第4話 魔導書部屋!?
次の日の朝、俺は朝食を食べて早速魔法の練習だ!!と息巻いたはいいが、外はホワイトアウト。
前方を見据えても真っ白な景色で何も見えず、それどころの話じゃなかったので情けない話ではあるが戻ってきました。
子供は『風の子』というが、あのまま極寒の外に居たら完全に『風邪の子』になる事間違いなしだよ!!
~廊下~
「それにしても外が寒くて思うように魔法の練習が出来ないな~。別に異世界なんだから魔法以外にもやる事はあるんだろうが、せっかく目の前にある魔法という概念をものにしたい。というかもっと使ってみたい。中でやったら確実にシスターに半殺しに合うし、どうしたものか・・・」
俺はどうにかして魔法を使いたい欲を解消するために思考をぐるんぐるん回す。
だが、しばらく考えたがお仕置きされるのが目に見えているので当分は諦めて温かくなるのを待つことにした。
「さて、やる事が無くなった今、何をしようか。特に孤児院って子供の面倒を見ること以外やる事がないんだよね。後は掃除とか家事とかかな。平和過ぎるのも退屈なもんだ。」
軋む音を弾ませながら古材の廊下を歩いて行く。
孤児院の中からは沢山の子供たちの明るい声が常に聞こえてきて賑やか状態だ。
学校にある音楽室みたいに穴がいっぱい空いているわけでもないし、防音室でもないのでそこら中から音が漏れ出ている。
逆に寝る時になったら一斉に静かになるのでちょっと怖かったりする。
「」♪
特に何もないので俺は鼻歌を歌いながら廊下を歩く。
横にはボロボロになっている木製の扉が横一列に綺麗に並んで取り付けられている。
しかし、その内の一つがガラ~~と沈み込むような音を出して開いていた。
誰かいるのかな?
自分の部屋くらいちゃんと閉めて欲しいが、ここは優しさの塊であるこの俺がキチンと閉めてやろう。
鼻歌交じりでその扉に近づいて行き、善意の心で扉を閉めようとドアノブに手を掛けた時、俺は扉を閉めるより先にとんでもない光景を目撃してしまった。
「!?」
それは、ド派手に主張して来る大量に詰まれた本。
沢山の本だ。
部屋の奥が見えない程にぎゅうぎゅうに詰まってる。
まるで何年も掃除していないゴミ屋敷のように、一室が本で溢れかえっているのだ。
棚に収まりきらずに零れ落ち、ビルの如く聳えている本の山だってある。
よく見たら天井まで届いてる。
「何じゃこれ!?」
俺は思わず思った感想を素直に言う。
一室が埋まる程の量で溢れかえっている本の山。
見ているだけで雪崩が起きそうな不安定さがある。
相当である。
一体誰の部屋だ、と思った俺は一歩部屋から下がり、扉のネームプレートを確認する。
文字自体は薄れ過ぎて消えかかっているが、確かにそこにはクリスと書かれてあった。
そう、ここはクリスの部屋なのだ。
「でも、なんでこんな大量の本がここに・・・それにこの本を買えるだけの金額はこの貧乏孤児院には到底ない。もしそんな大金があったとするならば別の事に使った方が有効的。一体どこからこんな大量な本が出てきたんだ?」
頭の中がクエスチョンマークでいっぱいになり、俺は一旦考えるのをやめた。
考えていても何故こんな所に本が置いてあるのかは永遠に謎のままだからだ。
「クリスごめんな。入るよ。」
俺はクリスに一言誤ってから部屋に入る。
だが、本の壁が俺の歩みを約30cmの距離で塞き止めた。
これ以上進めないのだ。
というかこれが限界、
目をギョロギョロと見渡す必要が無いくらいに至る所に本。
視線の先には本。
視界に入ってくるのは本。
本、本、本、あらゆる所に本があるので視界が本でうるさい。
「扉の外で見た時から思っていたが、邪魔だな!!!ていうか進めない!」
