第八話
「作戦の概要の前にまずは研究所の事を知ってもらわないといけない」
リョウは部屋に集まったみんなを見渡しながら言った。ナナシは面倒くさいという顔をしている。その他の皆は真剣な顔つきだ。
「ナナシ、面倒でも聴けよ」
リョウは言った。
「チッ……。へーへーわかりましたよー」
「全く……。あー、まず、この研究所は、本部と全国の6つの支部から成ってる。ちなみにここは東日本支部。本部は統括部のみ設置されているからモルモットである僕らは潜り込む事が難しい。本部の直接的な破壊は諦める事だね」
「なるほど」
レイは呟いた。
「ってかリョーは何で、んな事知ってんだ?」
ソウタはもっともらしい疑問をぶつける。
「以前研究員から聴いてたんだよ。自分のいる所の把握くらいしてないとね。ま、あとは知的好奇心だね。研究員同士が愚かにも喋っているのを聞いたりね」
「へー。すげぇなぁ」
「そうだろう。で、研究所のある場所は市街地から飛ぶか車両で二時間半ってとこ。研究所の周りは圏外。研究所同士はアマチュア無線で連絡を取り合っている。そして東日本支部は本部と唯一直接連絡を取り合える場所だ」
「だから何なんだよ」
ナナシはつまらなそうに聞いた。
「研究所の解体には必要な話」
「俺は解体なんてめんどーな事手伝わねーぞ」
「おれも。ハルを危険な事には巻き込みたく無い」
「……それなんだけどさ、解体と脱出はセットじゃないと出来ない。そんでそれには全員の協力が必要」
「はぁ?」
「ちょっ……ハルにそんな事させられねーよ!」
「僕の頭をフル回転させて考えたのがその作戦。これ以上良い作戦なんて出ないね」
「おれは反対だ」
「ソウタくん」
ハルが口を開いた。
「ハル?」
「私、やりますわ」
「ハル!?何言ってんだ!ハルは危険な事しなくて良い……」
「私も、皆さんのお役に立ちたいのですわ。ね?だから、私の事なら大丈夫ですわ」
「けど……」
「あら、ソウタくんは私に何もしてほしく無いのでしょうか?」
「そっ、そんな事ねーよ!」
「なら、リョウさんのお話を聴いて下さいまし」
「……わかった。ハルがそこまで言うなら……」
ソウタはハルに押され、ハルが作戦に加わる事を承知した。
「後は君だけだよ、ナナシ」
「ナナシ……」
アヤノはナナシを見つめる。
「チッ……ガキと泣き虫がやんのに俺だけやらねーなんてダセー事出来るかよ」
「ナナシ……!」
アヤノは嬉しさのあまりナナシの手を掴んだ。
「……ふーん、君達そういう関係?」
「あっ……いやっ……これはその……」
アヤノはすぐさまナナシの手を放す。
「ま、いいさ。じゃ、みんな協力してくれるという事で、作戦の概要を説明するよ」