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第17話 ライバル現る? 1


「えぇ? 一人で行けないから付き合え? 何で俺?」

「ばーか。あんたしかいないからに決まってんでしょうが!」


 アパートではカナにいいように弄ばれたとしても、学校に行けば凶悪な妹の呪縛から逃れられる――そう思っていたのに。


 昼休みの終了間際になって、キイはまるでモーセの海割りのごとく男子の集団をいともたやすくのけ反らせ、一直線で俺の元へと突き進んでくる。


 何ておそろしいんだ。


 それはともかく。


 どうやら隣町のイベントに行きたいらしく、何故か俺に声をかけてきた。この光景にはクラス中の男女とも驚きを隠せずにいるようで、俺は一気に注目を浴びている。


 内容的に大したことでは無さそうだが、キイは俺に極力近づきたく無いようで顔を背けつつ、誰かに聞かれたくないのか微妙な距離で詰めてきた。


 何なんだよこの図は。


「いや、お前はぼっちの俺と違って、友達たくさんいるだろ? 彼女ら引き連れて行けばいいだろ。俺のことはその辺のモブとしか思って無かったんじゃなかったっけ?」


 俺は決してぼっちではないが、カナから伝え聞いているのであえて言ってみた。


「え、ぼっちなんて誰が――あっ……」


 どうやらカナに陰口を言っていたことをすぐに察したらしく、少しだけ気まずそうにしている。


 もっとも、俺に()()()()()()を見せるのは初めてなわけだが。


「……それで、どこに行くって?」

「もっと耳を近づけてよ」

「え? 耳を?」

「絶対触れない距離で。絶対触れるなよ? かすったら殴るから」


 無茶言うな。


 しかも俺が聞く側なのに、何でここまで気を遣わねばならんのか。


「……声優イベント?」

「悪いけどあんたは声に出すな。禁止。わたしから聞いたことは他言無用。誰かに言ったらボコるからね?」


 見た目が美少女なのに残念にも程がある。しかし声優のイベントとなると思い当たるのはカナの夢の話だ。もしかしなくてもカナが何かやるのか。


 こそこそ話を強制的に聞かされ自分の席に戻ると、さっそく横山や他の男子が話を聞きにやってきた。


「すばる。冷血女子、なんだって?」

「別に大したことじゃない……」

「何だ、そうなのか?」


 横山は何かを察したのかすぐに話を変えようとするが、


「嘘つけ! ()()小桜が天近(あまちか)に口を近づけるなんてあり得ねえぞ?」


 口を――そう見えたのか。それはおそろしいな。


「本当に大した用じゃなくて、あいつは俺をボコりたくて仕方が無いらしくていつがいいか聞いてきただけだ」

「うっわ……こわっ」

「そういうことだし、期待したようなことには絶対に無いから気にしなくていいよ」

「お、おぉ」


 横山以外の男子は基本的に滅多に話しかけてくることがない。だが横山からの話によれば、あの小桜キイに唯一ちょっかいを出しているのは俺だけらしく、内心うらやましいとかなんとか。


 危うい空気になりかけたが、上手く誤魔化して放課後を迎えた。駅に向かってはいるものの、お互いかなり離れて歩いている。


 かろうじて声は拾えそうだが。


「――で、これからどこへ?」

「隣の……夏場原。駅前の夏場ODXでイベント……」

「ということは、サイン会かステージってとこか。もしかしてカナがそこに?」

「知らない。とにかくあんたは黙ってついてくればいい。話しかけないで」


 話しかけずに同じ場所に行くとか、意味不明だな。しかも同じ電車に乗っても、車両も別々に乗るとかどれだけだよ。


「悪いけど、ここからあんたの袖を引っ張りながら歩くから。ゆっくり歩いて、言われたところに進んで」

「……了解」


 可愛いけど性格が可愛くない。


 カナがいるかどうかは不明だが、とにかく言われた通りにしないと命が危なそうだ。

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