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第45話 白銀世界

第三章突入しました!!!

 此処は-50度という極寒の白銀世界。

 この場所は常に永久凍土でホワイトアウトが頻繁に起こる雪と氷の大地。

 もしも、人間が1分という短い時間の中に居ただけだとしても全身の体温が一瞬の内に奪われ、生命の危機に陥る所まで下り坂になること間違い無し。


 だが、そんな世界に負けること無く勇敢に立ち向かう一人の女の子がいた。

 可笑しげで風変りなその見た目。

 ぽっちゃり体型の膨らんだ可愛らしいペンギンの被り物を身に着け、顔以外全身コーティング。

 ペタペタと可愛らしく歩き、手には釣竿を持っている。

 魚を釣るつもりだろうか?


「今日は特に吹雪になることも無く~、お日様の下で~~、堂々と釣りが出来るとはなんという幸運~~、

 今日は~何か良いことありそうだぞ~~!」フンフン♪♪


 陽気なリズムに合わせて喋る女の子。

 ニコニコ笑顔で雪の上を歩く。


「歩くの~面倒くさいや~~滑ろ~~」フンフン♪♪


 釣竿を肩に担いで、お腹をソリに見立てて雪の上を滑る。

 その姿はまさにペンギンそのものだ。

 そしてスイスイとスノーモービルの様に機転を効かせて軽快に進んで行き、釣りが出来るポイントへと移動してきた女の子は水辺に到着した。


「さて、今日は何が釣れるかな~~」フンフン♪


 海ではない。

 ちょっとした氷水の湖みたいな所だ。

 彼女はいつも此処で釣りをしに来ているのだろう。

 水際まで歩いて行き、釣り糸を垂らして獲物がかかるのを数時間ほど待つ。

 しかし釣れない。

 なので別のポイントへ移動しようとこの場所から離れ、向かい側にある距離60m先の水際まで動こうと腰を上げ、行動に移した。


 しかし!

 ここで女の子はあるモノを発見した!!


 それは、氷だ。

 だがただの氷ではない。

 中に何かいる。

 凍ってる。

 この極寒のマイナス温度に耐え切れなくなった結果、筋肉と脳の動きが止まり、凍死してしまった可哀そうな動物か何かなのか?と女の子は考えて近づいて行く。

 しかし、そうでは無かった。


「こ、これは・・・人間?」


 女の子が見つけた生き物の正体は、氷の檻に囚われてカチコチに凍った全身凍結状態で発見されたコールドスリープ中の俺であった。

 泉にプカプカと浮いている。


「人間だ!」


 すると女の子は俺の哀れな姿を見るや否や、興味津々な状態で近寄って来た。

 丁度手に持っていた釣竿を上手く使い、手繰り寄せて何とか氷の大地の上まで持ち上げる。

 そして俺の事を氷越しに調べる。

 俺の周りをグルグルと時計回りに移動して全身をじっくりと見て回る。


 そして色々調べた結果、凍結状態の俺を危なげに背中で担ぎ上げ、足をプルプルと震えさせながら来た道を戻って行った。


 一見力持ちでも何でもなさそうだが、彼女は140cm位の背丈で俺を持ち上げたのだ。

 以外に力持ちだという事が分かる。

 釣竿は歯でガッチリと固定してる。

 魚を釣るという当初の目的は一旦中断し、彼女の興味は俺へと移っていた。


 一体何処に連れていかれるのだろうか?

 何の意味があって俺を担ぎ上げたのかは不明だが、オブジェの一つとして飾るならば気持ち悪い。


 そして時暫くすると夜になっていた。

 夜天には、美しく揺ら目煌めくオーロラが暗闇の世界に出現していて、その下でペンギンの着ぐるみを着た女の子は家へと戻っていた。


 小さな家だ。

 屋根には雪が層の様に積もり、氷柱(つらら)もできて、家自体に霜が出来て凍っている。

 それに家の周りには雪掻きをしないといけない程の雪が積もり溢れ、完全に玄関以外の場所が埋もれていた。


 そんな家の中で、女の子は俺をガッチリと固定してる氷を松明で(あぶ)って溶かしていく。


「早く溶けないかな~、まだかな~?」


 退屈そうに棒読み風に呟く。

 既に氷の何割かは固体から液体に変化して水が漏れ出る。

 ここまで時間が掛かる事を踏まえると、結構分厚い氷に閉じ込められていたことが分かる。


 そして数分後・・・


 彼女の期待が高まるにつれて氷がグラグラと振動を全体に与え始める。

 復活する予兆が出始めたのだ。


 そして、罅が入っては波及して思いっきり割れた!!

