冰薔薇の魔剣姫
突如学園長室の扉が強く開かれた。
俺は後ろを振り向く。
するとそこには水色の長髪を輝かせた少女、シニー・ワイズ・サファイアが立っていた。
そして彼女は俺を睨みつけた後、ずかずかと少し怒ったような足取りで学園長の元へと近寄る。
「お祖父様、どう言う事ですか!この学校に推薦で入学する者がいるなんて聴いていませんよ!そもそも誰の推薦ですか?!」
「シニー、ここでは学園長と呼びなさい。そして彼は私が推薦した、そこにいるメッシュ君はかなり優秀なため私が直々にな」
「優秀って、彼は中等部にも行っていませんよね?私は彼の名前も噂も聞いた事がありませんよ?!」
ドンッ!と机の上に手をつきながら彼女は学園長に顔を近づける。
「まあこれには色々と事情があるんだ。」
「事情って何ですか?!、というかそれほど優秀って言いますが彼は何属性が使えるんですか?」
「彼が使える属性は無い、無属性だ」
「っ!?、無属性!魔力を持ちながら適応属性を持たず世間からは無能と呼ばれる者たちじゃないですか!そんな奴が何故?」
俺は驚く、無属性がそんな存在だとは今まで知らなかった。
それにしても無能とは酷い言われようだなと思いながら突っ立っていると、彼女はこちらに視線を向けてきた。
「あなた、一体何をしたの?」
彼女は俺にそう言ってきたが自分は特に何もしていないので返答に困る。
だが彼女の目は鋭くこちらを睨みつけているため焦りを隠せず額から汗が流れ落ちる。
「彼は何もしていない、私が彼の実力を直接見て入学してもらったんだ。彼の力は本物だ、シニー今のお前では彼に到底敵わないだろう。用がそれだけならもう出ていってくれないか、私はまだ彼と話の最中なんだ」
「、、、です」
彼女は拳を握り締め俯きながらボソリと何かを呟く。
その顔は火が出そうなまで赤くなっていた。
「ん、何か言ったか?」
「決闘です!決闘をしてくださいメッシュ・ブレイブ!そうではないと私の気持ちが治りません」
彼女は俺の方を指差しながらそう言い放った。
俺はいきなりの事に少し息を呑む。そして俺は学園長の方へと視線を向ける。
「どうされますか、学園長?」
学園長は考え込む姿勢で少し考えてから俺たちの方を見た。
「いいだろう、その決闘認めよう。ただし決闘は今からだ」
「今からですか?」
「やるなら早めの方がいい、噂が広まって大ごとになっても困るしな」
「なるほど、そういう事ですか」
「すまないな先程までの話はまた後ででいいか?」
「構いません、今すぐ必要なことではありませんので」
「では場所を移そう」
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俺たちは人気の少ない学園の裏側に来ていた。もう既にお互いの位置につき決闘の体制をとっていた。
すると、俺たちの立っている周辺がドーム型の結界に覆われていく。
「周りに聞こえないよう結果を張らせてもらった。だから気が済むまでやるといい、あと今回は真剣を使用するから寸止めで頼むぞ、それとメッシュ君、解放はしないでくれ」
結界を張ってくれた事に心の中で少し胸を撫で下ろす。
これなら周りに聞こえず心置きなくやれる。
解放をしないでくれというのは恐らく俺の左腰に下げられている2本の太刀のことだろう。
まあそもそも学園に来る前から父さんに怪眼と妖刀の力はできるだけ使うなと言われているし使う機会もないと思うが。
「あなた随分珍しい武器を使うのね。それって刀でしょ?しかも2本」
「ああ、これは太刀というものだ。普通の刀より少し長いのが特徴だ」
そういう彼女はレイピアほど細くはないが少し細めの剣を持っている透き通るような若干青味がかった純白の剣を左腰に下げている様子は様になっている。
「ふーん、解放というのが気になるのだけどまあ関係ないわ勝つのは私なんだから」
そう言った後、彼女は真剣な表情になり剣の柄を掴み構える。
構えからわかるその集中力。
彼女のその構えに一切の隙は存在せず周囲が凪のように静まり返っている。
それに対して俺は構えずただそこに突っ立ている。
「何しているの?早く構えなさい」
「すまないがこれが俺の構えだ」
「何?舐めているのかしら?まあいいわ、今にその余裕の表情を必死の形相に変えてあげる」
そう言って彼女はまた俺を睨む。
何故こんなにも彼女は怒っているのだろうか?
