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第五話 最強の守護神ゲット!?この世界はゲーム版?小説版?

2024.03.24


 ハロルドの治療を終えて数日後、漸く医者の許可が出て屋敷の中くらいなら自由に動けるようになった頃、自室に身なりが整ったアルフレッドがやってきた。

 私の部屋に入るのならば清潔にしてからと言う両親の判断からだった。

 私の傍までくるとアルフレッドは涙を流し頭を下げてお礼を口にした。


 「お嬢様のお陰で、おじさんが助かりましたッ、本当にありがとうございます」


 本音を言えば恩を売って少しでも死亡率を回避する為にした事だったのに、そんな風に感謝されると罪悪感が増した。

 ベッドから身体を起こすとまだ少しだけ痛みがある時があって思わず呻けばアルフレッドが慌てて傍に来ると手を貸してそっとクッションを背中に置いてくれた。

 それにお礼を言って一息つく。


 「おじさんがよくなってよかった」

 「本当にありがとうございます」

 「うん」

 「…………お嬢様」

 「ん?」

 「………僕、いえ、私をお嬢様の騎士にしてくれませんか?」

 「へ?」


 思わず間の抜けた声が出た。

 あわよくばそうなって欲しいと言う願いはあったが本当にそれを、まさか相手から申し出てくれるなんて思っても見なかったから驚きのあまりすぐに反応を返せなかった。


 こんなに簡単に上手くいってもいいのだろうか?


 だけど、この申し出を逃したら今後こんな凄いチャンスは絶対来ない気がした。

 物語通りになってしまう事だけは絶対に避けたい。


 「………わ、わたしでいいの?」

 「お嬢様がいいのです」

 「………なら、きしになったら………わたしをまもって」

 「はいッ!必ず!!」


 アルフレッドはその後、義父に私の護衛騎士になりたいと言った。

 私には今、二人の護衛騎士がいるが年頃の近い者も必要かもしれないと考えていたらしい義父だが、それでも少し難色を示したので私からもお願いすれば苦笑して承諾してくれた。

 まず大前提として騎士になる必要がある。その為に必要な訓練と教養が必要だと言う話になり、最終的にルーディアスが通う王立ミレニアム学園に途中編入する事が決まった。


 これまで予知夢に対する報酬を何度か打診されてきたが一度も受け取らなかった私の始めてのお願いと言う事もあり、国王自ら編入の推薦状を出してくれた。元々アルフレッド自身が優秀で没落したとは言え元貴族。マナー等も完璧だったことから編入試験は何と脅威のオール満点を出し文句無く実力だけで合格を勝ち取った。

 必ず立派な騎士になって戻ると宣言してアルフレッドは王都へとハロルド共に旅立った。

 ハロルドは傭兵としてかなり優秀だった事もあり、完治後は騎士として王弟の持つ騎士団に配属が決まった。

 まあ浄化の力を外部に漏らさない為の処置でもあったそうだが結果オーライである。


 思わぬ出会いだったけれど最高の切り札を手に入れた事で未来に希望が持てた。

 未だに問題は山積みではあるけれど、アルフレッドと言う最強の切り札を手に入れたことは私にとってかなり気持ちを楽にさせた。


 だけど、まるで呪いにでもかかったように毎晩、自分が処刑される夢を見るのだ。

 予知夢、神からの救い、奇跡、などと人は言うが、私にとっては悪夢以外の何物でもない。

 見る度に思う。

 私はまだ決して安心できる状態ではないのだと。

 まるでそれを神様か何かが警告しているように思えた。


 一度と言わず二度三度と物語を変えてしまった。

 ならばと思う。

 どうせならば大きく良いように変えてやろう。

 小説のようにドロドロして多くの人の悲しみの果てから始まる恋物語なんて冗談じゃない。

 読む度に胸が苦しくなるようなそんな切ない話は必要ない。


 物語のメインは平民の中に現れた【聖女】の加護を持つヒロインか登場する事から様々思惑が動き出す。

 思惑はそれぞれ違う。

 ある者はその存在にあやかろうとした、ある者は単にその力を望んだ、ある者はただの興味本位だった、だがこの国、イシュガレリア王国の第二王子だけは違い、お忍びで出た街で偶然ヒロインと出会い惹かれ合うのだ。

