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第49話 思わぬ遭遇

「誰だお前は?」


「この辺りでは見ない顔ね、もしかして私の獲物を狙いに来た初心者さんかしら?」


「何言ってんだ。俺の獲物だ!お前より先に見つけた。」


「いいえ、私よ。私の方が先に見つけた。あなたはさっさとお陀仏すればいいのよ。」


「何だとこの冷徹女!」


「ふん、安い挑発ね。」


 俺は軽く挨拶してコミュニケーションを取ろうとしたのだが、俺の事なんてそっちのけで何故か勝手に喧嘩をし出した。

 このやり取りを見ているとアートとニャーヤを思い出すが、この喧嘩に乗じれば上手く逃げれるんじゃね?と淡い期待を抱く。

 そして行動に移そうとしたが、そう簡単に物事は動かなかった。


 直ぐに俺の方へと視線を向ける。


「とりあえずお前は誰だ?」


 種族名は出さない方が良いよな。

 この大陸では人間って珍しい種に該当するそうだから、

 別に人間に限った話ではないと思うが、これ以上の厄介ごとは避けたい。


「えっと、」


 俺は名前と此処に来た経緯を分かりやすく簡潔に伝える。

 不審な人物ではないと証明する。

 しかし相手側から見たら十分に怪しい奴である。

 信用できない。


「私は信じないわよ。言葉巧みに私を誘導して隙あらば獲物を搔っ攫う気ね。そうわさせないわ。」


 人の話を聞かない人達だな、

 疑い深い。


「漁夫の利を狙うつもりだったみたいだが相手が悪かったな小僧。悪く思うな。」


 二人は魔法を放とうと手と杖を翳し、この場から俺を退場させようと動く。

 一番不審で一番邪魔な俺を消しに掛かる。


「ちょ、ちょちょちょちょちょっと待って!落ち着けって!!」


「お前が落ち着け。」


「そうよ、ちょっとの間じっとしてたら何も感じなくなるだけだから、すぐ終わるから。」


「それって死ぬってことですよね!」


「大丈夫よ。痛いのは一瞬だけだから、」


「全然大丈夫じゃないし、俺は悪い奴でも獲物を狙いに来た悪党でもなく純粋に魔力の衝突反応があったから見に来ただけなんですって、興味本位で近づいてきた純粋無垢な少年なんですって!」


「なに、興味本位で俺の獲物を狙いに来たのか!この阿呆が!!」


 もうヤダこの人達・・・。

 全く聞く耳持たないじゃん。

 ならこっちだって抵抗の一つくらいさせてもらうさ。

 しょうがないよね。

 そっちがそういう態度取るならこっちだってこうするさ、

 な~に、ただちょっと不快な音を出すおまけ魔法だ。

 存分に耳を塞いでくれ、


不快な音・金(エド・ワトラ)


 キーーーーギギギギギーーーー!!


「こ、これは・・・何だこの音は、耳が割れる!」


「くっ、やっぱりそう言う事だったのね。」


「違うけど獲物は狙うつもりはありません。だからこれにて失礼!」


 黒板を引っかいたような音と金属音を混同させたような不快音を発生させ、俺は後ろを振り向いて全力で逃げる。

 振り向きはしない。

 只々足を動かしてガムシャラに逃げる。


 相手にとってこれほど迷惑な置き土産はあるまい。

 だが同時に俺の耳も不快音を拾ってしまうのがデメリットだがな、

 それに、あの場はなるべく穏便に事を済ませたかった。

 バトル展開にはしたくなかった。


 耳を塞ぎ、氷の上を走り去る。


「・・・やっぱりそうは上手くはいかないか。」


 俺は残念そうなセリフを重い息と共に吐き、こちらに向かって移動して来る魔力反応をキャッチした。

 あの二人の冷耐人間(フロストヒューマン)だろう。

 脇目もふらずして互いに争うのを止め、追いかけて来る。

 争いの原因であろう獲物を置き去りにしては氷魔法で俺だけを狙ってくる。


「待ちなさい!」


「待て!逃げるな!よくも攻撃しやがったな小僧!」


 えぇ~、隣の女性は良いのに俺は駄目なの?

 おかしくない?おかしくない?

 というか争えよ!

