隠れん坊将軍
キンノミヤと戦ったあの不審者です。このネーミングをたった2話の登場で腐らせてはいけません。
峰打ちでキンノミヤに敗れた彼の末路です。
「もーいーかい?」
「まーだだよー?」
「もーいーかい?」
「もーいーよ!」
「よぉし…」
子供達のかくれんぼが始まった。鬼役の子供は木々の茂み、近くの民家の裏口、岩の影、様々な体をよじらせ視線をめぐらせ探索を続ける。
「みいつけた!」
「マジか!早すぎ〜」
「オレ舐めんなよ。めっちゃこういうの得意だからさ。」
早速1人見つかったようだ。どこかの小屋に隠れていた子供は口を尖らせる。
「次は…」
鬼役の彼は幸先良いスタートを切って意気揚々だ。駆け足と忍び足を巧みに使い分け、わずかな異変を目で捉えていく。
「みいつけた!」
「わっ!もう?」
次の子供は林の中の一見、誰も気づかない凹みの中に潜んでいた女の子だ。まだ10歳にも満たない子供しか入れないある意味VIPルームだ。
「これで最後?」
「いや次で。」
「まじで早いな!」
確かにその子の見つけるスピードは早かった。人目もすぐ見つかるだろう。誰もがそう確信していた。だが
「おーい!どこいんだよー?」
「もう疲れたんだけどー?」
その子供は表れなかった。子供たちは彼これ30分近く周辺を探したがどこにもなかった。
飽きて家に帰ったのかと思って、その子の家に行ってみたがまだ帰ってきていない。
彼らは次第に怖くなってきた。
「まさか……もう死んだんじゃ…」
「な訳……ないじゃん?」
子供の思考は極端だ。誰かがそう言ってしまえば、脳で必ずそれが引っかかる。そしていずれそれが規制事実となって心を掌握する。
彼らも例外ではない。誰もが4人目の子供はもう助からないと感じた。その時、
「何してんの?」
「え?」
例の本人がキョトンとした顔でどこからか歩いてきたのだ。
「お前どこいたんだよ!」
「隠れん坊将軍が助けてくれた。」
「え?」
彼の話によるとかくれんぼが始まった直後
「おい小僧、そのような隠れ方ではいかぬ。」
「おじさんだれ?」
その男は袴姿に頭には髷を結っていた。
「隠れん坊将軍だ。小僧、灯台下暗しという言葉を知っておるか?」
その後子供は、隠れん坊将軍の助言を得て鬼役の子供の少し後ろを常に歩き、後ろを向いたら右手に隠れていたのだ。
「全然分かんなかったぜ。」
「そのカクレン何とか凄いな!!」
その後子供達はもう一回、正々堂々とかくれんぼをし始めた。
隠れん坊将軍はそれを微笑ましそうに見ていた。