第五十六話 久しぶりの師匠
『ミリシア、師匠のところに行こうとしてたの?』
『ええ、全然会えていなかったもの』
寂しかったわ、と悲しげな表情をするミリシア。
確かに、全然会えてなかったけど……
それに、魔法使いグッズをもらっていたから、直接お礼が言いたいと思っていた。
……まぁいいか。
わたしは気持ちを切り替えて、目の前の扉を叩く。
すぐに中から返事がして、扉が開かれた。
「はい、何かしら……ってミリシアじゃないの」
「久しぶりです、師匠」
「久しぶりね。元気にしているのは知っていたけれど……よかったわ」
師匠は、安心したように優しく微笑む。
なんだか懐かしい感じかして、ほっとする。
「それで、何か用事かしら?」
「はい。えっと、魔法の修行がしたくて……部屋の中だと、できないこともあるので」
「そうなのね」
師匠は、納得したように頷く。
そのまま、何かを考え込むように目を閉じた。
どうしたんだろう。
不思議に思っていると、師匠は提案してくる。
「なら、私の仕事を手伝ってくれないかしら?」
「仕事?」
「ええ。この辺りの危険な魔物の排除とかね」
確かに、それはいいかも……
たぶん、実践練習になると思う。
『ミリシア、どう思う?』
『いいと思うわ』
ミリシアも賛成してくれた。
「わたし、お手伝いします」
「そう、よかったわ」
師匠は、嬉しそうに笑う。
そんなに忙しかったのかな、と疑問に思ってしまった。
たくさんの転生者をここに送ったのはわたしだし……もしかしたら、大変なのかも。
そう思うと、しっかり手伝わないと、とやる気が出てきた。
「まずはどこからですか?」
「あら、もう行ってくれるの? そうね……なら、近くの滝に住み着いちゃった、魚の魔物たちの退治をお願い。あそこの水をよく使っているから、危ないのよね」
「わかりました」
わたしは頷きながら、返事をする。
そのまま、さっそくミリシアと一緒に移動を始めた。
『どうやって倒す?』
『そうね……幻影魔法で囮でも作って、誘き寄せたらどうかしら?』
『いいね。水の中だったら戦えないけど、外に出しちゃったら勝てそう』
じゃあ、その後はどうしよう……
殴ったり、刃物で刺すのは抵抗あるけど……でも、悪役としてはやらないといけないことだと思う。
『……うん、頑張ってみようかな』
『あら……』
何もいっていないけど、ミリシアは気合を入れているわたしをみて、何か気がついたようだ。
そんなミリシアを気にせずに歩いていると、いつの間にか滝についていた。
わたしは深呼吸して、幻影魔法で囮を作り出す。
すぐにわたしよりも大きな魚が水面から飛び出してきて、そんな魚を創造魔法で作った滑り台で陸の方に移動させる。
ぴちぴちと飛び跳ねるたびに地面が小さく揺れて、なんだか怖くなってくる……
でも、やらないと……
「……ごめんなさい、お魚さん」
わたしは呟きながら、創造魔法で作り出した包丁を大きな魚の首元に突き刺した。




