表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

63/63

気分変えていけ!!?

 翌朝。

 結局、あの後和室で雑魚寝した(横になった)ものの……色々考え過ぎてよく眠れなかった。


 紅牙との対話。

 羅刹のこと。

 幻夜の話。

 そして、彼方の()()眼差し──


 どこか、気づいて……気づかないふりをしていたのかもしれない。

 それでも。宗一郎()ではなく紅牙に向けられた、仲間たちの()()はどうしようもない。

 むしろ当然だと思う。

 ただ、ちょっと複雑な気持ちになるだけ……だけど、今俺が気にしても仕方がないな。


 それよりも──


「……よし」


 気持ちを切り替えて出発の準備だ。


 眠りは浅くとも体は休めた気はする。一応。

 ゆっくり体を起こし改めて周りを見回す…が、寝ていたのは俺だけ。

 もう皆起きて、囲炉裏()の部屋の方にいるのか?


 戸を開けると囲炉裏を囲んで朝食中の彼方と天音、そして人間成人verではなく子どもの鬼(以前と同じ)姿の篝。

 ……やはりあのままここを出たようで、幻夜は見当たらなかった。


「おはよ、宗一郎。朝ごはんできてるよ」


 篝がにこやかに勧めてくれて、席に着く。

 ご飯と味噌汁と漬物の質素朝ごはん。

 案の定、天音が文句を言っていたがしっかり食べていたので問題ない。もちろん、彼方も。

 俺も朝食をとって、予定通り刀匠の元へ向かわなければ。


 そんな中ふと、


「でも、まさか羅刹がね……」


 改めて呟いた篝に、彼方が複雑そうな…どこか悲しそうな苦笑をうかべると


「確かに“ 最期(さいご)”に残ったものだし、()()あるのかもしれないね」


「どういうことだ?」

 

 聞き返した俺に、天音は彼方をちらりと見て……小さく溜め息混じりに答えた。


「紅牙が最期…転生のための儀式するって言ってた場所に残ってたんだよ。それを幻夜が回収して、彼方が刀匠のところへ届けたんだ」


 天音の言葉に彼方が頷く。

 あぁ…だからあの時、彼方が()()て言ってたのか。


()()()()を知っているのはオレたちと刀匠(アイツ)だけ。……たぶん」


 たぶん、か。

 あ……もしかして、


「彼方の刀もその刀匠が打ったのか?」


「うん。で、オレが紅牙に()()したんだよ」


 天音も頷き、付け加える。


特殊武器(妖刀の類い)は基本的に紹介制で誂え品(オーダーメイド)。更に刀匠が認めた相手にしか造らない。あと、妖刀職人(刀匠)自体希少で、オレらが知っているのも二人。一人は実質引退状態、現役はもう一人だけだ」


 つまり、だいぶ貴重(レア)

 その説明に篝が苦笑まじりに


「ちなみに、使い手は三妖の上位にも何人かいるよ⭐︎」


 あー……そりゃあ、そうだよな。


 彼方の白銀(しろがね)

 紅牙の羅刹。

 あと、篝の妖金剛(はがね)もか?


 希少なはずの武器と使い手。身内にいる分には問題ない(心強い)

 問題は、今後上位の使い手(そいつら)と出会った時…戦うことになった時。……やばくないか??


 というか、その前に。

 三妖の上位に妖刀所有者が何人かいるって──刀匠が三妖の勢力争いに巻き込まれてるってことなのでは?


 そんな俺の問いに、天音が溜め息混じりに答えた。


「一応、妖刀を打てるような刀匠は種族での囲い込み禁止や刀匠の身の安全が確保されている」


 それが妖にとって、特に三妖間での暗黙のルール。

 ……確かにそうしないとだよな。

 どこまでの性能か分からないけど、いわゆるチート武器なんだろうから。


「というか、本人が滅茶苦茶強いんだけどな……」


「オレも最初、修行させられてるしね……白叡も道連れに」


 天音の言葉に、ぽそりとそう付け加えた彼方。


「え、彼方と白叡の師匠、ってことか?」


「んー…まぁ、そうともいえる……かも」


 俺の問いに、少し複雑そうな表情になる。


 どうやら俺たちがこれから訪ねるのは、職人気質の妖刀職人(刀匠)で自身もかなりの使い手。

 しかも彼方と白叡の師匠??


 どんな奴なんだろうか。

 あー、やっぱり不安──かもしれない。


 その後。

 

 隠れ家の入り口で篝と二人が少し話をしているのを眺めつつ、これからどんな道のりが待っているのかまたもや心配になる俺。

 どう考えても歩きやすい道中ではなさそう……少なくともこの森を抜けるまでも大変なのだが。


「さて、じゃあ…そろそろ行こっか」


 俺の方に振り向き、にこやかに言う彼方に天音が頷く。

 出発しようとする俺たちに


「宗一郎」


「?」


 篝が俺を呼び止め、その大きな茜瞳(ひとみ)で真っ直ぐに見つめると


「……大変かもしれないけど、()()()()からね」


 その言葉の意味を考えながら、


「──……うん」


 俺は短く返事を返すことしかできなかった。


 そして。

 篝と別れ、隠れ家を出発した俺たち。

 森を抜けるために悪路を先頭に彼方(+白叡)、俺を挟んで後に天音でズンズン進んでいく。


 ()が初めてこの森に来た時も思ったが、相変らず富士の樹海を思わせるほど出口どころか方角すらもよく分からない。……いや、樹海に入ったことはないけど。


 そのまま、しばらく歩いただろうか。

 ずっと獣道のような悪路。俺一人なら確実に迷って一生この森を彷徨いそうな気すらする中……


「宗一郎、最初の時(この前)よりだいぶ楽そうだな?」


「あぁ…うん。前よりは楽かもしれない」

 

 後を歩く天音の言葉に、俺もちょっと複雑な気持ちを抑えつつ頷く。


 確かに以前来た時より、この森を歩くのが楽な気もする。

 疲れにくい、というか感覚が違う……?

