1レッスン目◇巷で流行りの異世界転生をしたのでこの世界で平凡な生活を目指します
新連載です✎
お読み頂けたら幸いです。
この世には、時に本当に想像もしていない出来事がある日突然起きるものです。
このお話はそんな経験をした一人の女の子の話です。
※
「一体、何をどこでどう間違えたのかしら。私はただ平凡で平和な暮らしがしたかっただけなのに、、」
この時の私はまさか自分が気づかぬうちに自分の周りで起きているさまざまな変化に気づきもしなかった…
※
皆さんこんにちは。
まずは私の事を軽く説明させてもらいますね。
私の名前はココ・ウィリアム17歳です。
ここサヴィア帝国のウィリアム子爵家の長女です。
父でウィリアム子爵のザイド。
母で子爵夫人のアイシャ。
兄で後継者のビル。
そして、私の4人家族です。
一見、何の変哲もないしがない貴族の端くれですが私たち家族全員転生者なのです。
それも前世で人気だった漫画。
【悪女にハッピーエンドは似合わない】通称・悪ハピ
の世界に家族揃って転生したのです。
最初に転生した際は見知らぬ世界に戸惑いを隠せなかったけれど実は家族全員が前世で死んですぐ前世の記憶をそのまま持ってこの世界に転生した事を知りました。
家族全員が転生して自分一人じゃないという安心感がどれだけ私を安堵させたことか。
私は前世ではピラティスインストラクターとして働いていました。
興味本位で始めたピラティスにいつの間にかどっぷりハマってしまい気づけばインストラクターの資格を取り充実したインストラクター生活を送っていました。
そして、インストラクターを始めて数年経ち念願だった自分のスタジオを開くことになったのです。
私がスタジオをオープンするということで家族がお祝いにと家族旅行を提案してくれて旅行に行ったのですが悲しくもその旅行の帰りに事故に巻き込まれてしまったのです。
その事故で家族全員が命を落としたのです。
せっかくスタジオをオープンする事になったのにと意識が朦朧とする中で思いながら目を閉じて次に目を開けた時にココとして転生していました。
家族も私同様に事故に遭って命を落として次に目を開けるとそれぞれウィリアム子爵家の一員に転生していたようでした。
悪ハピの世界に転生したことに気づいたのは私がココの顔を鏡で見た時でした。
前世で死ぬ少し前まで悪ハピを読んでいた私は最初に自分の顔を見た時にすぐに気づきました。
家族全員がウィリアム子爵家に転生した事をすぐに家族に説明しました。
しかし、悪ハピに出てくるココはいわゆるモブと呼ばれるエキストラ的存在だということ。
下手をすればモブ以下かもしれません。
その理由としてココの情報はほぼないに等しいということ。
ココの生家であるウィリアム子爵家の人々は漫画には一切出てこなかったこと。
唯一の情報はココが悪ハピの悪役令嬢であるジュリアンの想い人が働く騎士団で働いているとこいう事だけでした。
ココや子爵家の情報がほぼないに等しいので今後この世界でどう生活していくかを子爵家の状況を確認しながら家族で話し合いました。
話し合った結果…
ウィリアム子爵家は貴族は貴族だけど下級も下級のようでした。
経済的には不安定ではないけれど安定はしていないようでした。
それもありココが騎士団の求人募集に応募したようでした。
悪ハピでココが描かれている場面ではすでにココが騎士団で働いていました。
しかし、今の段階では求人募集へ応募して返事を待っている段階のようでした。
すでに悪ハピでココが騎士団で働く事を知っていたのでココである私が働く前提で今後どうするかを更に話し合いました。
その結果…
家族は私を野獣みたいな男だらけのむさ苦しい場所で働かせる訳にはいかないので自分達がウィリアム子爵家を豊かにしてココをすぐに騎士団から辞めさせるということになりました。
家族はウィリアム子爵家の生活を豊かにできるという絶対的な自信があったのです。
そして、絶対に私を騎士団から辞めさせる自信もありました。
何故ならば、まず一つは前世で両親と兄は会社経営をしていました。
それも鳳財閥という一部上場企業でした。
父は建築士の資格を持っていました。
母は装飾、美容関係の資格を持っていました。
兄は工芸の高専卒で建築デザインやインテリアデザインを学びその関係の資格を持っていました。
両親や兄は周りからも一目置かれる程の存在でした
その理由は一部上場企業を経営していて尚且つハイスペックだからが理由ではありません。
一番の理由は…
父の実家は名の知れた極道一家。
母の実家も名の知れた極道一家。
兄はそんな極道を祖父母に持ち尚且つ有名な暴走族の総長でした。
両親の実家が極道な事を知っているのは一部の人間だけだったけれどハイスペック+極道関係者+暴走族の元総長だというだけで十分に一目置かれる理由になっていました。
前世がそんなだった両親と兄なので悪ハピの世界の安定のないしがない子爵家でも十二分に立て直せると自信があったのです。
前世で家族をより近くで見ていた私はその事を一番よく知っていたので家族の自信も頷けました。
そんな家族の元に生まれた私はよく周りから家族がそんなにハイスペックなら劣等感を抱かないのか?
と聞かれる事が多々ありましたがそんな感情は一切ありませんでした。
何故なら家族は私が生まれた瞬間からそんな感情なんて抱く暇がない程に沢山の愛情を注がれて育ったからです。
むしろ、私は家族を尊敬していたし大好きな自慢の家族でした。
そんな私の家族がココである私を絶対に騎士団から辞めさせるという自信も前世の行動を知っていれば納得できるのです。
何故ならば…
前世で私は家族に愛情をたっぷりと注がれて育ちました。
先程、劣等感を抱く暇すらないと言いましたがそんな暇すらないほど溺愛されていました。
それも溺愛具合が半端ではありませんでした。
周りも驚く程の溺愛具合でした。
溺愛は私が生まれた瞬間から始まり死ぬ間際までブレる事なく続きました。
そんな私を溺愛していた家族が男だらけの場所で私が働くなど許しがたい事なのです。
前世でも私に近づく男性は両親や兄によって排除されてました。
そんなこんだで鳳一家改めウィリアム子爵家は転生先のこの世界で第二の人生として生きていくことにしたのです。
そして、私はモブ以下の存在に転生したということもあり前世ではなかやか難しかった平凡な平和な生活をこの世界ですると決めたのです。
前世ではやはり親族に極道がいるとなかなか普通に〜とか平凡に〜などとは遠い生活を送っていたので平凡な生活に憧れがあったのです。
極道といっても両祖父母含め親戚なども怖い人達ではなく人情味のある人達ばかりでしたけどまず極道が親族にいるというだけで平凡ではなかったのでそういう面を含めてもこの世界で本当に普通の平凡な生活をしたいと思います。
長くなってしまいましたが私の身の上のお話の説明はこの辺りで終わらせて頂きますね。
※
「ココー。騎士団の求人募集の結果が届いたぞー」
キッチンに飲み物を飲みに来たビルが庭にいるココに向かって言った。
「はーい」
庭で軽く身体を動かしていたココは軽く言った。
そして、ココは汗を拭きながらキッチンへやってきた。
「ほら、これが手紙だよ」
ビルがそう言いながらココに手紙を手渡した。
「お兄ちゃんありがとう」
ココはビルから手紙を受け取りながら言った。
そして、手紙の封を開けて中身を取り出した。
"ウィリアム子爵家
ココ・ウィリアムをブラック騎士団の雑用係に任命する。
2日後の午前9時に同封した許可証を持参しブラック騎士団長室に集合せよ"
手紙の中にはそう記載された手紙と許可証が同封されていた。
「雑用係だぁ?!もっと言い方があるだろうに」
ビルがココの後ろから手紙の内容を盗み見しなが不機嫌そうに言った。
「仕方ないよお兄ちゃん。この世界ではそれが普通なんだから。いくら貴族だろうが平民も才能が認められたら入団可能なくらいだし関係なく雑用だってやらされるよ。皇太子殿下直属の騎士団なんだし尚更だよ。でも、現代でいうところの家政婦?清掃員?みたいな仕事内容だと思うから問題ないよ」
ココがビルの表情を見て苦笑いしながら言った。
「転生者である私なら貴族という肩書きだとしても掃除だって料理だって問題なくできるわけだしね」
ココがビルをなだめるように言った。
「そうだとしても言い方が気に食わないんだよな。俺たちのココに野獣みたいな男どもにいいようにこき使われると思うと尚更腹が立つしな」
ビルは不機嫌な表情のまま言った。
「まぁまぁ落ち着いてよ。お兄ちゃん達がすぐに辞めさせてくれるんでしょう?」
ココはくすくす笑いながら言った。
「ああ、もちろんだとも。俺と父さん達ですぐに騎士団勤務なんて終わらせてやるさ」
ビルは自信満々に笑いながら言った。
(良かった。お兄ちゃんの機嫌がすぐによくなって)
ココはビルを見て安心した表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「ただいま帰ったぞ」
そこへザイドとアイシャが帰ってきた。
「あ、お父さんお母さんおかえりなさい」
ココが笑顔で言った。
「おかえり〜」
ビルも言った。
