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第9話 勝手にしやがる

 そもそもカナは何でこの部屋に入り浸るようになったのだろうか。商店街で彷徨うカナを見つけたのが始まりだっただけなのに。


「カナさんに聞きたいんだけど」

「うむぅ! 何でも答えちゃうぞ!」

「商店街で彷徨っていたのって、俺を見つけるためだったりした?」


 カナは俺のバイト先である小型スーパーの常連。だが俺がカナに気づいたのはつい最近になってからだ。


 今まで俺が全くカナに気付いてないのも妙だったわけだが、俺の動きを全て把握したうえでの行動だとすれば、彷徨う動きは偶然じゃないことを意味する。


「バカを言うでない! どんなにすばるくんのことを好きだとしても、見知らぬ人が行き交ってる商店街で見つけ出せるような特殊能力は兼ね備えていないぞ」


 ――だよな。

 カナにそんな特殊能力があっても困るけど。


「でも、俺がスーパーでバイトしてたのは前から知ってた?」

「うむぅ……勤労少年の頑張りを陰で見守っていたのは認めちゃう。だがしか~し! 張り込みなんてしてないから安心するがいい!」


 声優の専門学校に行っていたカナは、俺のバイト先にたまたま買い物に来ていた。


 そこで偶然にも俺が働いていることに気づき、そのまま常連になって俺が出て来るところを見計らって彷徨っていた。

 

「うーん……」


 運命の再会なのか、それとも……?


「何だい? すばるくんはあたしの行動を疑っているっていうのかい?」

「そりゃそうですよ。偶然な再会ってよっぽど奇跡が起きないとだし、全てそうなるように仕向けていたとしか思えないんですよ~」

「はぁぁ~すばるくんがあたしを……ショックだ~」


 俺の言葉にカナは肩を落とし、がっくりとうなだれている。


 やばい、本気で落ち込んでいるじゃないか。


「い、いや、そんなそんなつもりじゃ……ただ、カナさんってアホっぽく見せといて実は賢いから計算尽くで再会したのかなぁと」

「なんだいなんだい!!」


 部屋に入れることを簡単に認めるのも予定通りだと思っていそうだし、そこははっきりさせとかないと。


「だから、この部屋にカナさんを居候させるのには俺が感じてる疑問を解消してもらわないと厳しいのかなと」


 趣味部屋と化している部屋にいてもらうのも気が引けるし。


「おうおうおう! あたしが何も出来ないし言わないと思ってマウントを取りやがってぇぇ!」

「そういうことじゃなくて……」

「いいさいいさ、すばるくんがスッキリさせたいって言うなら、あたしはあたしで勝手にしやがるからな!! このわからず屋のすけべなすばるくんめ!」


 意味不明な逆ギレすぎるだろ……。


 実家に帰らない理由と事情は分かったけど、カナが住んでるマンションがそもそもどうなっているのか。それらをきちんと片付けてもらわないと、俺がどうこう言えるわけないんだよな。


「ええい!! あたしは出ていくかんな! 止めるでないぞ!!」

「あ、はい」


 そう言いつつ、俺が引き留めることを期待していそうだ。だがとりあえず冷静になってもらう為にも今は静観しとく。


「ゴラァ! あたしを止めろ~!!」

「カナさん、落ち着いて。部屋に来るなって意味じゃないんで、冷静になってからでも……」

「ぬうう、覚えてろよ、このすっとこどっこい!!」

 

 勝手にすると言い放ち、カナは怒り狂って俺の部屋から出て行ってしまった。料理のことはともかくとして、部屋の問題のことはそう簡単じゃない。


 今はとにかく頭を冷やしてもらおう。


 明日になったらなるべく近づきたくないし話しかけたくも無いけど、カナの事情について妹のあいつにでも聞いてみるしかなさそうだ。

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