オレッちスピードが好きなんだよ。
第7話と第8話の頃のかなり初期の話です。今となっては珍しい破天荒なリンが見れます。
「ホレホレハラハラ!飛ばせ飛ばせヒャッホォー!」
リンによる対車輪の錬金術師の特訓は続いていた。リンはとにかくスピードを上げていく。ただハンドル操作は全てユーザに任せっきりだ。ユーザは腕と視線に全神経を集中させてハンドルとブレーキを巧みに使い分けながら、森林の木々を掻き分け道無き道を奔走していく。
「ちょっとちょっと!アンタがライドオンしてんの!どうしてオレっちがリードしてんの?ホラホラもっちょもっちょハンドル握って握って。」
不満を漏らすリンに対してユーザは叫びながら反論する。
「ふざけんな!オレのせいじゃねぇだろ!もっと常識的なスピードってもんがあるだろが!」
「はぁ?常識的ぃ?ちょっと前までクロスバイクどころか自転車知らないちゃんだった奴がオレっちに向かって常識を問うか?貴様、神に経典って聞いたことあるか?」
リンはネチネチとユーザに言いよる。
「だからって……おかしいだろこんなグキャア!あぁっ!あぁっ!!」
ユーザは怒っている途中にペダルを踏み外した。
「なぁっ、うわあぁっ!」
「取り敢えず止まれ!ブレーキブレーキ!」
言われた通りブレーキを踏んだが、それは余りにも急だった。
「ゴハァ!」
ユーザは車体から放り出され、その肉体は宙を舞い木の枝に引っかかる。
「ウエォ!ガァー!」
枝の中を落ちていったユーザに次に待ち構えていたのは急勾配な岩肌だった。
「グハッ、止まらなぁ!ゴボボボ!」
岩の地面を転がり落ちり急に地面が消え、最終的にドボォンと滝壺に落ちていった。
「もう特訓はやめだ!行くぞ!」