 なに意気投合して一時休戦してんだよ!

 さっきと同じように戦えよ!

 さっきまで攻撃してたやつは隣同士にいるだろ!

 何で俺だけこんな目に遭うんだよ!


 必死に氷の上を走っては後ろから飛んでくる氷魔法を数多避ける。

 神回避で躱し続ける。

 目を(つぶ)る必死さだ。


 がその時!!


 前方に不思議な魔力の塊がモヤ~、と現れた。

 後ろの二人もそれを感じ取ったらしく、途端氷魔法を撃つのを止めた。


「何だ?」


 不穏な雰囲気を感じ取りはしたが、今は後ろの二人からなりふり構わず逃げる。

 そうして走っていたら、先程の魔力の塊の正体が見えて来た。


 コオオオオオオオオ


 あれは侍か?

 刀を持ってる。

 いや、鎧を着てるからどっちかというと武士とか武者の方が近いかな?


 白い冷気を口から吐き、全体的に白く、氷で出来ている鎧と兜を被り、角が兜を突き破る感じで二本出ている。

 手には一本の日本刀を持ち、こちらを見据えている。


「「あれは・・・もしかして!?」」


 その存在に心当たりがあるのか二人は颯爽(さっそう)と方向転換し、立ち去った。

 そして男性の冷耐人間(フロストヒューマン)の方がポツリと呟く。


「あいつは"武者氷鬼"、そうかもう時期か・・・」


 "武者氷鬼"、確かにそう聞こえた。

 ウィンターのところで聞いた単語だ。


 視線が交差し、一足逃げるのが遅かった俺は間合いを一息の内に詰められ、いきなり斬撃を貰う。

 瞬きをする時間をもくれない音速の剣。

 首を狙う角度の剣だ。

 しかし俺はラッキーな事に氷の恩恵で足を滑らせ、なんとか首チョンパだけは免れた。

 だが左腕にダメージを負ってしまった。

 冷たくて鋭い痛みが俺を襲う。


「痛っった!」


 しかし今の斬撃速度を考えるとそれだけで済んだ。

 重症ではない。

 軽傷だ。

 ラッキー回避が無かったら俺の頭と胴体は今頃お別れしていただろう。


 今の状況を考えると命のピンチ!!

 素早く体勢を立て直して【炎帝奔龍】を放つ。


 コオオオオオオオオオオオオ


 しかし"武者氷鬼"は【炎帝奔龍】自体を凍らせ、手に持っている日本刀で細切れにする。

 氷の欠片がターコイズアイスの上にパラパラと落ちる。


「嘘でしょ!こっちは上級魔法を放ったんだぞ!そう簡単に防げる魔法じゃない。ありえないよ"武者氷鬼"。そりゃ皆が恐れるわけだ。」


 冷耐人間(フロストヒューマン)も恐れおののく存在"武者氷鬼"。

 その実力は圧巻だった。

 青い瞳が俺をロックオンし、冷たい剣先を向けて斬りかかる。

 俺は【ロックウォール】を発動して斬撃を防ぐ。

 だが"武者氷鬼"は【ロックウォール】ごと凍結させては刃で砕き、左手に冷気を纏わせ殴りかかる。


「これは躱す!」


 一歩後ろへ下がり、身を引くことで氷のパンチに当たらず済んだ。

 だが"武者氷鬼"は俺の事を無事に逃がしてはくれない様だ。

 地面から円錐の形をした氷の鉄柱を生成しては押し出すように発射する。


「これは防御する!」


【ロックウォール・ヘビーセカンド】を発動させ分厚い壁を複数枚作る。

 激しい打撃音が連なる様に鳴り、絶え間なく壁を殴打してくる。


 強いな。

 でも力業だけで勝てる程勝負は甘くない!

 炎が駄目なら雷だ。

 見てからでは防ぐことのできない雷帝。


電影落崩天撃(トール・アビトレート)


 天を裂く雷が降る。

 これを食らえば幾らユニークモンスターと言えども無傷ではいられまい。


 俺は自信を持って攻撃した。

 眩く光る天父の怒りは"武者氷鬼"を容易く破壊する威力を秘める。

 だがこの時、"武者氷鬼"が喋った。


「コオレ・・ドコマデモ・・・シロ・・・シロク【刹那る氷冠雪魄】」


 清らかで透き通った鏡のような白氷が神の怒りを一瞬で白く染め上げ凍結させる。

 "武者氷鬼"は何の動作もしなかった。

 それだけで俺の【電影落崩天撃(トール・アビトレート)】を凍らせた!?


