第44話 Next Stage①
次回からちょっとしたおまけエピソードです。
また、主人公の扱える魔法一覧。
ここまでのまとめ回と言ったところでしょうか、
数日後・・・
俺は旅路の支度をしていた。
・一週間分の食料を持った(野菜を固形物にしたもの)
・天然水も水筒に入れた。
・括れたナイフも持った。
・着替えも持った。
・最後にケーラさんから直々にエルフ特性の弓も貰った。
これらを一まとめにしてバッグの中に押し込むように入れる。(弓は別)
これで旅の支度準備万端だ。
場所は孤児院。
魔法の知識を着けたと同時に大方の位置は理解している。
孤児院が立っている場所、それは西の大陸。
ヴィルタリス王国がある場所だ。
広大な土地で、東の大陸にも引けを取らない程のデカい大陸だ。
その端っこにポツンと孤児院が立っている。
今からそこに向かう。
帰る方法は旅をしている最中に考えるから、とりあえず最寄りの町に着くまで適当にぶらつくつもりだ。
適当に働ける場所を探してから着実に向かうようにするさ、
だから問題はない。
思えばこの樹海に命からがら迷い込んでから一か月が経った。
長いようで短かった日々だ。
闇ルーファスが懐かしく感じる。
あぁ~、思い出すだけでいろんな出来事があったな。
火山に来て、樹海に来て、ルーファスに会って、ケーラさんに助けられて、能力を使って、カーチェさんに会い、それから・・・
思い浮かべるだけでこんだけの事があった。
十分にお世話になった。
だが俺は此処にいつまでも滞在するわけにはいかない。
孤児院で待っている人たちがいる。
その為に俺はこの樹海からそろそろ旅立たねばならないのだ。
それに此処を離れるタイミングとしては今が好機!
モンスター大行進もあり、この辺り一帯のモンスターは数が激減しているときた。
襲って来たとしても今の実力ならば簡単に討伐できる余裕と自信がある。
フィジカルも鍛えたから体力もそこそこ上がっていると思う。
因みにケーラさんにはこの事を伝えてある。
俺が旅立つことを、
今でもケーラさんが俺の発言をすんなりと受け入れてくれた事に寂しさを感じるが、これでいいんだ。
これが正解。
でももうちょっと侘しさの一つ出したって罰は当たらないじゃないか?と感じるが、俺が此処を離れる時が近いのを悟っていたのかな?
それに言伝として、皆にもよろしく、とも伝えている。
俺が旅に出た頃には全体に伝わっているはずだろう。
悪いが俺は一人静かに旅立たせてもらう。
「さようなら。我が天使、そしてケーラさんの新築。なんか一層自然間増したけど、緑色しかないけど、達者でな。」
新築されたNEWケーラさんホームに一言「さよなら」と告げ、正門を目指す。
初めて弓の練習をした練習場を通り、ルーファスと戦った戦闘樹林を通り、カーチェさんの家の前を通って思いに浸りながら暫く歩いていると、里の中央に沢山のエルフが大勢集まっていた。
外側も囲むように配員されていた。
驚く俺は「何事か!?」と思った。
俺はその光景をまじまじと見つめる。
すると不意に耳元近くからリーガル・ウイルターの声が通った。
「ひっ!」
脊椎を優しくなぞり撫でるような寒い感覚を覚えながら情けない反応をして振り返る。
するとそこには声の通り、リーガルが優しい笑みを浮かべながら立っていた。
あの戦闘後からコミュニケーションをちょくちょく交わして仲良くなったは良いが、いまいち距離感が分からない掴みどころの無いエルフ。
ハッキリ言って苦手だ。
だけど美人だから委縮しちゃう。
「エマ君、みんながエマ君の為に集まってくれているんだぞ☆行かなくていいの?」
「俺の為?なんで?」
「それは決まっているんだぞ☆ケーラが報告した情報によると、エマ君が旅に出るとか言うからなんだぞ☆全く水臭いよね。エマ君って、みんなに何も言わずに出て行こうとするんだから、」
「え、あぁ、ごめんごめん。」
「ほら、付いてくるんだぞ☆」
手を握られて皆がいる所へと強制連行させられる俺は、ちょっと緊張気味で集の中へと入って行く。
周りから騒がれ、俺はリーガルに従って良い様に連れていかれる。
そして、中央辺りに着いた途端にリーガルが一人の幼女へと話しかける。
その幼女はカーチェだ。
内容は聞かなくとも分かる。
俺の見送り会をするつもりだ。
カーチェは俺達の存在に気付くや否や待ってました、と言わんばかりの表情で近寄って来ては話しかけてきた。
「エマ、お主何も言わず出て行こうとするとはなんじゃ、薄情者目が、」
「すいません。みんな忙しいと思って俺なりに考えた結果なんですよ。」
「全く最近の若いもんは、遠慮とかせずに周りを巻き込む冒険心が備わっておらん。」
「冒険心?」
「そうじゃ、若い時はな、周りにどんどん迷惑かけて大きくなって、いずれは大人になって行くんじゃ。遠慮とかして引き際を覚えたら大人になっても染みつき取れん悪い癖になるぞ。そういう余計な心得は子供の内は覚えるな。わかったか?」
「えっえぇ、」
もう覚えてるんだよな~、
まさかこんな終盤まで来てお説教とは、
予想外過ぎる、でも一理あるよな。
でもこれは仕方ない事なんだよ。
前世で染みついてしまった悪癖は取ろうと思っても中々取れずに高まって行くばかり、
いつの間にか当たり前になってしまった弱腰が強まって行くばかりでな、
ホントどうしようもないのよ。
煙草と同じ有害な毒なんだよ。
まさか異世界で指摘されるとは思わなかったけど、
「で、今から俺はどうすればいいの?歌って踊ればいいの?」
