11月17日 草原の国 3代目案内人にタマちゃんを推したらジンさんに反対された
おそらく平成26年11月17日
剣暦××年10月17日
草原の国グラスフィールド
王都 僕の屋敷
もし、旅をするなら、案内人と契約しなければならない。
何度も書くが、ジンさんはあくまでリーヨンちゃんの案内人としてここにいるから、もしもの時は僕を置いてリーヨンちゃんだけを大鬼の国に連れて帰る必要がある。
致し方ない、当然のことだ。
そういうわけで、新しい獣頭人を探したいが、コネのない僕のために、昨日はジンさんが今、草原の国にいる知り合いの獣頭人を集めて食事会を開いてくれた。
3代目カンテラの案内人の選定会、というわけだ。
……なんか、お見合いパーティみたい。
それで、集まってくれた9人の獣頭人と会い、色々とお話をした。
全員日本語が達者で、それぞれに魅力と能力のある人達だった。
しかし、今まで犬頭人と猫頭人と豹頭人にしかあったことなかったけれど、こんなにいたんだなあ。
全部で何種類くらいの獣頭人がいるのか知らないが、案内人をやってる氏族というか、部族は13族なんだとか。旅をしていたら、会うこともあるかもしれない。
さて、お見合いパーティが済んで、家に帰る。
ジンさんに、「で、どいつとなら気が合いそうだ?」とか訊かれるが、そんな第一印象だけで決まらないよ、と答える。
こういうのは第一印象が大事なんだ、と意外なことを言ってくるが、今だってジンさんが一番しっくりくる、なんて言っても困らせるだけだろう。
うーん。あんなに人を集めてもらって、申し訳ないけれど、本音を言う。
「実は、タマちゃんに次の旅に着いてきてもらうようお願いしたいんだ」
第一印象というかフィーリングというか、一番しっくり来たのは、うちで居候中の猫頭人である。
さて、怒られるかなと思ったら、ジンさんが神妙な顔をしてる。どしたの?
「……タマは、駄目だ。性格の問題じゃない。実力でも、知識の問題でもないんだ。だが、とにかく、駄目だ」
なんで駄目なのよ、とは訊けなかった。ジンさんが、理由を言わずに駄目だと言うのは初めてだったから。
その会話は、歯切れ悪く終わる。
言いたくないことは、言う必要はない。言いたくなれば聞く。
ジンさんとは、そういう付き合いをしてきた。
けれど、彼のあの表情。自分から言うわけにはいかない、という声色。
僕から訊かなければならないことも、あるのかもしれない。