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賢者と剣聖

キィーードンッ!


「楓原くん!」


「はぁはぁ、」


窓から刺す光で俺は目を覚ます。外からは小鳥のさえずりが聞こえる。そして俺はベッドから身体を起こし頭を抱える。


「またこの夢か、、」


最近よく変な夢を見る。

こことは違う世界で自分が高校生?として学校へ通う夢だ。その夢の中ではロクな日常を送れず悲しみの連鎖が続き虐められる毎日そして最後にはトラックという乗り物で大きく馬車のようなものに轢かれそうとなっている同い年の女の子をかばい自分が死ぬ夢。


それを頭の中でもう一度情景を思い浮かべていた。


この夢の奇妙なところは自分が本当にそこで生きていたようで、知らない自分の記憶を見ているような感覚であること。


この夢は僕が5歳の時に初めて見た。この夢が何なのかは今はよく分からない。けどいつか俺はこの夢の正体を知ることになりそうな気がしてならない。


しばらくして俺は背伸びをし、ベッドから降り着替えて朝ごはんを食べ支度をし始めた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


場所は変わり、ここは魔境森林の中、天気は快晴で太陽が煌めいている。


そしてその光は森の木々の隙間から差し神秘的な光景を生み出していた。


そんな中俺メッシュ・ブレイブは森の中を走っていた。


「はぁ、はぁ」


今、俺は魔物に追われている。腰に二本の太刀をこさえ全力疾走でバサバサと音を立てながら茂みの中を突き進んでいた。


そうして走っていると茂みを抜け開けた草原へと出た。そこで俺は立ち止まり振り返る。


追いかけてきていた魔物は姿を顕にした。そこにいたのは大きな木の棍棒を持ち、頭部が豚のような魔物、オークだった。


「5体か、連携とられると厄介だな。まあ俺ももうオーク1匹に苦戦してた数年前とは違う、悪いがすぐ御退場願おう」


俺は笑みを浮かべ腰の太刀を鞘にしまった状態で構える。


「こいっ!」


俺が掛け声を上げた瞬間オークたちは咆哮し、俺に突っ込んできた。俺はオークが突っ込んできても刃を抜くことなく構えたまま突っ立ている。


そんな俺にオークたちは笑みを浮かべ俺を囲み一斉に棍棒を振り下ろしてきた。


それでも尚、俺は刃を抜かない。


棍棒は俺めがけて一直線に接近する。


その棍棒が俺に当たると思われた瞬間、ついに俺は蒼い刃を鞘から抜刀する。それは肉眼で認識できないほど高速の一閃が放たれる。


淵魔流剣技《天華夢幻・衝》


鞘の中に刃を納めている間、常に魔力を流し抜刀の速度を最高に上昇させておく技。


その居合から生まれる速度は淵魔流の中で最速であり目で捉えることはできずどんな状態からでも抜刀できる。さらに今の居合には剣術も使っている。それは淵魔流剣術《天衝》だ。


これは魔力を纏ったものが物体に衝突する時衝撃が発生するのに身体では感じることができないほどわずかな遅延が発生する。その遅延の瞬間にタイミングよく魔力を解放すると威力が数倍になる、魔力のバグを利用した剣術だ。普通ではこの遅延を見極めるのは難しい。だが俺には特殊な能力があるためこの手のものを見切るのは容易い。


そうしてその一閃で5匹のオークの棍棒を真っ二つにした。囲まれているのでそこから一旦離脱するためまた技を使う。


淵魔流剣術《縮地》


さっきの《天衝》を応用した技であり魔力を足に集中させ地面を蹴る時に《天衝》を使いさらには魔力を集中させた足による脚力によって高速移動をしている。

棍棒が真っ二つになりオークたちは混乱している今なら抜け出すのは容易い。


「さあ、チェックメイトだ」


俺はそう呟き刀身に魔力を集中させる。そして刃を左斜め下に構える。そして俺は空を薙ぐ。その瞬間オークたちの首から上は胴体と切り離されていた。


淵魔流剣技《幻閃》


刀身全体に魔力を集中させ、刃を振るう瞬間に刃に圧縮しそのまま魔力を解放し斬撃を拡大させる技だ。《幻閃》を使うと刃を数センチ動かしただけで大木を切れるほど拡大される。


そうしてオークを葬った俺はオークたちを解体して利用できる部位だけ回収してあとは全て地面に埋めた。


「よし、今日はここまでにしようかな」


俺は帰路に着いた。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺は魔境森林を出て家の目の前まで帰ってきていた。俺の家は森林の側にあってその周りには誰も住んでおらずただ一軒家がポツリと建っているだけだ。俺は家の玄関のドアを開けて入る。


「ただいまー父さん」


「おお、お帰り。いいところに帰ってきたな」


家の中に入るとすぐにリビングとなっていて中心に机がある。父さんはそこに座っていた。この家には父さんと住んでいる。この父さんは義理の父親で昔色々あって父さんによって僕は育てられた。だから帰ってもいるのは父さんだけのはずなのだが今日はちがった。父さんの正面には見たことのない男の人が座っていた。


