第五十一話 師匠からのあずかり物
少しのんびりしていると、急に目の前にジゼルが現れた。
思わず、のけぞってしまう。
『お、おかえり……急だね』
『そうか?』
ジゼルは不思議そうに首を傾げた。
そんなジゼルは、手に大きなカバンを持っている。
なんだろう、と思っていると、ミリシアがジゼルを睨みながら呟く。
『帰ってこなくても良かったのに……』
『ふん、帰ってくるに決まっている』
ジゼルとミリシアは睨み合って、喧嘩でもしそうな雰囲気だ。
会うといつもこんなふうに言い争うからなぁ……
でも、心から嫌ってはいないみたいだから、止めにくい。
どうしようかなぁ……と考えていると、ジゼルの持っているカバンのことを思い出す。
『そうだ。それ、どうしたの?』
『これか? お前の師匠から預かったものだ。お前に渡せと言われたな』
『そっか、ありがとう』
わたしがお礼を言うと、ジゼルは当然だ、と、でもどこか嬉しそうに笑った。
そんなジゼルを気にせず、カバンの中をのぞいてみる。
中には、立派な杖と分厚い本、他にもローブとか、いろいろなものが入っていた。
『それ、魔法使うやつの必需品みたいなものってお前の師匠は言ってたぞ』
『そうなんだ……』
もらったものを観察しながら、頷く。
杖は短いけど、黒と白と紫が混じっているし、先っぽに宝石みたいなものがついているから立派に見える。
分厚い本はパラパラとめくってみると、びっしり文字が書かれていて、少し読んでみると魔法について書かれていた。
ローブは黒に近い紫色で、なんだか魔法使いっぽくてかっこいい。
『すごいわね、リア』
『そうだね……師匠にお礼しなくちゃ』
何がいいかな……本をもらったし、何かの本がいいかな?
それより、師匠がいるところでは手に入らないものがいいのかな?
そんなふうに考えていると、ジゼルも椅子に座った。
『ちょっと、なんで座ってるのよ?』
『座りたいからだが?』
『座らないでちょうだい。それと、リアから離れなさい』
『嫌だ』
『わたしだって嫌だわ』
ミリシアとジゼルは、睨み合いながら言い合う。
でも、いつものことだから気にしない。
少し、うるさくはあるけど……
『ミリシア、そろそろ寝よう?』
『ええ、そうね。わかったわ』
『俺はどうすればよいのだ?』
『いつも通りソファで寝てくれるかな……? ごめんね』
流石に、他人の男性と一緒に寝るのは……できない。
令嬢として教育されて、よりそう思うようになった。
というか、精霊だから寝なくても平気だと思うのに……
そんな気持ちを隠しながら申し訳ない顔を作る。
『わかったぞ。ソファを使う』
『うん、よろしくね。もう寝るから』
わたしはそう言って、ミリシアと一緒にベッドに入った。
体も大きくなってきているから、最初はとても広く感じたベッドが今では少し大きいなくらいに感じる。
布団をかぶって、目を瞑る。
今日はニララ・ニラリアにも行ったから、疲れていたのかすぐに眠たくなってきた。
……主人公、物語通りに混乱しているのかな……?
そんなふうに考えながら、わたしは眠りについた。




