表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
かんてらOverWorld  作者: 伊藤大二郎
既に一年経過! カンテラの人となりに触れる編
11/363

3月29日 草原の国 城内カンテラの客室 二日間腹痛で寝込む


 おそらく平成26年3月29日

 剣暦××年2月29日

 

 昨日はお腹が滅茶苦茶痛くなって、日記をつけるどころではなかった。

 嘔吐と下痢が止まらない胃痛って、一体何?


 たぶん、急性胃炎か何かだったのだと思う。 

 レンちゃんに自分で用意したプレゼントを挙げてしまったのに気付き、へこんでいたせいか、つい焼け食いしてしまったのが悪かった。



 最初は原因とか考える余裕もないくらいまずかったので、感染症を疑った。

 その次に、毒。

 もしくは、何かしらの呪い。

 何しろ、僕がラドゥバレトフ大陸に来てからみた死因ナンバー3がそれだったので。


 だとすれば、他人にうつる可能性もある。通訳のジンさんに頼んで、部屋の中に絶対に誰もいれるな、とお願いして一人でげーげー唸ってた。

 

 しかし、ただの食あたりだったようだ。夜には大分落ち着いて、体を起して、水を一人で飲めるようになった。


 いつもの日課なので、日記を書いていると、ジンさんとレンちゃんが今、部屋に入ってきた。



 (筆をすべらせたような書きなぐったような跡)




 調子を訊かれたので、よくなったよとと答えると、レンちゃんに抱きつかれた。

「心配かけないでください」

 泣きやませるのが大変だった。


 しばらく、療養のために「おつかい」は延期である。


 僕の代わりに、フレイムロード侯爵が特使として、大鬼の国に赴くらしい。

 フレイムロード侯なら、問題ないだろう。


 ジンさんはフレイムロード侯がバリバリの分断主義者で、オークと友好関係を結べるような人間とは思えないが、大丈夫なのか? と危ぶんでいる。それに、この一年オークとの国交を結んできたのが僕なのに、最後の仕上げだけを他人に取られても平気なのか? と言外に訊いている。


 何度か話をした感想だけれど、フレイムロード侯爵は、嫌いなものは嫌いとはっきり言うだけで、差別主義者ではない。

 オークのことは、大嫌いだけれど、その人権を否定することはしない。他種族の国が結びつくのも嫌いだけれど、役目は命がけで全うする。そういう人だ。


 そう説明すると、「政敵をよくそこまで褒めあげられるものだ」と呆れられるけれど、別に、僕はイリス王女の派閥というわけではない。

 すると、少し真面目な顔で「お前自身がそう思っていなくても、周りがそう思っているぞ。そして、この場合、そう思われているということが事実として優先される。もう、お前は単なる冒険者でいられないぞ」

 皆でよってたかって、僕をこの国に組み込もうとしている。

 

 最初は、もっと楽しかったのにな……。


 泣き腫らして、ソファで横になったレンちゃんに毛布をかけてあげてると、部屋の扉をノックする音。


 開いてますよと言う前に、ドアを開けて入ってきたのは、イリス王女その人だった。僕が起き上がっているのを確認すると、少し微笑んで。

「ゲロと下痢は治ったのか? 豚」


 本当、この人だけは変わらない。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