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第48話 二人の冷耐人間(フロストヒューマン)

 "グレイスダイアモンド"に来てから一週間が経過した。

 季節は春から夏に移行する。


 あれからウィンター家では軽くテーブルゲームをしたり、冷耐人間(フロストヒューマン)専用用語などを習ったりと楽しいひと時を過ごした。

 その後にはキチンとツララちゃんの家へと何事も無く無事帰って来た。

 "武者氷鬼"の件については一旦保留として、とにかく今は俺自身の目標の為に此処で生き抜く為のスキルを習得し、東の大陸に行くことが先決。


 この目的だけは忘れてはいない。

 このまま世界中を旅する冒険をしてもいいのだが、流石にまずは孤児院へと帰らねばならない。

 そして俺は「帰って来たぞ。」と伝えねばならない。

 だからまずは一歩づつ目の前の現実と戦って生き抜いて歩んでいく事に決めている。


 一週間も北の大陸に滞在すれば慣れて来る。

 釣も見違えるほどに上手くなった。

 何だったらツララちゃんより今の俺の方が上手いかもれない。

 釣に関して言えばだがな、


 本人にこの事を話したらムキになって「そんなこと無いよ!私の方がまだまだ上手いんだから!だって先輩だよ。」と言ってきた。


 なので俺はそんな可愛い先輩の頭をなでなでした。

 そしたら顔面を真っ赤にして照れた。

 可愛かった!!!!


 そして今俺は何をしているのかというと、外で吹雪いている"冬嵐"を眺めながら考えに浸っていた。

 孤児院のこと、

 セラフィー達のこと、

 東側へ辿り着くこと、


 そもそもの話、あの町中で出会ったモンスター。

 俺とアート、ウイ、スンの四人で立ち向かったあのナメクジモンスター。

 あいつは今どうしているのだろうか?

 討伐されたのだろうか?


 もしされていなかったら町が壊滅してもおかしくない。

 それだけの脅威と強さを実感したから、


 それにセラフィー達の事だって未だ謎のままだ。

 俺と一緒にビーム攻撃を食らったならば俺と同じ所で目が覚めるはず、


 でも近くにはいなかった。


 距離はそこまで離れておらず、ビームを食らう直前まで一定間隔の場で繋いでいた。

 だから仮に転移魔法を使われたとしても一片に転移させることしか出来ず、もし別々に転移させられたというならば、それこそ俺達を必要以上に狙う複数の者たちによる複数転移魔法陣が必要になる。


 ずっと違和感を感じていた。

 しかし、過ぎたことをいつまでも考えていても一向に答えに辿り着くことは出来ない。

 時間だけが刻々と過ぎていく。


 この日の"冬嵐"は一晩中続いた。

 そして朝を迎えた。


 天気はやや曇り。

 雪雲かな?

 薄暗くて不穏な風が吹く曇天の空が雰囲気を怪しく漂わせている。


 そんな朝、早起きして朝食をツララちゃんと一緒に食べて、お互いに話し合い、分担した役職をこなそうと俺は釣を、ツララは野菜畑の手入れと6日前討伐した"コウテイ"の子供肉を使った燻製を作る。

 どれだけ外が暗くとも俺達の心は快晴だ。

 澄み渡っている。

 お互いに今日も一日元気に生きようと朝っぱらから渇を入れる。


「ビバーチェ!」


「ビバーチェ!」


 ※ビバーチェ=幸あれ(冷耐人間(フロストヒューマン)語で、)


 立て掛けてあった釣竿を一本持ち、魚を入れる網も腰に引っ掛けフードを被る。

 防寒対策ばっちりの状態で扉を開けようとドアノブに手を掛けて捻り、押す。


 しかし、


 ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ


「あれ、開かなっ!」


 ぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐぐ


「どうしてのエマ?早く開けてよ。」


「そうしたいのは山々なんだけど開かないよ。」


 力強く押しても扉がびくともせずに固定されている。

 鍵を解き忘れたのだろうか?

 それとも扉が壊れたのだろうか?


「私がやる。」


 痺れを切らしたツララが俺の代わりに扉を押す。


「ふっ!」


 だが一向に開く兆候が見られない。

 一体どうなってるんだ?