「あぁ、ただいま」
ザイドは優しい表情でココの頭を撫でながら言った。
「ただいまココ」
アイシャもココに優しい笑みを浮かべて言った。
「お父さんお母さん今日もお疲れ様」
ココは微笑みながら言った。
「ああ、ありがとうココ」
「ありがとうココ」
ザイドとアイシャは嬉しそうに微笑みながら言った。
「ビル、今日も特に変わったことはなかったか?」
ザイドが言った。
「ん〜あぁ」
ビルは少し考えると頷きながら言った。
「あ、いやあったな」
ビルはハッとなり言った。
「何だと?!何があった?!」
ザイドが眉をひそめて言った。
「父さん達が帰ってくる少し前に騎士団から手紙がきたんだよ。今さっきその手紙を読んでてたとこだったんだ」
ビルがココの持ってる手紙を指差しながら言った。
「騎士団からの手紙?!求人募集の結果か?」
ザイドが目を細めて言った。
「ああ」
ビルが不機嫌そうに頷きながら言った。
「ココ、父さん達に騎士団から来た手紙を見せてやれよ」
ビルが不機嫌そうなまま言った。
「うん」
ココは少し困った表情で言うと持っていた手紙をザイドへ手渡した。
そして、ココから手紙を手渡されたザイドはアイシャと共に手紙を読んだ。
「雑用係だと?」
ザイドが手紙を読み眉をひそめて呟いた。
「ココが雑用係ですって?」
アイシャも同じく眉をひそめて呟いた。
(お父さん達もお兄ちゃんと同じ反応するんだろうとは思ってたけどやっぱりだわ)
ココはザイド達を見て苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「まったくココに男どもの雑用をやらせるなどこいつら命が惜しくないようだな」
ザイドが手紙をグシャリと握りしめ言った。
「そうみたいね」
アイシャも頷きながら表情を歪めて言った。
「お父さんもお母さん、私は雑用くらい卒なくこなせるから大丈夫よ。前世では当たり前のように皆やってたことなわけだし」
ココはザイド達の会話を聞いて慌てて言った。
(お兄ちゃんもだけどお父さんもお母さんも私を凄く大切にしてくれるけど大切さ故になかなか恐ろしい事を平気で言うから聞いててヒヤヒヤするんだよね)
ココは困った表情でそんな事を考えていた。
「それにお兄ちゃんにもさっき言ったんだけど私が騎士団の雑用係として働いたってすぐに辞めさせてくれるんでしょう?」
ココは慌ててザイドとアイシャに優しく微笑みながら言った。
「もちろんだとも。どこのどいつかわからないような奴らのところに1日たりともココを居させたくないからな」
ザイドは自信満々に言った。
「ザイドの言う通りよ。剣ばっかり握って脳内まで筋肉でできてそうな奴らのところに私たちの大切なココを置いておけるわけないからね」
アイシャも頷きながら同じように言った。
「一先ずは"悪ハピ"の流れの通りに騎士団で働く事にはなるだろうが漫画のようにココをずっと居させる事なんてしねぇから安心するといいさ」
ビルが自信満々の笑みを浮かべて言った。
「うん。騎士団を辞めたらウィリアム子爵家の領地でお父さんやお母さん、お兄ちゃんのお仕事を手伝わせてね」
ココは嬉しそうに笑顔で言った。
(そして、時々今日みたいに庭でピラティスしたりしてほのぼのと平凡な生活を送るんだぁ。後は領民に友達が欲しいなぁ)
ココは嬉しそうにそんな事を考えていた。
「あぁ、もちろんだとも。家族皆で仕事をして楽しみながら尚且つウィリアム子爵家の領地を住みやすい場所に変えていこう」
ザイドは笑顔で言った。
「そうね。こうして今世でも家族皆で過ごせるんだから前世より長生きを目標に楽しく過ごしましょう」
アイシャも笑顔で言った。
「領地に住んでる領民との距離も縮まってきたことだし2度目の人生、1度目より楽しまなきゃ損だしな」
ビルも笑顔で言った。
「そうだよ。間違いないよ」
ココも笑顔で言った。
ココ達一家が"悪ハピ"の世界に転生して2ヶ月が経っていた。
この2ヶ月の間でザイド、アイシャ、ビルは前世の知識を生かしてウィリアム子爵家の領地を随分改良した上に領民達とのコミュニケーションも取れていたのだった。
「あ、騎士団に行くのは明後日なのよね?」
アイシャがハッと何かを思い出したように言った。
「うん」
ココがそんなアイシャに少し驚きながら頷き言った。
「どうした?何かあるのか?」
ザイドが眉をひそめて言った。
「いやね、ココを騎士団へ向かわせる時は身なりを変装させる必要があると思ってね」
アイシャは目を細めて言った。
アイシャがそう言うとザイドとビルがココを見た。
「そうだな。その必要が十二分にあるな」
ザイドがココを観ながら目を細めて言った。
「ああ」
ビルは頷きながら目を細めて言った。
「わざわざどうして?」
ココが少し戸惑いながら言った。
(まさか、、)
ココは何かを思い出したようにそんな事を考えていた。
「そんなのこんな愛らしいのに美しい容姿だけでなく性格も文句無しの愛らしさのココの魅力を野獣共に見せない為よ」
アイシャが勢いよく言った。
(あぁ、やっぱりか)
ココは内心苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
ココはせれなだった時も同じような状況におかれた事が多々あったのだ。
せれなは容姿がとても整っていた。
せれなだけではなく家族全員が美形という言葉がよく似合う程の容姿をしていた。
その中でもせれなは両親や兄とは違いふんわり系統の美人だった。
両親と兄はどちらかといえば近寄り難いオーラを放つ美形だったので容姿が美しくても周りは一歩引いていた。
しかし、両親と兄とは違う系統だったせれなは周りから、、特に男性から近寄られる事が小さい頃あり心配と怒りで我慢できなかった両親達はせれなを小学生に入る頃にはあえて地味に変装させたのだった。
そして、ココもまた容姿が良かった。
正確にはよくなったのだった。
せれながココに転生した事をすぐに気づいたのはココの見た目にあった。
ココはエキストラに相応しい見た目だった。
貴族令嬢とは思えないほど目が隠れる程の前髪に一つにまとめた髪、小麦色の肌にぽっちゃり体型だったのだ。
ココがそうなのだから家族も体型はぽっちゃりだった。
しかし、筋トレが趣味だったザイドとビルに美容関係の資格を持っているアイシャとピラティスインストラクターだったココ。
そんな4人が前世の生活スタイルをそのままやっていた結果…
ぽっちゃり体験だった4人は引き締まった体型に。
全身のケアを毎日していることで肌にも髪にも艶が出た。
その結果…
ウィリアム子爵家はエキストラとは思えない程の美形一家になってしまったのだ。
本来、ウィリアム子爵家は生活が安定していなかった上にマイペースな家族だったようで自分達の身なりにあまり気を使っていたないようだった。
その生活スタイルのせいでだらけた見た目だったのだ。
言えば元々はエキストラとは思えない程の容姿の持ち主一家だったというわけだ。
そんなこんなですっかり前世同様ふんわり美女となったココをその姿のまま騎士団へ向かわせるなどザイド達には考えられなかった。
「よし、せれなの時見たくとことん地味に仕上げましょう」
アイシャが指を鳴らし目を輝かせて言った。
「そうしてくれ」
ザイドは満足気に頷きながら言った。
「いくら男だらけだと言っても地味な女に目を光らせる程腐ってねぇだろうしな」
ビルがケロっとした表情で言った。
(確かに地味な女子に近づいてもメリットなんてないんだしその方が楽なのは楽かもしれないよね)
ココはザイド達の会話を聞きそんな事を考えていた。
「でも待てよ。だけど例のあいつみたいな気色悪い奴がこの世界にもいたらどうすんだ?」
ビルが何かを思い出したように表情を歪めて言った。
「あいつってあのクソ野郎のことか?!」
ザイドが表情を歪めて言った。
「気色悪い奴なんてあの男以外いないでしょう」
アイシャが眉間にシワを寄せながら言った。
「もしかしてその男性って椿さんの事?」
ココが苦笑いを浮かべて言った。
「「そうだ」」
「そうよ」
ザイド達が同時に言った。
(やっぱりそうだよね。お父さん達がそんな風に言うっていったら椿さんくらいしかいないもんね)
ココは困った表情でそんな事を考えていた。
椿さん…
椿とは前世で父方の実家と古い付き合いの極道一家の息子にあたる人だった。
歳は兄と同い年でせれなの6歳上だった。
椿とせれなが初めて顔を合わせたのはせれなが小学生の時だった。
せれなが父方の実家に遊びに行った際にたまたま父と共に祖父の家を訪れていた椿と会ったのだった。
椿は一目せれなを見た瞬間から将来はせれなを自分の嫁にすると言い出したのだった。
その発言祖父を含めたその場の人達は凍りついた。
祖父はもちろん一緒にいた両親や兄も椿の発言に対してその場でブチギレた。
いくら古い付き合いだとしてもせれなが関わると家族は引くほどに感情をむき出しにしていたのだ。
結局は私がその場の雰囲気が怖くなり泣き出してしまった事でどうにか大事にはならずに済んだがその日から椿はせれなに執着を見せていた。
椿は見た目は王子様みたいだが中身は腹黒く独占欲が強い人物だった。
