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2レッスン目◇ピラティス魂に火がつく5秒前

(あぁ、お母さんの変装努力も虚しく瞬殺バレしちゃったよ)


ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


(お父さん、お母さん、お兄ちゃんごめんなさい)


ココは更にそんな事を考えていた。


「ウィリアム子爵令嬢、一先ず着替えを済ませて首の手当てをしよう」


コリシは戸惑いを隠せないまま言った。


「はい」


ココは俯き気味に頷きながら言った。


(着替えたら体型まで誤魔化してたのもバレちゃうよね)


ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「お前たちはジョージを医務室まで連れてってやってくれ」


コリシが騎士達へ言った。


「「承知しました」」


騎士達は頷きながら言った。


そして、騎士達はジョージを支えながら医務室へ向かったのだった。


ココはギルバートとコリシに連れられて医務室ではなく空き部屋へ案内された。


「ここには女性物の洋服などないから申し訳ないが着替えは男性物の洋服に着替えてくれ。サイズは一番小さいものを選んだからそれほど大きくはないと思うから」


コリシが申し訳なさそうに言った。


「用意して頂いただけで助かります。ありがとうございます」


ココは丁寧にお辞儀をして言った。


「では、着替えたら横の団長室へ来てくれ。団長室で手当てをするから」


コリシが更に申し訳ない表情で言った。


「わかりました」


ココは頷きながら言った。


そして、ココはギルバート達が部屋を出るとすぐに着替え始めた。


(詰め物も濡れてずっしりと水分吸っちゃってるわぁ。これは使い物になりそうにないよね)


ココは着ていた洋服を脱ぎ詰めていた詰め物を見て苦笑いを浮かべて言った。


そして、ココは濡れた体と髪の毛を拭いてコリシに渡された洋服に着替えた。


(あらら。またこれはどうしたものか。一番小さい物を選んでくれたからかどこからどう見てもぽっちゃり体型には見えないしパンツスタイルだから余計に元の体型がわかるじゃないの)


ココは洋服を着ながら複雑な表情でそんな事を考えていた。


(それにしてもまさかこんな形でジョージに遭遇することになるとはね)


ココはふとそんな事を考えていた。


(でも、猫を助けて迷わず池に飛び込むなんてジョージらしいといえばらしいのかな。ジョージがそういう優しい性格だからジュリアンも彼に恋をしたわけだしね)


ココは更にそんな事を考えていた。



ココが色々と考えながら着替えている間隣の団長室では…



「ギルバート、あれは本当にウィリアム子爵令嬢なのか?」


コリシが困惑を隠せないまま言った。


「どうやらそのようだな。俺も正直驚いてる」


ギルバートも困惑気味に言った。


(俺だって未だに信じられない。あれがウィリアム子爵令嬢だと?!完全に別人ではないか)


ギルバートは複雑の表情のまま困惑しつつそんな事を考えていた。


(それよりも彼女だと気づかず俺はウィリアム子爵令嬢に怪我を負わせてしまった。それも団員であるジョージを助けてもらったというのに)


ギルバートは更にそんな事を考えていた。


「正直、今まで色んな女性を目にしてきたけどウィリアム子爵令嬢の容姿は群を抜いてるよ。ギルバートの御母上やお姉さん達も国では国宝級の美人だと言われているけどウィリアム子爵令嬢も正直負けてないくらいの容姿だ。美人の中に可愛らしさも混じるようなそんな容姿だったよね」


コリシは困惑したまま言った。


(あんな容姿なのに何で前髪があんなに長くしてるんだ?つい先程まであの前髪は違う意味で顔を隠していると思っていたのに)


コリシはふとそんな事を考えていた。


「ウィリアム子爵令嬢があのような容姿だとは一度も耳にしたことがなかったが」


ギルバートは困惑気味に言った。


「確かにそうだね。あれだけの容姿を持ってたらいくら領地に籠もってたとはいえ少しくらいは噂が立つはずなのにね」


コリシは不思議そうに言った。


「だけど今は容姿がうんぬんよりも彼女の首の怪我だよね」


コリシは困った表情で言った。


「ああ」


ギルバートは表情を歪ませて言った。


(ギルバートは相手が女性だろうと怪しい者には容赦がないから迷いなくウィリアム子爵令嬢の首に剣を突きつけたからね。まぁ確かに僕も彼女がウィリアム子爵令嬢だなんて思いもしなかったから不法侵入したものだと思ってギルバートを止めなかったから同罪だよね)


コリシは軽く髪の毛をくしゃっとしながら言った。


「思ったより傷が深そうだったね」


コリシが困った表情で言った。


「あぁ」


ギルバートは複雑な表情で言った。


「幸いだったのがウィリアム子爵令嬢が変に動いたりしなかったお陰であの程度で済んだんだけどね」


コリシが更に言った。


(そういえば彼女は剣を突きつけられても悲鳴一つあげず大きな動きも見せなかったよね。普通はあの状況なら恐怖で震えてもおかしくないくらいなのに。ふんわりした令嬢だと思ってたけどギルバートを怖いとも思わなかった事もだけど意外と肝がすわってるのか?何にせよ彼女のその行動のお陰で僕たちは助けられたわけだけどね)


コリシはふとそんな事を考えていた。


「何にせよ俺が傷を負わせた事に違いはないからきちんと対応しなけばならないな」


ギルバートは疲れた表情を浮かべて言った。


「そうだね」


コリシが複雑な表情で言った。


コンコンッ…


その時、部屋の扉が鳴った。


「ココです。着替えが終わりました」


扉を叩いたのはココだった。


「入ってくれ」


ギルバートが言った。


「あ、はい。失礼致します」


ココはそう言うと扉を開けて部屋へと入ってきた。


部屋に入ってきたココを見てギルバートとコリシは更に驚いた。


「なんてこった。まさか体型まで?!」


コリシが驚きのあまり言った。


しかしすぐに「しまった」という表情を浮かべた。


(女性に対して僕は何を言ってるんだ?!


「申し訳ありません。別に隠していた訳でもないのですが」


ココはコリシの言葉に困った表情で言った。


(まぁ隠してたんだけどね)


ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「いや、別に責めている訳ではないんだよ」


コリシは慌てて言った。


「とにかく座りたまえ」


ギルバートが複雑な表情で言った。


(本当にどこからどう見てもウィリアム子爵令嬢には見えないな)


ギルバートはココの体型を見て苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「はい。失礼します」


ココはそう言うと椅子へ腰掛けた。


「話を聞かせて貰う前に首の傷の治療をさせてもらうね」


コリシがそう言うと救急箱を取り出してきた。


「あ、手当ては自分でできますので」


ココは慌てて言った。


(怪我の手当てなんて前世で喧嘩してきたお兄ちゃんを嫌ってほどやってたんだからすぐできるのに。そこまで大した傷じゃないんだし目上のコリシにやってもらうなんてできないよ)


ココは戸惑いつつそんな事を考えていた。


「そういう訳にはいかないよ。僕たちのせいで怪我を負わせてしまったのだから」


コリシが慌てて言った。


「ですが、目上の方にそんな事をして頂くのは申し訳なくて」


ココは戸惑いながら言った。


「いいからコリシにやってもらえ」


その時ギルバートが面倒臭そうな表情で言った。


(上下関係より今は手当ての方が大事なのかわからないのか?!本当にこの令嬢は一体何なのだ?!)