 俺の大声文句と共に氷の飛沫が小屋内に飛び散った!


「うわっ!!」ポスン


 ペンギンの女の子は勢いに気圧されて尻もちを可愛く着く。


「ああああああんのクソガキ!何処に飛ばしてんだよ!孤児院へ飛ばしてくれるって言ったじゃんか!!標高何メートルか知らんが、空から垂直落下して氷水の中にダイブした挙句に全身氷漬けで死ぬかと思った!

 マジ洒落にならないレベルで死ぬかと思った。

 気持ちよく送り出してくれたと思った瞬間から第二の生をリタイヤする所だったぜ!!!」


「!?!?!?」


「っていうか冷たい。寒い。リュックも俺も水浸しだし・・・」ハックション!


「あ、あの、人間さんですか?」


「ん?」ズルズル


 寒いのを我慢し、鼻水を(すす)りながら俺は、ここでようやく目の前の女の子に気付く。

 変な所へ飛ばされ、怒りで前が見えていなかったのだ。


「えっと、人間さんですか?」


 上手く聞き取れていないと思って気を効かせたのだろう。

 声をさっきより大にして再度言ってくれた。


「う、うん。俺は人間だけど君は誰?」


 彼女は答える。


「私はツララ。この雪と氷の世界"白銀雪氷のグレイスダイアモンド"で細々と生き、生存競争を生き抜いているしがない冷耐人間(フロストヒューマン)だよ。」


「"グレイスダイアモンド"?」


「うん、ここは北の大陸。常に寒いマイナス気温で保たれ、定期的に来る"冬嵐"から身を守らなければならない寒冷地帯。

 この地では食べ物を得ること自体命懸けで、何をするにも一苦労することになるよ。だから此処に住んでいる人は皆狩りをして生き延びてるんだ。」


「へぇ、森の次は氷か・・・。」


「ん?森?」


「あぁ、俺はエマ。実は訳合って西の大陸を目指してるんだけど、南方面に位置するエルフの樹海という所でロリババアに飛ばされ、グレイスダイアモンドだっけ?

 此処に行きついちゃってね。

 人生迷子ですよ。」


「と、という事は外の世界から来たってことで間違いないんですね!!」


 ツララはどこか嬉しそうに言葉を掛けた来た。

 もしかして俺の不幸な話に面白い点でも見つけたか?

 人の不幸は蜜の味と言うが、まさに今だな。


 それとさっきから気にはなっていたんだが、何だろうアレ?

 ペンギン?着ぐるみ?

 確かにこの寒さだと大分温かそうだが、流石にその恰好は・・・可愛いな!!


 ツララちゃんって名乗ってたよね。

 もしこの場にロリコンでも居たら誘拐されてしまいそうな程に愛くるしいな。

 マスコットとかゆるキャラの類に分類されても可笑しくない可愛さだな。


「抱きしめたいな・・・」ボソッ


「え?」


「あっ、何でもない何でもない!!!」


「はぁ、」


 俺は一回咳払いをして話を変える。


「えっと、ツララちゃんはどうしてペンギンのコスプレ何かしているんだい?」


「こすぷれ?って言うのは分からないけど、この格好は私達冷耐人間(フロストヒューマン)族には欠かせない狩りの基本戦略で、特に"コウテイ"と呼ばれるペンギンがいるんだけど、そいつを狩るためにこの被り物は必要なんだ。」


「種族で狩り方が異なるのか。面白いな。」


「それよりエマ!次はあなたの事知りないな。」


「俺のこと?」


「うん!」


 ツララはこの地で一人細々と暮らしている。

 だから、俺と同じように仲良く喋れる友達がいなかったらしい。

 だからか、俺と対話できて嬉しそうだ。


「そうだな~、とその前にちょっとの間だけでいいので羽織る物をください。お願いします。このままでだと風邪を引いた挙句に本当に凍死しそうです。」ぶるぶる


 考えて見れば俺は今水浸しである。

 折角名も知らぬエルフ達が俺の為に見繕ってくれて、ルーファスが俺へのプレゼントという事で渡してくれた服が水を吸ってびちゃびちゃだ。


 それに加えて内側からでも伝わる寒い気候。

 身体がさっきから冷え続けている。

 なので早急に温まる物が必要だ!!


