第47話 幼馴染
"グレイスダイアモンド"生活三日目。
俺は気持ちやすそうに鼻提灯を作り、鼾をかいていた。
昨晩は、お肉入りの鍋をお腹いっぱい食べて満腹感を充分に感じつつ熟睡した。
一回寝返りを打つ。
「」ムニャムニャ
ゴロリ
俺は体の向きを反転した。
すると、急にひんやりとした冷気が顔面を覆うようにして襲って来た。
その冷気は僅かな氷を含んでいるもので、凍えて冷たい。
なので確認を込めて目を半開きにし、眠そうに瞼を開ける。
ゆっくりと開ける。
「う゛ぅ゛~~」パチ~
すると、
「やぁ、お目覚めかい。」キリッ☆
知らない人がイケボ風に気取りが混じった声色で起こしてきた。
そして言葉の終わりに冷たい冷気を口から吹き掛ける。
「」フ~~~
「・・・・・・・・」
「」キラキラキラキラ
「ぎ゛ゃ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!」
大絶叫する。
家の中では抑えきれない程の音量で叫ぶ。
外にまで漏れた。
ツララは俺の声に釣られて起きる。
反応を横目でチラッと見るに、驚いている様子はない。
ナメクジの様にのろのろとのんびり上体を起こし、ふぁ~、と可愛い欠伸を一回してから目を開ける。
どういうメンタルしてんだ?
同じ家の中で大声出しているヤバイやつがいるんだよ?(俺)
普通だったら体が反射的に飛び上がる程なんだよ?
「ん~~、どうしたのエマ・・・あれ?ウィンターじゃん。ウィンターが来たってことはもう期間なの?」
「そうさ、それにしても人間なんて此処では珍しい生き物だね。何処で見つけて来たんだい?」
「氷水の中。」
「はは、中々ユニークな場所だね。」
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一旦現状を整理・把握する為に落ち着く。
「えっと、まずあなたの名前は?」
「僕はウィンター。ツララと同じ冷耐人間さ、ツララとは昔から苦楽を共にした愛しき彼女!」
「殺すよ?」ゴゴゴゴゴゴ
「おいおい、ただのジョークじゃないか。ユニークジョークだよ。怒っちゃうと可愛い顔が台無しだぞ☆」キラッ
「」ブチッ!
ウィンターの茶目っ気ジョーク内容はツララの怒りを到達点まで引き上げる。
メンチをきるツララ。
余程イラついたんだろうな。
「俺はエマ。よろしく。」
「これはこれは分かりやすい自己紹介をどうも、」キリッ
「で・・・ウィンターさん、あなたは何故俺の隣で寝そべってたんですか?」
恐る恐ると言った感じで質問する。
正直って怖い。
俺何もされてないよね。
何かウィンターの近くに居ると冷気の所為もあるだろうが、寒気がするんだよな。
こう、ゾワゾワ、ザワザワって心が動揺するような、
大丈夫だよね?
「ふふふ、何でだと思う?」
「え?・・・・」
ウィンターは怪しげな含みのある笑いをした、
俺の事をまるでターゲットの様な、逆三日月の目付きで眺めながらジーと見つめて来る。
視線が怖い。
怖い怖い怖い。
何なのこの人。
早くお引き取り願いたいが、ツララちゃんの知り合いみたいだし無下に追い返すのは失礼だよな。
どうやったら帰るんだ?
もし変な事されそうになったらそれを口実にして魔法を撃って撃退しよう。
よし、それが良い!
