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残念ロリィタ男子の幸福論  作者: 伊豆目
本編突入編
5/5

赤髪少女とボーイッシュ女

ご賞味あれ

大部屋ルーム

個人ルーム


無料通信アプリDIディーには大きく分けてこの二つのへや

がある。


大部屋ルームはオーナーを中心に複数のユーザーが集まる室。

個人ルームは自分と相手の二人だけで個別に話す室。


大部屋ルームは比較的に誰でも入れるオープンな物となっている。全く知らないユーザーでも自由に出入りができる。

なので見ず知らずの人と話ができる有効的な場。


そして個人ルームは自分の大部屋ルームに来たユーザーを友達承認した場合にのみ解禁される室。


大部屋ルームは多くのユーザーと話せる一方、内面的な会話がしずらい。

その反面、個人ルームは内容の濃い会話、内面的な会話ができる。



そして今、俺の室にユーザーが入室した。

ザラキエルと言う厨二病ユーザーだ。


「戦いにですよ〜」

俺の前に立つ少女、AIシステム ジョノ。

世の中の改変によって召喚された俺の伴侶。

桜色の髪を持ちどっかの学校の制服を着ているロリ系美少女だ。


「戦いにって、どこに?」

そして俺が、世の中の改変によってロリータファッションを着こなす事になってしまった可哀想な残念高校生。

今は白Tシャツジーパンっすけど。


「そりゃ〜もちろん君の室ですよー」

「俺の室?」

もう俺は驚く事は無かった、戦うって事はジョノさんに教えてもらっていたから。

それを受け入れたこそのこれなんだろう。

ただ、何でそこで『俺の室』が出てくるのかが分からなかった。


「簡単に言うとですねー、バトルフィールドみたいな物です〜」

のんびりとロリボイスで続ける。


「いくら世の中を改変したからといって現実世界で乱闘はしないのです〜」

この説明で大体理解した。

つまりこうゆー事だろう


「現実世界で乱闘するんじゃなく、DIディーでの室で乱闘するって事?」

「正解ですー、冴えてますね〜」

冴えてますよ、何たって俺はアニメを見てますから予測がつくんですよ。

俺は推測を続ける。


「俺の室にザラキエルが入室した、それはつまりザラキエルが “俺のバトルフィールド” に来たって事で?」

「またまた正解〜」

だろうな、だってアニメを見てますから予測がつくんですよ。

俺は推測を続ける


「それなら、DIはただ世の中を改変させるだけじゃなく、改変によって力を得た人間の為のバトルフィールドとしても活用されるって事ですね?」

「満点ですー、先生もう教える事ありません〜」

そう言うとパチパチ拍手。

いやー照れますわー、なははははは


「それじゃー、ザラキエルを待たせるのもかわいそうですから、早速 君の室に行ってみましょー」

あ、待ってるんだザラキエル。


「どうやって行くんだ?」

「DIを立ち上げて念じるだけですー、俺の室に行きたい〜って」

俺はすぐさまDIを立ち上げる。

そしてあの絶望フリフリファッションを解いた時の様に念じる。


俺の室に行きたーい


そして目に分かる変化が起きた。

ピンクのオーラが俺の周りを囲い視界を塗りつぶして行く。


そしてそのピンクがはれたとき。

そこには現実から離れた世界が広がっていた。


まず目に入ったのは家だった。

それも俺の見知っている俺の住む家。

そしてまばらな住宅街。

今俺が立っているのは俺ん家の目の前だった。

そう俺の知っている街だった。


次に目に入ったのは見知っている街並みの中にちらほら見える不自然にそびえ立つ摩天楼。