ギルバートはココの態度を見て苛立ちながらそんな事を考えていた。


「わかりました」


ココは困った表情で言った。


(団長命令ってことだよね?)


ココはそんな事を考えていた。


「副団長、申し訳ありませんがよろしくお願いします」


ココは申し訳なさそうに言った。


「申し訳ないなんて思わなくてもいいから。完全にこちら側のせいで怪我を負わせてしまったんだから」


コリシは困った表情で言った。


(他の令嬢ならただの擦り傷程度でも僕たちに手当てして欲しくて大騒ぎしそうだけどウィリアム令嬢は他の令嬢とは違いすぎて逆にこちらが戸惑うな)


コリシはそんな事を考えていた。


「では手当てするね。少ししみるかもしれないけど」


コリシは申し訳なさそうな表情で言った。


「わかりました。よろしくお願いします」


ココは小さく頷きながら言った。


そして、コリシが丁寧にココの首の傷を手当てした。


(あ、本当にしみるわね)


ココは傷口に消毒液が当たるとほんの少し眉を動かしてそんな事を考えていた。


(やっぱりしみるよな。いざ手当てしてみるとやはり傷は剣を当てただけだとしても思ったより深めだね。ギルバートの剣だからだろうね。消毒液がしみるだろうに声一つ出さないなんて団員達と変わらないじゃないか)


コリシは少しだけ顔をしかめたココを見て困った表情でそんな事を考えていた。


そして、コリシはあっという間に手当てを終えた。


「これでよし。あとは毎日きちんと消毒してね」


コリシが言った。


「はい。わかりました。手当てして下さりありがとうございました」


ココは優しく微笑みながら言った。


ギルバートとコリシはココの表情を見て少し驚いた表情を浮かべた。


「何故そんな怪我を負わせれたというのに笑って礼が言えるんだ?!普通なら悪態をつくだろう」


ギルバートが表情を歪めて言った。


(俺に怪我をさせられた上にコリシもそれを止めるどころか黙って見ていたんだぞ?!そんな奴らに何故笑顔で礼など言えるんだ?!いくら目上の人間だろうが理不尽に剣を向けられて怪我まで負わされたんだから文句の一つくらいあるだろ?!令嬢の行動に理解ができない)


ギルバートは表情を歪めたままそんな事を考えていた。


(僕もギルバートと同じ事を思ったよ。怒ってもおかしくない状況なのに)


コリシも理解できないという表情でそんな事を考えていた。


(そんな怒ることなの?!)


ココは少し驚いてそんな事を考えていた。


「団長はわざと怪我をさせたわけではありませんよね?」


ココが淡々と言った。


「当たり前だ」


ギルバートは表情を歪めたまま言った。


「でしたら悪態をつく必要はないですよね?それに私はただ副団長へ手当てしてもらった事にお礼言っただけですし。手当てしてもらったらお礼を言うのが当然でしょう?」


ココはフッと笑みを浮かべて言った。


(わざとならまだしもわざとじゃないなら別に彼らを責めるのは筋違いな気がするしね。まぁ別にはなから責める気なんてないけどね。元はと言えば私が変装してたのが原因なわけだしね)


ココはそんな事を考えていた。


「しかし」


ギルバートはココの戸惑いながら言った。


「それに私の見た目が団長達を勘違いをさせてしまったわけですし」


ココは苦笑いを浮かべて言った。


(まさか、私とまったく別人だと勘違いされるとは思わなかったけど確かにお母さん直伝の変装技は普通に周りをいかにも本来その姿だと思わせるレベルだもんね)


ココはそんな事を考えていた。


「そうだとしてもだ。女性が体に傷をつけられたんだぞ?!」


ギルバートは何とも言えない表情で言った。


(それも嫁入り前だ。下手をしたらその傷が残りそのせいで貰い手がなくなる事だってありえなくないというのに悪態をつくわけでもなく平然としているなどおかしいだろう。これまで俺の回りにいた令嬢達とは違いすぎて調子が狂う)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「私が紛らわしい事態を招かなければこの傷はつくことありませんでしたし団長は騎士団の団長として当然の対応をした訳ですから」


ココは平然と言った。


「ですから、図々しいお願いになってしまうかもしれませんがここは喧嘩両成敗ということでお互い謝ってこの件については終わりにしませんか?」


ココは少し困った表情で言った。


(変装してなかったらこんな事態にはならなかった訳だしここは穏便に事を済ませるのが一番だもんね。初日からこんな事になるなんて思わなかっただけにね)


ココはそんな事を考えていた。


ココの発言にギルバートもコリシも一瞬呆気に取られていた。


(本当に彼女には驚かされてばかりだね。ギルバート相手にあんな提案するのも凄いけど普通なら自分に有利な提案をするだろうにお互いが不利にならない提案をするなんてね)


コリシはそんな事を考えていた。


(このような事態をそんな簡単に終わらせるだと?!)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「やはりそんな簡単な問題ではありませんか?」


ココは2人の表情を見て困った表情で言った。


(やっぱり前世の時みたいにこういう時に穏便には難しいのかな)


ココはそんな事を考えていた。


「いや、そういう訳ではないが」


ギルバートが咄嗟に言った。


(当たり前だ。どう考えても簡単な問題じゃないだろう)


ギルバートがそう続きを言おうとそんな事を考えていた。


「では、私の提案を受け入れてくださるのですね。ありがとうございます。さすがは騎士団の団長ですね」


ココは笑顔で言った。


(良かった。冷血公爵って呼ばれてるくらいだからやっぱ穏便は無理か〜って思ってたけど意外と話が通じる人なのかもしれないなぁ。私が初日から剣を向けられたなんてお父さん達に知られたら血祭りになりかねなかったもんね)


ココは内心ホッとしてそんな事を考えていた。


「い、いや、、その、ちが」


ギルバートが慌てて言った。


(おい待て。何故そういう解釈になるんだ)


ギルバートは慌てたままそんな事を考えていた。


「この度は私のせいで色々と誤解と混乱を招いてしまい団長を始め騎士団の方々にもご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした」