「ねえ父さん、そっちの人は一体誰なんだ?」


「それは今から説明する。お前もこっちにきて座れ」


「わかった、じゃあ取り敢えずこの素材を片付けてくるよ」


俺はオークの素材を家の倉庫に一旦しまいに行き、しまい終わった俺は父さんの隣に座った。


「メッシュ、こいつはなセイズ王国で学園の理事長をやってるエターナルだ」


とてもご丁寧な挨拶をしてくれた。さらりとした水色の髪色でとても若々しい似た目をしていた。よく見ると耳が人間にしては長く尖っているためおそらくエルフだろう。


「初めまして私はセイズ王国立グランシス総合学園の理事長を務めるエターナル・ワイズ・サファイアだ。他にも周りからは賢者とも呼ばれている。君の父親とは遥か昔からの同期で共に戦った仲だ」


「えっ!?、賢者ってあの賢者!そんな人の同期って父さん一体何者だよ」


賢者ってのは確かセイズ王国が国を起こすとき関わり、セイズ王国ができた後も初代国王の腕として活躍した人物だ。賢者は自身が持つ力によって不老であり初代国王が亡くなった後は学園を作りその理事長を務めている人物だと前読んだ書物に書かれていた。そんな人と同期なんて父さんは一体いくつなんだ?


「何?アークから何も話を聞いていなかったのか?こいつは初代剣聖で仙竜の怪眼を持ちその力によって不老になった者だ」


「聞いてない、」


あっけらかんと間の抜けた表情をしながら驚きを通り越して呆れてしまう。剣聖もこの国を建国するのに関わった者だ。

でも確か剣聖についての情報は賢者に比べかなり少なく何よりも剣聖の名前はアーク・ソード・ドラゴンの筈だ。そして現在ドラゴンの名は受け継がれ当代の国王の腕として使えている筈。


「でもそれじゃ名前が、」


「ああそれは俺が婿入りして妻の姓になったからだもう随分前に亡くなったが」


父さんの軽々しい物言いにエターナルさんと俺は呆れる。


「はぁ、これもお前らしいなアーク」


「はっはっは、だって面白いだろう」


「でも現在ドラゴンの名は受け継がれている筈じゃ、なんで父さんはブレイブになってるの」


そう父さんに問いかけるとしばらくその場に沈黙が訪れた。


「まあ昔に色々あったんだよ、」


父さんはどこか悲しそうな表情を浮かべていた。俺はその顔を見てそれ以上聞くことができなかった。


でもそういうことなら合点がいく。あの強さと知識量そしてここまで僕を強くしたこと。考えてみれば全て僕が父さんの元に来た時から少しおかしいところは多々あった。


「今回エルを呼んだのは、お前を学園に行かせようと思って少しばかりきてもらったのだ」


「えっ!?何それ聞いてないんだけど」


「それはそうだ、だって言っていなかったからな」


「いや、そういうことじゃ、、いや、もういい」


父さんがあまりにも突然なことを言うため俺は呆れて突っ込む気力が失せた。


ドンっ!


「アーク!」


エターナルさんは父さんに少し苛立ち机を叩いて怒鳴った。


「はっはっは、だってその方が面白いだろう」


「はぁ、そういうところは本当に昔から変わらないなお前は」


エターナルさんまでため息をつき呆れてしまっている。


「まあ閑話休題だ、メッシュくん、君の父親に頼まれて君を入学させることになったんだけど一応君の気持ちを聞いておきたい」


俺はそう言われて少し考える。


「父さん、何故僕を学校に入学させようと思ったんだ?」


考えたがまず先に何故父さんが僕を学校に入学させようとしたのか疑問が浮かんだ。


「それはな、お前およそ10年以上私と2人だけで暮らしてきて同年代とほとんど関わってこなかっただろう?今年でお前もそろそろお前にも友というものが必要と思ってな。それ以外にもここでは学べないことも王都に行けば学ぶことができるからな」


それを聞いて俺は少し泣きそうになった。父さんが僕の事をこんなにも思ってくれていることに感動を覚えたからだ。


そこからまた少し俺は悩んだが俺の返答は決まった。


「俺、学園に行ってみたい」


「そうか君の意思は確認できた、じゃあ今から私と手合わせをしようか」


「えっ?、、」


エターナルさんは席から立ち上がりニコニコしている。


「ど、どういうこと?」


「それはね、本来ならうちの学園に入るには入学試験があって、それを受けてもらうのが一番だけど、メッシュ君、君の持つ右眼の力はその試験じゃ正しく測れない。だから私が直接見て判断する必要があるんだ」


「っ!?」


俺は不意にも動揺してしまった。このエターナルという人物が僕の右眼の力について知っていたことに。


「まあそこまで警戒する必要はないぞメッシュ。俺が話したんだ、妖刀のことも含めてな。どちらにせよこいつには話しておく必要があったし、さっきこいつが言ったとうりお前の右目は普通の方法では測れないからな」


そういうことかと俺は納得し警戒を解く。それにしてもこの力はそこまで稀有な存在なのだと改めて再認識をした。


〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


俺たちは家の外に出てその前の草原でエターナルさんと向かい合わに少し距離を置いて立っていた。そこから少し離れたところに父さんは立っている。


「両者とも準備はいいか?そろそろ始めるぞ」


そう言って父さんは右手を挙げる。


「メッシュ君、今回はあくまでも君自身の力を試す手合わせだ。だから妖刀の力は使わず君自身の力を見せてくれ」


「はい、わかりました」


風が俺たちの間に吹きながれる。そして次の瞬間父さんの右手が下されはじまりの合図が下された。


第一章始まりです。ようやく物語が動き出します。

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