「僕はね、約束の期間だから此処に来たんだ。毎年来るんだよ?」
「・・・毎年?」
「そう、この地は寒い気候が支配している極寒の大地。君も体験しただろう。だから植物は生えておらず、あるのは氷と雪のみ、」
ツララが話す。
「だからウィンターと一緒に洞窟の中で植物を育てているんだよ。寒さに耐性のある野菜"アロハスハ"から"カロン"もね。
昨晩鍋に入れていた具材は主に私が洞窟内で一から育てて収穫したものだったんだよ。すごくない!良い出来だったでしょ、でしょでしょ!」
褒めて欲しいのか、燥ぐように言い聞かせる。
「でも育てるのは兎も角、種はどうしたのさ?こんな極寒の大地だと種を見つけること自体不可能でしょ?」
「それは昔、エマと同じ人間の人が"グレイスダイアモンド"に来ていてね。何の目的で来たのかは知らないけど凍死した状態で氷の中にいたんだよね。
私とウィンターは丁度その人間を見つけて弔ってあげようかなと思って氷を溶かし、色々まさぐった結果、彼は野菜の種を持っていたの。
つまりはそう言う事だよ。」
まさぐる行為は見逃せないが、ここまでの内容は納得出来た。
だが突然の事ですっかりとこの場の空気に馴染んでいたが、ここで一つ疑問な事がある。
なので素直に発言することに、
「お互い敵対関係にある冷耐人間同士がどうして仲良くしてるのかな?いや、別に不審に思ってるとか疑ってるわけじゃなくてさ、」
ウィンターが答える。
「さっきも言っただろうboy、」キリッ
「boy!?」
「幼馴染だからさ!」キリッ
「あっ、幼馴染は本当だったんだ。」
その発言と共にウィンターは、ツララのポンコツエピソードと苦労面について長々と話す。が、全力でツララに全否定される。
紅潮になりながらも首が千切れてしまう程の力で首を左右に振っている。
そしてどれだけ隠そうとしても隠し切れないので人の恥ずかしエピソードを話し続けるウィンターにボディブローを一発かます。
みぞおちだ。
これは痛い・・・。
俺もツララちゃんのペンギンタックルを食らって同じ目に合ってしまったから分かる。
あれは痛い、痛すぎる。
「まぁ、その・・・約束というのは・・・はぁ、はぁ、収穫しに行こうって話・・・だっただよね・・・う゛ぅ゛。」ピクピク
酸素を上手く吸い込めない状態であるにも関わらず、ウィンターは最後まで説明してくれた。
なにやら騒がしい朝になってしまったが、この場にウィンターが来たのは何かの誼みである。
ウィンターも混ざり、朝食を三人で食べることになった。
しかし、ツララが幼馴染であるウィンターの事を異物混入って目で見ていた。
普段の笑顔が何処かへ置き去りにされ、冷たい瞳で見ていた。
どこまでもどこまでも深くて冷たい絶対零度の瞳。
その目で見つめられただけで全身が凍りそうだ。
よっぽど嫌いなんだろう。
あれは完全にゴミを見る目だ。
興味はないが邪魔だと思っている反抗期の子供の目をしていた。
冷徹な目だ。
そして朝食を食べ終わり、ウィンターとツララだけで一緒に洞窟に行くのかな?と思っていたところ、何故か自然と俺も洞窟へ行く流れに加わっていた。
二人揃って「準備して」と言ってきたのだ。
何時の流れで俺はいくことになったんだ!?
そんなこんなで俺は防寒対策として厚着をし、寒い風に晒されながらも洞窟に辿り着いた。
その時には既に髪やまつ毛は凍り、ツララが貸してくれた上着は霜がかってる。
それ程までに寒い。
流石は白銀雪氷の"グレイスダイアモンド"。
北の大陸。
寒さに関して言えばこの世界で断トツトップである。
洞窟の中は音が反射する。
しかし、俺はまさかまさかの洞窟が氷河の中だった事実に驚愕している。
普通、洞窟を思い浮かべて、と言ったら薄暗い岩で出来た穴を思い浮かべるであろう。
しかし違った。
まさかまさかの馬鹿でかい氷河の中だったとは、
そうは言いながらも俺は、上下、左右、前後と首をくるくると回しながら見渡した。
「綺麗。」
「そうでしょ!ここは絶妙なバランスで太陽の光が反射してブルーの色を照らし続けているのよ。」
「此処を見つけた時は僕もエマ君と同じ反応をしたよ。」
キラキラとしたブルーの輝きが俺の心を浄化していく中、いかにも人の手が加えられている事100%の植物畑が見えた。
小さい範囲だが、柵でちゃんと覆われていて作りはしっかりとしていた。
野菜を育てる範囲をしっかりと決め、魔法で用意したのだろうか?
