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お前は辛い!

「依頼内容はなんだろう…………」

ユーザとハーズは思わず依頼の手紙に目を通す。


「『ウチの付喪神が何故か唐辛子を欲しがり出しウチにある唐辛子を与えるのですが弾かれてしまい、困っています。ひとまず話を聞いて下さい。』」

「唐辛子か………そういえばここの料理って辛いのばっかだよなぁ。例えば………」

ユーザは手紙を見ながらここ最近食べたものを思い返す。


「よく出てくる赤いソースの唐揚げだろ?唐辛子で出汁をとった野菜スープ。お菓子にも唐辛子が練りこんであったな……」

「ユーザ、その唐辛子が入ってると辛いって感じるの?」

食べ物を口に出来ないハーズが尋ねると


「そうだな。辛い……端的に言うと舌がピリピリしてそれがしばらく続く感じだな。」

「それっていいの?」

「人によって耐性は異なるけど………どっちかっていうと弱い辛さの方が好きな人が多いだろな。あっ着いた。」

ユーザ達が目的地の依頼主の家や扉をノックするや否や


「お前は甘い!」

という声と共に屋内から何かがユーザの顔面に向かって飛んできた。

「おわっ!」

ユーザは物体を避けて地面に落ちたそれに目を向けると


「…………唐辛子?」

それは一個の唐辛子だった。

そして背後からももう一つ唐辛子が飛んできたが

「キャッチ!」

ハーズが左腕を動かして受け止めた。


「コレッてキミがやったの?」

ハーズは部屋の奥にいる付喪神に問い掛ける。

「キミの動きは………甘く無いな。」

目の前の付喪神は中に詰められた液体が入口の戸から漏れる光によって黄色く照らされていた。


中に入りユーザは話を聞く。

「ハチミツの瓶….て事は中に入ってるのもハチミツ?」

ユーザが指を刺すと瓶は体を傾け頷く。


「ケッ………ミツハだ。見ての通り甘〜い甘いハチミツが入っている……クッ。」

怪訝そうにミツハは自己紹介をする。


依頼人はミツハを持ち上げながら説明し始める。

「つい2日前に喋り出したんですよ。んで依頼の手紙に書いた事が起きて……」


「オレはこの世に生を受けてからの2日間で自分にある特性がある事を知った。ユーザと言ったか?」

「はい?」

(なんかコイツ態度がザッドぽいな……)


「オレの蓋を開けて中のハチミツを食してみろ。」

言われた通りユーザは瓶を開けてハチミツを匙で少量掬い取り口に運ぶ。

「いただきます。うぅん……………うっ!?なんじゃこりゃ!!」

その瞬間、ユーザは匙を床に落としてしまう。


「ディメンショントリガーだ!」

ユーザはハーズにディメンショントリガーを取りつけ青いボタンを押し魔法を発動する。

放出された水を口内に流し込み勢いよくすすぎ込んだ。

「ハァーーッ!!甘過ぎだろコレ!!」

ユーザはため息を吐くと口をパクパクと動かしながら目を瞑る。


そして荒く呼吸するユーザにミツハが告げる。

「そう。ただでさえを甘いハチミツがオレの中に入る事でさらに甘くなるのだ。そしてオレは甘い物が嫌いだ。だから求む!この甘さを掻き消すほどの辛味を!」


「いらっしゃいませ!ってユーザさん?あんまり来る事なくないですか?」

大衆食堂の店員としての仮の姿で動いてるチェラキラはユーザの来店を珍しく思う。

「あっチェラキラどうも。依頼で用があってさ。」


「ここにライドエンプ国民も恐れをなして逃げる辛さの裏メニューがあると聞いた!」

ミツハユーザに抱えられた状態で叫ぶ。

「裏メニュー?そんなの聞いた事無いです……」

チェラキラはミツハの訴える文言に首を傾げる。


「一端の店員程度には伝えていないんだろう?店長を呼べ店長を!」

ミツハチェラキラに命じる。

「わっ分かりました!まずこちらの席へ……」

チェラキラはユーザを一旦誘導すると厨房に立つ店長に裏メニューの話を聞かせる。


「おい。その話どこで聞いた?」

「え?」

チェラキラは店長の態度を変わりようを感じ取る。

「あちらのお客様が………」

チェラキラはユーザの方を指差す。


「そうか………確かハッピー・マテリアライズの方だったか?中々見どころがある……今すぐ調理に取り掛かる!」

すると店長はエプロンの紐を締め直し何処かへ去ってしまった。


そして十数分後。

「コレを運ぶんだ。」

店長はチェラキラに一皿の料理を手渡す。

「こっこれは…………!おっとっと危ない危ない!」

「どうした?何かが見えたような……」

「いや気のせいですよ!何もないですよ!」

チェラキラは身の危険を感じ無意識に右手を怪人態に変えてしまい手を引っ込めた。


(怪人を恐れさせる料理だなんて………もしかしてあの店長スゴイ人?)

「こちらが裏メニューです。」


「おい………客どうなってんだよ!!」

チェラキラがメニュー運ぶ道中の客はその匂いを嗅ぐだけで倒れていた。


「ねぇユーザ?これ何が使われてるの?」

「唐辛子を使ってるという事しか分からない………」

皿には唐辛子の赤で染まった汁が注がれており、具は不明だった。


「ユーザ、まず食せ。」

「いや………嫌なんだけど。」

ユーザがそう呟くとミツハの蓋が勝手に開き口の中に甘いハチミツが入り込んだ。

「あああっ!!何かで何かで消さないと!」

ユーザは仕方なく目の前の裏メニューを手を伸ばす。


「ギャアアアアッ!!」

ユーザはさらに悶え苦しみ絶叫する。

「ほぅ………この反応は良いな。ハーズ、注いでくれ。」

「分かった、ユーザが暴れて難しいな………」

ハーズはユーザの左腕を動かしスプーンでミツハの中に汁を注ぐ。


「おっ来たな!ほほぅ……これは……」

「てか付喪神なのに味覚感じられんの!?」

ハーズが尋ねると

「あぁ。これも特性の一つであった。むむっ!!この辛さは………」

ミツハは辛さを存分に感じたり感想を告げる。


「まだ足りない。もっと辛さを!」

「うぞだろぉ!?」

涙目のユーザが驚愕の顔でミツハを見る。


そして

「これでどうだ!」

「もう一声!」

店長とミツハは辛さの限界かけて張り合っていた。

「これかぁ!!」

「まだ行けるはずだ!」

「もうコレ以上は…………いや待てよ?アレを使えばあるいは!」

店長は厨房に駆け込む。


「よし………期待しているぞ!」

「もうダメだよ!ユーザもチェラキラも気失ってんだから!!」

店内で意識を保っている人間は店長のみであった。





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