 昨日は開いたのに、


「開かないよ?何で?」


「多分だけど、昨日の"冬嵐"の所為だと思うよ。」


「ドユコト?」


「"冬嵐"の影響で外は猛吹雪だったでしょ。だから辺りの雪をそこら中から拾い集めては風に乗せ、運搬してきたんだから扉の前には雪が積もって塞ぎ止めているんだと思う。

 多分この辺り一帯。」


「えっとつまり俺達は家の中に締め出され、完全に出られない状況になったという事か、」


「出口はこの扉しかないからね、そう言う事になる。」


「・・・ヤバくね?」


「うん。」


 そんなのってアリかよ・・・。

 出鼻挫かれた。

 もしこのまま家の中に閉じ込められでもしたら一生出られなくなり、少しずつ日を(また)ぐにつれて少なくなっていく食料と水。

 寒さ自体は防げるにしろ、薪も無くなればそれこそ暖を取ることも温かいスープを飲むことも叶わない。

 それに加えて密室空間になった家の中でツララちゃんと二人っきり。



 アリだな。



 これは一周回ってアリな展開だ。

 いや実はね、前に頭を撫でた時の感触とツララちゃんの反応が忘れられなくってさ、このまま行くと自然に俺得のラッキーな展開が待っているのかなと期待していたり、


 不謹慎なのは分かっている。

 重々承知している。


 だが!人間悪いこと、やっちゃいけない事を一度体験すると薬物の様に依存性に駆られてもう一度体験したいと思ってしまう生き物。

 仕方ないのだよ諸君。

 それが人間の性なんだから、


「エマ扉押すの伝って、」ふぐぐ


「分かったよ。」


 邪な雑念は一旦心の中に留めて置くとして、今はツララの頼みを聞いて協力する。


 ツララと二人で協力し、息を合わせて1,2の3の合図に合わせて力を込める。

 だがどれだけ反復しても効果がない。

 押し返そうにも無理っぽいので俺は強硬手段に出た。

 策を講じ、頭を捻った結果出てきた答えだ。

 というか、これが一番ベストな回答だと思う。


【炎帝奔龍】!


 それは魔法でゴリ押すこと。

 深く考えることを止めた脳筋のやり方だ。

 炎の龍が扉ごと一直線に分厚い雪の層を消し飛ばし、幅4m、縦10m以上の長い道を作った。

 そして俺は感想を呟く。


「寒い。」


「エマ・・・どうするのこの開放感あふれる扉は?」


「また作り直せばいいさ、」


「出来ないよ!材料集めて来るだけでも木材自体この大陸に無いんだから直すことが出来ないんだよ!」


「えっ、確かに言われてみれば木が生えてる場所なんて今まで一回も見たこと無いな。」


 扉を開ける為とは言え、完全にやってしまった感全開の俺は本題をぼかし、釣りをする為に走り去っていった。

 去り際にツララが引き攣った顔をしていたが俺は知らない。

 見ていない。

 だがちゃんと代わりとなる物や凌げるものを持ってくることを固く誓う。


 直径60mの氷水がある穴場。

 いつもの場所へと辿り着く。

 釣り糸を投げ入れ魚を釣る体勢に入る。


「いや~、にしても後の事を考えてなかった。まさか木材が無かったとは盲点だった。完全に見逃してた要素だった。

 エルフの樹海にいたからか周りに木が生えている見方で過ごしてた。

 そっか、そうだよな。此処は雪と氷の大地だもんだ。

 そりゃないわ。

 じゃあ、これからどうすればいいんだ?

 あの扉を壊した時点で冷耐人間(フロストヒューマン)であるツララちゃんは兎も角、俺は凍える事は確立してる。

 このまま何も手を打たなかったらマジで死ぬな。

 一言誤ってからどうにかして塞がないとな。」


 と言いながらも1時間経った頃には魚を6匹釣ることに成功していた。

 若干の感動はあったが、やはり何回も釣っていれば感情は薄れて来る。

 しかし成長はした。


 沸々と自身の成長を噛み締めながら魚が入った網を持ち、釣竿を持ってツララの家へ罪悪感いっぱいの心境で帰ろうとした。

 だが此処で俺は激しい魔力のぶつかり合いを感知した!


 距離は大体18mと言ったところ。

 俺は興味本位で走って向かう。

 雪が積もってる上り坂を前傾姿勢になりながらも進んで、その奥にある魔力の正体を確認する。

 それは冷耐人間(フロストヒューマン)同士の争いだった。


 一人は水色の短髪をしている目付きの悪い女性。

 もう一人は白髪の男性で、バランスの取れた体格をしている冷耐人間(フロストヒューマン)

 その者たちが一匹の獲物を狙い求めてバトルしてた。


 "フローン"という亀の様な甲羅にキリンの様な長い首を持ち、手足を氷で固めている何とも不思議な生き物だ。

 結構でかい。


 そして二人の冷耐人間(フロストヒューマン)が戦っているステージは、ターコイズアイスと言われる自然が(もたら)した宝石が太陽の光を反射して綺麗に輝き、(まば)らに捲かれた自然の宝石がこの辺り一帯の足場を形成していた。

 その周りの地形を見ると、ブリッチを描いているかの様な巨大な雪と氷の混合柱が幾つもあった。

 歪曲(わいきょく)を描いて形成されている自然の芸術(アート)だ。


 二人はそんなvery(ベリー)good(グッド)beautiful(ビューティフル)な景色の中、氷魔法を撃ち合い、周りの温度を更に下げていく。

 (しも)がハッキリと可視化し、冷気もハッキリと見える。

 それ程までに激しい氷魔法の激しい攻防戦闘。

 俺でさえ氷魔法自体はまだ使えない。

 もし友好的な関係になれる者達ならばお近づきになりたいものだが、顔つきを見るに絶対に敵わないだろうと自信を持って悟った。


 ズドオオオオオン!