俺は彼女に何かした覚えがないというか初対面のはずなんだけどなぁと心の中で疑問に思う。
「もう始めてもいいか?あまり長引くのもよろしくないんだが?」
学園長は僕たちが話終わるのを待ってくれていたようだ。
「すいません、もう初めていただいて結構ですよ」
「よし、それでは始め!」
学園長が開始の合図に挙げた手を振り下ろす。
次の瞬間、彼女は魔力で身体を強化し俺に突っ込んできた。
俺は冷静に対処しようと彼女の動きをよく見るが気づいた時には彼女は抜刀し、その刃が俺の首に届こうとしていた。
(気づいた?ありえない、だけどもう遅い!)
そう彼女は心の中で思うがその刃は俺の首に届くことは無かった。
何故なら俺は抜刀し彼女の剣を受け止めていたからだ。
「嘘、私の《冰花蜃気楼》をあの状況から受け止めるなんて、」
「結構危なかったよ、君の斬撃があまりにも自然だから気づくのに遅れたよ」
「っ!?」
そう俺が彼女の斬撃に気付くのに遅れた理由、それは実際に見えている彼女の動きと本当の動きがズレていたからだ。
そして何よりその剣筋は美しく自然に溶け込んでいる。
それは思わず見惚れてしまうほど美しい。
しかし俺は彼女の斬撃に気づいた。
そして普通なら間に合わない間合い。
だが俺は決闘が始まる前から圧縮した魔力を鞘に流していた。
刃が俺の首に届きそうになった瞬間、淵魔流剣技《天華夢幻》を使った。
淵魔流剣技の中で最速を誇るこの技であればあの間合いからでも防ぐことができる。
そして彼女は大きく後ろへとバックステップをする。
「私の斬撃を受け止めるなんてお祖父様が認めるだけのことはあるわね」
「それはどうも」
「でもあまり調子に乗らないことね。まだまだ私は本気じゃないんだから!」
すると彼女は左手を前に出しこう呟く。
「氷華凍咲、」
彼女がそう言った瞬間、彼女の周りが凍てつき始めた。
俺はその技を知っている。
何故ならそれは賢者の技と同じだから。
入学前俺は賢者ことグランシス学園学園長、
エターナル・ワイズ・サファイアと戦ったからだ。
同じ技を使うところを見るに彼女の師は賢者なのだろう。
賢者の時は杖を使う魔剣士だったが彼女は剣を使う魔剣士、彼女の剣を見る限りあれは努力で手にしたものだろう。
特にさっきの《冰花蜃気楼》という技は恐らく彼女のオリジナルだろう。
彼女には剣の才能はない。
だからこそ並の努力で手に入る物ではない。
彼女が俺に怒っている理由、それは俺という存在が彼女の今まで積み上げてきた努力を正面から否定してし待っているからだろう。
彼女は俺に本気で相手をしている。
なら俺も彼女に少しでも応えないといけない。
次の瞬間、俺は踏み出していた。
淵魔流剣術《縮地》
彼女の視界から突然俺が消える。
「え?、消えた?、、」
「チェックメイトだ」
「っ!?」
彼女が気づいた時には俺は彼女の背後に立っていて首元には刃があった。
「そこまで!勝ったのはメッシュ君だ」
学園長が手を振り下げ終了の合図をする。
シニーは剣を地面に落とし、膝をつき俯き負けた現実を認められていなかった。
「嘘、私が負けるなんて、、」
「いい戦いができたよありがとう」
俺は、そんな彼女に手を差し出す。
だが、彼女は俺の手を振り払い何も言わずにそこから去ってしまった。自分の剣を忘れて。
「はぁすまないなメッシュ君、馬鹿孫に付き合わせてしまって」
「いえ、構いません。しかしそれにしても彼女の剣は美しかった思わず見惚れてしまいました。」
学園長は俺に謝罪をしてきたが、別に俺は気にしていない。
むしろ彼女の剣を見れてこっちが得をした。
「気づいているかもしれないが、シニーには剣の才能はない。だがある時急に剣が使いたいと言い出してね。」
「そうですか、あれは並の努力で手に入る物ではありません。きっと死に物狂いで努力したのでしょう」
決闘が終わった後学園長と少し話していたが、突然俺は嫌な感覚を覚える。
「っ!?」
俺は感覚を研ぎ澄ましその正体を探る。
「どうした?何かあったのかい?」
「危ない、シニーさんが危ないです」
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