ココはギルバートの慌てた様子など気にも止めずとても丁寧に深くお辞儀をしながら謝り言った。


「、、俺の方こそ事情を聞く前に疑い剣を向け怪我をさせてしまってすまなかった」


ギルバートはココにつられるかのように言った。


「あ、いや、違う。俺ガ言いたいのはつまり」


ギルバートは謝ったあとにすぐにハッとなり慌てて言った。


(何だ?!思わず俺も謝ってしまったが)


ギルバートは戸惑いつつそんな事を考えていた。


「謝って頂きありがとうございます。これでお互い謝りましたのでこの件についてはこれでおしまいと言うことでよろしいですよね?」


ココは屈託のない微笑みを浮かべて言った。


「いや、その、、ああ」


ギルバートは険しい表情で言うもココの表情を見て諦めたかのように頷きながら言った。


(この令嬢を前にすると今まで出会った令嬢達と違いすぎてどう対応したらいいのかわからないまま彼女のペースに飲まれてしまっている気がする)


ギルバートは戸惑いの表情でそんな事を考えていた。


(ぷはっ)


そんな2人のやりとりを見ていたコリシは内心吹き出していた。


(ギルバートの奴が完全にウィリアム子爵令嬢に飲まれてるじゃないか。僕もだけどギルバートも納得いってないみたいだけど令嬢はそんなのお構いなしみたいだね。ギルバートや僕としては騎士である上に労働初日から誤解して相手に傷を負わせたんだからウィリアム子爵に正式に詫びに行かなきゃいけないくらいの問題なのに彼女はこの程度の事くらいにしか思ってないみたいだね)


コリシはそんな事を考えていた。


(僕たちが令嬢のペースに飲み込まれる日がくるなんてね)


コリシは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「ありがとうございます。出勤初日からお手数取らせてしまい申し訳ありませんでした。では、私は持ち場に戻り仕事の続きをしてきますね」


ココは立ち上がると笑顔で言った。


「いや、待て。怪我をしているのだから仕事の前に休むのが先だろう」


ギルバートがココの言葉に驚き言った。


「そ、そうだよ。どう考えてもここは持ち場に戻るのではなくて休むのが先でしょう」


コリシは慌てて言った。


(本当にこの令嬢は何なんだ?!)


ギルバートは困惑しつつそんな事を考えていた。


「え?ですが別に手足を怪我している訳ではないので働けますけど。それに仕事をする中で私への疑いを判断されるのではないのですか?」


ココはきょとんとした表情で言った。


(前世の癖で普通に仕事に戻ろうとしてたけどこの世界では違うの?それに私が本当に仕事だけしにきたって事を分かってもらうには働いてるところを見たほうが早くない?)


ココがそんな事を考えていた。


「はぁ。そういう問題ではないだろう」


ギルバートはため息混じりに呆れた表情で言った。


(確かにこれまでの事がありコリシにウィリアム子爵令嬢の行動を見て判断しても遅くないだろうと言われていたからそのようにしようと思っていたが怪我を負ってるのに平然と働こうとするとは彼女の考えが分からなさすぎる)


ギルバートは内心頭を抱えながらそんな事を考えていた。


「と、とりあえず持ち場に戻る前にウィリアム子爵令嬢が何故変装じみた事をしていたのか上官として聞いておきたいから先に説明してくれる?ね?ギルバート。そうだよね?」


コリシが慌てて言った。


「え?あ、ああ」


ギルバートも慌ててコリシに合わせるように言った。


「あ、そうですね。混乱招いてしまったのですからその説明を先にしないといけませんよね」


ココが再び座り困った笑みを浮かべて言った。


(やっぱりそれについての話は逃れられないよね)


ココは困った表情でそんな事を考えていた。


「それでは、何故変装じみた格好をしていたんだ?」


ギルバートが真剣な表情で言った。


(自分の姿にコンプレックスがあるから前髪で顔の半分を隠していたと思っていたがむしろ前髪で隠さない方が好感を持たれるだろうに)


ギルバートは不思議に思いそんな事を考えていた。


「簡易に説明すると団長や副団長が直面されている問題を避けるためです」


ココが真剣な表情で言った。


「俺たちが直面している問題?」


ギルバートが目を細めながら言った。


「はい。団長と副団長はお2人の隣に立ちたいと色んなご令嬢からアプローチをかけられて困っていると言いましたよね?私はそのような事態を避ける為にも顔を地味に見えるようにメイクをしたり前髪で顔半分を隠し体型も動くのに支障がない程度に洋服の中に詰め物をしていたのです。正確に言えば家族が特に私に団長や副団長が直面する問題のような事態に巻き込みたくはないと心配してくれていますので」


ココが淡々と説明した。


(言ってもギルバートやコリシみたいに私にすり寄ってくる男性はほぼいないに等しいけどね。家族がそんな事を許すはずがないもんね。前世でも現世でも変装する理由は変わらないもんね。まぁ現世ではあっさりバレちゃったけどね)


ココはそんな事を考えていた。


「つまり、、ウィリアム子爵令嬢が素顔でいると色々な令息達が寄ってくるのを避ける為にあえてあのような見た目にしていると?」


コリシが少し戸惑いつつ言った。


「はい。仰る通りです」


ココが頷きながら言った。


「人の第一印象は半数以上が相手の見た目で決まるほど人はまず容姿を見ますから。顔がいいのにわざとそれを隠すのは嫌味なのか?と思われる事もあるかもしれませんがあえて隠す事で自分の身を守れる武器にもなりえますので」


ココは淡々と言った。


「実際、整った容姿をお持ちのお2人は随分お困りでしょう?お2人の場合は権力や財力が伴いますから余計かもしれませんが同じ様に権力や財力を持っていても容姿が整っていなければ一旦躊躇される方の方が多いでしょうから」


ココが更に続けて言った。


(まさか顔や体型を隠している理由がそんなものだったとはな。しかし彼女の言う事は一理ある。実際にこの容姿のせいで幼い頃から興味もない令嬢達から幾度となく迷惑を被られたからな)


ギルバートはココの説明を聞いてそんな事を考えていた。


(あぁ、だからあの時にウィリアム子爵令嬢は"そんな事"程度にしか思わなかったのか。自分の見た目にコンプレックスを持って言ったのではなく僕たち側だったからなのか。彼女は彼女なりの対策術を身につけているから大きな問題だとは捉えなかったというわけだね)