土を用意し、日光の反射で光は届き、寒さ対策として松明を周りに刺して火を着ける。
そのお陰で周囲の温度を上昇させていた。
俺たち三人は近付いて行く。
「エマエマ!紹介するよ。此処にある野菜たちは左から"カロン"、"マカライナ"、"クルクル"だよ。
"アロハスハ"は別に此処で育てなくとも雪山に行きさえすれば簡単に育成できるんだけど、取ってくる度に雪山上るのが面倒くさいからついでに育ててるんだよ。」
「うん、それでいて空気中に漂う冷たい魔力をエネルギー源にしているから日光は必要ないし繁殖能力がすごくてね。この地では唯一親しまれている野菜なんだ。」キリッ
「"カロン"は確かあのカリカリとした歯ごたえの野菜だよね。」
「うん、"カロン"は野菜なのに実はたんぱく質が豊富で一番のエネルギー源になるんだよ。
"マカライナ"は常に水と日光を上げないと直ぐにダメになっちゃうし、育てるのが難しい野菜なんだけど味は此処で育てている野菜よりもずっとおいしくて甘いんだよ。
"クルクル"は調味料になる野菜さ、直接食べると辛いから注意が必要だよ。」
香辛料になる野菜まであるんだ。
確かにこの寒い世界では"辛い"という要素は何よりも欲しい要素。
一時的にではあるが体温を上げて寒さに負けない身体にすることが出来るな。
「ある程度説明も終わった事だし収穫しようか。ちゃんと種は残しておいてな、」
ウィンターが三回転した後に決めポーズをしながら言う。
しかし慣れとは怖いものでものの数時間で奴の扱い方というのが分かってきた。
無視だ!!!!
30分後、
それぞれ背負ってきた籠に野菜を詰め込み収穫を終えた。
それからウィンターが自然な流れで「家に来ないか?」と提案してきた。
何でも今取れたばかりの野菜たちを料理して振舞ってくれるらしい。
ウィンターも当然ツララと同じように一人暮らしであり、狩りや料理の腕は折り紙付き、
不味いご飯が出て来ることはないだろう。
「ならお言葉に甘えて、」
「私もお腹減ったから特別に来て上げても良いよ。」
ツンツンしながらもツララはウィンターの案に乗った。
そして俺も、
「なら決まりだね。」キリッ☆
さっきから無駄な動きが多いウィンターはうるさい動きで承諾の言葉を送る。
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~現在地・ウィンター家~
ウィンターの家は予想外にも良い所だった。
事前にツララからはウィンターの家は洞穴であると把握していたから、きっと寒さに耐性のある蝙蝠とかがいるんだろうな、と思っていた。
だが、その姿を見た瞬間俺は「マジか・・・」と思った。
一体何が俺をそこまでさせるのか、
それはウィンターの家が豪華すぎるのだ。
今まで想像していた予想が全てあっという間に上書きされ、塗り替えられていく。
洞穴の陰気臭い真っ暗な空間と貴族や王族が住んでいる様な立派な屋敷の内装をトレード交換したかのような中身だ。
驚くのも無理はない。
しかしツララは動じてなかった。
定年期に来ているからだろう。
だが俺は初見なので感想や思ったことを口からボロボロと零れだす様に吐く。
ウィンターは早速収穫してきた新鮮な野菜を使った料理をしようとkitchenに赴いた。
俺とツララの収穫した野菜も持って、
奥側ではジュージューと芳ばしい油と野菜が焼ける匂いと音が奏でられ、鼓膜を刺激する。
空腹も誘う。
そして暫くして料理が運ばれてきた。
白い皿に運ばれてきた。
その上には野菜の焼き炒めだろうか?
