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第26話 恋敵エンカウント 3


 駅に向かって歩いている途中、カナは俺に腕を絡ませてあえて見せつけるように密着してきた。人通りが多い繁華街とはいえカナはかなり目立つだけに、俺だけが周りからの視線に耐えられなくなりそうだった。


「あー、少年。駅で待ち合わせしているキイちゃんのことはどう思ってる?」


 俺に対する呼び方は未だに不安定だが、『少年』と呼ばれても決して他人行儀という感じではなく、むしろ幼い時からの名残のせいか違和感は無い。


 逆に俺の方はそろそろ変える必要がありそうか。


「どうって……俺はもの凄く嫌われてるだけですよ。カナさ……カナのことでだけど」

「うーん。それは本当にごめんよ。姉溺愛にしても溺愛過ぎる原因を作ったのはあたしだから、少年には頭を下げるか胸を揉ませることしか出来ないよ」

「も、揉み……ませんって!!」


 ちょいちょいオヤジギャグを入れてくるけど、バイトの影響か? 看板持ち以外にも色々やってるっぽいし、変な知識を取り入れてそうだ。


「原因ってやっぱり、すぐに実家を出たこと?」

「う……ん。すばるくんみたいに一人暮らし出来ていればあんなにはならなかったと思うんだけど、あたしが早くに家を出ちゃったから寂しくさせすぎたのかも」


 それにしたって俺のことを嫌いすぎだと思うが。


「全く家どころか、キイにも連絡してなかったんだっけ?」

「ん。今になって反省だぜ……。あたしの気持ちを尊重してくれると思っていたのに、まさかだよ」

「……駅でいきなり叱らない方がいいよ。多分、俺のことはともかくカナには目も合わせづらくなっているはずだし」

「むむむ……すばるくんのために努力するぜ」


 ――――


 夏場原改札前に二つの影がいて、お互い気まずそうに話している。


「ごめんね、失敗しちゃった~。もっと時間をかければよかったんだけど、やっぱり準所属になれる人には強く言えないよ。わたしとはオーラがあまりにも違い過ぎて……」

「いえ、いいんです。無理なことはあいつと再会した時から予感してたので。同じ専門学校に通っていただけの木ノ本さんには無理を言いました。ごめんなさい」

「もうすぐここに来るんだよね? どうするの? もし二度と許さないって言われたら……。そしたらわたしも一緒になって頭を下げるよ?」

「…………それは」


 ――――


 カナにがっちりと腕を掴まれながら、駅に着いた。カナの話によればキイは改札前で待っているらしい。


 いよいよあいつと最終対決か?


 そうなるとカナは妹をこっぴどく怒ることになるんだろうか。思わず隣を歩くカナを見つめてしまう。


 すると俺に見られていることを察したのか、カナは突然周囲をきょろきょろと見回し始める。


 直後、


「……あったあった! すばるくん。あたしはちょっとだけ消えるぜっ! すぐ戻るから泣くんじゃないぞ?」

「えっ? ちょっ、どこへ行――」


 というか、いなくなったくらいで泣きはしないんだが。


 さっきまで腕を絡ませていたのに、カナはするりと抜けてどこかへいなくなった。


 そして数十分後――。


「メガネ? というか、何か全体的に着替えてる? 何故に……」

「ふふふ、少年。あたしのことは今から、お姉ちゃん先生とお呼び!」


 こ、このセリフはまさか? 


 それにカナの格好はメガネにスーツパンツ、そしてウイッグで足したポニーテールな髪型……どう考えても寄せてきている気がしてならない。


 俺が何度も見まくったお気に入りのマル秘アニメのヒロイン。というか、主人公とも言うべき女性になりきっているようにしか見えない。


 お姉ちゃんが先生なアニメ――。略して≪おねティー≫。部屋に入り浸らせていたとはいえ、俺がいる間は一切見せたことが無かったアニメだ。


 しかも厳重に隠した円盤(ディスク)だから、カナがそれを再生出来ているはずが無いのに……。


「見惚れるなよ、少年! 今から敵を(あざけ)り笑いに行くんだからな! あたしが君を守ってやるから、堂々としているがいいさ!!」

「う、うん」


 ただでさえ()()がいいカナがメガネをかけるだけで、途端に理知的な女性に見えるのは反則級すぎる。


 その姿で命令されたら何も言えなくなるのは、俺が理想としているヒロインそのものすぎるからだ。


 そんなカナの格好とヒロインセリフが気になりつつも、戦闘準備が整ったところで改札前に着いた。


 そこにいたのは――


「お、お姉ちゃん……」

「あははは~ど、どうも~……」


 などと、逃亡したはずのみのりとキイが二人揃って待っていた。黒幕というかこいつしかいなかったけど。


 二人の反応は分かりやすく、あっさりと非を認めた態度を見せた。そんな彼女たちに対し、カナは何を言うつもりなのだろうか。

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