10月21日 どこかの空の上 この10日間に何があったのか
おそらく平成26年10月21日
剣暦××年9月21日
僕の身に起きたことを整理する。
10月11日
ホビット王からの依頼を交換条件を受けて、ドワーフの細工職人アングルカート氏を叩き起こして「もう一個作って欲しい」と頼む
交換条件として、愛想をつかして出ていった嫁さんを探してきて欲しいと頼まれる。どこにいるのかわからないとか。
ジンさん、リーヨンちゃん。加工の手伝いにつく。
僕とユキくん、ピコちゃん、捜索開始。
進展なし。
10月12日
僕、ユキくんとピコちゃんを山レタスを山盛りにして出す食堂で昼ごはんを取る。
三人で、どうやって探すか意見を交わしていると、その食堂の女将さんから、アングルカート氏の嫁さんは実家に帰ったことを教えてもらう。
ここから、馬車で一日の距離。
早速、出発。
10月13日
逃げた嫁さんの実家のある「兜の町」に到着。
この「兜の町」は、一年前、ドワーフの国を襲った死竜セイクーハードと戦った、所謂「竜山脈戦争」の参加者が多く住む町で、僕の顔もばっちり割れていた。
レミィちゃんから話には聞いていたけれど、本当にドワーフ戦士の中で僕は英雄のような扱いを受けているらしい。旗振ってただけなんだけれど……。
そういうわけで、奥さんにも簡単に会えた。
仕事をえり好みする気難しい職人に愛想を尽かして出ていったという奥さんは、とても愛想のよい素敵なおばちゃんだった。髭ももっさり生えてた。
ドルアッチェ完成1号品を見せて、御主人は一国を救う仕事をなさっています、今も、加工場で僕達のために働いてくれているのです、と伝えるとえらく感激したようだ。
身の上話を色々聞く。
早速、明日一緒に斧の町に行くことに。
10月14日
やばい。ドルアッチェを落とした。
昨日、約束を取り付けた後、町の住人が「大戦士カンテラ歓迎パーティ」とか言うのを開く。
いや、僕戦士じゃねーっての。
本当に、戦ってなんかいないのに。
まあいいや。
それで、飲み過ぎて、酔いつぶれて、ポケットに入れていた指輪を落とした。
ユキくんとピコちゃんから怒られた。
とりあえず、奥さんにはユキくんと一緒に先に行ってもらう。
僕とピコちゃんで町中を一日かけて探す。
途中から「3個目作ってもらおう」なんて諦めて、露店を回る。
夕方、ドワーフの子供が拾って指にはめて遊んでいるのを発見。
露店で買った飴と交換する。
知らないとはいえ、安いなあ、国宝。
10月15日
斧の町に帰ってくる。
アングルカート氏は、帰ってきた奥さんにボコボコにされていた。
???
ジンさんに事情を訊くと、リーヨンちゃん相手に鼻の下伸ばしているところを見られてのこととか。
しゃあない。
首尾を確認。ドルアッチェ完成品2号もできあがる。
やったね!
さあ、後はリーヨンちゃんをオークの国に連れていき、ホビットの国にこの2号を持っていけば、すべて解決だ!
……、とここで重大な問題が発覚。
ピコちゃんから「法務卿アルミナ公から、養子にならないかと言われた」と相談される。
……なんですと?
ピコちゃんから「旦那さんをお兄ちゃんと呼んでいることを教えたら、『なら私のことをお父さんとよんでも差し支えないだろう』って言われた」と報告を受ける。
どうした法務卿!
ジンさんに相談。
ものすごく、神妙な顔。
「草原の国の法律なら、可能だが、ダークエルフを、人間が養子にする……か……。すまん。俺も無理だと思う」
申し訳なさそうに言った。
「どうすればいい?」と訊かれるが、そんなもの僕が決めることじゃないでしょう。
……いや、それは逃げか。
草原の国に戻るまでに、僕からも意見を言うことに。
参った……。
10月16日
現在の状況
①オークの国方面隊 (リーヨンちゃん ジンさん)
無事凱旋し、リーヨンちゃんは王宮へ ジンさんは使節団に合流を果たし、草原の国と大鬼の国の条約締結に向けた協議を再開するように働きかける。
②ホビットの国方面隊 (ユキくん ピコちゃん)
ホビット王に謁見し、ドルアッチェを渡し、オーク岩の欠片の始末の確約を取りつけてくる。
③ドワーフの国殿部隊 (僕)
騒ぎを聞きつけたドワーフ国軍の治安維持部隊が僕を追って斧の町に来る。「何をしに来たのですか?」との質問。
もし、僕が国宝をねつ造するためにここまで来たことが公になると、国際問題に発展するので、「ドワーフの国の豊穣祭を見に来たのだけれど、とっくに終わってしまって見れなかったのでやけ酒を飲もうと思って」と説明。
なんか、信じてくれた。
まあ、今年こそはと思った豊穣祭、まったく見る余裕もなく終わったのは、本当だから。
酒盛り開始。
僕が飲んで騒いでいる内に、前2部隊は出発。
10月17日
夜通し飲んで、昼も飲んでる。
この髭ども、どんだけ酒好きなんだよ。
うっぷ。
そろそろまずい。
というところで、上空に竜が現れる。
酔いも覚めて、思い出す限りでは、そういう流れ。