私が嫌がる事は決してしなかったけれど両親や兄は椿の存在自体が気に食わなかった。
椿は見た目を地味にして徹底していたそんな私にも関係なく迫りきていたのだった。
その姿を目の当たりにしてきた両親と兄だからこそ"悪ハピ"の世界にも椿みたいな人物がいないか心配していたのだった。
「さすがに大丈夫だと思うけど?前世でも椿さんみたいなタイプはかなり珍しかったでしょ?」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
「珍しいのではなく気色悪いんだよ」
ビルが吐き捨てるように言った。
「あんな奴がこの世界に居ないことを願うしかないな」
ザイドが不機嫌そうに言った。
「ココが勤務する騎士団の団長が椿みたいな奴じゃないといいけどね」
アイシャが不満気に言った。
「それは大丈夫だと思うよ。"悪ハピ"に出てくる主要人物達は悪役令嬢、その令嬢が恋する騎士、騎士団長、副団長、皇太子、ヒロインだけど皆椿さんみたいな人柄や性格じゃなかったよ」
ココが苦笑いを浮かべて言った。
「それならいいけど」
アイシャは不満気なまま言った。
「ところでその主要人物とやらは一体どんな奴らなんだ?」
ビルが不満気に言った。
「どんな人かと聞かれても私もあくまで"悪ハピ"を読んだ読者の1人としての情報しかないけど」
ココは困った表情で言った。
「ブラック騎士団の団長はギルバート・ポラード。ポラード公爵家の当主であり現皇帝の甥にあたる人で冷血公爵というあだ名がついてる人だったかな」
ココは原作を思い出しながら言った。
「コリシ・ペレナ。ペレナ伯爵家の長男で次期当主。団長のギルバートとは違いマイペースだけど臨機応変に対応できるタイプでギルバートとは幼馴染だったかな」
ココは更に頭をフル回転させて言った。
「ジュリアン・レイティ。レイティ侯爵家の長女で"悪ハピ"の主人公。ヒロインも登場するけどあくまで物語の主はジュリアンなの。ジュリアンが悪役令嬢って設定だからヒロインも出てくるんだよ。ジュリアンは文字通り悪役令嬢として世間に知られてるから恋人はおろか友達もいなくて孤高の悪女って陰で言われてるの。だけど実際はただ周りのせいで幸せになれないっていう可哀想な令嬢なんだよね」
ココが更に続けて説明した。
「ジュリアンの想い人である一介の騎士。名前はジョージ。彼は平民の騎士で家計を助ける為にとブラック騎士団へ入団したの。ブラック騎士団は貴族だけじゃなくて平民も試験に合格すれば入団できるから。ジョージは目立つ騎士ではないけど家族思いの優しい青年で悪役令嬢であるジュリアンが困っていたところを助けてあげたのよ。それがきっかけでジュリアンとジョージが知り合ってのちにジュリアンはジョージに恋をするって流れかな」
ココは更に続けて言った。
「ブレア・アビス。アビス伯爵家の一人娘で"悪ハピ"のヒロイン。両親からとても大切に育てられた愛に溢れる伯爵令嬢。元々カメリアンとは接点はなかったけどたまたま変装して帝都の街に出かけていたカメリアンが困っているヒロインを助けた事がきっかけで2人が急接近するの」
ココが更に続けて言った。
「カメリアン・サヴィア。サヴィア帝国の皇太子。帝国中の女性の憧れNo.1の男性なんだって。ギルバートとは従兄弟にあたるんだけどギルバートが冷血と呼ばれてる一方カメリアンは天使な貴公子って呼ばれてるの。容姿は文句無しな上に見るからに優しい微笑みを浮かべているからそう呼ばれてるみたい。性格も温厚でまさに王子様って感じの人だよ。ブレアと急接近した事で政略結婚の相手のジュリアンを差し置いてブレアと恋に落ちるの」
ココが更に説明を続けた。
「"悪ハピ"の主な原作人物設定はこんな感じかな」
ココが言った。
「おい!その団長のギルバートって奴は聞くだけでヤバそうな男じゃないか」
ビルが頭を抱えたながら言った。
「そうだな。副団長のコリシとかいう奴は特に害はなくまともそうだがギルバートとかいう男はまともじゃないぞ。極道の勘がそう言ってんだ。俺たちはだてに極道をごまんと見てきてないからな」
ザイドが眉間にシワを寄せながら言った。
「そうね。ジョージって子は何だかココの男バージョンって感じで好感が持てそうだけどギルバートって男は厄介だわ」
アイシャが目を細めながら言った。
「冷血公爵なんて前世でバズった漫画や小説やアニメではよく出てくるタイプの自分設定だし実際は冷血なんてことないってオチが多かったりするよ?」
ココはほんわかしながら言った。
(実際、"悪ハピ"の話の中でも厳しめの上官って感じそうだったしね)
ココはそんな事を考えていた。
「そんなのこの世界の冷血が本当のクズ冷血である可能性もあるでしょう?!」
アイシャが勢いよく言った。
「そ、そこまではわならないけど」
ココはアイシャの勢いに慌てて言った。
(お母さん顔が怖いよ顔が)
ココはそんな事を考えていた。
「アイシャの言う通りだぞ?!冷血なんてあだ名がつくくらいだぞ?!そんな奴が実は優しくて〜なんてあるわけがない」
ザイドも表情を歪めて言った。
「ココにも冷血にふさわしい態度をとったらどうするつもりだ?!」
ビルが表情を歪めて言った。
「前世で両親が極道の子供で兄が名の知れた暴走族の総長だったんだよ?それで冷血な人を前にして私が腰を抜かしたりすると思う?」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
「確かにそれはそうだな」
ザイドがどこか納得したように小さく頷きながら言った。
「でしょ?それに原作での彼は騎士団の騎士達に厳しいくらいだった印象だし雑用係の私にはほとんど関わる事もないと思うしね」
ココはほんわか言った。
「しかし、本当に何か奴にされたらすぐに俺たちに言うんだぞ?相手が敏腕の騎士団長だろうが関係なく俺たちで海に沈めてやるからな」
ザイドが心配そうに言った。
(本当は死ぬほど心配だが)
ザイドはそんな事を考えていた。
「ハハハ。海には沈めなくてもいいけど本当に辛かったらすぐに言うから」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
(お父さんなら本当にやりかねないからね)
ココはそんな事を考えていた。
「冷血野郎もだが皇太子の野郎も何となくいけ好かない感じがするけどな」
ビルが眉間にシワを寄せながら言った。
「天使の貴公子なんて呼ばれてるのに結局悪役令嬢そっちのけでヒロインと恋仲になるんだろ?そんなの貴公子でも何でもなくただの浮気野郎だろう」
ビルが不満気に言った。
「確かにそうだな」
ザイドは納得した表情で言った。
「浮気男なんてありえないわ」
アイシャが呆れた表情で言った。
「浮気男って、、。でも、何ていうか悪役令嬢ものって悪役令嬢が除け者にされて王子様とヒロインが恋に落ちるって流れがお約束みたいなものだからさ」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
「でも、ヒロインと恋に落ちる事が確定してんならココに近づいたりもしないだろうから逆に安心パターンじゃないか?」
ビルが余裕気な表情になり言った。
「それもそうね」
アイシャが頷きながら言った。
「だが、万が一にもココと接点などできたらすぐに俺たちに言うんだぞ?浮気野郎に変わりはないんだからな」
ザイドが眉をひそめながら言った。
「ハハ。本当に皇太子のカメリアンについては心配ないと思うよ。原作でもココとカメリアン、ブレアは一度も顔を合わせた事なかったはずだから。でも、心強い家族がいるって幸せだね」
ココは優しい笑みを浮かべて言った。
「「ココ、、」」
ココの言葉に3人はジーンとした表情で言った。
「そうだ!ココには俺たちという強い味方がいるんだからな」
ビルはニカッと笑いながら言った。
「うん」
ココは嬉しそうに笑いながら言った。
(お兄ちゃんは本当にいつでもお兄ちゃんだなぁ)
ココはそんな事を考えていた。
「とにかくだ。明後日からは変な奴がいないかを十分に注意しながら適当に仕事すればいいんだぞ?」
ザイドが真剣な表情で言った。
「うん」
ココはくすくす笑いながら言った。
(本当にお父さんはお父さんだよね)
ココはそんな事を考えていた。
「さぁ、一先ず明後日からの事はざっくり決まったし飯にしようぜ」
ビルが体を伸ばしながら言った。
「そうね」
アイシャが頷きながら言った。
「お母さん、私も手伝うよ」
ココが笑顔で言った。
「ええ。ありがとう」
アイシャは嬉しそうに微笑みながら言った。
ウィリアム子爵家はココ達が転生する前から使用人を一人も雇っていないようだった。
ココ達が転生した後も使用人はそのまま雇わず過ごしていた。
ココ達は前世ではウィリアム子爵家よりも貴族らしい財閥一家だったが特に使用人を雇っていなかった。
何度か使用人の中に椿さんが送り込んだ自分が潜入していた事もありその後は一切誰も雇わなくなり自分達の事は自分達でしたいたからだ。
ウィリアム子爵家の屋敷は前世の屋敷より狭いのでより自分達の事は自分達で十分できていた。
その日はいつもと同じようにアイシャとココが作った料理を皆で囲って楽しく食事をした。