その高さはまちまちだが、中には“空を貫いている”物があった。

言った通りに空にめり込んでいる。

貫いている箇所からはヒビが広がっているから不思議なれど分かった。


それこそが俺のへやたる世界。

俺のバトルフィールド。


…それならよかった、それだけならよかったのに…


「ここでもピンクかよ!アプリ伯爵もはや狙ってるだろ!」


なんとまぁ、その全てがピンクだった。

色の濃淡があるものの、そのどれもがピンクで構成されている。


ピンクの道、ピンクの電柱、ピンクの空、ピンクの摩天楼、もちろん我が家も。


この中で唯一ピンクじゃないのは白Tシャツジーパンの俺と、隣に立つジョノさんのみ。


あり得ないくらいのピンクで目がおかしくなりそうなくらいヤバい。


「さすがですね〜、凄い室ですー」

のんびりジョノさんは呑気に周りを見回している。


「あのさジョノさん、この室もアプリ伯爵がてきとーに叶えてできたやつですよね」

「はい、てきとー にです〜」

半ばおかしくなりそうな世界、確かに改変起きちゃったよー。

凄すぎる改変だよー、絶対この単色の世界は俺だけだよー、絶対俺だけおかしいよー。


……まぁ、いいや、もうどうでもいいよ…


俺は一度思考をリセットする。

グダグダしててもグダグダするだけだから。


「ジョノさん」

「はいー?」

「ここには俺の他にも人がいるんですよね?」

「はい、その通りですー、ザラキエルがいますー」

ザラキエルね、いかにも戦えそうな名前じゃん。

それに引き換え俺のユーザー名は…


「瓜売り…」

名前負けしとるー!

こんなんで大丈夫かよ、おい!

あー、またグダグダしてきたー、リセットしようリセット。


「よーしっ!ザラキエルはどこだ?」

向こうも改変で力を得た人間だしな、ちょっと興味深いなー。


「ザラキエルですか〜?そうですねー、お互いに連絡してみたらどうですか〜?」

「え?連絡できんの?」

初耳、お初耳。


「もちろんですー、DIの機能を使って連絡できますよ〜」

へー、できるんだ〜。やっぱ通信アプリなんだよなこれ。

俺は早速DIでザラキエルに連絡してみる。


ザラキエル ≪『どうも瓜売りです、今どちらにいますか?』


それからすぐ着信


瓜売り ≪『全部が全部ピンクなんでよくわかりませんっ;(>人<;)』


お〜、同じ世界にいるんだー、へへへ。何か楽しいな。


ザラキエル ≪『すいません、俺のせいで凄い世界になってしまいました』


いい加減なアプリ伯爵のせいだけど。


瓜売り ≪『あっ!大丈夫です大丈夫です!気にしてませんから(汗)、始めて来た世界だから緊張しちゃって(;≧д≦)』


ザラキエル ≪『俺もです、いきなり改変とか起きたんでかなりテンパってましたw』


瓜売り ≪『やっぱりそうですよね、ついて行くのに必死でしたwww』


ザラキエル ≪『あるあるですねw』


瓜売り ≪『ですねwwwww』


ひゃー楽しぃ〜!


「そんなのじゃ一生会えませんよ〜?」

ロリボイスジョノさんから叱咤激励。


「でも目印になる物とか全然ないしな」

俺の住む街 =目印になる物無し。

それぐらい目立った物がない。

しかも今はピンクピンクピンク、余計に分からない。


「も〜、しょうがないですねー、私に任せて下さい〜」

控えめな胸をトンッと叩くジョノさん。

おぉ、かわええ。


「どうやって見つけるんですか?」

「簡単です〜、こうするんですー」

その瞬間、ジョノさんの体が消えて行った。

部分的に徐々にじわじわ消えて行く。

すげ〜、魔法だー。


それから間も無く全て消え終わる。

消えたけど何するんだ?