 もしかして、身体(からだ)の妖化…体質的に変わって……いや、戻ってきているということなのか。喜んでいいのかは微妙かもだけど。


 すると、前を歩く彼方が笑顔で軽く振り返った。


「じゃあ、もう少しスピード上げても大丈夫そう?」


「いや、このくらいのペースで!!」


 思わず食い気味に言い切ってしまったが、ここで大丈夫と言ったら……下手したら地獄を見るはめになるのは分かっている!


 とはいえ、無言で歩いているとどうしても疲労を意識してしまう。

 なんとか話を……あ、そうだ


「なんで篝は来なかったんだ?」


「あー、鬼側の情報仕入れてくるってさ」


「……あと、篝は苦手なんだって。(さとり)


 天音の言葉に、彼方が前を向いたまま苦笑混じりに付け足した。


「え!? ()()篝が苦手……?」


 それでなくとも前情報が濃いのに、あの篝が苦手とするような人物ってどんなだ?

 さっき話してる時そんなそぶりしてたっけ?


「え……と、これから訪ねる刀匠って……覚…ていうのか?」


「あ、名前じゃなくて、“覚”は妖の種族。聞いたことある?」


「…………いや?」


 覚という妖怪()は少なくとも俺は初耳。

 そんな俺に今度は天音が


「確か…人界では“ 思考(こころ)を読む妖怪”てことで知られてたと思うぞ」


「考えてることが読める……!?」


 それは白叡が中にいて考えを聞かれるのとはわけが違うよな…?

 理解が追いつかない俺に彼方は苦笑をうかべたまま


「実際読んでくる……だろうけど、普段は読んでこないから大丈夫だよ。たぶん」


 ……読んでくるのか。


「まぁ……会ってみれば分かるよ。……あ」


 小さく声を漏らし、足を止めた彼方。次の瞬間。


「しっ……!」


「!?」


 いきなり後ろから天音に口を押さえられ、そのまま木々の陰に隠れさせられた!?


「……っ……?」


 彼方も同じように身を隠している。

 何かあったのは分かるけど、状況が掴みきれない俺に天音が小声で


「……とりあえず出来るだけ気配消せ」


 そんなこと急に言われてできるわけがない!!

 と言うわけにもいかず、口元を押さえられたまま小さく何度も頷いて息を潜めるしかない俺。

 すると二人の視線の先から、草藪や枝葉の擦れる音が近づいてきた。


「……たく! ほんと忌々(いまいま)しい結界ね!!」


 ……? なんか、聞いたことある声だな。この……微妙に低い声。



 ガサッ



 その時、少し先の生い茂った草木を分けながら歩いていった人影……猫耳ツインテールと2本の揺れる尻尾にゴスロリ調アレンジ和服。


 …… 蘭丸(らんまる)!?


 ただ……俺らには気づかなかったのか、最初から興味がなかったのか。

 一人でプンプン怒りながら、荒々しく歩いていった。


 完全に姿が見えなくなってしばらくしてから、ようやく天音が俺を解放し、


「……アイツ、またこの辺うろうろしてるのかよ」


 呆れた溜め息混じりにそう言うと


「まぁ、結界で迷ってるみたいだし……良いんじゃない?」


 彼方が苦笑をうかべていた。それって、所詮自分らには関係ない、と言う笑顔……だよな。


 おそらく、結界管理の幻夜は気づいていそうだし、ターゲットの篝にとっては面倒であっても危機ではないだろうから、問題はないのだろう。

 

「──……まさか、蘭丸じゃねぇよな」


 ボソリと呟いた天音。

 その言葉の意味って……


 あ。

 十六夜の言葉を思い出す。


“この森、君らの隠れ家(アジト)がある()()()じゃん?”


 つまり。この森に隠れ家があることを聞いたってことだ──そのことを知っている人物から。 


 ()()が蘭丸だと?

 そういえば前に猫又(ねこまた)は鬼の傘下だって言ってた気がする。

 だが。


「んー……違うんじゃない?」


 彼方は軽く答えたが、少なくとも、その言葉に天音は納得したようだった。


「まぁ…… 蘭丸(アイツ)はしねぇか」


 確か蘭丸は、一族とか組織とか関係なく単独で動いているっぽいことを言ってたしな。

 何より、鬼の動向より篝(の命)を手に入れたいだけみたいだし。篝にとっては迷惑な話だけど。

 

「よし、行こっか」


 蘭丸の気配が遠のいたのを確認した彼方は何事もなかったようにそう言うと、再び歩き出す。

 

 そのまま道に迷う蘭丸を無視し、歩き続けること体感十数分──俺たちはようやく森を抜けた。


 その時。


「……?」


 一瞬ふわりと漂ったのは、妖艶な香り?


「「!!」」


 俺が彼方たちに声をかけるより早く、張り詰める空気。

 二人の視線の先を辿る。と、木の影から現れたのは──()()グラマラスな美女だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