊びに来てしまい、夜通し酒の相手をさせられたのだ。
真紅のジャケットにミニスカート、帽子と、サンタクロースみたいな恰好で酒瓶振り回す姿は、あまりうちのメイド達の教育上よろしくない光景であったが、この国で彼女に唯一言うことを聞かせられるフレイムロード侯は公務のため大鬼の国である。
自然災害と思って、好きにさせるしかないのだ。
ちなみに、夫人が遊びに来た理由は、夫からの手紙に添えられて、ジンさんから僕宛の手紙を預かっているのを持ってきてくれたというもの。ひたすらに感謝。
ジンさんの手紙には、リーヨンちゃんと大鬼の国帰国後、彼女の社会経済の家庭教師のようなことをするようになった、ということが主に書かれていた。追伸で、どうやら大鬼の国にも【ミキテル】を探しに、依頼された獣頭人やエルフ達がうろついているという情報が書かれていた。
もし、僕がエルフの国に行くことになった時のために、エルフ史について詳しい獣頭人への紹介状や、ジンさんの知る限りのエルフの国の地図が同封されていた。
やはり、ジンさんは僕のこと一番わかってくれる。
ということで、昨日の夜は過ぎて、今日の日の出と共に寝る。
起床。
昼間は城の法務卿執政室でアルミナ公とこれからの打ち合わせをしてきた。
これからは、外国への派遣ということで、外務卿チャームプライド公爵の管轄になる。明後日あたりに、チャームプライド公が僕と会ってくれそうなので、その時に詳しい話をするだろう。
これで、アルミナ公との仕事は一区切りである。その後は、お茶を飲みながら談笑。僕が公の領地のセンチペドへ行った話をする。町並の感想や、公邸の庭に咲いた花の様子や、ホウザンさん、バクザンさんとのやりとり。色々話した。
公は、少し嬉しそうだった。
そうそう、帰りしなに教えてもらったのだが、ホビット国から護送されている姫様だが、昨日無事に王都についたそうだ。
まだ、会えないらしい。というか、『何を言い出すかわかったもんじゃないから、姫様をカンテラに近づけるな』ということになってるんだとか。
……確かに、姫様ならエルフの国に一緒に行くくらい言い出しそうだよな。
多分、狸頭人のゼピュロスさんとか、エルフのキヨナさんから、ひそかに親書を受け取ったこととか、秘密にしてるんだろうし。
君子危うきに近寄らず。姫様を危険な眼に巻き込まないためにも、会わずにマッハで帰った。別に、面倒なことになりそうだから逃げたわけじゃないし。
家に帰ったら、まだオリガ夫人が僕の家で飲んだくれてた。
曰く『だって~、この屋敷、とっても居心地いいんですもの~』
言ってくれることは嬉しいが、駄目なものは駄目である。
メイド達はみんないじられまくったのか、グロッキー。
タマちゃんなんか膝の上で撫でられまくってる。
デミトリめ、逃げてた。
そろそろ晩御飯なので、服がはだけまくった人妻には、即刻お帰りいただいた。
夫人の世話をしてくれていたメイド長のイオちゃんを労うと「あの人。不摂生しとって、どうしてあんなに肌綺麗なん?」と戦慄していた。
世の中、そういう理屈に縛られない人間もいるのだ。