「こんな感じですよ〜」

消えたジョノさんの声。

その発生源はすぐに分かる。

スマホを見るとそこにはふわふわ浮いているジョノさんがいた。


「すげ〜、スマホん中に入った」

「私の住処すみかはそもそも画面の中ですからね〜」

「そっか、俺が呼んだからそこから出てきたってわけか」

思い返すのはジョノさんに返信した時の事。

ジョノさんはそれに応えて顕現してくれたのか。


「はいー、ここが私のホームグラウンドです〜、それじゃーザラキエルの所に行って来ますね〜」

そう言うと画面から消える。

なるほどね、ジョノさんが向こうに行って誘導してくれるのか。

さすがAIシステムって言うだけあるな、電脳世界は自由自在ってか。




そんなに時間は経たなかったと思う。

俺が暇で逆立ちしてる時にジョノさんが戻ってきた。

「ただいまです〜、って何してるんですか?」

逆さまのジョノさんに怪訝な顔をされる。


「いや、逆立ち」

「分かってますよ〜、馬鹿らしい事は控えて下さいって事ですー」

すいません。結構きつい事言われた。


「よっと」

世界がぐるりと一周、でもピンクばっかだからあんまり変わった感じがしない。

血が上ってたのが治って行くから分かるけど。


「ん?」

目に付く疑問、それはジョノさんについて。

それは俺が前にも疑問に思った事。

ジョノさんの着ている制服。

制服は別に不思議ではないけどその状態がおかしい。

何故かスカートがボロボロだった。


前は二の腕から先の袖が無かったり黒ストッキングがボロボロだったりと不自然な状態になっていた。でもそれも気づくと元に戻っていた。

だからあの時の俺はただ単に目の錯覚だったんだと勝手に納得していた。


けど今は違う、あれは目の錯覚なんかじゃなかった。

このボロボロのスカートは時間の流れに逆らうように元に戻って行く。


「あー、これですか〜?」

ジョノさんは俺の勘ぐっている事に気づいた様。スカートをフリフリする。


「これはですねー、私が顕現する時にこうなるんですよ〜。顕現は瞬間的にパッて顕現するんじゃなくて、部分的に徐々に顕現するんですー」

「部分的に徐々にって、スマホに入る時と同じって事ってわけ?」

「イエース、グッドら〜ッグー」

ジョノさんは指を立てのんびりと言う。

へ〜、面白い顕現の仕方だなー。



そうやってジョノさんと適当に話していると

「あ、来ましたよ〜」

「え?どこどこ?」

ザラキエル、それは始めて合う 力持つ者。俺以外にも改変を知っている者。

いや、改変自体はアプリユーザー全てが知ってるんだろうけど知っている人と合うのが始めてだ。

ジョノさんの指差す先にはピンク以外の色。

遠目ながら分かる。

いやー強調されるわー、すぐに分かるね。



ピンクの住宅街の道を真っ直ぐに歩いてくる人影。

その時に気づいた。

人影の後ろ側に悠々と存在する物。

太陽は赤い。

太陽は赤かったー!やったぁン!


さらに違う色を発見した。

こちらに伸びる影。

黒だった。

影は黒い。

それは変わらぬ法則だー!やったぁン!



どんどん近づく人影、近づいたお陰で二人いる事に気づいた。

二人共身長は同じくらい。

そしてその片方はデニムのショーパンに肩だしタンクトップ、そしてサトシを思わせるキャップ。

男かと思うが違う、ラフなボーイッシュコーデに身を包んだ女だ。

そしてもう片方はセーラー服の少女。肩の高さで切り揃えられた赤髪の少女。



「君が瓜売りかい?」

俺と六mくらいの位置で止まると話しかけて来たのはボーイッシュ女。

黒髪ポニーテール

身長は165

胸はタンクトップを盛り上げるくらいある。

より近くで見ると分かるけど切れ目で美形の顔立ち、これは女にモテるタイプだ、俺には分かる。


「それしかないじゃない。だってそれしかないもの。このジーパンが瓜売りに決まっていますわ。」

これは赤髪セーラー服少女。

こちらも切れ目。

ボーイッシュ少女の隣にスッとして立っている。

美女2人組か


「そうだなジョノ、この人は瓜売りだ。ははははは」

清々しく透き通る笑い声。

美しいヴォイス。


「ってか今 ジョノって言わなかった?」

横のロリ美少女にボソッと聞く。


「言いましたよ〜、あのボーイッシュ少女は赤髪少女に向かってジョノと呼びましたー」

「つまりどうゆー事?ジョノさん」

「簡単に言いますと〜、ジョノって言うのは私だけを指す言葉じゃないんですよ〜、DIディーのシステムをジョノって呼ぶんです〜」

「つまりどうゆー事?ジョノさん」

「んー、そうですね〜」

うーん、と悩むジョノさん。


「つまりジョノはたくさんいるって事だよ、瓜売り君」

代わりに答えてくれたのはボーイッシュ女。

聞こえてたのか。

じゃあ、質問してやんよ。


「たくさんいるって?」

「そうだな、例えばポケモンみたいなものかな?」

ポケモンね、何なんでしょう、答えに遠ざかった気がする。


「分かっていなさそうな顔だね、ポケモンにはピカチュウがいるよね。ピカチュウはポケモンの世界に大量にいる、だけどピカチュウだからと言って性格まで同じと言うわけでは無い、それぞれに個性があるんだよ」