コリシはココの発言を思い出しハッとなりながらそんな事を考えていた。


「事実、団員も副団長も最初に私を見た際に驚かれていたでしょう?あれは私の貴族令嬢らしからぬ見た目だったから驚かれたのでしょう?騎士様達に私が紹介された際も騎士様達は私の見た目に随分驚かれた様子でしたしあんな見た目の貴族令嬢なんて見たことないとでも思われたでしょうね。地味でぽっちゃり体型な上に洋服も地味でしたしね」


ココは更に続けて言った。


(確かにウィリアム子爵令嬢の第一印象はこれまでの令嬢とのギャップが大きすぎてなんて地味な令嬢なんだと思ったのは事実だ。団員達もウィリアム子爵令嬢を見るなり地味だと思っているのが顔を見ただけですぐにわかったくらいだったしな。確かに彼女の言うように第一印象は見た目を重視しがちなところは間違いなくあるだろう。しかし、本当の姿と地味にしている時とギャップが激しすぎて今はそれに驚きを隠せない)


ギルバートは難しい表情でそんな事を考えていた。


(ウィリアム子爵令嬢って雰囲気がのほほんとしてる感じがするのに洞察力もあるし肝もすわってるし雰囲気も見た目同様にギャップがあって驚かされてばかりだね)


コリシがそんな事を考えていた。


「現に素顔を隠していた際は地味な私になど興味すらなかったでしょうけど素顔を見た瞬間にあのように興味を持ち始められるのです」


ココはそう言うと軽く窓へと視線をやった。


ギルバートとコリシがココの目線の先にある窓の方へ振り向いた。


振り向いたギルバートとコリシはギョッとした表情を浮かべた。


(あいつら、、)


ギルバートは窓の外を見て眉間にしわを寄せながらそんな事を考えていた。


そして…


ギルバートは鬼の面相で窓へと向かい思い切り窓を開けた。


「お前達は何をしているんだ」


ギルバートは物凄いけんまくで窓の外に集まって中を覗いていた団員達へ鬼の面相のまま怒鳴り言った。


「「も、申し訳ありません」」


団員達はギルバートのけんまくに一瞬息を飲むとすぐに慌てて謝った。


「勝手に持ち場を離れたので罰として皆今からすぐに1000回の打ち込みだ」


ギルバートは鬼の面相のまま言った。


「「はい」」


団員達は返事をすると慌てた足取りで持ち場へと走り戻って言った。


「あいつらめ」


ギルバートは不機嫌そうに言った。


「きっとウィリアム子爵令嬢の話を聞きつけてやってきたんだろうね」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


(そりぁ地味だと思ってた令嬢が実はとびきりの美人だったと聞いたら見たくもなるのよね。それに加えて危険を顧みず団員を救ってくれたんだからね)


コリシはそんな事を考えていた。


「あいつらがすまない」


ギルバートは呆れた表情で言った。


(まったくあいつらときたら)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「いえ。気にしてませんので大丈夫です」


ココは柔らかい笑みを浮かべて言った。


(容姿も体型も違うと聞けば興味津々になるのはまぁ仕方ないもんね)


ココはそんな事を考えていた。


「そうか」


ギルバートが少し戸惑った表情で言った。


(何故彼女はこういう状況の時に平気に笑っていられるんだ。見世物になってるんだぞ?!)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「気になしていないのですが出来る事ならこの事実を騎士様達には内密にしてもらうようにお願いできませんか?私は仕事の時以外は領地で静かに平和で平凡に生活したいと願っていますので」


ココは困り笑みを浮かべて言った。


(私の現世での目標はとにかく平和に平凡に大好きなピラティスをやりながらのほほんと暮らしたいただそれだけで絶対にその意思は変わらないもんね。バレてしまった事はもう言っても仕方ない事だけどこれ以上話を広められると平凡な生活なんて送れそうにないもんね。前世でも私の両親が極道って事がたまたま数人知られてしまってから一瞬でその話が広まって大変だったことがあったからもうあんな風になるのはごめんだもんね)


ココは前世での事を思い出しつつそんな事を考えていた。


「分かった。ウィリアム子爵令嬢がそう望むのであればそれについては俺の方から団員達に箝口令を出すことしよう」


ギルバートが言った。


(確かに彼女の容姿で普通に生活すれば俺とコリシみたくおかしな奴らが近寄ってきて大人しくは生活できないだろうからな。平凡に生活したいが為に本当の姿を隠しているのだろうからな)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「本当ですか?ありがとうございます。出勤初日からこの様な図々しいお願いをしたにも関わらず理解して頂き感謝致します」


ココは満面の笑みで嬉しそうに言った。


(やったぁ。これでこれ以上の話が広まる事はなさそうだわ。ここを辞めるまでは平和に過ごしたいもんね。本当に助かるよ。ギルバートって意外といい人なのかもしれないなぁ)


ココは嬉しそうにそんな事を考えていた。


「い、いや。その程度の事なら難しい事でも何でもないからな」


ギルバートは少し戸惑いながら言った。


(少し前までは前髪で顔の半分が隠れていて分からなかったがウィリアム子爵令嬢はこの様に笑うのだな。口元だけ見えるのとはえらい違いだな)


ギルバートは戸惑いつつそんな事を考えていた。


「それはそうと首の傷の件だがお互いに謝罪したとはいえウィリアム子爵達への謝罪は必要だと考えているのでウィリアム子爵の元へ謝罪に伺いたいのだ子爵の都合はどのようなものだろうか」


ギルバートが思い出したように言った。


「ひ、必要はありません」


ココがギルバートの言葉に慌てて言った。


「必要ないだと?」


ギルバートは意味がわからないという表情で言った。


「ウィリアム子爵令嬢、さすがにそこは必要でしょう」


コリシも意味がわからないという表情で言った。


「本当に必要ありませんのでどうぞお気遣いなく。傷は自分のせいで負ってしまったということにしておきますので」


ココが慌てたまま言った。


(謝罪に来るなんてとんでもないことだよ。その場で血祭りになる未来しか見えないんだよ?!これは絶対何が何でもギルバート達に謝罪にこさせる訳には行かないよ)


ココはかなり慌ててそんな事を考えていた。


「何を言ってるんだ?!傷を負わせたのは俺なんだぞ?!それなのに何故令嬢自身に否があると言うんだ?」


ギルバートは眉を細めながらココを睨みつけて言った。


(本当に何を言っているのか意味がわからない。俺が謝罪するのは当たり前だというのに何故わざわざ自分のせいにする必要があるんだ?)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「ギルバートの言うとおりだよ。いくらウィリアム子爵令嬢個人がいいとは言っても我々が家族へ謝罪するのは筋というものだよ?こちらは謝罪するというのに何故拒否する必要があるの?」


コリシは理解ができないという表情で言った。


(さすがに彼女の言い分には無理があるし理解できないな)


