第五十話 帰宅
「……そろそろ戻るか」
「あら、もうなのねぇ……残念だわ」
「また来いよ!」
「忘れられる前に顔見せろよ」
手を振られながら、部屋を出ていく。
そのままくらい廊下を通って広い空間に着くと、そこにいたならず者たちが話しかけてくる。
「もうおかえりっすか!? 早いっすね!」
「ボスのおかえりだぞ、集まれ!」
その呼びかけに人が集まってきて、一斉に頭を下げる。
元気よく「お疲れっした!」と声を揃えて言うので、少し耳が痛い。
まぁ、それだけ好かれていると言うことだと思うから、我慢する。
「また来る」
「はい! お待ちしてるっす!」
そんな声を聞きながら、扉を開けて階段を登っていく。
暗い階段を通った先は、来る前に入った酒場だ。
何事もなかったように出ていって、店主さんに声をかける。
「今日はもう出る」
「……ああ、また来い」
店主さんは顔を見ずに、言った。
一応、店主さんもニララ・ニラリアの一員だから、ボスを無視するのはよくないと考えているんだろう。
わたしは正直どっちでもいいけど……まぁ、物語のミリシアだったらしっかりと挨拶するように言うと思うので、これでいいと思う。
そんなことを考えながら、路地裏に入る。
『ミリシア、そっちはどうなってる?』
『リア。今は人がいないわよ、戻ってきていいわ』
『わかった』
返事をして、ラニの能力を使う。
ラニは力が強い他に、転移ができるという力をつけておいた。
他にもいろいろあるけど、よく使っているのはこの力だ。
目を瞑って、ミリシアがいる場所をイメージする。
すると、すぐに体が一瞬軽くなった。
目を開くと、ミリシアがいる場所についている。
『お帰りなさい、リア。体を返すわね』
『ただいま、ミリシア。お留守番ありがとう』
ミリシアがわたしの体から抜けて、わたしが代わりに入る。
体が軽くなって、違和感が消える。
やっぱり、元の体が一番落ち着く……
『ラニ、戻っていいよ』
『了解』
ラニはさっきわたしが使った転移の力を使って、姿を消す。
多分、師匠の元に向かったんだろう。
師匠のところには転生者の人をたくさん送っちゃったから、ラヴィだけでは手が足りなくなっている。
だから、ラニには暇な時はラヴィの手伝いをして、と命令していた。
ラニには姿を変える力もあげているし、たとえニララ・ニラリアのボスとして顔を見られていても、同じ人とはバレないと思う。
『ミリシア、わたしがいない間に何かあった?』
『いいえ、特に何もなかったわよ。夜ご飯を食べたくらいかしら?』
『そっか、ありがとう』
『どういたしまして』
ミリシアは優しく笑う。
この三年間ですっかり大人びてしまって、なんだか少し寂しい。
なんだか、おいて行かれているみたいで……
そんな気持ちを気にしないようにしながら、椅子に座る。
ミリシアも、ふわりと隣に座った。




