第四十九話 物語だけど、物語じゃない
暗い青色の髪の毛の男性は、立派な扉を開く。
そこにはこの広い空間に来るまでに通った階段みたいに、暗い道がある。
道にはぽつりぽつりと扉がついていて、奥にはうっすらと大きめな扉が見えた。
男性は横についている扉は無視して、奥にある扉の方へ進んでいく。
「ボス、ゆっくりしていってください」
「ああ」
わたしが頷くと、男性は頭を下げて元の広い空間に続く扉の方に向かっていく。
それを見送ってから、わたしは目の前の大きい扉を開いた。
中はそれなりに広い空間が広がっていて、豪華な椅子や机など、いろいろ高そうなものが飾られていた。
そんな豪華な椅子に座っている女性や男性たちは、わたしが部屋に入ってくるのを見ると立ち上がる。
「あらあら。お帰りなさい、ボス」
「久しぶりじゃねぇか?」
「くたばっちまったかと思ったぜ」
大人っぽい女性に、強そうなごつい男性、悪そうな男性など、今いる人たちがそれぞれ言う。
この人たちは、ニララ・ニラリアの幹部みたいな位置についている。
他にもいるけど、今はいないみたいだ。
「ああ、久しぶりだな」
「もぉ、寂しかったのよ?」
「ハッ、思いっきり喜んでたじゃねぇか」
「あなたにはそう見えたのかもしれないけれどね?」
楽しそうに言い争っている様子は、貴族としてのミリシアでいたら、見ることができなかったものだ。
こんな悪いことをしている感には慣れないけど、少し好きになってしまっている。
……ニララ・ニラリアは、悪役になって主人公に倒されるためだけにあるのに。
楽しく話しているのを見ると、悪人だとしても倒される未来を知っていて放っておいていいのかと思ってしまう。
いや、もちろん悪いことをしているから捕まるのは当然だけど……でも、悪いことをしなくちゃいけなくなった理由があるのがわかって、本当にこのままでいいのかと思ってしまっていた。
もちろん、主人公のために悪役にするのは決まっていることだ。
だけど……この世界は物語じゃなくて、しっかり存在している世界なんだと実感してしまう。
……だけど、わたしの決意は変わらない。
たとえ物語の世界じゃなくても、わたしはこの世界を物語の通りにする。
好きだから、その通りにしたい。
その気持ちは、変わらないから。
「ボス、ぼーっと立ってどうかしたのかしら? 早く座ってちょうだいな」
「……ああ、わかった」
頷いて、一番奥にある豪華な椅子に座る。
この椅子も、ニララ・ニラリアの幹部たちが用意してくれたものだ。
一番偉いんだからと、高いものを買ってくれた。
……こんなに優しくしてくれたのに、倒される未来を教えてあげられなくてごめんなさい。
でも、夢だから……叶えたいから。
黙っていることを、許してね。