「阿呆か!お主が主役なんじゃからな。この集まりはリーガルから聞いておるかもしれんが、ワシ等がプレゼントする最高の忘れられない思い出と共に「さよなら」と言ってやる祝杯の祭りじゃ!最後の別れくらい派手にして見送ってやるわい!これも心を改めた長としての役目!!」
「あ、ありがとうございます!」
カーチェがそう発言すると、周りにいたエルフ達が盛り上がった。
料理や楽器などが無くとも俺を送別させるには十分。
これもエルフ達なりの感謝の表れであり、里を救ってくれた救世主への最後の手向け、
周りを見ると各隊長やルーファス、俺が救ってやった少女エルフがおり、どうやら壮行会の様に俺の旅路に激励を送ってくれている。
ありがとう、ありがとう。
皆ホントにありがとう。
何かしんみりするな。
薄っすらとぼやける視界を瞬きで拭い、俺もその大歓声に応える様に今度は心の中ではなく、大きな声で表に出した。
「今までありがとうございました!!お世話になりました!!」
最大限の気持ちをハッキリと公衆に出し、感動する気持ちを振り切って俺は前を向く。
そこにカーチェが前へ出て来て俺に「お主、旅路の目的は決まっておるのか?」と聞いてきた。
俺は「えぇ、今のところ目的は孤児院に辿り着くことです。それまでは適当に世界をぶらつく感じですかね、」と言う。
「つまりはこの樹海は越えねばならぬ通過点という認識で相違ないか?」
俺は肯定する。
そして俺の返事に応えてカーチェがこの世界の世界地図を手に持ち、提案する。
「その目的地までワシ等が飛ばしてやろうか?普通に歩いて孤児院へ行くよりかは断然早く着くぞ?それに今までの事を考えたら足りぬ恩返しだろうが、せめてもの礼にどうじゃ?」
「飛ばす?」
あぁ、きっと転移魔法の事だな。
これでカーチェやルーファスとお別れになるんだから、有難く肯定しておこうかな?
最後になるんだし、
俺は楽観的な態度で承諾した。
そして孤児院がある場所を指定して教える。
「そうか!受けるか!なら、早速皆の者、取り掛かるぞ!」
意気揚々と言葉を返してこの里に集うエルフ達の魔力を使い、目的地までの座標その他諸々を調べた上で目的地へ飛ばす為の準備に取り掛かる。
早急だ!
すると、俺の周りを囲むようにしてエルフが両手を合わせて合唱し始めた。
そうすると八忙星の魔法陣が現れて、物凄い魔力密度が空気を漂い始め、ひしひしと五感で伝わってくる。
転移されるのはこれで三度目だな。
始めはちょっと怖かった部分があったが、今となってはもう慣れこっよ。
いつでも来てもいいからな。
「では、達者でな!エマ。」
「はい、ありがとうございますカーチェさん!俺忘れませんから、」
「次は負けんぞエマ。俺は此処で鍛錬してさらに強くなり、いつかお前の前に現れてリベンジマッチを申し込む。それまで誰にも負けるな!約束だぞ!」
「あぁ、望むところだルーファス!」
「私は分からないけど、なんか寂しくなっちゃうんだぞ☆」
「エマさん、向こうでも元気に生きていてくださいね。それから娘の事をよろしく頼みます!私はいつまでも待っていますので、」
「はい、任せてください。ケーラさんの娘さんを必ず見つけて送り届けますので、」
「承りました。約束ですよ?」
「絶対です。守ります!」
それからも各々感謝とお別れの言葉を言いながらエルフ達が泣いて喚く。
そんな光景を脳裏に焼き付け、俺も手を大振りに振って見納めする。
そして俺は、魔法陣から漏れ出る魔力の粒子と一緒に飛んだ。
空へ!
飛び上がった!!
「え?ちょ、ちょっとおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
遠い残響を残し、俺はエルフの樹海から去って孤児院へと帰る為に飛んで行った。
重いリュックを背負って、
「飛ばすって転移じゃなくて空へ吹っ飛ばすって意味だったのかよ!?」
雲を突き抜けて雲海より高度な高さで世界を俯瞰する。
風向きから来る風圧が俺の髪をオールバックにして風に抵抗する。
身体も硬直してぶるぶるとバイブレーションを引き起こす。
怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い!!
飛び過ぎだってええええええええええ!!
そんな萎縮震慄しているとも知らずして晴天霹靂な扱いを受けている俺の事を気持ちよく見送ったカーチェたちは雲一つない快晴の様な穏やかな心をしていた。
だが暫くするとルーファスが指摘をした。
「長様、その世界地図反対じゃないですか?逆ですよ?」
「・・・・・あっ、」
カーチェは気付いた。
もし、この逆さま状態の地図を頼りに座標を調べ、孤児院へ飛ばしたというのならば全くの別サイドへ辿り着いてしまうと、
それどころか、一番遠い反対側の大陸へと飛ばしてしまった可能性が高いと、
「長様、顔が真っ青なんだよ☆」
「長様・・・あなたもしかして、やりましたか?」
「・・・はい。」
その時、空気がシーンと沈黙に包まれた。
カーチェは今更になって自分が目的地とは逆の方向へと飛ばした事に焦りを感じ始め、変な汗がだらだらと全身から零れ出る。
だが、
「で、でも大丈夫じゃろ。ほれ、エマだぞ。ルーファスを打ち負かし、此度の戦を乗り越え活躍した大金星の心優しき少年。実力もあるし、おまけに能力者じゃ。別天地へ行ったとしても問題なかろう。うん。」
「確かにそうですね。」
ルーファスが乗る。
その返答を聞いた他の同胞たちは皆、大笑いで送別したのだった。
「ははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!」
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