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戦闘(ヤル気)スイッチ!!?

 風が吹いた──。


 それはあまりにも冷たく、体…いや魂までも凍らせてしまいそうな冷気。


「オレたちは変わらない。昔も今も」


 彼方の言葉には強い意志が宿っていた。

 そして、琥珀色の瞳が金色へと変わっていく。


「──……“ 白銀(しろがね)”」


 彼方の言葉に応えるように、その左手に突如現れた一振の刀。


「……日本…刀…?」


 白い(さや)に納められたその刀を(ベルト)へ差し、ゆっくりと構える。その姿に、


「あー……マジモードだな」


「スイッチ入れちゃった(アイツ)が悪いんじゃないかい?」


 呆れたように言いつつも、どこか楽しそうな天音と幻夜。

 そして篝もウキウキした様子で俺を急かすように


「宗一郎、とりあえずここじゃ巻き込まれる! もう少し離れるよっ」


 そのまま二人から少し離れた距離かつ様子が見える所まで移動した俺たち。


「幻夜くん、結界」


「はいはい……」


 篝に当然のように言われ、溜め息をつきつつも結界を張る幻夜。


「まぁ、今回は妖気放出確定だろ」


『……だろうな』


「彼方ちゃんが白銀(アレ)出しちゃってるしね」


 俺からの妖気放出に備えて強められた結界。理由は簡単──彼方が戦うから。


「僕も久しぶりに、白銀出した(やる気の)彼方クンを見たな」


「いや、オレもよ?」


『確かに……久しぶり…かもしれん』


 クククと笑う幻夜に、天音も苦笑をうかべ白叡までも複雑そうな表情で頷くと


「それはどうなの」


「仕事してないってことかい?」


「…………あー…平和だったってことにしといてくれ」


 篝と幻夜の的確なツッコミに諦め気味の溜め息をつく天音。

 少なくとも好戦的な篝を抑え、滅多に出さない刀を出してまで自分が戦うってのは、たぶんすごくレアなんだと思う。


 緊迫した場面のはずなのに緊張感どころか明らかに楽しそうにしているのがこいつららしいといえば、()()()のだが。

 それでも、これから行われるのは紛れもなく“死闘”。


 対峙する鬼の実力者(十六夜)天狗軍副大将(彼方)──改めて二人へと視線を戻す。


 静かな睨み合い。二人の殺気がぶつかり合っているように見える。


「ほぉ。これはこれは…“天狗軍随一の速さと剣技”と名高い、天狗軍副大将殿がお相手とは……光栄だなぁ。どうせ皆殺しの予定だったし、順番が変わるくらい許してあげるよ?」


 十六夜は好戦的な笑みでその口元を歪めた。


「……」


 いつもにこやかな彼方の表情から完全に笑みが消え、その金瞳(ひとみ)はあまりにも──冷たくて。

 無感情……いや、無機質なものだった。


 ──背中に冷たいものが流れるような感覚。

 そこに立つのは“天狗軍・副大将の彼方”であって、()が知る“彼方”とは違うのか?


「副大将殿、元の姿に戻らなくて良いのかい?」


「──このままで十分」


 言葉(そこ)に感情は感じられない。

 彼方は刀こそ出したが人間verのまま。つまり、十六夜相手に()()を出すまでもない、ということ。

 それが十六夜の(しゃく)に触ったようで


「舐めてくれるねぇ…… 天狗(格下)のくせに」


 歪んだ笑みで言う十六夜に、変わらぬ無表情と沈黙で応える彼方。

 

「どうやら、自分の立場ってもんが分かってないらしい……!」


 そう唸るように言った十六夜の殺気が一気に高まる。

 妖気が一瞬で一面に広がり、地面から湧き出る黒い妖気と共に土が盛り上がると…次第に人型へと変わっていく。


 それが何体も…1、2、3……ぱっと見10体はいる?

 その土人形それぞれの両腕が刀状に変わり、 彼方に次々と襲いかかる!


 が。


「え……?」


 ──俺はこの目で見るまで…まだどこか信じられないと思っていたのかもしれない。何なら疑ってすらいた。

 だが、彼方の強さは()()で……圧倒的だった。


 状況的には多対一。

 敵は、元土とはいえ鬼の妖力と戦闘力なのは間違いない。

 それでも不利な様子も危なげない様子も皆無。


 続け様に迫り来る土人形の攻撃が彼方に当たるどころか(かす)ることもないまま、土人形の首を次々に()ねながら十六夜との間合いを詰めていく。


 まず妖気自体に辺り一体を一掃するような大きさ…圧と強さを持っていた。

 そして動きが早いのはもちろん、その刀(さば)きが今まで見た誰よりも素晴らしかった。

 流れるように次々と確実に相手の急所()を刎ねていく。

 おそらく首の主はいつ胴体と切り離されか分からないんじゃないだろうか?

 風が吹き抜けたと感じた瞬間にはもう遅いのだから。


天狗軍(うち)のNo.2を舐めてもらっちゃ困る」


 そう呟く天音はどこか誇らしげにも見えた。


 まぁ、でも。

 こいつらが楽しそうな理由は何となく分かる気がする。

 彼方が自主的に戦うことがレアなのもあるだろうけど、純粋に()()が戦うことが激アツなんだろうな。

 俺の中で確実に()()を感じる。……もう否定しようがない。


 その時だった。



 ──ドクン…ッ



「!?」


 心臓が痛くなるくらい鼓動。体温が上がっていく感覚。

 同時に俺の身体から淡く青白い光が──?


