暴露基地 後編
「おい、いつまで歩かせるんだよ?」
キンノミヤが3人に尋ねる。
「オレ達2人、結構話してたぞ?なのに一向に辿り着く気配がしないんだが?」
キンノミヤは目を細めながら3人を睨みつける。
「だって仕方ないですよ。ボクらの歩幅と皆さんの歩幅を考えてみてくださいよ?」
「そうだぞ!大人がない事言うなよ!」
エントとショウがすぐさま反論する。
「ちょと………大人相手に強くない?」
アツタが2人の態度を見て不安になっていると
「ちょっといいか?」
「何ですか!」
「何すんだよ!」
キンノミヤがそれぞれの手にショウとエントを抱き抱える。
「オレは大人げないらしい。だから大人の歩幅で行かせてもらう。シャーバラン、残りもおんなじ感じで。」
キンノミヤは勝手に進んでいく。
「離せって言ってんの聞こえねーの!!」
「ショウ、こうなったら以上諦めよう………」
「ほら、しっかりナビしろ!」
キンノミヤは騒ぐショウをたしなめながら進んでいく。
「え………じゃあ……アツタくん?コッチに……」
「え、あ、はい………」
シャーバランはアツタを両手で抱える。
「うわっ………!!」
(このお姉さん、胸が………)
アツタはシャーバランの大きな胸に包まれ頬を赤らめる。
「あれ………どうした?暑い…………ですか?」
シャーバランは子供との接し方が分からず敬語で話しかけ心配する、
「いや………大丈夫です…………」
「じゃあ、行きますね。」
シャーバランはキンノミヤの跡を追う。
「ここが暴露基地………大分進んだな。」
2人は子供達を目的地に付き下ろす。
秘密基地は事務所のあるライドエンプの中心地郊外からさらに離れた人の寄りつかない林の中にあった。
廃材や木の枝や石で作られたその建物は風が無いにも関わらずカタカタと震えていた。
「なんか動いてるな…………付喪神っぽいちゃぽいな。ユーザはいつもどうしてるんだろな…………おーい!」
キンノミヤはひとまず呼びかける事にした。
「合言葉を言え………」
秘密基地の付喪神が発したのはその一言のみだった。
「合言葉?どういう事だ。」
「分かんないの?秘密基地には合言葉が必須だろ?」
ショウが自身げに宣言する。
「でもその合言葉が………」
エントが基地の入り口前に立ち
「ズンドコペロンチョサムラゴウチタカナワゲートウェイ」
と詠みあげるが
「否。再び合言葉を言え………… 」
扉が開く事は無かった。
「いつも使ってた合言葉が使えなくなってるんです。」
「てか、どういう意味の言葉なんだ?」
キンノミヤは合言葉の内容に引っ掛かっていた。
「ただの文字の羅列です。」
「あっそう………」
(子供の発想は突拍子がないな……………)
「どうする?合言葉を言えねば私の扉を開く事は不可能だぞ。」
「そもそもオレ達が作ったんだぞ!なんでオレ達のズンドコペロンチョサムラゴウチタカナワゲートウェイが駄目なんだよ!」
ショウが扉に怒鳴りつける。
「前にも告げた。確かにお前達は私を想像したのかもしれない。だが、秘密基地自身なのは私だ。合言葉をどうするかの勝手は私が決めても良かろう。」
秘密基地はまともに取り合う事は不可能だった。
「そもそもよぉ………」
キンノミヤは扉の前に立つ。
「ここを開けるには合言葉が必要だ。」
「何で合言葉が必要だと思うんだ?」
キンノミヤが問いかけると返ってきた答えは
「愚問だな。秘密基地に合言葉は必須であろう。」
だった。
(コイツ…………仰々しい口調で野太い声のクセに子供と同レベルじゃねえか!)
キンノミヤは喉まで出かかった言葉を何とか飲み込む。
「いや待てよ………子供と同じって事は……」
キンノミヤは閃く。
「さっさと合言葉を言わんか。出なけれとっとと去れ。」
「分かりましたよ。確かにオレは秘密基地の合言葉は知らねぇなぁ〜。」
キンノミヤはぶっきらぼうな口調になり上を向きながら言う。
「でもお前、そもそも秘密基地じゃなくて暴露基地なんだから合言葉要らねぇだろ?」
「何?」
秘密基地はキンノミヤの言葉に食いつく。
(やっぱ乗っちゃったねぇ〜。)
「だってホントに秘密の奴が秘密とか言わないだろ?その時点でもう暴露しちゃってんじゃん?だから暴露基地。合言葉なんてどうでも良いだろ?」
キンノミヤの言葉に
「そ、そうか………確かにホントに秘密なのであればこのように秘密基地を自称しているこの状況に矛盾が生じる………そうか!そうなの!私は暴露基地、暴露基地のエクスポ!」
(マジで納得するとは思わんかったなぁ…………)
キンノミヤはここまで上手くいく事は想定外だった。
「そう!私は暴露基地だ!合言葉は要らぬ。来るもの拒まずだ。入れ入れ!」
こうして5人は暴露基地エクスポの中に入る。
「結構狭いな!」
キンノミヤとシャーバランは身を屈めていた。
「仕方ないだろ子供が作ったんだから!てかなんか遊ぼうよ!」
ショウがキンノミヤの方に乗り出す。
「なんか子供の頃にやってた遊び教えてよ!」
「えぇ?子供の頃か………そうだな……」
キンノミヤは記憶を探る。
「その辺に落ちてる石を骨董商にバレずに買い取って貰えるかとか、飛脚の休憩中に届け物をこっそり奪って裏道から早く届けるとかかな?」
その話を聞いた3人は
「「「全然子供の遊びじゃな〜い!!」」」
と声を大にして言い張った。




