表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
エルフの国へ行こう! 獣頭13部族大集合編
126/363

11月13日 草原の国 猫頭人も遠慮をするらしい

 おそらく平成26年11月13日

 剣暦××年10月13日


 草原の国グラスフィールド

 王都 僕の屋敷



 最近、朝起きるのが早くなった。

 おかしいな、つい一週間くらい前まで御寝坊キャラだったはずなのに。

 あれか、姫様に朝呼び出されたり、日の出と共にデートに行ったりしたのが、体に染みついてしまってるのだろうか。

 いや、寒くて目が覚めてるのが強いかも。

 最近はいよいよ冬の気配がして、朝の冷え方が半端ない。

 秋の終わりの空気は冷たい。冬が始まれば、これがどんどん寒くなる。

 イオちゃんに言って毛布を出してもらおう。

 あと、話が変わるが、タマちゃんが朝……。いや、なんでもない。



 ※※



 早朝、目が覚めて顔を洗おうと思って台所に行ったら、メイド長イオちゃんと今日の朝御飯当番のメイド達がぱたぱたと走り回っていた。いつもの光景。

 すると、台所から、大きな桶を両手に抱えたタマちゃんが出てきた。獣頭人の朝は早い。

「おはよう、タマちゃん」と挨拶すると「あ! ……おはようにゃ」と、驚きの後、歯切れの悪い返事が返ってきた。これは、悪だくみの時の反応だ。

 桶の中をのぞくと、お湯がたっぷり入ってる。どうしたの? と訊いてもアンタにゃそんな関係ないことにゃ、朝飯には戻るにゃ。と、その場を離れようとしたがる。その桶持とうか? と提案しても、断られた。

 何するんだろう?

 タマちゃんにお湯を分けてあげただろうイオちゃんにどうしたのか訊いても、何故か答えてくれなかった。

 何するんだろう?

 まあいいか。と、僕も顔を洗って、服を着替えて散歩に行こうと外に出た。

 特にこれと言ったコースは決めておらず、さて、今日はどこを歩こうかな、なんて方向を考えるのが、朝一番の楽しみである。

 今日は、裏門を通ってティフトン通りと向かいにある別の道筋を散策することにした。

 さあ、とひょっこり屋敷の裏に回ってみたのだが。



 屋敷の裏手、外から見えない隅っこで、裸になったタマちゃんがしゃがんでいた。

 ……何してんの?

 彼女の傍らには、さっきのお湯の張った桶があり、布を浸してそれで体を拭いているようだった。いきなりの光景に声をかけれずにいたら、タマちゃんが僕に気付いた。

「……にゃっ!」

「……何してんの?」

 眼の前に現実に対応できないでいると、僕の視線から両手で体を隠しながら叫ぶ。

「見たらわかるにゃ! あっち向いてるにゃ!」

 そこで、やっと気付く。

「そだねごめん」

 光景に背を向けて、散歩に出かけるこにした。



 散歩を終えて、朝飯前。屋敷に帰ってくると、応接間のソファの上でタマちゃんは寝ころんでいた。

 もちろん、着替え済み。

 これは、謝った方がいいのだろうか。

 声をかけれずにいると、タマちゃんの方から声をかけてきた。ぶすっとしてる。怒ってるのかな? と思ったら、意外な言葉。

「怒ってんのかにゃ……?」

 ん? 僕がってこと?

「いや、怒ってないよ。僕こそ、ごめんね。覗くつもりはなかったんだけれど」

 すると、タマちゃん、なんかきょとんとしてた。

「……変わった奴にゃ」

 言いたいことがわかわない。しかし、三秒考えるとピンと来た。

「庭先で勝手に水浴びしてたのを怒るってこと?」

「屋敷の中で、勝手されたら嫌じゃないのか、にゃ?」

「そりゃ、嫌だけど……。ていうか、なんで外なの? 今朝こんなに寒いんだから、風呂場使えばよかったのに」

 すると、あの眼鏡のメイドにもそうしろと言われたにゃ。と言って、タマちゃんは何故か眼を逸らして呟いた。

「あんたらおかしいにゃ。普通、家の中で獣頭人が触ったものなんて、使いたくなくなるものにゃ。水場に猫頭人いれるのに抵抗ないなんて、常識を疑うにゃ」

 ……驚いた。タマちゃん、遠慮してくれてたのか。

「僕、ジンさんと旅してたからね、寒い時はひっついて寝たし、熱が出た時は看病しあった。僕にとって獣頭人ってそういうものだから、触れあうのに、抵抗はないかな?」

「……」

「遠慮せずに、風呂も使ってくれていいよ? そりゃ、風呂に入ると抜け毛が浮いて大変とか、変な病気持ってるとかだったら僕も躊躇するけど」

「私の裸見たからわかってんにゃ。普通の獣人みたいに抜けるような毛なんてそもそも生えてねーにゃ」

 そこまで詳しく見てなんかない。

 向かいのソファに腰を下ろす。

「タマちゃんも、うちのお客さんなんだから、良識の範囲で好きにしてちょうだい」

「アンタ、やっぱり変な奴にゃ」

 適度に否定してくれるタマちゃんとの距離感は、落ち着く。

「しかし、そうするとジンさんやユキくんがウチの風呂に入ろうとしなかったのも、遠慮してのことだったのかな」

「いんや、単なる犬の水浴び嫌いってだけだにゃ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