「チートじゃん・・・」


 こりゃ勝てないと思った俺は、情けない話であるが逃げながら迎撃して"武者氷鬼"の足止めに専念した。

 そしてツララの待つ家へ駆け込むように急いで足を動かす。


「あれが"武者氷鬼"。恐ろしいモンスターだ。さすがわユニーク個体。正直言うとちょっと舐めてた。以外にも勝てるんじゃねって。

 でもあれ無理だわ。

 どうやっても勝てるビジョンが見えない。

 能力を使おうにも行使する隙を与えてくれるかは別。俺の能力は常に意識して使わないと駄目なタイプだ。

 樹海で戦ったネイバーの能力と違い溜めとインターバルを必要とする。俺と相性悪い!」


 そうして逃げていると太陽が昇り切り、昼になった。

 ツララの家に辿り着くと【ロックウォール】で扉部分を塞ぐ。

 既に用事を済ませていたツララは慌ただしく帰ってきた俺に拍車を掛けるようにして言葉を投げ掛ける。


「遅かったねって、どうしたのその傷!?血流れてるよ?魔物にでも襲われたの?それとも獣の類なのか?」


「"武者氷鬼"に襲われた。いきなり目の前に現れたんだ。」


「そ、それは大変だよ!いそいで対策しないと。いや、その前にエマの回復が優先か・・・」


「自分で回復魔法掛けられるから問題ないよ。」


「そうなの?」


 "武者氷鬼"が出た。

 その発言にツララは慌てながらも氷の魔石を自分の魔力と繋げて範囲20mのバリアを張る。

 家をすっぽりと覆い隠すドーム状のバリアだ。


「こんな魔法もあるのか。」


 この行為自体にはあまり意味はない。

 "武者氷鬼"ならば大技一発当てれば軽く打ち破られる耐久度だ。

 それこそバリア全てを凍結させることくらいはしそうだ。

 やりかねない。


 だが、気休め程度には働く。

 俺はその間に色々と思考する。


 奴に炎の上級魔法の一つ【炎帝奔龍】は通じなかった。

 【電影落崩天撃(トール・アビトレート)】も通じなかった。

 どちらとも当たれば大ダメージ。

 そして氷タイプである奴の弱点属性でもある。


 だが、技ごと凍らされてダメージを与える前に無力化された。


 それに攻撃速度が尋常じゃなかった。

 武者と言われることだけはある。

 立ち回りが上手かった。


 冷たい視線に見つめられたと思ったら首にかけて剣筋が伸びていた。

 目では追えなかった。

 魔法を撃つ余裕さえも無かった。

 あの時は偶々撃てたが次は無い。

 奴を倒すならば遠距離魔法がいい。

 近・中距離ではダメだ。

 直ぐに間合いを詰められて二の舞になってしまう。


 能力を使うには隙がデカすぎる。

 この戦いに必要なのはスピードと技量だ。

 能力を一発放つことは出来るだろうが、放った後のインターバル、そして二振り目を放つまでの時間が掛かる。

 必殺技と考えて一撃で倒すことに集中して使う方が利口だな。

 だから今回の戦いで能力は役に立たないと仮定して戦うしかないかな。


 でもどんな魔法が効くのやら、


 安直に火や炎でダメージを与えるにしてもまた凍結されて余計な隙を相手に与える。

 切り傷を増やすだけだ。

 今必要なのは一撃で奴を葬れる攻撃力でもなく、能力でもなくスピードと技量。

 そして"武者氷鬼"の行動パターンだ。

 簡単にはいかないだろうが、やるしかない。


 大方の目安を着け、"武者氷鬼"の到着を待つ。

 だがいつまで経っても来訪してこない。


「来ないぞ?」


「撒いたのかな?だとしたらラッキーだ。」


 俺の必死な抵抗が奇跡を招いた。


 夜。

 二人は食事をしながら"武者氷鬼"について話す。

 作戦会議?

 今後の方針?の様なものだ。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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