コリシはそんな事を考えていた。


(普通の人は筋を通してそういう行動をとるよね。うん。そうなのよ?それが当たり前の常識的な事だから何も間違っていんだよ。でもね、うちの家族はそんな常識がはいそうですかで通じないんだよ?相手が目上の公爵だろうが伯爵家の息子だろうが皇太子直属の騎士団の団長と副団長だろうがそんな事なんて1ミリも関係なく刃×3を向けるんだよ?何て言えないよね)


ココは内心苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「お2人の仰ってることはごもっともなのですが私の家族はその、、私の事を本当に本当に大切にしてくれているので私が職場で、、それも初日に変装まがいな事をしていたのもバレた上に剣を向けられて怪我を負ったとなれば相手が団長だろうとお構いなしに激怒してしまうと思うのです。いえ、思うというより十中八九そうなります」


ココは真剣な表情で言った。


(本当にどうか私の気持ちを汲み取ってちょうだいよ)


ココは切実にそんな事を考えていた。


「私はそのような場面に直面したくないのです。それにもしも私が職場でそのような事になったとなれば私は明日から出勤はできません。そうなるとまた1から新たな雑用係を探さなければならないのですよ?そうすればまた団長と副団長目当てで応募した人ばかりがやってきて気苦労が絶えませんよ?そう考えるとここはお互いの為に穏便に済ませる事が一番の解決策だと思います」


ココは真剣な表情で更に続けて言った。


「ウィリアム子爵とは会ったことはないけれどいくら何でも我々に刃を向けるなど、、」


コリシが冗談を〜といわんばかりに言った。


(事前にウィリアム子爵家を調べたけど子爵の気性が荒いや何かよからぬ事に手を出しているなどの悪い結果はなかったけどね。まぁ娘を大切にする父親なら娘が怪我を負わされたら怒るのは当たり前かもしれないけど僕とギルバートの位を知っていて剣を向けるなんて事はさすがにウィリアム子爵令嬢が大袈裟に言いすぎると思うんだけどね、、って、え?)


コリシはそんな事を考えていた。


しかし、コリシは真剣な表情のままのココを見て言葉を止めた。


「本当に向ける感じなの?」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「はい」


ココは真剣な表情で頷き言った。


(彼女の表情を見る限り嘘ではなさそうだけど子爵って実は血の気が多いのか?ウィリアム子爵令嬢を見ている限り血の気の多い父親がいるとは思えないけどね)


コリシは信じられないという表情でそんな事を考えていた。


「はぁぁ。だからと言って謝罪をしないわけにはいかないだろう」


ギルバートは不満気に言った。


「では、明日から雑用係がいなくなってもよろしいということですね?先程洗濯をしていて感じましたが洗濯物だけでも物凄い量でした。1日、2日の量ではないと感じましたがそれほど溜まっていたということです。溜まっていた分は全て先程私が洗濯をして干しました。ですが、明日からまた洗濯物が溜まってもよろしいのですか?団長も仰っていましたが雑用係がいなければ困るのではないですか?」


ココが真剣な表情で言った。


(ちょっと強引な物言いだけどごめんなさいね)


ココは内心申し訳なさそうにそんな事を考えていた。


「俺たちを脅すつもりか?!」


ギルバートが眉間にしわを寄せながら強めの口調で言った。


「いいえ。よろしいのですか?と尋ねているだけです」


ココが平然と言った。


(まぁ脅しなんだけどそうでもしてこの状況を阻止しないと私の平和で平凡な生活計画が台無しになるんだもん)


ココはそんな事を考えていた。


「それが脅しと言ってるんだ」


ギルバートは更に言った。


(こちらが謝ると言っているのに今度は脅しだと?!この令嬢は一体どういうつもりなんだ)


ギルバートは苛立ちながらそんな事を考えていた。


「ギルバート落ち着きなよ」


そんな2人を見かねたコリシが慌てて言った。


「ギルバート、今回はウィリアム子爵令嬢の言う通りにしないか?」


コリシが困った表情で言った。


「何だと?!コリシお前自分が何を言っているのかわかってるのか?!」


ギルバートがカッとなり言った。


「もちろんわかってるさ」


コリシは呆れた表情で言った。


「それなら何故そのような戯け事を言うんだ?!」


ギルバートは表情を歪めて言った。


「僕だって本当はギルバートと同じようにウィリアム子爵に謝りに行くのが礼儀だと思うよ?だけどせっかくきちんと働いてくれそうな令嬢がきたというのに今日の今日で辞められては困るだろう?ギルバートだって今は本当に騎士団には雑用係が必要な事くらい一番理解してるでしょ?それにもうすぐ殿下が任務から帰って来られるのもあって尚更だと思ってる。だからここは彼女に雑用係を続けてもらうためにも彼女の意向に合わせよう」


コリシが小声で耳打ちした。


「だがしかし」


ギルバートは小声で言った。


「納得できない気持ちもわかるけどここはウィリアム子爵令嬢の要望を尊重しよう」


コリシが小声で焦るように言った。


「、、分かった」


ギルバートは苦渋の表情で小声で言った。


「ウィリアム子爵令嬢、今回は令嬢の要望をのむことにする」


ギルバートは納得いってない表情で言った。


「本当ですか?!ありがとうございます。ありがとうございます。本当に感謝致します」


ココはパァッと嬉しそうな笑みを浮かべて言った。


(やったぁ。本当にどうなる事かと思ったけどどうにか血祭りを見ずに済みそうだわ)


ココは安堵した表情でそんな事を考えていた。


(何故こんなに嬉しそうにしてるんだ?!こちらはまったく納得いかないというのに。しかし、今は本当に雑用係が必要なのは事実だ。これまでの令嬢とは違う彼女に辞められたら正直困るのも事実だ。クソッ。本当にウィリアム子爵令嬢のペースに完全にのまれるじゃないか)


ギルバートは表情を歪めてそんな事を考えていた。


(ギルバートよく耐えてくれたな。いつもの僕ならもちろん令嬢の要望なんて無視だけれど現状の騎士団の事を考えるとここは色んな意味で穏便にかつ令嬢に雑用係を続けてもらわないとだもんね)