焦げ目がいい感じについた美味しそうな匂いの野菜炒めが出来ていた。
俺達は仲良く三人で食べてみることに、
「」もぐもぐ
「」もぐもぐ
「」もぐもぐ
「美味い!ただ野菜炒めただけなのに、それにこの"クルクル"のピリ辛さが効いてて温かくなる。癖になる味だな。」
「ふっ、流石この僕☆
特にこだわった要素が無いにもかかわらずこんなに美味しい料理を作ってしまう僕自身が恐ろしいよ。」スッ
スカした態度で前髪をサッと意味も無く払い、二口目へと手を付ける。
客観的に見たら只々イラッてするキャラだが、本人はいつになったら気付く事やら、
「辛い!」
「ツララちゃん辛いの?こんなに美味しいのに、」
「こんなの辛すぎるよ!食べれないよ!!」ギャーギャー
見た目通り子供な外見は伊達では無く、どうやら味覚まで子供らしい。
しかしそれが可愛いんだけどね!
「食べれないなら俺が食べてあげようか、」
「うん、」
潔く俺に野菜炒めを差し出し、本人は水を飲む。
ツララちゃんは辛いのが苦手で甘い系統の味が好きなのかな?
俺も子供の頃は甘いご飯ばっか食べてたし、辛い物は好き好んで手は付けなかったな~、
でも大人になるにつれて辛いのが好きになるんだよな。
特にキムチとかカレーの辛口とか、子供の時食べれなかったご飯がいつの間にか食べれるようになってて、
いや~、あの時が懐かしく感じるな。
今ツララちゃんは大人へ成長する為の壁の一つに当たっている最中か、
うんうん、と頷きながら一人納得する。
「ふー、食べた食べた。」
「美味しかったようだねエマ君。僕も作った甲斐があったものだよ。どうかね、今度暇があった時にでも遊びに来ては、」キリッ
「そのお誘いは嬉しいけど生憎この北の大地から西側の大陸へと渡りたいのでね。遠慮しておくよ。」
「そうか、それは残念。」しょぼーん
「エマは帰るために忙しいのだ。お前の為に居座る気はないんだって、」
「そうか、そういえばツララ。もうすぐ"あいつ"が来る頃合いだが大丈夫なのか?"武者氷鬼"」
「っ!そうだね・・・」
ウィンターは話を持ち出して"武者氷鬼"という単語を出した。
ツララは食いつくようにして聞く。
"武者氷鬼"・・・何だそれ?
モンスターの名前か、来る頃合い、この単語から推察するに外から訪問でもしてくるのかな?
でも"武者氷鬼"というワードをウィンターが出した時点で何か空気が重い感じになったし危険な奴なのか?
「エマ君、これから外に出る時は気を付けた方が良い。もうすぐ季節は夏に突入しようとしている。」
「夏ですか。そういえばもうそんな時期なのか、何だか早く時が巡ってる感じがするな。」
「夏になる時期に合わせて発生する謎のモンスター。その正体は誰にも分からない。ただ分かる事とすれば奴は敵だという事だけ。ツララ、ちゃんとエマ君を守りたまえよ、」
「分かってるよ。今まで乗り越えてきたんですもの。任せないさいよ。」
ウィンターは真剣な眼差しで注意を促してきた。
気取った態度も取らず、いつものマイペース気分でもない。
お遊び抜きの言葉だ。
ウィンター曰く"武者氷鬼"とは氷の鎧と兜を被り、一本の刀を握りしめ、お凸には立派な二本の角。
常に冷気を纏い、鬼の顔をしているSランクに該当するモンスターらしい。
樹海で戦った上級モンスター達より強いらしく、何と冷気を操り、剣術を使い、言葉まで話す。
つまり"武者氷鬼"はユニークモンスターという奴だ。
ユニークモンスターとは、通常のモンスターとは違い知能や言葉を交わす特別な個体。
それが夏の訪れと共に姿を現し、幾人もの冷耐人間、生き物を刀の錆にしてきた凶悪な氷魔。
俺は恐ろしい反面、実際に会ってみたいなという楽観的態度で聞いていた。
ここまで読んでくれてありがとうございます。
面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。
これからもよろしくお願いします。