ココはこの時間がとても好きだった。
※
そして、あっという間にココが騎士団で働く日がやってきた。
「いい?絶対に素顔がバレないように気をつけるのよ?本当はウォータープルーフ並の化粧品を使いたかったけどこの世界にそれはないし作ろうにも間に合わなかったしね」
アイシャが心配そうに言った。
「うん。大丈夫だよ」
ココは微笑みながら言った。
「1ミリでもココに嫌な思いをさせる奴がいたら帰ってそいつの名前を教えるんだぞ?」
ビルが心配そうに言った。
「うん」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
(言えないけどね)
ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「一刻も早く辞めさせてやるからな」
ザイドは心配そうに言った。
「うん」
ココは困り笑みを浮かべて言った。
「じゃぁ行ってくるね」
ココは笑顔で言った。
「「あぁ」」
「ええ」
ザイド達が心配そうな表情で頷きながら言った。
そして、ココは挨拶を済ませると馬車へ乗り込んだ。
ウィリアム子爵家には元々馬車と呼べる馬車はなかった。
しかし、ザイドとビルがココの為にと持ち前の腕を見せてココが気持ちよく乗れる馬車を作ったのだった。
「では、皇宮までよろしくお願いします」
ココは窓を開けて御者へ伝えた。
「お任せください」
御者が笑顔で言った。
この御者はザイド達が領民の中から選びに選び抜いた女性・イマーンだった。
「さすがお父さんとお兄ちゃんだわ。馬車には乗ったことないけど馬車に乗ってるってわからないくらいお尻とかにほとんど振動こないもんね。車に乗ってる感覚だわ」
ココは驚いた表情で言った。
「本当に感謝しなきゃだわ」
ココが嬉しそうに言った。
(本当にうちの家族はすごいよ)
ココはそんな事を考えていた。
「いよいよ"悪ハピ"のメインのキャラ達に会うんだよね。お父さん達は団長のギルバートに気をつけろって言ってたけど私としては"悪ハピ"の内容を知ってるだけに悪役令嬢であるジュリアンの恋の行方の方が気になっちゃうな」
ココは複雑は表情で言った。
「まぁ、原作でのジュリアンがジョージに出会う頃の話が進む頃には私は騎士団を辞めてるだろうから目の当たりにはしないかもだけど国に住んでるからにはジュリアンと皇太子の政略結婚の話も耳に入るだろうしジョージが亡くなる話も耳に入るもんね。漫画を読んでても切ない気持ちになったストーリーだからいざそれを生で体感するとなると複雑だよね」
ココは複雑な表情で更に言った。
「ジョージが死なずにジュリアンも幸せになる道はないのかなぁ」
ココはふと窓の外を見ながら呟いた。
「まぁでもエキストラ以下の私には関係ない話なのかもね。それに決まったストーリーが変わるなんて小説とかの中の話だもんね」
ココは更に言った。
「一先ずは騎士団で辞めるその日まで精一杯働くとしますか」
ココはフッと笑みを浮かべて言った。
そして、ココはいつの間にか眠っていて目が覚めた頃にはサヴィア帝国の帝都に到着していた。
「わぁ〜漫画で見たまんまだわ」
ココは窓の外を見て驚いた表情で言った。
「やっぱり帝都は賑わってるね」
ココは街の様子を見て言った。
「今度は家族皆で来たいな」
ココは笑顔で言った。
そして、そうこうしているうちに馬車が皇宮へ到着した。
「イマーンさんありがとうございました」
ココは馬車から降りて優しく微笑みながら言った。
「いえいえ」
イマーンは笑顔で言った。
「また帰る時間になったらこちらでお待ちしてますね」
イマーンが笑顔で言った。
「はい。よろしくお願いします」
ココは笑顔で言った。
そして、ココはイマーンと別れて皇宮の門番の騎士の元へ向かった。
「おはようございます。お伺いしたいのですが騎士団の団長室はどこでしょうか?」
ココが騎士の一人に聞いた。
「騎士団へ何用でしょうか?」
騎士が目を細めて疑いの目をして言った。
「本日から騎士団で働かせて頂きますココ・ウィリアムと申します」
ココは優しい笑みを浮かべて許可証を見せながら言った。
「あなたが例の雑用係ですね」
騎士が言った。
「はい」
ココが笑みを浮かべて言った。
(ここにお父さん達がいなくて良かったよ。この騎士さんの一言で無意味な争いが起こるとこだったよ)
ココは内心苦笑いをしてそんな事を考えていた。
「案内しますのでついてきて下さい」
騎士が言った。
「はい。よろしくお願い致します」
ココが微笑みながら言った。
そして、ココは騎士に連れられて騎士団長室へ向かった。
(子爵家の令嬢だというのにえらく地味だな)
騎士はチラりとココを見ながらそんな事を考えていた。
(あの前髪は何だ?顔が半分以上隠れているではないか。あれできちんと前が見えてるのか?それに服装もこれまで来た令嬢達とは違いえらく地味だな。あんなので雑用なんてできるのか?やはりこの令嬢も見た目はおかしいがこれまでの令嬢達と同じ目的なのか?)
騎士は目を細めて更にそんな事を考えていた。
(たとえ本当に雑用係として来たとしても今まで応募してきた令嬢達とは違うタイプだとしてもいつまで続くことやら)
騎士は更にそんな事を考えていた。
(この騎士さんはお父さんやお兄ちゃんに負けてないくらい背が高いのね)
一方のココは騎士をチラりと見てそんな事を考えていた。
(騎士団の皆もこんなに大きいのかなぁ。前世でいうとこのモデル身長だよね)
ココは更にそんな事を考えていた。
(この騎士さんは"悪ハピ"で見たことないから私と同じエキストラみたいな位置づけなんだろうね。それにしてもさっきから私の事チラチラ見てるけどやっぱりこの見た目のせいだよね)
ココはそんな事を考えていた。
「着きました」
その時、騎士が言った。
「こちらですか。案内して下さりありがとうございます。助かりました」
ココは礼儀正しく綺麗な姿勢で優しい表情で言った。
「え?あ、はい」
騎士は少し戸惑い気味に言った。
(俺はただの平民騎士だってのに子爵家の令嬢がこんなに礼儀正しく平民に挨拶するのか?!)
騎士はココの礼儀正しさに驚きそんな事を考えていた。
そして…
コンコンッ
騎士が団長室の扉を叩いた。
「はい」
中から低い男性の声がした。
「本日より勤務する雑用係のご令嬢を連れてまいりました」
騎士が言った。
「そうか。中へ入ってもらえ」
男性が淡々と言った。
(この中にギルバートとコリシがいるのね)
ココはそんな事を考えていた。
「承知しました」
騎士が言った。
「中に団長がいらっしゃるので中へお入り下さい」
騎士が言った。
「わかりました。ありがとうございます」
ココは丁寧に礼をして優しく微笑み言った。
そして…
「失礼致します」
ココはそう言うと扉を開けて中へと入った。
「そなたがウィリアム子爵令嬢か?」
男性が入ってきたココを見て淡々と言った。
その男性こそがブラック騎士団団長のギルバート・ポラードだった。
ギルバートは黒髪に金色の瞳、筋肉質だがスラッとした長身でどこか人を寄せ付けにくいオーラを纏っていた。
すぐそばには副団長のコリシ・ペレナもいた。
コリシは淡いシルバーヘアに水色の瞳、ギルバートに負けぬほどの筋肉がついているが優しい雰囲気があった。
「はい。ココ・ウィリアムと申します」
ココはとても綺麗な礼をして優しい表情で挨拶をした。
ココを見たギルバートとコリシは少し驚いた表情を浮かべた。
(えらく綺麗なお辞儀をする令嬢だな。だが見た目が何ともいえないね)
コリシはココを見て驚いた表情でそんな事を考えていた。
「俺はブラック騎士団の団長でギルバート・ポラードだ」
ギルバートが淡々と言った。
「僕は副団長をしているコリシ・ペレナだ」
コリシは優しい表情で言った。
「本日からよろしくお願い致します」
ココは優しい表情で礼儀正しく言った。
そんなココを見てギルバートとコリシは顔を見合わせて驚いた表情を浮かべた。
(どうしたのかなー?挨拶が何か違ってたのかな)
ココは顔を見合わせるギルバートとコリシを見て困った表情でそんな事を考えていた。
「つかぬことを聞くがそなたは我々の話を聞いたことがないということはないよな?」
ギルバートは目を細めながら言った。
「話?といいますと?」
ココは少し首を傾げて不思議そうに言った。
(話は聞いたことはないけど"悪ハピ"は読んだけど?何か漫画の中で2人の印象に残る話の話題みたいなのってあった?もしかして冷血公爵って呼ばれてること?!)
ココは悩むようにそんな事を考えていた。
「私は騎士団長である前にポラード公爵家の当主でありコリシはペレナ伯爵家の長男で次期当主という事は知っているな?」
ギルバートは淡々と言った。
「はい、存じています。それとお二方の話と何か関係があるのですか?」
ココは??という表情で戸惑いつつ言った。
(そりぁ2人の身分が高いのは漫画"悪ハピ"読んでるから知ってるけどだから何なの?)
ココは意味わからないという表情でそんな事を考えていた。
(この令嬢は本当に我々の話を聞いたことがないというのか?!子爵とはいえ貴族令嬢なのだぞ?!)