コリシはギルバートの表情を見て苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


「本当にありがとうございました。要望をのんで下さった分しっかり働かせて頂きますね」


ココはふんわりした笑みを浮かべて言った。


「という事で早速持ち場に戻りますね」


ココは笑みを浮かべたまま言った。


「え?いや、まだ」


コリシが慌てて言った。


「お陰で休ませて頂きましたので大丈夫です。ですのでご心配なく」


ココは微笑みながら言った。


「初日からこの様に休憩時間を頂くのも申し訳ありませんのでこれで失礼しますね」


ココは微笑みながら綺麗なお辞儀をしながら言った。


「あぁ、わかった」


ギルバートが呆れた表情で言った。


ココはギルバートの言葉を聞くと笑みを浮かべながら嬉しそうに団長室を後にしたのだった。


「ちょっと、どうして行かせたの?!動いて傷口が開いたりしたらどうするわけ?!」


コリシはココが出ていくと困惑した表情で言った。


「はぁぁ。どうせ止めたところで彼女は言うことを聞かないと思ったからだ。もし動いて傷口が開いて悪化したとしても令嬢自身のせいなのだからそこで騒がれたとしてもこちらはノータッチでいればいいだけだ。我々は彼女に休むようにと止めたのだからな」


ギルバートはため息混じりに呆れた表情で言った。


「どうもあの令嬢が何を考えているのか理解できない。言い寄ってくる令嬢にも疲れるが何を考えているか分からないあの令嬢には疲れるというより振り回されている気分だ」


ギルバートは更に続けて言った。


「確かにウィリアム子爵令嬢は僕たちが止めたところで無意味そうな感じはあるね。首の傷すら本人はあまり気にしていなさそうだったしね。普通の令嬢なら気を失うか泣き叫んで騒ぐかだろうにね。本当に怪我をしてても仕事はできるって雰囲気だったからね」


コリシは困った表情で言った。


「まさか冷血公爵と恐れられているギルバートが初対面の子爵令嬢に振り回されるなんてね」


コリシがクスッと笑みをこぼして言った。


「笑うこところじゃないだろう」


ギルバートはコリシを睨みつけて言った。


「ごめんごめん。これまでなかった状況だからさ」


コリシは困り笑みを浮かべて言った。


「あんなに綺麗な容姿を持ってて保身の為にそれをあえて隠してるし、ギルバートを見ても怖がらず平然としてるし躊躇なく危険を顧みず人を助けるし剣を向けられても動じず怪我を負っても冷静で仕事をしようとするし家族に謝罪をしたいと言えばやめて欲しいと懇願するしでまだ会って数時間しか経ってないのにこれまで経験したことない経験をしたってある意味すごいよね」


コリシはココの行動を改めて口にすると苦笑いを浮かべていた。


「子爵への謝罪の件は納得はしてないが子爵令嬢とは上司と部下でそれ以下でもそれ以上でもないからとにかくやることさえやってくれたらそれでいいさ」


ギルバートは呆れた表情で言った。


(もう今日のように振り回されるのはごめんだ)


ギルバートは不満気にそんな事を考えていた。


「今はとにかく殿下が極秘任務から数日ほどで帰還されるから出迎えの準備をして殿下からの報告次第でぐに動けるようにしておかないといけないからな」


ギルバートが眉間にしわを寄せながら言った。


「そうだね。今回の任務は想像以上に厄介そうだからね」


コリシも眉間にしわを寄せながら言った。


「あ、殿下が戻られたらウィリアム子爵令嬢の事を殿下にも報告しとかないといけないよね」


コリシが思い出したように言った。


「そうだな。雑用係として働いてもらうようになった事と先程の件についても報告はしておかないといけないな。すでに問題が山積みだというのに令嬢の件まで報告しなければならないと思うと気が重いな」


ギルバートはあからさまに嫌そうな表情で言った。


「まぁこればかりは仕方ないよ」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「一先ずウィリアム子爵令嬢の働きぶりを覗きつつ団員達に令嬢の容姿についての箝口令を出しに行こう」


コリシが困り笑みを浮かべて言った。


「そうだな。令嬢と約束した以上約束は守らなければいけないからな」


ギルバートは面倒臭そうな表情で言った。


そして、ギルバートとコリシは団長室を後にしてココの様子を見に行ったのだった。


この時のギルバートとコリシはまさかこの先もココと深く関わる事になるなど思ってもみなかったのだった…




ギルバートとコリシが団長室を後にしたその頃ココは武器庫の掃除を終えて食堂で団員達の昼食の準備に取り掛かっていた。


(何だかこの感じ懐かしいなぁ)


ココは手際よく準備をしながらそんな事を考えていた。


(前世ではよくおじいちゃんの家でおばあちゃんやお母さんと一緒に組員達の食べる食事を作る手伝いしてたなぁ。組員は下っ端さんを含めたら結構いたから量も多くて大変だったけど作り甲斐があったんだよね)


ココは前世での事を思い出しながらそんな事を考えていた。


(ここの騎士さん達も沢山食べるんだろうね。食材の量を見たらそうだなって一目でわかるもんね)


ココは調理場にある食材を見てそんな事を考えていた。


(たださぁいくら何でも食材が偏りすぎじゃない?食材見る限り肉が多めで魚とか野菜とか乳製品とかが少なすぎるんだよね。体力をつけるならそりぁ肉がいいのはわかるけど偏りすぎなんだよね)


ココは困った表情でそんな事を考えていた。


(これじゃぁただ肉を焼いてちょっと野菜添えて食べてるだけじゃないの?)


ココは更に困った表情でそんな事を考えていた。


(ピラティスを始めてから食材選びの大切さも学んだからかどうもここの食事管理が気になっちゃうよ)


ココは更にそんな事を考えていた。



(筋肉つけるのも筋肉の疲労回復も肉がいるって発想は間違いではないけどただただ食べればいいってわけじゃないもんね。私がここにいる間だけでも食事管理はちゃんとしてあげたいなぁ)


ココはそんな事を考えていた。


そして…


「よし、一先ずはここにある食材で栄養バランスのいい食事を作ってあげましょう」


ココは気合いのこもった笑みを浮かべて言った。


そして、ココはそこにあった食材を見てメニューを決めると手慣れた手つきで素早く料理を始めた。


その様子を食堂の外から覗いていた人物がいた。


ギルバートとコリシだった。


「ねぇ?ギルバート。ここに来る前に見た洗濯物の干し方もだけど今僕たちが見ている彼女は本当に貴族の令嬢なの?」


コリシは信じられないという表情を浮かべて小声で言った。


「それはそうだろう」


ギルバートも驚愕した表情を浮かべて小声で言った。


「貴族の令嬢ってあんなに手慣れた感じで手際よく料理できるものなの?!あれはどう見ても厨房で料理担当として働けるレベルだよ?!」


コリシは表情を変えず小声で言った。


「ウィリアム子爵家は家計状況があまりよくないからではないのか?」


ギルバートが小声で言った。


「それにしてもだよ?!」


コリシが小声で言った。


(いや、ありえないでしょ?下手したらうちの屋敷のメイド達より洗濯物の干し方が丁寧だし料理長も舌を巻くレベルだよ?!本当にウィリアム子爵令嬢には驚かされてばかりだよ)


