おばけのえんぴつ
「第4回小説家になろうラジオ大賞」参加作品です。
パパが出張なので、りっちゃんはおばあちゃんの家にお泊りです。
真夜中、りっちゃんはそっと布団を抜け出して、秘密の友達に会いに行きます。
古い子ども部屋でふわふわ待っていたのは、白くて丸っこいおばけ。
おばけと初めて会ったのは、ママがいなくなって泣いてばかりいた頃。
今では大の仲良しです。
「今日は何して遊ぶ?」
「ゆうびんやさんごっこ! りっちゃん、じがかけるようになったんだよ!」
「わぁ素敵」
りっちゃんは折り紙と鉛筆を取り出しました。
鉛筆はママが元気だった頃に買ってくれたものです。
折り紙の裏に手紙を書いて、丁寧に折ったら完成。
「ゆうびんでーす」
「はーい。『おばけさん いぱいあそぼおね』。ふふ、喜んで」
二人は顔を見合わせてにっこり。
「お返事書きたいな。わたしにも字の書き方教えてくれる?」
「いいよ!」
りっちゃんは大張り切り。
「これ、りっちゃんのなまえ」
りっちゃんは折り紙に りつ と書いて見せました。
り はまるで い みたい。
つ は逆さまです。
おばけがそれを真似っこします。
「じょうず!」
パチパチと二人で手を叩きます。
ふと、りっちゃんが言いました。
「ママにもおてがみかけたらいいのになぁ」
おばけは丸いお目々でじっとりっちゃんを見ました。
「今度はわたしが郵便屋さんね。りっちゃんのママにお手紙届けてあげる」
「そんなことできるの?」
「おばけはどこにだって行けるんだもの」
りっちゃんは目を輝かせて頷きました。
「その鉛筆でわたしの体にお手紙書いてくれる? 折り紙は持って行けないから」
りっちゃんはおばけの体に、ママへのお手紙を書きました。
ママ
だいすきだよ
「できた!」
「じゃあ行ってくるね。ちゃんと届いたら印が現れるからね……」
そう言ってにっこり笑い、おばけはすうっと消えました。
朝、目を覚ましたりっちゃんは子ども部屋へまっしぐら。
昨日の折り紙と鉛筆。
けれど印らしいものは見当たりません。
がっかりしながら折り紙を見たりっちゃんは、あっと声をあげました。
そこにあったのは、おばけの体に書いたはずのママへのお手紙。
だけどもう一文字、りっちゃんは書いていない文字があるのです。
い みたいな り と、逆さまの つ。
それが重なって、転がって。
現れたのは……
ママ も
だいすきだよ
「ママからおへんじがきた!」
りっちゃんはほっぺを真っ赤にして飛び跳ねました。
それっきり、おばけが現れることはなかったけれど、りっちゃんの元にはその不思議なお手紙が残ったのでした。
お読み頂きありがとうございました。
〈蛇足かもしれないあとがき〉
*りっちゃんの性別は、男女どちらでも、お好きな方でイメージして頂ければと思います。
*おばけさんはどういう存在なのか、という解釈についても読んで下さった方の自由なのですが……私なりの考えは、タイトルと本文に忍ばせてあります。