「宗一郎、できるだけゆっくり深呼吸だ」


「…ぅ……ん…っ」


 かろうじて耳に入った天音の言葉になんとか深呼吸をしようとするが上手くできない。

 視界がかすんでいく……だが、目が離せない。


 彼方の動きに、剣技に魅せられ、追ってしまう。

 俺の意思なのかもよく分からない。ただ。


 ああ…その強さ、美しさを()()()()()……?

 俺は……俺……は…また……あいつと…………!


「宗一郎、落ち着いて! 深呼吸!」


「──ッ!?」


 篝の声でハッと我にかえる。


 今の気持ちは……紅牙? 

 まさか、俺?


 戸惑いつつも改めて深呼吸を繰り返し、呼吸を整える……と


「……え……?」


 俺から出ていた青白い光(妖気)が次第に妖力制御腕輪(バングル)へと吸収されるように光が収束していってる?


「流石に、彼方が戦ってるの見たら反応するよなぁ」


 俺と腕輪の様子を見ながら納得の表情で言う天音。


「ソレ、しててよかったね」


「とりあえず抑えきれる程度で済んでるようならよかった……」


 腕輪を見ながら言う篝たちに俺はとりあえず頷き、再び彼方たちに視線を戻す。


 映画とかで見る殺陣(たて)シーンが目の前で繰り広げられている。しかも仲間(彼方)が圧勝で。

 倒したと思えば新たに出現した土人形数体に囲まれる。だが、次の瞬間ほぼ同時に全ての首が飛ぶ。

 

 刀が妖気を纏っているのか?

 刀捌きはもちろんだけど、それ以上の攻撃力なのは妖気のせい?


「彼方の武器って刀だったんだな。でもなんか普通の刀と違う感じが……?」


「あぁ、彼方クンのは刀自体が妖気を持ち、使用者の妖力に反応したりする。所謂、“ 妖刀(ようとう)”とも言われている刀だよ」


「妖刀?」


 幻夜は頷きつつ説明を続ける。


「そもそも妖刀というのはそれ自体に妖力があったり、使い手の技量と妖力を最大限に引き出し増幅させるモノだ。逆に、下手な使い手では刀に呑まれる」


 “妖刀”て、ファンタジーな印象はあるけど…総じて()()イメージだったが、どうやらイメージ通りらしい。

 今までもいろいろな武器を見せられてきたけど、まさか妖刀を見る日が来るとは……そう思いながら二人のやりとりを見る。


 土人形たちが首を刎ねられ黒い霧となっていく中、ゆっくりと十六夜に近づく彼方。

 その手にある白銀()の刃は青白く、淡く光を纏っている。


「へぇ……やるじゃん」


 動揺をその笑みに隠し、十六夜も日本刀を抜き構える。

 二人の動きが止まった。


 ──次の瞬間。


 一気に間合いに入り十六夜が()りかかる。が、そこに彼方はいない。


「な……っ!?」


 俺が目で追えたのは斬りかかった瞬間に十六夜のスピードより速く彼方が通り過ぎただけ。

 十六夜の刀が空を斬り、その後ろから


「……所詮はザコ、だっけ?」


「!」


()()のザコは、お前」


 彼方の白銀が煌めく。

 


 バキン……ッ



「── な…に……ッ!?」


 咄嗟に首を守ろうとした十六夜の刀を斬った……と思ったのとほぼ同時。


「…ば……これが……天…狗……副大…し…」


 驚愕の表情をうかべたまま飛んだ十六夜の首。

 少し遅れて血飛沫とともに崩れ落ちる体も、やがて黒い霧となって消えていった。

 

 あっけない十六夜の最期(さいご)

 そう見えたのは、桁違いの実力差。


「……刀ごと…首を……?」


 首を切られた十六夜(本人)はもちろんだろうが、それを見ていた俺も驚きで目が離せなかった。


 これは刀が妖刀である以前にその速さと技が違う──これが…天狗軍副大将……!

 スピードと剣技は軍随一といわれるのはダテじゃなかった。

 普段の彼方がどうであれ、これを見せられては疑いようがない。

 鬼の実力者(十六夜)は彼方の敵ではなかった。少なくとも、ヤル気を出した彼方には。


 黒霧が完全に消え去ると白銀を鞘へと納め、(きびす)を返す。


「あー…疲れたぁ……」


 力なく呟きながらゆっくりとこちらへ歩いてくる彼方。

 その手にはもう刀はなく、瞳はいつもの琥珀色に戻っている。雰囲気もいつもの柔らかな彼方そのもの。


「はいはい、お疲れ様⭐︎」


「お腹空いた……」


「さっきおにぎり食ってたろ」


 嬉しそうに迎える篝。しょんぼり顔の彼方と呆れ半分でツッコむ天音。その様子を笑顔で見守る幻夜。

 戦っていた時との違いというか、彼方の落差がすごくて正直戸惑う俺。


『……()()()()()()なら、慣れろ』


 白叡が溜め息混じりに小さく俺に言った。

 紅牙がどう思ってたかは分からないが、慣れても納得は出来ないだろうな。


「彼方の武器って妖刀だったんだな」


 改めて言った俺に、彼方は頷くと


「うん。白銀はオレのだけど、紅牙のも妖刀だよ」


「え、紅牙の武器も刀…しかも妖刀なのか!?」


「刀の種類で言うと白銀(打刀)より大きい大太刀(おおたち)だけどね。紅牙の妖刀は“ 羅刹(らせつ)”ていう──」

 

「!?」


 彼方のその言葉を聞いた瞬間、俺の中を駆け抜けた電流のような衝撃。


「ら…せつ……?」


 あれ……?

 なんだ…この……感じは……?



 グラッ……



「ちょ…宗一郎!?」


 視界が歪み、皆の声が遠くなる。

 俺はそのまま意識を手放した──。


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