コリシはそんな事を考えていた。


(確かに洗濯の干し方を見てもだがいくら家計が好ましくないとはいえあれほどまでに手慣れているものなのか?!もはやあの手慣れ方は貴族令嬢というよりメイド達の手つきだな)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「ちょっと見なよ。もう器に盛りつけしてるんだけど?もう作り終えたわけ?!」


コリシが驚きを隠せず小声で言った。


「そのようだが」


ギルバートも驚きを隠せず小声で言った。


「よし!完成したわ。名付けて栄養満点モリモリスタミナ丼よ」


ココは笑顔で出来上がった料理を見て言った。


(ネーミングセンスのなさったら)


ココは自分で言っておいて苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。


(料理が完成したのはいいけど昼食って何時からなんだろう。コリシに時間聞くの忘れてた)


ココは困った表情でそんな事を考えていた。


(とりあえず昼食が出来たことだけでも誰かしらに伝えてたら大丈夫かなぁ。前世みたく昼休憩は何時から何時までとか決まってらいいんだけどなぁ)


ココはそんな事を考えていた。


(さっきギルバートが騎士様達には打ち込みをやれって言ってたし稽古場に行けば皆いるよね?とりあえず稽古場に行ってみよう)


ココは小さく頷きながらそんな事を考えていた。


そして、ココは足早に食堂を後にして稽古場へ向かった。


「危なかったね」


ココがその場から居なくなるのを見計らって柱付近に隠れていたコリシが焦りながら言った。


「何故隠れる必要があるんだ?」


ギルバートが不満気に言った。


「え?いや、だってこっそり盗み見してたわけだし何か後ろめたさがあったというかね」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「別に俺たちは上官であって尚且つウィリアム子爵令嬢の働きぶりを見ていたとしてもやましくも何ともらいだろう」


ギルバートは呆れた表情で言った。


「あぁ確かにそう言われるとそうだね。でも、何かウィリアム子爵令嬢はこれまでの令嬢達と違うからかついね」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「まったく」


ギルバートは呆れた表情で言った。


「それよりウィリアム子爵令嬢は団員達のところに向かったんじゃない?きっと昼食の準備ができたからそれを伝えに行ったんじゃないの?そういえば僕、令嬢に団員達の昼食の時間を教え忘れた気がするんだよね。だから彼女時間がわからなくて聞きに行ったんじゃないかな」


コリシが戸惑いつつ言った。


「まったく何やってるんだ」


ギルバートが呆れた表情で言った。


「ごめんごめん。これまでの令嬢達は説明したところで聞きもしてなかったからさ」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「一先ず俺たちも団員達のところへ行こう。ウィリアム子爵令嬢に対する箝口令も出さなければならないしな」


ギルバートが言った。


「そうだね」


コリシは頷きながら言った。


そして、ギルバートとコリシはココの後を追ったのだった。


その頃、ココは一足先に稽古場の近くまでやってきていた。


稽古場はもう見えているというのにココはその場で立ち止まり稽古場で打ち込みをしている団員達をじっと見つめていた。


(あの騎士さん体幹が左に寄りすぎてるよ。その横の騎士さんは肩甲骨がガチガチになってるから打ち込む時にかなり肩と腕に力が入りすぎて肩と腕に負担がかかってるわ)


ココは打ち込みをする団員達を見て真剣な表情でそんな事を考えていた。


(奥の騎士さんは反り腰気味だから腰に負担がかなりかかってるはずだから大量の打ち込みをすると腰を痛めてしまうわ。その近くの騎士さんは骨盤の歪みが酷そうだし。あの騎士さんは、、、あ、あっちの騎士はんも、、)


ココは段々とやきもきした表情になりそんな事を考えていた。


(あぁ〜そんな体勢じゃダメだよ。体に負担ばかりかかって体痛めちゃうよ〜)


ココは更にそんな事を考えていた。


(ピラティスを教えてあげたすぎる、、)


ココはやきもきしたままそんな事を考えていた。


その時…


「ウィリアム子爵令嬢」


後ろからギルバートがココへ声をかけた。


しかし、ココはギルバートの声が聞こえない程団員達の動きを見ていた。


「おい、聞いているのか?!」


反応がないココにギルバートが不機嫌に言った。


「え?あ、団長?!」


ココは驚きハッとなり言った。


「呼んだのに聞こえなかったのか?!」


ギルバートは不機嫌なまま言った。


「申し訳ありません。少し考え事をしていまして」


ココは戸惑いながら言った。


(いけない。騎士様たちを見てたらついピラティスの事を考えてしまってたわ)


ココはそんな事を考えていた。


「ここに突っ立って何をしているんだ?!」


ギルバートは眉間にしわを寄せながら言った。


「昼食を作ったのですが騎士様方の昼食時間を聞きそびれてしまっていたのですが一応昼食ができている事をお伝えしようと思いまして稽古場まで足を運ぶ途中だったのです」


ココが言った。


(やはりそうだったか)


ギルバートがココの言葉を聞きそんな事を考えていた。


「俺とコリシ含め団員達の昼休憩は12時から1時間だ。その間に皆食堂で食事も済ませている」


ギルバートが無愛想に言った。


「そうなのですね。教えて頂いてありがとうございます」


ココが優しく微笑みながら言った。


(この世界でも昼休憩の時間帯とから前世と変わらないんだね。分かりやすくて助かるね)


ココはそんな事を考えていた。


「明日からはその時間に合わせて昼食を作るように気をつけますね」


ココは微笑みながら言った。


(今日は早めに作りすぎちゃった感じだよね。さっき時計みたら11時半すぎだったし)


ココはそんな事を考えていた。


「あぁ、そうしてくれ」


ギルバートは淡々と言った。


(この令嬢は不機嫌な相手に対してもこうも平然と笑顔で応えれるんだ?)


ギルバートはココの表情を見て意味がわからないといわんばかりの表情でそんな事を考えていた。


「今日は少し早め作ってしまったのですがどうしましょうか?」


ココが困った表情で言った。


「これから団員達へ箝口令を出すつもりだから箝口令を出し次第今日は少し早めに昼休憩に入るようにする。食事が冷めてしまっては食欲も失せるからな」


ギルバートは面倒臭そうな表情で言った。


「ありがとうございます。団長は優しいのですね」


ココが優しい笑みを浮かべて言った。


(ギルバートは冷血公爵って言われてるけど案外優しいとこあるよね。顔はずっと不機嫌そうだけど。でも、本当に冷たかったら今も時間厳守だーとか箝口令なんて私の勝手な申し出とかも受け入れてくれるはずないもんね)


ココはクスッと笑いながらそんな事を考えていた。


「なっ、、」


ギルバートがあまりにも予想外なココの言葉に驚愕して声を漏らした。


「プッ」


コリシは必須に笑いを堪えていたがつい声が漏れた。


(何を言い出すんだ?!俺が優しいだと?!どこをどうとってそういう解釈になるんだ?!)