ギルバートは困った表情をしているココを見て目を細めながらそんな事を考えていた。
「何だか本当に知らないみたいだから一応話しておくね」
コリシがココの表情を見てクスっと笑いながら言った。
「コリシ」
ギルバートがギロりと睨みながら言った。
「いいじゃないか。僕たちから聞かなくても結局他の奴らから聞く事になるだろうし」
コリシはケロっとした表情で言った。
(チッ。余計なことを)
ギルバートは苛立ちながらそんな事を考えていた。
(別に冷血公爵って呼ばれてる事ならわざわざ話してくれなくても大丈夫なんだけどなぁ)
ギルバートとコリシのやり取りを見ていたココはそんな事を考えていた。
「それでその話っていうのは僕たちは皇室直属の騎士団の団長と副団長をやっている上にギルバートは皇帝陛下の甥である上に公爵で僕は伯爵家だけど将来有望な次期当主なのもあってブラック騎士団の雑用係の求人募集に応募してくれる貴族令嬢達が溢れてるんだよ。だけどその令嬢達は皆僕たちにお近づくのが目的で雑用係としての仕事を一切してくれなくてね。まぁ貴族令嬢がそもそも雑用係なんて出来る訳がないんだけどね。それでも一人くらいはと募集は止めないでいたんだ。だけどその後やっぱり来る令嬢皆目当ては僕たちだったんだ。でも、ブラック騎士団は本当に多忙な騎士団で雑用係は必要なんだ」
コリシは困った表情をしながら説明した。
「だから今回もまた仕方なく求人募集をかけたんだよ。そうしたらこれまで応募してきた令嬢を除いて十数人が応募してきたんだ。ウィリアム子爵令嬢もその中の一人だったんだ」
コリシは困った表情のまま更に続けた。
しかし、ココはコリシの話を聞いてポカンとした表情を浮かべていた。
「え?その表情はどういう心情なわけ?!」
ココの表情を見てコリシが慌て戸惑い言った。
「自分も他の令嬢と同じ理由で応募したからコリシの話に驚き戸惑っているのだろう」
ギルバートは呆れ少し不機嫌そうに言った。
「そうなの?!やっぱり俺たちの話を聞いたことないっていうのも演技だったのか?!」
コリシはギルバートの言葉に驚き言った。
「でも、ギルバート。彼女の見た目を見てみなよ」
コリシは小声でギルバートに耳打ちした。
「見た目など関係なく令嬢達なんて考える事がおなじというわけだ」
ギルバートは小声で言った。
(確かに彼女はこれまでの令嬢と違い着飾るどころか逆に心配になる程に地味だ。そして長い前髪で目元どころか顔の半分が隠れている。しかし、地味だろうが考えている事は他の奴らと変わらないということだ)
ギルバートはココの見た目を見て眉を潜めてそんな事を考えていた。
「あの、お話中申し訳ないのですが一つよろしいでしょうか?」
ココがハッとなり言った。
(コリシさんの話を聞いて思わず呆れちゃった)
ココはそんな事を考えていた。
「何だ?弁解でもするつもりか?」
ギルバートがココを睨見つけながら言った。
「弁解も何も本当に今聞いたお話は聞いたことありませんでした」
ココは冷静に言った。
(だって"悪ハピ"はそもそもジュリアン視点の内容が主だからこの2人のそんな事情まで細かく書かれていなかったから本当に知らないのは知らなかったもんね。全然冷血公爵って呼ばれる話じゃないじゃん)
ココは内心意味がわからないと思いつそんな事を考えていた。
「小癪な事を言うのだな」
ギルバートは不機嫌に言った。
「失礼を承知で言わせて頂くと私がどんな表情をしていたのかを知りませんが私は話の内容を聞いて"何だそんな事か"と思ったのが正直な気持ちです。自分の知らない話ということでどんな内容なのかと身構えしていたのですが緊張して損した気持ちです」
ココは困った表情で言った。
(冷血公爵の話どころかただのモテ自慢話だったなんてね)
ココはそんな事を考えていた。
「何だと?!"何だそんな事か"だ?!」
ギルバートはココを睨らみつけながら言った。
(この令嬢は何を言っているのだ?!我々は令嬢よりも立場が随分上の人間なんだぞ?)
ギルバートは信じられないという表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「ぷっ」
コリシは思わず吹き出した。
「コリシ!!」
ギルバートは睨みながら言った。
「すまない。いや、でもあまりにも予想外すぎる言葉だったからつい」
コリシはくすくす笑いながら言った。
(言い訳でもするのかなと思ったらまさかこんな反応が返ってきたんだから笑うに決まってるさ)
コリシはそんな事を考えていた。
「それで"そんな事"って何?」
コリシは笑いを堪えながら言った。
(何か笑われる事言ったのかなぁ)
ココはコリシの反応を見て不思議そうにそんな事を考えていた。
「要はお二方が人気すぎて困っているという事ですよね?」
ココはふんわりとした雰囲気で言った。
(確かに2人共美形男子ではあるんだろうけど前世でお父さんやお兄ちゃん、他にもイケメンさんが沢山周りにいたからかイケメンさんのモテ模様や話は嫌ってほど見てきまし聞いてたから私にとっては本当にたかがな話なんだよね。まぁ見た目だけで色んな人が擦り寄ってくる大変さは私も知らないわけじゃないけどね)
ココはそんな事を考えていた。
「なっ」
ギルバートはココの言葉に思わず眉間にシワを寄せて言った。
「ぷはっ」
コリシは吹き出した。
「話の内容は理解しました。ですがご案心下さい。私はお二方にお近づきになりたい、お二方の横に並びいなどと少しも思っていませんので。求人募集に応募したのも単に収入先をと考えてのことでしたので。私を雑用係ととして選んで下さったのであれば事前にウィリアム子爵家の状況をご存知ですよね?」
ココはやわらかい笑みを浮かべて言った。
(まぁ今はお父さん達のお陰で生活が安定してるけどね)
ココはそんな事を考えていた。
(確かに事前にウィリアム子爵家の事は調べたが貴族とはいえ決して楽な生活ではないという事はわかっているが)
ギルバートがグッという表情でそんな事を考えていた。
「だが、口では何とでも言えることだ。これまでも我々には興味はないといわんばかりの仕草をしていたが実際はそんなことはなかったのだ。そなたがそうでさない保証などないだろう?」
ギルバートはとても冷たい目をしてココを睨見つけて言った。
「では、どうして私を働かせようと思われたのですか?これまでにその様な事が幾度なくあった事を承知の上で受け入れて下さったのですよね?」
ココはギルバートの冷たい視線など何とも思っていない態度で首を傾げながら言った。
(確かにそんな事がこれまでに沢山あったのに何で雇うのをココに決めたんだろう?"悪ハピ"を読んでるだけだったらそんな内情なんて分からないし私がココに転生しても原作の流れに沿っただけだしね)
ココはふと不思議に思いそんな事を考えていた。
「もしかしてウィリアム子爵家の財情があまりよくない上にほとんど領地から出ることがない人物だったからですか?田舎者は安心と?」
ココは考えて出た結論をケロっとした表情で言った。
(あぁ、それなら納得できるかも。本来のウィリアム子爵一家は元々領地から出るのが面倒だと思ってそうな生活ぶりだったし転生した私たち家族もこの世界で地盤固める為にずっと領地にいたもんね)
ココは納得するようにそんな事を考えていた。
ココの言葉にギルバートは驚いた表情を浮かべていた。
「御名答。よくわかったね」
コリシが手を叩きながら驚いた表情で言った。
(本当にこの令嬢は他の令嬢とは違うね)
コリシはそんな事を考えていた。
「やはりそうでしたか」
ココはうんうんと頷きながら微笑み言った。
(そんな理由だったとはね。案外軽い感じの理由で選んだんだね)
ココはそんな事を考えていた。
「ですが、逆にその様な人の方がお二方に興味を持つと思わなかったのですか?!財情が乏しいのでお二方のように財力がある人物に目を輝かしていたかもしれないというのに」
ココは首を傾げながら言った。
「ハハハ、そうだね。言われてみればそうだね」
コリシは笑いながら言った。
「コホン。そんな事すら考えないほどに本当に雑用係が居なく困っていたんだ」
ギルバートは咳払いをしながら淡々と言った。
(本当に色んな令嬢に言い寄られて大変だったんだね。ハイスペ男子は大変だね。まぁ容姿に加えて権力に財力まであれば嫌でも女子が寄ってくるよね。気持ちが分からないわけでもないしね)
ココは同情するようにそんな事を考えていた。
「そうだったのですね。ですが私は本当に仕事をする為に求人に応募させて頂いたので一生懸命働かせて頂きますね」
ココは優しい笑みを浮かべて言った。
「お手並み拝見だな。なぁ?ギルバート」
コリシはにこりと笑いながら言った。
(まぁ実際はどこまで続くかわからないし本当に令嬢が俺たちに目当てじゃないって事が本当にわかるまでは一応油断はできないね)
コリシはそんな事を考えていた。
「少しでも仕事に関係ない行動を取ったり仕事が出来ないと判断したら容赦なく解雇するつもりだからな」
ギルバートは鋭い視線をココに向けて言った。
「承知致しました」
ココはそんなギルバートの視線など関係なくふんわりと笑みを浮かべて綺麗なお辞儀をした。
そんなココを見て2人は驚いた表情を浮かべて言った。
「ねぇ、気になってたんだけどウィリアム子爵令嬢はギルバートが怖くないの?」
コリシが疑問に満ちた表情で言った。
(ギルバートは冷血公爵と呼ばれていて正直存在だけで相手が怯む時だってあるしこれまで散々令嬢達に言い寄られても相手が女性だろうと関係なく冷たい目と態度で何人泣かせてきたことかわからないというのにウィリアム子爵令嬢はまるで何とも思っていないように見える)
コリシはそんな事を考えていた。
「おい!コリシ」
ギルバートがコリシを睨み言った。
(何故わざわざその様な事を聞く必要があるんだ)
ギルバートは不満気にそんな事を考えていた。
「はい」
ココはケロっとした表情で言った。
(冷血公爵って呼ばれてる割には全く怖くなくて逆に驚いてるっていうのに。お父さん達はそんな事ないって言ってたけどやっぱりこの人も冷血公爵って呼ばれてるけど実はそんなにってオチだよね)
ココはそんな事を考えていた。
「そ、そうなんだね」
コリシは苦笑いを浮かべて言った。
(本当に怖いと思ってなそうだね)
コリシはそんな事を考えていた。
(俺を怖いと思わない女が母上や姉上達、叔母上以外にいるだと?!)
