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かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
エルフの国へ行こう! 獣頭13部族大集合編
146/363

12月2日 草原の国 王都に帰還 エルフのシャラクさんまで僕の家に来ていた

 おそらく平成26年12月2日

 剣暦××年11月2日


 草原の国グラスフィールド

 王都 僕の屋敷



 エルフについて書こうと思うと、どうしても美しいと言う形容詞をよく使う。

 基本、美系だからね。

 容姿も、歩き方も、弓を引く姿も美しい。大根を引っこ抜く作業や鼻をかむ姿でさえも絵になる。

 エルフ語も響きが綺麗だし、芸術肌だし。

 あと、内面も高潔を基軸にしているような人達。


 ただなあ、キレると怖い。

 そりゃ、ドワーフだってオークだってそう言えばそうなんだけれど、エルフの場合、豹変する。 

 まず見た目。骨格から変わるんじゃないかってくらいに、激怒した貌になる。

 エルフ特有の生理現象らしく、興奮が域値を超えると実際に顔面の筋肉が著しく変化していることを前に教えてもらったことがある。その現象を日本語に直訳すると『鬼面』と呼び、エルフはこの貌を見られるのを恥としている。

 僕が鬼面を見たことのあるエルフは1人だけ。

 元軍人で、死竜セイクーハードを討ち取った『竜殺の二強』の一人シャラク・ウラという女性。

 僕の知る限り、エルフで一番弓の扱いに長けて、エルフで一番髪の毛の綺麗な人。

 

 一日草原を馬車で進み、夕方日が落ちる前に、なんとか王都に到着。

 そのシャラクさんが、僕の家に来ていた。

 家出同然に飛び出したウタちゃんとマロくんを、探していたそうだ。

 草原の国にいるという情報はあったので、【それなら、カンテラ様のところにいると思い、参りました】とのこと。

 とりあえず、トラブルがあったら僕のところに来るというのも、どうなの?


 今日は、シャラクさんにも泊まってもらうことに。



 ※※



 僕の屋敷の前、夕焼けを背に、鬼面の女が立っていた。

 

 夕方、王都に到着。検問番は僕の知り合いの人だったので、無駄にフードを深く被った謎の子供二人組を見てもいつものことと、見過ごしてくれた。タマちゃんが「アンタも結構悪どい奴にゃいくら袖の下払ってるにゃ」とか失礼なことを言った。人徳と、少々のお菓子だっての。

 とりあえず、今日はゆっくりして明日から頑張ろうと怠惰な決心。

 晩御飯前には帰れたかな。

 そう言えば今日帰るとい連絡をしてなかったから、晩御飯ないかもしれないと愕然し、うちにはダークエルフのメイドがたくさんいるけれど、普通のエルフの子供とか連れて帰っても平気だったんだろうか、という今更ながらの気配りのなさに頭を悩ませ、リードさんの『着きましたよ……ただ』という思わせぶりな発言を気にせず、客車を飛び出した結果。


 僕の屋敷の前、夕焼けを背に、鬼面の女が立っていた。シャラク・ウラさんじゃないか。

 その隣には、虎頭人が控える。あれは、この前あったレイ・フー・ウーさんじゃないか。


 なんでこの二人が? と思いながら、なんとなく察しはついていた。

 つまり、レイさんを雇って、シャラクさんは来たのだろう。

 そして、シャラクさんが来た目的とは、きっと。


 ウタちゃんとマロくんが、鬼のような貌をしたシャラクさんを見るや、馬車の中から姿を隠す。しかし、シャラクさんはばっちり見ていた。

【ウタ マロ】

 エルフ語はわからないが、名前を呼んでいるくらいはわかる。

 ドスの効いた声ってああいうのを言うんだな。

 二秒後、震えながら 姉弟登場。

 そのまま、僕の屋敷の応接間に連行されていった。

 一応、ここ僕の屋敷なんだけどな。


 その後、タカマチミキテル邸では、怒り狂った金髪美女が、同じく美系の男の子のお尻を百叩きするという凄惨な光景が広がった。

 草原の国国境警備基地で契約をしたという虎頭人のレイさんも、目の前の光景に戦慄していた。

「エルフの鬼面オーガサイド。話には聞いていましたが、ここまでのものとは……」

 やはり、人前で鬼面を晒すのは珍しいことなのだろう。

 

 そこまでして、他人の子供のために怒れるシャラクさんは、いい人だと思う。

 ただ、お尻を出したエルフの男の子が大泣きする光景は、見たくなかった。

 シャラクさんが、僕を見て何か言った。

 レイさん曰く「【次のウタは、女の子ですから、席を外してやってもらえませんか?】 とのことです」

 一応、ここ僕の屋敷なんだけどな、と思いながらも、さっさと退室した。

 さっさと退散する僕達に、ウタちゃんが何か言いたげだったが、どこか諦めたように押し黙った。

 ……僕が悪いみたいじゃん。


 部屋を出ると、レンちゃん含めダークエルフ達がガタガタ震えていた。

 レンちゃん曰く、エルフの鬼面は本能的に駄目なんだって。ダークエルフの失った機能とか。

 黙々とマイペースにメイド長だけが「あの子たちの夕飯もいるん?」と訊いてきた。うん、お願いと頼むと、ダークエルフメイド達を連れて、厨房へと避難した。

 

 扉の向こうから、ぱちんと肌を叩く音と、ウタちゃんの悲鳴が上がり始めた。


 やだなあ、これ、外まで聴こえたら誤解されそう。


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