「え~と、確かこの辺りにあったような。」


 ツララはガサゴソと物をしまう為の風呂敷の中身をまさぐり、例の物を取り出そうと探っていた。


「あっ、あったあった。はいエマ。これ、サイズが合うかどうかわからないけど無いよりはマシでしょ。」


「ありがたいよツララちゃん。感謝感謝。」


 俺は、この地に住む動物から剥ぎ取ったであろう分厚い毛皮のコートを貰った。

 羽織ってみると非常に暖かい。

 寒さのバイブレーションが無くなり、さっきまで現在進行形で冷え続けていた身体の感覚が嘘のように無くなった。

 ポカポカだ。


「で、早く早く。私エマの話聞きたい。外の世界ってどういう所なの!」


 急かすツララ。


「はいはい。わかったから落ち着いて。ステイステイ。」


 俺は話した。

 流石に転生者という事実は隠したものの、孤児院での生活や隣町・ドラウンのこと、その中で起きた大事件や火山、エルフの樹海まで沢山だ。


「へぇ~すごいすごい。ホントに外の世界って面白いね。」


「その反応だとツララちゃんは外の世界を知らないの?見たこと無いの?」


「うん、実は私外の世界に行ったことが無いの。ずっと寒冷地帯に住んでいてね、退屈してたんだ。いつかは外の世界へ進出してみたいという願望があるんだけど種族故に行けなくて、」


「確かツララちゃんの種族って冷耐人間(フロストヒューマン)だったよね。どんな種族なの?聞いたことの無い種族名だけど、」


「えっと、住む環境が違うだけであって基本的には人間と変わらないんだよね。寒さによる耐性は著しいけど。でも冷耐人間(フロストヒューマン)という種族は面倒くさい種族だよ。特に・・・」


 ツララは話してくれた。

 冷耐人間(フロストヒューマン)という種族について分かりやすく、


 冷耐人間(フロストヒューマン)というのは氷の大地に適した体の構造、能力が備わった人間の亜種的な存在。

 人間とは違い、お互いを敵対関係と見ており、狩りの最中に同族を発見した場合は両者警戒態勢及び戦闘態勢を取る。

 と言っても殺し合いはしない。

 あくまで自分の力を見せつけ威嚇する要因も含めて、どちらが獲物を狩るかでバトルする。

 この厳しい寒さの中で生き抜く為にはそういった駆け引き、バトルは必然的。


 それでいて常に生存競争に身を置かれている種でもある。

 それが冷耐人間(フロストヒューマン)


 それからも俺とツララの互いを知る為の話し合いは続いた。

 夜から朝へ移行しても暫くの間語り続けた。

 この地に人間が来ること自体非常に珍しい事らしい。


 外は朝。

 昨日に引き続き天気は晴れ。

 燦然(さんぜん)と輝く太陽の光が眩い光を室内に入れて来る。


「どうやら朝になったようだよエマ。」


「雪と氷の世界。北の大陸か・・・。」


「・・・エマ、一緒に狩りに行こうよ!ここでの生活の仕方をレクチャーしてあげるよ。」


「ん~、今はそれどころじゃないんだけど、元の場所へ帰るために試行錯誤してこの地を脱出したいんだけどな。」


「でもこの地を出るにしても船は無いし歩いて行く選択肢以外は無いよ。

 だから外へ出たいなら狩りをしながら徒歩で向かうしかないね。と言っても此処から西側のルートを行きたいなら一旦東側へと向かわなきゃいけないけどね。」


「どうして?」


「私もこの大陸から出たことが無いから詳しいわけじゃないけど、この地から西側ルートを行こうと思ったら山を越えなきゃいけないし、それに海が間にあるからどっちみち通れないのよ。

 だからまずは東側へ向かって行くしかないよ。」


「マジか。」


「だからこの地で生き延びる為の狩りの基本を教えてあげるよエマ。付いて来て!!」


 俺はテンションが上がったツララに外の世界へと案内され、白銀の世界に足を踏み入れた。

 白くてマシュマロみたいなフワフワとした感触が靴越しでも分かる程に柔らかい。

 軽く体重を掛けただけなのに沈み込む。


 雪ね。

 そういえば、俺が初めて転生してきた時も雪が積もってたな。

 あの時が懐かしく感じる。

 数か月前の事なのにな、


 過去の思い出に浸りながら俺はツララについて行く。


 まさかの予想外の事態。

 今度はこの"グレイスダイアモンド"の世界を舞台に生き抜く。

 その為に、俺はツララに狩りの方法をレクチャーさせられる事になったのだった。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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