ギルバートはココの反応を見て我慢してるわけでもなく本当に自分の事を怖がっていないと知ると驚きそんな事を考えていた。
(確かに先ほどから俺の事を怖いとは思っていない言動はしていたな。恐怖を承知で発言していると思っていたが)
ギルバートは更にそんな事を考えていた。
(そもそも多分お父さんとお母さん、お兄ちゃんの方がよほど冷血って言葉が似合うだろうから。間違いなく今のこの状況を家族が見たら冷血にふさわしい行動してただろうからね)
ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「ウィリアム子爵令嬢は僕たちを見るの初めてなんだよね?僕たちを初めて見た感想は?」
コリシは興味深い表情で言った。
(ギルバートを怖いと思わないといえやっぱり第一印象は顔かな?)
コリシはそんな事を考えていた。
(コリシは一体何を言っているんだ?そんな事は働く事と何の関係もないだろう)
ギルバートは不満気にそんな事を考えていた。
「感想ですか?」
ココはきょとんした表情で言った。
(感想って言われても特に何も思わなかったんだけどなぁ。それにココとしては初めてになるけど"悪ハピ"の読者としては初めてじゃないしね。でもあえてあげるとしたら)
ココは困った表情でそんな事を考えていた。
「あえてあげるとするなら、、お二方とも背がとても高いということです」
ココは悩んだ末に微笑みながら言った。
「背が高いことだと、、?」
ギルバートは豆鉄砲を食らったような表情で言った。
「はい。先ほどここへ案内して下さった騎士の方も凄く背が高くてびっくしました」
ココは驚いた表情で言った。
(お父さんもお兄ちゃんもこの世界に転生して前世よりも長身になったもんね)
ココはそんな事を考えていた。
「くくくく、、」
コリシはもはや笑うのを我慢することなく笑った。
「そうかそうか。背が高いことね。確かに騎士達は狙ってる訳じゃないけど特に長身のやつらが多いからね」
コリシは笑いながら言った。
「そうだったのですね」
ココはこくこくと頷きながら言った。
(どうりで大きいわけだ)
ココは納得したようにそんな事を考えていた。
そんなココを見てコリシは更に吹き出しそうになるのを我慢した。
「コホン」
そんなコリシにギルバートが咳払いした。
(これ以上この令嬢と話をすると話が余計に拗れるような気がするな)
ギルバートは少し疲れた表情で言った。
(この俺がこんな令嬢相手に疲れを感じでしまうとは)
ギルバートは更にそんな事を考えていた。
「とにかくだ。自分の仕事はしっかりするように。先ほども言ったがこちらがこれ以上は雇えないと判断した時点で解雇だという事はしっかりと心得ておくように」
ギルバートは淡々と言った。
「承知いたしました」
ココは頷きながら言った。
「では、騎士団での雑用係の仕事の流れや働いてもらう上で覚えておいてもらう事などを僕が場所などを教えつつ歩いて回るから覚えていくように」
コリシが言った。
「承知いたしました。よろしくお願いします」
ココは微笑みながら言った。
「ある程度の説明や案内が終わったら騎士団の団員達に紹介するからコリシと共に鍛錬場にくるように」
ギルバートが淡々と言った。
「承知致しました」
ココは微笑み頷きながら言った。
「では、早速だけど行こうか」
コリシが優しく言った。
「はい。よろしくお願いします」
ココが笑顔で言った。
そして、ココはコリシと共に団長室を後にした。
団長室を後にしたココはコリシに主な仕事内容の説明、洗濯場や厨房に食堂に騎士寮に武器庫などをざっくりと案内されその都度説明を受けた。
「凄くざっくりした説明になってしまったけどわかったかな?」
コリシが言った。
「はい。副団長の説明はとても分かり易かったので大体の事は把握できました」
ココはメモを取りながら笑顔で言った。
(この人本当に説明が上手だわ。こういう人が上司だと助かるとこあるよね)
ココは感心するようにそんな事を考えていた。
「それは何を書いてるの?」
コリシがメモをとるココに不思議そうに言った。
「副団長が説明して下さった事を自分なりに分かりやすく書き留めるんです。こうして書いておけば自分1人で分からない事があっても団長や副団長、他の騎士の方に聞かずに対応ができますので。分からない度に手間を取らせてしまうのは申し訳ありませんから」
ココはメモしたものを見せながら微笑み言った。
(それにその方がギルバートやコリシという主要キャラ達と関わる機会を減らせるしね。平凡な生活をするなら主要キャラ達とはなるべく関わらない方が絶対いいもんね)
ココはそんな事を考えていた。
「確かに令嬢の言うとおりだね」
コリシはにこりと笑いながら言った。
(恐らく彼女の言動は嘘ではないみたいだね。本当に僕たちの手を煩わせないようにと思ってるんだろうね。これまでに色んな令嬢にこんな風に説明してきたけど彼女以外は話すら聞いてなかったからな。仕事ぶりを見てみないとわからないけど貴族の令嬢でもこれまでの令嬢達とは違うだろうというのは間違いなさそうだね)
コリシはココを見てそんな事を考えていた。
「では、そろそろ鍛錬場に向かうとしよう」
コリシが微笑みながら言った。
「はい」
ココは頷きながら微笑み言った。
(それにしてもウィリアム子爵令嬢は前髪が長すぎてよく顔が見えないけど口元だけ見ても愛想がいいんだろうね。僕やギルバートに取り入ろうとする令嬢達の取って付けたようような媚売り全開な感じとはえらい違いだな。恐らく彼女は作ってるのではなく自然なんだろうな)
コリシはそんな事を考えていた。
「ねぇ?君が団長室に来た時から気になってたんだけどとうしてそんなに前髪が長いの?前が見えづらくて不便じゃない?これから働くのにも邪魔じゃないの?」
コリシは困り笑みを浮かべて言った。
「あぁ、、幼い頃から変わらずの前髪ですのでこの方が落ち着くのです。それに案外普通に前は見えているので特に不便ではありません。それに仕事をする為だけにこちらに来ていますし働く条件として前髪を切れなどとは言われていませんし」
ココは少し困り気味に言った。
(普通の人の反応だよね。ここまで不自然に前髪が長くてほぼ顔が見えないんだもんね。でも本当に別に仕事をするのに支障はないもんね。でもまさか切れなんて言われないよね?!お父さん達にこの前髪は死守しなさいって言われてるもんね。前世でも現世でも)
ココは少し戸惑いながらそんな事を考えていた。
「いやまぁそうだね。別に前髪を切れなんて強要はしないよ。仕事をするのに支障がないのであれば別に長いままでも問題ないから。ただどうしてそこまで伸ばしてるのかなとふと思っただけだから」
コリシは苦笑いを浮かべて言った。
(もしかして聞いてはいけなかったかな。明らかに前髪の事言われて困った顔してたもんね。もしかして容姿の事で何か言われて傷ついた事でもあるのかもしれないしこれ以上はこの話はしない方がよさそうだね)
コリシはそんな事を考えていた。
(良かった。本当に切れなんて言われたら大変だったから)
ココはホッとした表情でそんな事を考えていた。
「そう言って頂けると助かります」
ココは困ったように微笑みながら言った。
(とりあえず素顔を見なられないようにしないといけないよね。お父さん達にも絶対バレないように気を付けてって念を押されてるしね)
ココはそんな事を考えていた。
そして、そうこうしているうちにココ達は鍛錬場へ到着した。
(わぁ〜ここが鍛錬場かぁ。漫画の描写で見たのと同じだわ)
ココは鍛錬場の様子を見て嬉しそうにそんな事を考えていた。
(こうして一読者として読んでた漫画に出てくる事の多かった場所に立つと自分は本当に漫画の世界に転生したんだなって思うなぁ)
ココは鍛錬場を見渡しながらそんな事を考えていた。
その時…
「お前たちも来たか」
ギルバートがやってきて相変わらず無表情で淡々と言った。
「あぁ。一通りの説明や案内が終わって今来たとこだよ」
コリシが言った。
「そうか」
ギルバートが言った。
(令嬢がどのような様子だったから後ほどコリシに聞くとしよう)
ギルバートはココをちらりと見ながらそんな事を考えていた。
「皆、集合」
ギルバートが訓練をしていた団員たちへ大声で言った。
するとギルバートの声を聞いた団員たちが足早に集まってきて整列をした。
集まってきた団員たち揃ってココを見ていた。
「こちらは本日から我がブラック騎士団にて雑用係として働いてもうこととなったウィリアム子爵家のココ・ウィリアム令嬢だ」
ギルバートがココに集まる団員達の視線など気にする事なくココを紹介した。
「そたなたからも挨拶を」
ギルバートが淡々と言った。
「承知しました」
ココは頷きながら言った。
「皆様、初めまして。本日よりこちらで働かせて頂くこととなりましたココ・ウィリアムと申します。雑用係は初めてなので皆様にご迷惑をおかけする事があるかと思いますが精一杯働かせていただくのでよろしくお願い致します。どうしても分からない事などあればお聞きしてしまうかもしれませんがその際は色々と教えて頂けると助かりますのでよろしくお願い致します」
ココはふわっとした笑みを浮かべてとても綺麗な姿勢で堂々と言った。
団員達はココを少し驚いた表情で見ていた。
(騎士さん達何だか驚いた顔してるね。きっと私の見た目が地味だからだろうね。今まで来た令嬢達は皆小綺麗にしてきてただろうしね)
ココは内心困り笑みを浮かべてそんな事を考えていた。
「というわけで話は以上だ。皆訓練へ戻れ」
ギルバートは淡々と言った。
「「はい」」
団員達は一斉に言うとココの事気になるようだがすぐに訓練へと戻って行った。
「では、私も早速持ち場へ行き仕事をさせて頂きたいのですがよろしいですか?」
ココがギルバートへと言った。
「、、ああ」
ギルバートは頷きながら言った。
(あんなに適当な紹介をされて何とも思わないのか?!)