俺は本の壁を崩しては穴を掘るように奥へと突き進む。
するとハウスダストと共に雪崩が起きる。
本のビルも倒壊した。
下に散らばっている本は、抜き足差し足忍び足で的確な足さばきで本と本の間に足を通して踏まない様に気を付ける。
そうして一時間が経ち、人間一人分のスペースを確保することに成功した。
だがその代償に体中の汗腺から塩水が滲み出る。
「まさかこんな寒い気候の中で汗をかくことになろうとは予想外。しかし、この世界の本については興味がある。ちょうど暇なので適当に中身開いて読もうかな?こんなに本があるんだから一冊くらい大丈夫だよね。」
俺は丁度目の前にあった茶色の色をしたデカくて分厚い本を一冊手に取り、中身を開いた。
中身は俺の知らない文字が永遠と綴られていた。
丁寧に丁寧に書かれているその文字は俺の見たことのない文字。
しかも、この体の元の持ち主が既に学んでいたであろう文字と照合させても虫食い状態になっているため所々字が読めない。
「分かっていたが、読めない。全く読めない。ていうか中途半端なんだよ。」
ペラペラと読めないページを捲りまくる。
暇だからという理由だけでその辺の本を片っ端から開いては閉じる行為を何回も繰り返した。
退屈。
すると後ろからギーーという床が軋む音と共に確かな視線を感じたので俺は後ろを振り向いた。
「・・・」ジーーー
「・・・・あ、クリス。」
後ろを振り返ると、案の定一番見られたくない人に見られてしまった。いや、見つかってしまったという表現の方が正しいだろうか?
兎に角この部屋の主のクリスに俺は見つかってしまったのだ。
寝ぐせだらけでピョン!と髪が逆巻いているぼさぼさの紫の髪の毛。
彼女の目付きはやる気のなさを表しているかの様な怠そうな垂れ目。
身の丈に合わない程の黒いマントを身に着け、白いシャツがはだけて育った胸の谷間がよく見える。
エッチだ!!!!!!
長さと色が左右不対称のニーソを履いているのがとても良く目立つ。
そんでもって全体的にだらしない。
だが、そんなクリスは俺を睨み付けるかのように翡翠の瞳を光らせてくる。
ヤバイ、逃げないと!
でも、どうやって逃げる。
そもそも見つかった時点で逃げ場なんてないし、怒られる。
詰んだ。完全に詰んだ。
だが、まだだ。
クリスの性格を考えればここで怒ったりしないはず、
はず・・・・だよな?
いいよな、怒んなよな。
この状況で何が起こるか分からない俺は、言い訳の一つも考えず入った過去の自分を恨みながらこの場の脱出手段を考える。
全力で思考を回しながら俺は脳をフル回転させる。
うおおおおおおお!何かないか!
いい切り抜け手段!
俺が必死にこの場の脱出手段を考えていると、クリスが口を開いた。
クリスの目線を俺は見て、本を見て、交互に俺と本を一瞥しながら口を開けた。
クリスは淡白な感じで「エマ、魔法好きなの?」と答えてきた。
なので俺は表情筋を硬くしながら「モチロン」と棒読みで一言答えた。
すると、孤児院の中で魔法に興味を持ってくれる人がいなかったからか、目をキラキラさせて次々と文字を飛ばしてきた。
「エマ、私はとても嬉しいよ。君が魔法に興味があるんなんて思いもしなかった。私はね!せっかく魔法がある世界なんだから何処までも魔法を探求し、研究し続けること以外に私はこの人生で楽しみと言えるものが無いんだよ。孤児院の人達は、此処の奴等は魔法は覚えようとするけどそれは最低限なもの。そこから更に魔法を深めようとか何もしないんだ。魔法と言うのは未知の連続さ。魔法というものを知れば知る程面白く、それでいて難解で難しい。だが、」
クリスの話はこの後も数時間も続いた。
長げぇよ。