ギルバートが困惑気味にそんな事を考えていた。


「と、とにかく後のことは我々に任せてウィリアム子爵令嬢はもう帰れ」


ギルバートが一瞬戸惑いながらもすぐにぶっきらぼうに言った。


「え?」


ココは戸惑った表情で言った。


「何をそんなに驚くんだ?元々初日は午前までの勤務だと手紙に書いてあっただろう」


ギルバートが淡々と言った。


「あはは。そうでしたね」


ココは笑って誤魔化すように言った。


(え?そうだっけ?"悪ハピ"の内容を知ったしココの騎士団の仕事が決まるのも知ってたからちゃんと手紙読んでなかったんだよね。ちゃんと読んどけば良かったなぁ)


ココは内心困った表情でそんな事を考えていた。


「では、今日はこれで失礼しますね」


ココは笑みを浮かべて言った。


「今日は初日から色々とお騒がせして申し訳ありませんでした。明日からまた頑張りますのでよろしくお願いします」


ココが言った。


「あぁ」


ギルバートは淡々と言った。


「こちらこそ怪我をさせてしまってごめんね。明日からもよろしくね」


コリシが困り笑みを浮かべて言った。


「はい」


ココは優しく微笑み言った。


「では、失礼します」


ココが綺麗なお辞儀をしながら言うとその場を後にした。


「何かまだ今日が半日しか経ってないのに目まぐるしい時間だったね」


コリシが苦笑いを浮かべて言った。


「あぁ」


ギルバートはブスッとした表情で言った。


「でも、ギルバートの事を優しいっていう人をこの目で見れて何だか不思議な気分だよ」


コリシはクスッと笑いながら言った。


「ギルバートとは小さい頃からの付き合いだけどギルバートに面と向かって優しいなんていう人見たことなかったからね」


コリシは更にクスッと笑いながら言った。


「何を面白がってるんだ」


ギルバートはコリシをギロリと睨みつけて不満気に言った。


「面白いでしょう」


コリシが笑いながら言った。


「もしかしたらウィリアム子爵令嬢がギルバートの運命の相手だったりしてね」


コリシは面白おかしく言った。


「何を戯けたことを言ってるんだ?お前も団員達同様打ち込みが必要なんじゃないのか?」


ギルバートは目を鋭く細めて言った。


「勘弁してくれよ」


コリシは苦笑いを浮かべて言った。


「でも、この半日だけでウィリアム子爵令嬢がこれまでの令嬢達みたいに僕やギルバート目当てじゃなく本当に雑用係として来たってことがすでに判ったんじゃない?」


コリシがやれやれといった表情で言った。


「はぁぁ。あぁ確かにウィリアム子爵令嬢がただ雑用係としてやってきたのは本当のようだな」


ギルバートはバツの悪そうな表情でボソっと言った。


(半日の令嬢の行動からして疑う余地はなくなったのは確かだからな)


ギルバートはそんな事を考えていた。


「まぁどこまで続くかわからんがな」


ギルバートはブスッとした表情で言った。


「騎士団の為にもなるべく働いてくれると助かるけどね」


コリシが困った表情で言った。


「そんな事より早く団員達へ箝口令を下しに行くぞ」


ギルバートが淡々と言った。


「そうだったね」


コリシは慌てて言った。


そして、ギルバートとコリシは団員達を集めてココの容姿について箝口令を出したのだった。

箝口令を聞いた団員達は驚いていたが箝口令を出された以上ココの容姿については言いふらす事はできないので皆は意味がわからないという表情を浮かべたまま令に従ったのだった。



その頃…

ココは帰りの馬車の中に居た。

驚く事にココが出口に向かうとイマーンがすでに待機していたのだった。

ココは仕事が午前までということをイマーンに伝えてなかったのでイマーンが迎えにくる時間までどうしようかと悩んでいたのでとても驚いた。

どうやらイマーンは事前にアイシャから仕事が終わる時間を聞いていたようだった。

ココ以外の家族はきちんと騎士団からの手紙に目を通していたのだった。


「本当にうちの家族は抜け目がないなぁ」


ココは馬車の中で嬉しそうに言った。


「だけど、変装がバレた事はともかく首の怪我については皆大変な状態になるよね。とりあえずジョージを助けた際に自分で怪我を負ったていにして話すけどそれでも私が怪我を負った事で騎士団の印象は更に悪くなるよね」


ココは困った表情でそんな事を考えていた。


「どうにかお父さん達を鎮めようとは思うけど初日から予想外な展開がありすぎてさすがにここにきてどっと疲れた気がするなぁ」


ココはその場に横になりながら言った。


「まさかあんな形でジョージと会うことになるなんて思ってもみなかったもんね。でも、"悪ハピ"の原作通り優しい性格な人だったなぁ。猫を助ける為に迷いなく池に飛び込むなんてなかなかできないもんね」


ココはジョージの事を思い出しながらそんな事を考えていた。


「でも、のちに命を落としてしまうんだもんね」


ココは複雑な表情で言った。


「"悪ハピ"の内容を知ってるだけに実際にジョージと会ったら何だから切ない気持ちになっちゃうなぁ」


ココは窓の外をぼんやり眺めながら言った。


「あ、それはそうと騎士団の騎士さん達は色々と体の動きに欠点が沢山あったよね。いくら日頃から鍛えているからとはいえ基本的な体幹が鍛えきれてない気がするんだよね。アウターばっかり鍛えてインナーは鍛えきれてない感じがしたなぁ」


ココはハッと思い出したように言った。


「この世界には当たり前だけどピラティスとかヨガなんてものはないからただ鍛えて筋肉をつけてアウターを強くするだけって感じそうだもんね。それも騎士として戦うには必要な事だけどアウターだけつけても怪我のリスクが上がるだけだもんね」


ココは困った表情で言った。


「ピラティスを教えたらもっと実力伸びると思うけど教える事なんて到底無理だもんね」


ココは更に言った。


「騎士さんたちの打ち込みの姿見なかったら気になることとかなかったんだろうけど見てしまったから気になって仕方ないなぁ」


ココは更に言った。


「ギルバートにピラティス教えてあげてもいいですか?なんて言えるわけもないしね」


ココは苦笑いを浮かべて言った。


「う〜ん、、どうしたものかなぁ」


ココは悩みながら言った。


ひょんなことからココのピラティス魂が騒ぎ始めたのだった……

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