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第24話 恋敵エンカウント 1


「え、まだ買うの? そんなに食料買いこまなくても、俺が……」

「ん~? 少年のくせに生意気言うじゃないか! お姉さんを甘く見るなよ? こう見えても年下にお金を出させないくらいの資金はあるんだぜ?」


 その割には看板持ちとかしてるし、住んでいたところを追い出されているのはどうしてなのか。


 ――とはいえ、カナがバイトをしてるところを本人に言えるはずも無いけど。


「それならいいけど、後はもう帰るだけですよね?」

「んーとね、駅に人を待たせてるんだよね、実は……」

「だ、誰を?」

「腕をふるってご馳走しちゃうって言っちゃったら、行きたい! って返事がきたのだよ」


 肝心の誰かを言おうとしないということは――


「――というか、カナさんが作る……の? 料理するのは俺でいいって――」

「今日はすこぶる機嫌がいいあたしに全て任せな! 気持ち良くさせてくれたお礼だぜ!」

「ちょっ!? こんな人通り多いところで危ない発言は駄目だって!」


 カナが買い込んだ食料を両手に、俺たちは駅に向かって歩いている。


 夏場原に二人でいるというのも妙ではあるものの、コスプレショップがある場所はここくらいだから仕方が無いと言えば仕方が無い。


 それはいいけど、駅で待ち合わせしてる奴が気になる。カナの口ぶりから言っても、天敵であるあいつしか思い浮かばない。


 それなのに、


「少年が迷子になったら嫌だから、こうしてやるぜ! てぇいっ」

「うぇっ!? な、何で腕を組んでくるの?」


 カナの両手にはそこそこ重量感のある買い物袋が垂れ下がっているのに、何とも器用に腕を絡ませてくる。当然だが、腕を絡ませてきたことで俺にも買い物袋の重みが加わった。


 買い物袋の重さとカナの腕絡ませで思わずよろける。


「お、重い……」

「情けないぞ、少年! この前も思ったけど、すばるくんは体力が無さすぎるぞ。スーパーでバイトしてるのに何でなんだい?」

「そりゃあ、いる間に重い物ばかり持つわけじゃないからでしょ。っととと……」

「んん~危なっかしい子だなぁ。しょうがない! お姉さんの胸を貸してあげるから、遠慮なく寄りかかりたまえ!」


 ――え?


「む、胸を? 貸すって何?」


 またしても往来で危険な発言を放ってくるな。油断したら駄目なタイプかよ。


「だから~、よろける少年を転ばせるわけにはいかないから、倒れそうになったらあたしの弾力ある胸にもたれかかってオッケーなんだぜ!」


 そう言いながらカナの方から弾力性抜群の胸を押しつけてくる。確かに柔らかさのおかげで倒れる心配は無さそうだが。


 やはりどうしても人目が気になるし、駅に近づきつつある以上これはよろしくない。


「……くっ、ふんぬっっ!!」

「おぉ? 本来ならよろけまくるのに、力を出すなんてどういうことかな? あたしの胸を貸すって言ってんのに、何て残念な……」


 さすがに人前で堂々と年上の幼馴染に甘えるわけにはいかない。そもそも俺とカナは()()()()関係じゃない。


 ともかく年は関係無いとしても、カナの力の強さは俺とはけた違い。これまで一体どんなことをしてきて強くなったのか。


「そ、そんな手には乗りませんよ!」

「……なるほどね。すばるくんが()()()だからあの子が怒るのかなぁ?」

「……ん? あの子ってやっぱり――」


 そうしてカナの顔をまじまじと見つめながら問い詰めようとすると、


「あれぇ~? ちかくんだぁ~! 偶然すぎなんだけど~」


 カナの顔の後ろを通りがかった人物からの声が響く。


「女の声でちかくん……だと? すばるくん。まさか浮気か!?」

「浮気も何もないでしょ。そうじゃなくて、あ……」


 そういえば彼女はカナのことは知ってる風ではあったものの、お互い面識がないとか言っていた。この出会いはどういう感じになるんだろう。

 

 そんなことを思っていると、まるで挑発するかのようにして彼女は覗き込むようにカナの顔を眺めだす。


 直後。


「あー! 小桜カナだぁ~!」

「……いかにもあたしは小桜ですけど、誰? そしてこの男の子とはどういう関係?」


 カナの口調がいつもと違う。これはいわゆる"外"モードとかいうやつだろうか。駅で奴が待っているだけでも厄介なのに、何でここで遭遇してしまうんだ。


「ちかくんとは……どういう関係なのか聞いてもいいですかぁ~?」


 すでに知っているはずなのにこの態度は、一体どういうつもりなんだろうか。

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