 氷の上に氷が上書きされ、ダイアモンドダストを舞わせて互いの力量同士が衝突する。

 白髪の男は両手に氷の突撃打(コールド・メイス)を握りしめ、叩きつける様に振るう。

 水色の短髪女性は片手に氷の槍杖(アイス・ロッド)を持ち、上手くいなしては距離を一定間隔に保ちながら連続の突きを放つ。


 距離を取られたらリーチが長い氷の突撃打(コールド・メイス)を持っている相手側に有利が傾く。

 なので相手と1m以内の距離を保持したまま戦うのがベストだ。


 巨大な得物を寸前で躱し、懐に飛び込んでは魔法込みの突きを放つ。

 しかし男は氷の壁を出現させてガードする。

 氷の槍杖(アイス・ロッド)はガードされた反動で後ろへノックバックする。


「っ!?」


 男はこれを勝機と思い、氷の突撃打(コールド・メイス)を縦に振り、相手の頭上からジャンピング攻撃する。

 男の体重が上乗せされた強撃が来る!

 女性は氷の槍杖(アイス・ロッド)を両手で握り、丁度柄の部分を衝突部分に合わせて突き出してガードする。

 すると衝突時と同タイミングで地面の氷が割れ、女性は姿勢を崩しかかる。

 重量と重力が重なった重い攻撃だ。

 白髪男は声を出し、力を入れる。


「はあああああああああ!」


 相手が女だからと言って容赦はしない。

 冷耐人間(フロストヒューマン)は基本的に女でも狩猟民族ならば正々堂々容赦なしの戦いを繰り広げる。

 相手が参った、又は戦闘不能になるまでバトルは止めない。


 重い攻撃が圧し掛かり、腰を落としてきた女性は膝を付く場面まで進行していた。

 男は目線を外さず、手心を加えない。

 それが狩猟民族同士の戦いであり、相手への敬意でもある。


 だが次の瞬間!

 氷の柱が男の両サイドから挟み込む形で飛んできた!


 男は気付き、メイスを掴んでいた握力を緩める。

 そして女性に反撃のチャンスを与える。

 一旦距離を取り、氷の槍杖(アイス・ロッド)を巧みに使って体中をなぞる様に回す。


 ぶんぶんぶんぶんぶん


 杖の先端を男に向けて魔法を行使する。

 杖の先からは先程とは違い、魔粒子と(あられ)の様な粒が円を描いて回っていた。


氷裂く穿空(イオリブニング)


 すると氷の槍杖(アイス・ロッド)がシアン色の氷を纏い、より長く、より鋭利に進化した。

 男は氷の突撃打(コールド・メイス)を構え、迎え撃つ。


 女性は刺突の連続で(すね)、手首、関節、横腹、肺、と的確にいやらしい個所を狙って氷の槍杖(アイス・ロッド)を振るう。


 男は鈍重な武器を持ってる。

 なので十数発は防御しきれずまともに攻撃を貰う。


 傷も瞬く間に増えて行き、血が流れる。

 だが男は苦渋な表情一つ浮かべずに女を見る。


 男は冷たい空気を吸い、吐いたと同時に足を踏み込み、負けず劣らずと言った感じに気合を入れ直して立ち向かう。

 こうしてお互いの譲らぬ攻防戦は熾烈を極めて行った。


 氷魔法を飛ばし、氷の槍杖(アイス・ロッド)氷の突撃打(コールド・メイス)(つば)迫り合わせ、両者の戦いは拮抗していく。

 雌雄は無く、互いの得物が只々討ち合う回数だけが増えて行く。


 10回、20回、30回と金属音が響き、勝利の駆け引きは進行する。


 そしてそんな白熱とした攻防戦を繰り広げるとやはり、周りの被害に目は届かず、被害を出し続ける。

 といっても民家は無いし、人はいないので怪我を負わせることはない。

 損害を与えることもはない。


 だが俺はその現場を見ていた。

 仁王立ちで見ていた。

 だからそこ、偶々(たまたま)飛んできた氷魔法の欠片は俺に被害を与えようと向かって来る。

 避難もせず、隠れることもせずに見ていたので何時かこうなる事は予想できた事態だった。


「うおっ!」


 何とか頬をかすめる程度に抑え、躱すことが出来た。

 だが今俺の立っている場所は安定さに欠けていた。

 足場が悪かった。


 雪が積もった上り坂と下り坂の境。

 山の形を成している。

 つまり、俺は躱した反動で足を滑らせ、雪山をクルクルと転がり落ちて行った。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおお!」


 バサッ!


 転がれば転がる程に雪が纏わり付き、雪だるまになって行く。

 そして弾ける。

 地面が柔らかい雪のお陰で大事にはならなかった。

 怪我もしなかった。

 掠り傷一つない。

 首の後ろを支えて、前を向く。


 すると、先程まで熾烈さを増して戦いをしていた二人の冷耐人間(フロストヒューマン)がいつの間にか間近に来ており、大きく佇み俺の事を見下す形で立っていた。


「」ジ~~~~~~


「」ジ~~~~~~


「こ、こんにちは~」ハハハッ


 震え声で喋ってコミュニケーションを切り出してみた。

 果たして彼らの反応は如何に、



ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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