 聖女としての才能を見抜くのも第二王子である。

 こうして二人は徐々に距離を縮めて惹かれあっていくのだ。

 【悠彼】のヒロインは本当に魅了スキルでも持ってるんじゃないかってくらい、色んな男達に見染められていく。出会えばみんな彼女に興味を持ち好意を抱く。

 ヒロイン特典のような、そんなものを持っている気がした。


 今の所、事件等は原作の小説通りだ。

 だけど、ポーションのレシピ等は小説には登場していない。

 秘薬としての存在はあるけれど回復系のアイテム等は作れる加護持ちは少なく大抵が教会に所属している為に市場に出回る自作回復薬はポーション(小)ですら高級品だ。

 モンスター討伐の際に稀にドロップする回復薬ですらも安くはない値段がする。

 命を守る為に必要な物だから多少値が張っても冒険者の殆どが用意しているようだが、稼ぎの少ない新米冒険者達はどうしても協会に行き順番待ちをして治療してもらしかない。


 教会は本当に命を盾にとる酷い商売をしていると常々思う。

 だからこそソレを何とかしたくて始めた薬品作りだった。

 駄目元でゲーム版の情報を参考にして作ったポーションは見事に完成した。

 

 これまでは加護持ちしか作れなかった物が希少な聖水さえあれば多少の魔力とレシビ習得さえしてしまえば調合スキルが同時に得られて作れてしまうようになるのだから。

 だけど、レシピ習得には魔力付与された専用のスクロールに私が魔力を込めて書き起こす必要があり、これがなかなか大変な為に今の所、元気な時にこまめに作ってはいるけれどそれでもまだ8つ位しか作れていない。

 基本的に小説版でもゲーム版でも習得系スクロールはダンジョン希少ドロップ品であり、ダンジョンでしか入手が出来ない為に市場に出回る事は稀で他のダンジョン希少装備品と同じかそれ以上な高額品である。 

 これは本当に凄い事である。


 5つは王家に謙譲した。

 残りの3つのうち1つは義父の頼みで王弟に譲渡した。王弟は物凄く感謝していたらしい。

 そして残りの2つは我がフレイムグラス専属商会となったケイムさんの商会にいる信頼できる人に譲渡して薬品づくりをしてもらう事になった。

 既にポーション(小)・ポーション(小)〔高品質〕・ポーション(中)・ポーション(中)〔高品質〕

と教会が販売出来ていない回復薬も製作出来ていて、この度新たにケスニア領地に出来た冒険者ギルドに所属する冒険者には格安でギルド購入する事が可能となっている。

 もちろん他所へ転売する者に対しての対策として、もしもそれを特定された場合は今後のポーション購入はギルドでは出来ず、商会等で通常価格での購入するしか入手手段が無くなってしまうリスクを負うことになる。


 話が脱線したけれど、とにかく、小説には登場しない製作版回復薬の存在からしてココはもしかしたらゲーム版の設定の世界なのかな?


 小説の人気がありすぎて乙女仕様のゲームが発売されたのだが、どちらかと言えばそのゲームシステムを継承しているようだ。

 つまり、今の所小説の世界であり、加えてあのクソゲーと呼ばれた仕様を搭載した世界と言うのが私の推測だ。


 もちろんゲーム版だってファンとしてフルコンプ済みだ。

 超難しくてただでさえ少ない睡眠時間をギリギリまで削ってクリアした。

 その仕様が適用それているとなるといよいよもって面倒になった。

 なにより、そうなってくるとヒロイン達の立ち位置も変わってくる。


 まずゲーム版は小説と違ってドロドロとしているのは各攻略対象の過去や置かれている状況下だったりで、病んだり苦しんでいる各攻略対象を励まして癒していくうちに恋愛へと発展させる物語だ。

 それとは違い原作小説は第二王子ルート一択の物語で二人が様々な困難や苦境の中で人として成長していくラブロマンス。

 クソゲー仕様なのにゲームが人気だったのは、本来は恋愛の出来ない人気キャラクター達と恋愛が出来ると言うことでファンは大いに盛り上がり女子達の間ではシナリオ等は神ゲーだと大人気だった。