ギルバートはココの反応を見てそんな事を考えていた。
「ありがとうございます。では、失礼致します」
ココは綺麗はお辞儀をして言うと特に振り返りもせず颯爽と走って行ったのだった。
(自己紹介とかだしもっと堅苦しくて質問とかされて長々したものかと思ったけどすぐ終わってよかったぁ)
ココはホッとした表情を浮かべて走りながらそんな事を考えていた。
「ギルバートも意地が悪いね」
コリシがココが走っていく姿を見ながら呆れた表情で言った。
「何のことだ」
ギルバートは淡々と言った。
「ウィリアム子爵令嬢の紹介だよ」
コリシはやれやれといった表情で言った。
「普通はもっと丁寧に紹介すべきところだぞ?これまできた令嬢の紹介も目的が僕たちだったにせよこんなに雑な紹介はしなかっただろ?それをあんなに適当に済ませるなんて」
コリシは呆れたように更に言った。
「あのように適当に扱われたら本性を表すと思ったたけだ。それに別に紹介はしたのだからいいだろう」
ギルバートは不満気に言った。
「本性ね、、。それでその本性とやらはわかったのか?」
コリシは困った表情で言った。
「僕にはウィリアム子爵令嬢が適当な事に不満をみせるどころか簡単な紹介でむしろ良かったと思ってように見えたけどね。何なら団員達の方が簡単すぎる紹介に驚いてたさ」
コリシが呆れた表情で言った。
「それは、、」
ギルバートは"ゔっ"という表情で言った。
「僕も彼女が本性を隠してるのかもとは思いもしたけど先ほどまで彼女を案内したり説明したりしててもしかしたら本当にウィリアム子爵令嬢はこれまでの令嬢達とは違うかもしれない、本当にただ働きに来ただけかもって思ったけどね。ウィリアム子爵家の財情の事も考えたら尚更ね」
コリシが言った。
「何を根拠にだ?!」
ギルバートが不満気に言った。
(結局これまでもそう見えてそうでない令嬢ばかりだったじゃないか)
ギルバートはそんな事を考えていた。
「ん〜実際に彼女の働き具合を見てみないと分からないけど彼女は僕の説明を聞いて内容をほぼほぼ飲み込めていたようだし常に僕の説明を聞いてメモをとっていたんだよ。これまで多くの令嬢に同じように案内や説明をしたけど皆全く聞く耳すら持たなくて結局団員達に紹介後に不満を漏らして挙句ギルバートの態度に耐えきれなくなってさっさと帰っていただろう?」
コリシが淡々と言った。
「それはそうだが」
ギルバートは眉間にシワを寄せながら言った。
「一先ず何日か様子見てみたら?本当にウィリアム子爵令嬢がこれまでの令嬢とは違うなら数日もあれば行動でわかるだろう?」
コリシがやれやれといった表情で言った。
(まぁギルバートがここまで疑い深くなってしまうのも分からないこともないけどね)
コリシはそんな事を考えていた。
「それにギルバートを見て怖がるどころか背が高い人くらいにしか認識してない女性って御母上やお姉さん達くらいじゃない?」
コリシはクスって笑いながら言った。
(あの瞬間は今思い出しても面白くて仕方ないな)
コリシはそんな事を考えていた。
「はぁ、、。分かった。お前がそこまで言うのなら数日様子を見て彼女を判断するとしよう」
ギルバートは面倒臭そうにしながら言った。
(コリシがここまで言うのであればそうするしかないだろう)
ギルバートはそんな事を考えていた。
「ハハハ。まぁそう面倒臭がるなって」
コリシは笑いながら言った。
「はぁぁ。本当にそれでなくとも考える事が山積みだというのにな」
ギルバートは頭を押さえながら言った。
「しかし、ウィリアム子爵令嬢は何故あれほどまでに地味というか何というか見た目にこだわらないのだ?あの前髪の長さは何なんだ。見ているこちらが辛気臭くなってしまいそうだ」
ギルバートは理解できないという表情で言った。
「う〜ん、それについてさっき少しだけ彼女にそれとなく聞いてみたんだけど何だかあまり触れたらいけない感じの空気になったんだよ。きっと見た目で何か嫌な思いでもしたのかもね。だからあえて目元を隠してるんじゃないかな。今のギルバートみたいに彼女の見た目について言う人達がいたのかもね」
コリシは困った表情で言った。
「そうなのか?!」
ギルバートは少し驚いた表情で言った。
(確かにあの見た目だと周りから何かしら言われた事があるのかもしれないな。だからあの時我々にそんな事かと言ったのか?!我々が令嬢達から言い寄りるのは容姿も含めてだろうという意味も込めて)
ギルバートはハッとなり団長室でのココとのやり取りを思い出しそんな事を考えていた。
「あぁ。だからそれ以上聞くのはやめておいたよ」
コリシは苦笑いを浮かべて言った。
「だが、団員達も令嬢を見て衝撃を受けていたのを見ただろう?あれは間違いなくウィリアム子爵令嬢の見た目を見て驚いたに違いない。本人に見た目について言われなければいいが」
ギルバートは困った表情で言った。
「あぁ確かに。団員達にはそれとなくその件について言っておいた方がよさそうだね。雑用の仕事と見た目は関係ないからな」
コリシは困った表情で言った。
「そうだな」
ギルバートが言った。
そして、ギルバートとコリシがそんなやり取りをしていた同じ頃ココは…
「やっぱりこの変装は少しやりすぎちゃったのかな」
ココは困った表情で1人洗濯場で大量の洗濯物を仕分けしながら桶に入った水に映る自分を見て呟いた。
ココがそんな事を呟いた理由は…
ココが洗濯場へ向かう道中にて…
「ウィリアム子爵令嬢のあの前髪見たか?!」
「見たさ。あの前髪は何なんだ?顔の半分は前髪で隠れるくらいあったぞ?」
「それに服装も子爵家とはいえ貴族だぞ?なのにあの地味な服装」
「これまでやってきた令嬢達は着飾りすぎてあからさまな感じがあったけどウィリアム子爵令嬢は逆に心配になるレベルだったぞ」
「あぁそうだよな。まぁ実際はちゃんと雑用の仕事を熟してさえくれれば俺たちは助かるけどあの見た目はさすがにないよな」
「もしかして、これまでの令嬢達とは真逆の地味さをあえて出して団長や副団長に近づく作戦とかか?!」
「そんな事ありえるのか?!いやあったとしてもあの見た目ではまず女性として見れないぞ」
「体型も横に大きそうだしな。恐らく顔がとてつもなく不細工に違いない。よほどの不細工でなけりぁあそこまで顔を隠さないだろうしな」
ココに気づかず訓練場から武器庫へ移動中の団員達が笑いながらそんな話をしていたのだった。
(確かに騎士さん達がああ思うのも仕方ないか。実際お母さんが気合いを入れて地味もさ子に仕立て上げたんだからね)
ココはつい先ほどの団員達のやり取りを思い出しながらそんな事を考えていた。
(まぁ確かにやりすぎた感はいなめないけど騎士さん達があそこまで言うくらいお母さん達の志向は上手くいってるってことだよね。それにやっぱりお母さんの腕は間違いないってことだよね)
ココは家族の事を思い出しつつそんな事を考えていた。
(体型を隠す為にもわざと支障がないくらいの詰め物してだぼだぼした服装にしたけど見た目は痩せる前のココ体型だもんね)
ココは苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「まぁでもその位の距離間を保つ為に変装してるんだしこのまま騎士さん達にはああ思ってもらってた方が楽だよね」
ココはケロっとした表情で言った。
「それよりもまずはこの大量の洗濯物との戦いだよね」
ココは目の前の大量の洗濯物を見て鼻を鳴らしながら気合い十分に言った。
そして、ココは大量の洗濯物との格闘を始めた。
そして、1時間かけて全ての洗濯物を干し終わった。
「ふぅ〜。やっと終わったぁ」
ココは汗を拭きながら大量に干された洗濯物を見て言った。
「これは雑用係がいなきゃ大変だよね。訓練して+掃除洗濯料理の家事的雑用係をするのはしんどすぎるよね」
ココは苦笑いを浮かべて言った。
「しかも、この世界には洗濯機がないから基本手洗いだし汚れや汗じみ酷いから洗濯板使って洗うのも一苦労だよ」
ココは更に言った。
「でも、これだけの量を捌き終えたら達成感が半端じゃないよ」
ココは清々しい笑みを浮かべて言った。
「動きやすい格好をしてきて正解だったなぁ」
ココは満足気に言った。
「"悪ハピ"ではココが雑用をこなしめる場面ってほぼ描かれてなかったけどこれは相当大変だっただろうね。だけど私的には苦ではなく楽しいが勝ってるなぁ。こういう時に転生者だと助かるよね」
ココが言った。
「よし!次は武器庫の整理でもしに行こうかな」
ココは笑顔で言った。
その時だった…
「、、けて、、」
どこからか微かに声がした。
「何?今誰かの声が聞こえた気がしたけど」
ココは回りを見ながら言った。
「気のせいだったのかなぁ」
ココはシーンとしたのを見て言った。
そして、武器庫へ向かって歩こうとした時…
「助けてくれ、、」
また声がした。
「やっぱり声が聞こえた」
ココがその声を聞いて回りを見渡し言った。
「どこからだろう」
ココは焦りながら言った。
「誰か、、助けて、、」
更に声がした。
「あっちの方からだわ。助けってって誰かがピンチってことじゃん」
ココは焦りながら言うと声が聞こえる方へ向かって急ぎ走った。
(どこだろう?この辺からだったと思うんだけどなぁ)
ココは走りながら回りを見渡しながらそんな事を考えていた。
「ウィリアム子爵令嬢どうしたんですか?!何かわからないことでも?!」
その時、近くにいた騎士達のうち1人がココに気づき声をかけてきた。
「この近くから誰かが助けを求める声がしたのです」
ココが慌てて言った。
「何だって?!」
「助けだと?!」
「一体何事だ?!」
ココの言葉に騎士たちが驚き言った。
「私にもよく分かりませんがとにかく誰かが助けを求めている事は確かなので早くその方を助けてあげなければいけません」
ココは慌てて言った。
「わかりました。我々も同行します」
騎士の1人が言った。
「俺は団長にこの事を伝えてくる」
騎士の1人が言った。
「ああ、頼んだ」
騎士の1人が言った。
そして、ココと騎士達が声が聞こえた方向へと急いだ。
「あそこです」
ココが指差しながら慌てて言った。
ココが指差した先には池の中で人が溺れかけていた。
「助け、、てくれ」
池の中の人物が今にも力尽きそうな声で呟いた。
「だめ!」
ココはその人物のそんな姿を見て焦り大声で言った。
(大変。あのままだと沈んじゃう)
ココは焦りながらそんな事を考えていた。
そして、ココは更にスピードを上げて池に向かって一直線に走った。
騎士達は走るスピードには自信があったがそんな自分達よりも早く池に向かい走るココを見て驚いた。
ましてやぽっちゃり体型なのに自分達より早く走れている事に驚きを隠せなかった。
そして、ココが池に着く寸前で溺れていた人物が力尽きて沈んでその場にしまった。
ココはその状況を見て走ったまま池に思い切り飛び込んだ。
ザブーーン!!
