努力の令嬢。
ヘルブランド王国の名門貴族、グルストランド公爵の長女、エルネスティーネ・ステファニア・ファナ・グルストランドは、現在十七歳である。
王太子であるシグヴァルト・セラージャ・ファン・ヘルブランディは、もうすぐ十八歳になる。彼はエルネスティーネの婚約者だ。エルネスティーネが生まれた翌日、国王と公爵によって婚約させられた二人は、当然に政略結婚である。
三歳で正式に婚約の儀式を終え、シグヴァルトが十八歳になったら、成婚の儀式を迎えることになっている。エルネスティーネは、未来の国母となるべく、特別扱いで育てられた。母はエルネスティーネが三歳になる前に亡くなった為、父は後添いを迎えた。継母ではあるが、エルネスティーネとは仲がよい。生さぬ仲の娘を、可愛がってくれている。
エルネスティーネの生母は、現国王の従妹にあたる王族であり、継母は伯爵家の出身である。よって、父は継母が産んだ弟妹より、エルネスティーネを格上として扱った。エルネスティーネも、父の期待に応えるべく、ひたすらに努力した。
王妃主催の茶話会には必ず出席した。王妃は鷹揚な女性で、いずれ娘となるのだからと、エルネスティーネをとても可愛がってくれた。エルネスティーネと継母の仲を口さがなく噂した某夫人は、王妃の逆鱗に触れて社交界から追放されたほどだ。
王立学園にも、シグヴァルトから一年遅れて通い始めた。王族と貴族しか通えない学園で、王太子シグヴァルトと、その婚約者であるエルネスティーネは、まさに王と王妃にように扱われた。だが、それも当然だと誰もが納得するようにと、エルネスティーネは勉強も社交も交友も一切手を抜かなかった。
そして、シグヴァルトの十八歳の誕生日を一ヶ月後に控えた今日。
エルネスティーネは、見てしまった。
学園の中庭で、シグヴァルトが、金髪の少女と抱擁している姿を。