 確かに実際恋愛ルートはどのキャラも信じられないくらい甘々だった。

 世界的にも原作小説とは真逆でそれこそドロドロ?なにそれ美味しいの?みたいな感じの終始お花畑モード全開の小説版に比べればかなり平和な世界だった。


 難しいのはミニゲームの戦闘だけ。


 どちらがこの世界の主軸なのかは原作開始時になってみないと分からない。

 ただ言える事は2つ。

 両方とも、領地侵略は行われ、領主一家は処刑されていると言う所だけは同じだった。

 そして各国の第一王子達も不運な死を遂げている。


 私は予知夢を使うと決めて物語を変えてしまった時から決めている事がある。


 よくある異世界転生系や異世界転移系では、自分以外にも同じような存在が現れるパターンは多い。

 どちらも互いにそうだと話合い、支援したり対立したりするのが定番だ。

 だけど、私は転生者であると言う事実を例え同じ状況の相手であったとしても絶対に認めないし話さないと決めている。


 転移者ならば仕方がないが私は転生者だ。

 前世の記憶があるなんて事は絶対に誰にも言わない。

 私はあくまでユフィーリアとしてこれからも生きてく。

 新しい人生を前世の続きにはしたくない。

 まったく別物なんだ。


 何故かなんて理由は、私かそうすると決めたらかの一言だ。


 これだけ盛大に物語を変えているんだ。もしもし似た存在が現れたら絶対に同郷だと疑われるだろう。それでも私はしらを切りとおす。


 例えこの世界が物語通りに進んでいるからと言って小説の世界だなんて思わないで欲しい。

 チート能力を持っていたって、そもそも小説やゲームの世界には前世の記憶持ちなんて人間は登場しない、そんな存在がいる時点で同じではなく類似した世界だと考えたいんだ。


 何も世界征服がしたいとかそんな大それた事を考えて前世の知識を使っている訳じゃない、あくまで自分が生き残る為に使っているんだ。


 似ているだけの違う世界。


 私はこの世界に生まれた人間。

 どんなに疑われても知らないを貫き通す。

 予知夢を見ているだけの、ただの子供。

 例え相手に、もしかして転生者?と疑惑をかけられたとしてもスルーして生きていくんだ。

 そう決めたんだ。




 朝、何時もの日課通りにテラスに出て外の空気を思いっきり吸い込んだ時、事件告知ランプ音がした。

 この音は私にしか聞こえていない、システム画面も私にしか見えていない。

 もしかしたら私と同じ転生者や転移者がいるかもしれない可能性を考えて一応警戒して出来るだけ隠している。


 【本日起こる事件】

 第一王子の親友であるルーディアスが乗馬授業中に乗っていた馬が蜂に刺された事で暴れ出す。結果落馬して足を負傷する。治療が間に合わずルーディアスは足が不自由になってしまった為に側近を断念する。


 ちょっと待ってである。

 王子の親友?誰が?え?ルーディアスが?

 初めて知った内容に動揺して頭が上手く働かない。

 ある事を思い出す。

 処刑された領主一家の中にいた子供は男女共に養子だった。領主の本当の子供は事故が切っ掛けで亡くなった。悲しんだ夫婦は翌年、跡取りになる男児を引きとったとあった気がした。

 詳しくは書かれてなかったけど、確か息子は自殺したとかなんとか。


 もしかして理由はこれなのかな?

 この事件が原因でルーディアスは学校辞める事にして領地に戻って、それから自殺するの?


 ああ、だから王子の特徴を知っていたのかと今更気が付いた。

 一年も気が付かないなんて、こんな見落としが今後あったらと思うと本当に怖くなる。

 とにかく今すべき事は決まっている。

 私はベッドから飛び降りると足をもたつかせながらも急いで魔水晶へと手を伸ばした。


 「にいさまッ!!!!るーにいさまぁああああ!!!!!」


 魔水晶が反応するまでの時間とても長く感じた。

 何度も何度も必死に呼びかけ続けた。



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