(居た!)
ココは水の中の気を失ってる自分を見つけた。
木を失っている人物の足元には大きめの藻が絡んでいた。
(藻が足に絡んで身動きできなかったんだわ)
ココはその状況を見てそんな事を考えていた。
そして、素早くその人物の足に絡まった藻を解き取ってその人物の体をしっかり掴み急ぎ水上へと泳いだ。
サバッッ!!
ココは気を失っている人物の顔も水上に出した。
「ウィリアム子爵令嬢掴まって、、」
そこへ池に到着していた騎士の1人が慌てて言ったかと思ったらココを見て固まった。
そして、ココは水辺まで泳いだ。
「この方を先にお願いします」
ココが気を失っている人物を騎士達へお願いした。
「あ、はい」
騎士の人がハッとなり言うと急ぎ気を失っている人物を引き上げてその場へ寝かせた。
「ジョージじゃないか」
騎士の1人がその人物を見て慌てて言った。
(え?!ジョージって言った?!)
水辺へ上がろうとしていたココがその言葉を聞き驚きそんな事を考えていた。
「どうしてジョージがこんなところに」
騎士の1人が戸惑いながら言った。
「そんなことよりジョージの意識がないから先に蘇生処置だ」
騎士の1人が慌てて言った。
「あ、ああ」
騎士の1人が慌てて言うとジョージへ蘇生処置を行った。
「ゲホッ、、オエッ、ゴホッ」
するとジョージが水を吐き出し意識を取り戻した。
「「ジョージ」」
騎士達はホッとした表情で言った。
(良かった)
ココは意識が戻ったジョージを見てホッとした表情でそんな事を考えていた。
「ジョージ、一体どうしてこんな事になったんだよ」
騎士の1人が焦りながら言った。
「猫が池に落ちるのを見て咄嗟に助けに池に飛び込んだはいいが猫を水辺へ起き自分も上がろうとしたら足に何かが絡まってしまって足を攣ってしまったんだよ」
ジョージは弱々しく説明した。
「その方の足に大きな藻が絡まっていました」
ココが言った。
「あなたは?」
ジョージがココを見て言った。
「?本日より雑用係として来ましたココ・ウィリアムです。先ほど自己紹介させて頂きましたよ?」
ココは??という表情で言った。
(え?覚えてないの?さっき皆の前で自己紹介したのに?そんなに存在感薄い感じなの?)
ココ苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
「え?ウィリアム子爵令嬢、、ですか?」
ジョージは困惑した表情で言った。
「はい」
ココは頷きながら言った。
(えっと、、新手のいじめですか?)
ココはジョージの表情を見て苦笑いを浮かべてそんな事を考えていた。
よく見たらその場にいた騎士たちもココを見て固まっていた。
その時…
「一体何があったのだ」
急ぎやって来たギルバートが言った。
「「団長」」
騎士たちが一斉に整列して言った。
「ジョージ?!一体何があったわけ?」
ギルバートと一緒に来ていたコリシも状況を見て驚いた表情をして言った。
「お話の途中で申し訳ありませんがそちらの騎士様は先ほどまで気を失っていましたので代わりに私から説明させて頂きます」
ココが弱々しいジョージを見て咄嗟に間を割って言った。
そして、ココは自分がジョージの助けを求める声を聞いた事からジョージを助けた目の前の状況までの事を正確にギルバートとコリシへ説明した。
「以上がこの状況の説明になります」
ココが説明を終えた。
(これでギルバートもコリシも状況把握はある程度できたよね?それよりもまさかジョージとこんな形で会うとは驚いたわ。雑用係だったとしでこれだけの人数がいる訳だしジョージと会うことなんてないと思ったけど。原作にこんな場面なんてなかったし余計に驚いたよね。それにしても猫を助ける為に池に飛び込んだのはジョージらしいんだろうね。ジュリアンはジョージの家族思いなところや人にも動物にも優しいところにも惹かれたんだから)
ココはチラりとジョージを見ながらそんな事を考えていた。
その時だった…
シャッキンッ…
(何の音?)
ココが音に反応してそんな事を考えていた時だった。
(え?)
ココは自分の首にヒヤリとした物が当たっているのに気づき驚きそんな事を考えていた。
(痛っ)
それと同時に首がチクリと痛んだ。
(え?何?どういうこと?)
ココは自分の首に当てられてるものを見て驚愕してそんな事を考えていた。
「何者だ?!」
ギルバートは鋭く冷ややかな圧のある目でココを睨みつけて言った。
「はい?」
ココは意味が分からず困惑しつつ言った。
「何故ここにお前のような部外者がいるのだ?!何が狙いだ?!どうやってここへ入ってきた?!」
ギルバートは更にココを睨みつけて言った。
(この人何言ってるの?私がわからないの?騎士さん達も私に気づいてないみたいだったけど)
ココは更に意味が分からず戸惑いながらそんな事を考えていた。
「狙いも何も私は、、」
ココは戸惑いつつ言った。
(そうだ。コリシなら)
ココは咄嗟にそう思うとコリシの方を見た。
するとコリシもココの事をとても冷たい目で睨み警戒していた。
(本当に何なの?一体どうなってるの?!)
ココはコリシの反応を見て更に困惑してそんな事を考えていた。
「貴様、不法侵入までして我々に近すこうとしたのか?!」
ギルバートは更に怒りに満ちた表情で言うと剣を更に首の内側に当てた。
(ゔっ)
ココは痛みを感じて苦渋の表情を浮かべてそんな事を考えていた。
「さすがにこれはやりすぎだな。ここまで卑怯な事をする令嬢はさすがにいなかったな」
コリシは嫌悪した表情で言った。
その時…
「団長、副団長!そのお方は」
状況を見かねた騎士の1人が慌てて言った。
「何だ?!お前の知り合いなのか?!」
ギルバートはその騎士を睨みつけて言った。
「い、いえ。その方はウィリアム子爵令嬢です」
騎士の1人が更に慌てて言った。
「は?」
「え?」
騎士の言葉を聞いたギルバートとコリシが面食らった表情で言った。
他の騎士たちも皆慌てて頷いた。
「そ、そなたはウィリアム子爵令嬢なのか?」
ギルバートは困惑気味にココへ言った。
「はい。ココ・ウィリアムです」
ココは何とも言えない表情で言った。
「嘘でしょ?」
コリシが信じられないという表情で言った。
「本当です。ですので剣を下ろして頂いてもよろしいですか?」
ココは何とも言えない表情のまま言った。
(本当にどうしちゃったの?さっきまで私と一緒にいたのに私がわからないって意味がわからないよ)
ココは本当に意味が分からずそんな事を考えていた。
「す、すまない」
ギルバートは慌てて言うと剣を下ろして剣を戻した。
剣が触れていたココの首は切れて出血していた。
(首思ったより切れちゃったみたいだね)
ココは首の痛みを感じてそんな事を考えていた。
「本当にウィリアム子爵令嬢なんだよね?」
コリシが困惑した表情のまま言った。
「はい」
ココは意味が分からないまま頷きながら言った。
(どうしてさっきからまるで知らない人みたいな物言いをするの?)
ココは困った表情を浮かべてそんな事を考えていた。
(まさか、、)
しかし、ココはハッとなり急ぎ池を覗き込んだ。
(わぁぁぁ。やっぱりそうだ。池に飛び込んだせいで髪の毛が濡れて前髪も濡れて顔がフルオープンになってたんだぁ。どうりで私がココって気づかれないわけだよ。前髪が長すぎて皆私の顔を知らないも同然だったんだもん。わぁぁぁどうしよう)
ココは池に映る自分を見て困惑しつつそんな事を考えていた。
(どうしよう。お父さん達には絶対前髪で顔を隠すのを死守しろってあれだけ言われたのに)
ココは更にそんな事を考えていた。
こうして、今世は平凡に暮らしたいと意気込み素顔を隠していたココの素顔は努力も虚しくたった1日でバレてしまったのだった……
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ヤンデレ公爵令息の溺愛ストーカー日記♡転生令嬢の破滅回避生存日記☆(※不定期更新)
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