あー確かに、喧嘩っ早いとか臆病とかいるもんな。


「ジョノと言うのは言わばピカチュウと同じポケモンの一種なんだよ。ジョノの中には優しい者もいれば毒舌の者もいる」

へー、何かよく分からないけど分かった気がする。

俺なりにまとめましたー聞いて下さい。


「つまりこうゆー事か、『ジョノ』って言うのは犬とか猫とかの分類ってわけか。人間を人間って呼んでいるって事だろ?」

「理解が早いね、賢い証拠だ」

ボーイッシュ女は腰に手をあててうんうん。


そうだったのか、ジョノさんって呼び方は人間さんって言ってる様なものだったのか。

そう考えると申し訳ない気持ちが出てきた。

「あのさジョノさん、名前とか付けた方がいい?」

「私は別にジョノさんで構わないよ〜?」

よし、本人がいいんならいっか。


「話は終わりましたでしょうか?終わりましたよね。だってそれしかないもの。終わったに決まっているわ。」

何だあの赤髪少女は、急かすの好きなの?


「そうだな、話は終わった。ならこの室に来た本題に入るとしようか」

その言葉が一瞬理解できなかったのは、まだ初めてだったって事と彼女達の雰囲気に紛らわされていたからだ。

そう、彼女達は戦いに来たんだ。俺の室にザラキエルと言う相手が。

ザラキエルってボーイッシュ女の方だよね?赤髪少女はジョノって言ってたし。


「ザラキエルってボーイッシュの方だよね?」

一応ボソッとジョノさんに確認をとってみる。


「そうだよ、私がザラキエルだ」

あの人は地獄耳なの?

まぁ、どうでもいいか。


「それでは、始めようか、瓜売り君…」

パリッと空気が割れる様な緊張感が流れる。

そしてザラキエルの周りに蒼いオーラが漂い始める。


え?ザラキエルはやる気まんまんだけど俺とか戦い方とか全然教わって無いんだけど⁉

どうしよ⁉どうしよ⁉

顔には出さないけど俺はめっちゃテンパっている。

マジでどうしよ⁉戦い方知らないんだけど⁉


「そんなにテンパる必要は無いですよ〜、イメージして下さい〜、あのかわいいファッションをー」

え?あれを?

でも俺は仕方なく言われた様にあれをイメージする。あのあれをイメージする。

すると俺の体からショッキングピンクのオーラが溢れ出す。

来たー、やだー


その間にもザラキエルのオーラはその量を増し優雅に彼女を取り囲んで行く。


俺のオーラも負けじと俺を取り囲む。


「それじゃー、意思を確定する言葉を言って下さい〜」

不意に聞こえるジョノさんのロリボイス。

え?え?意思を確定するって、え?何言うの⁉


二人のオーラが巻き上がりそれぞれの身体を覆う。

あ、ちょっと待って、えっとえっと

「へ、変身!」


そしてそれを合図にか それぞれの蒼いオーラ、ショッキングピンクのオーラが解き放たれる。



現れ出たのは先程と姿を変えたザラキエル。

キャップは被っておらず、黒髪ポニーテールがよく見える。

大きく変わっていたのは巫女服をまとっていた事、それも肩から先の袖が無くボーイッシュ仕様となっていた。

戦巫女いくさみこザラキエル見参!」

ポーズシャキーン、わーかっこいー。


それに反して俺の姿。

もう言いたく無いよ…けど言います。

全身を覆ったオーラは余すとこなく俺を変化させた。

現れ出たのはピンクのフリフリスカート、レースをあしらい、頭にリボンなんかも。

そう明らかに男の着る物じゃない、いやある一種の男が着るであろう服。

俺は日本文化の象徴、ロリータファッションを着ていた。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

無言の鎮圧。

ザラキエルは唖然としてこちらを見ている。

俺は自然と体がプルプル震える。

きゃー恥ずかしいー!俺を見ないでー!もうその目で殺されるからー!

メンタルが低い俺はそれでも耐えている。


「あれが変態ですのね。だってそれしかないもの。変態に決まっていますわ。」


とどめを刺された。


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