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第40話 里が・・・・・

「同胞・・・たちよ・・・・・生きてるか?」ハァハァ


「は、はい・・・」ハァハァ


一つ目巨人鬼(サイクロプス)』を"宝魔"で軽く葬り、その後の第3陣を突破して第4陣戦へと移行した後のこと、

 エルフ達は満身創痍で疲労困憊と言った感じの様子が見て取れる。

 魔力残量も0%。

 初級魔法はおろか回復魔法で傷口を直すこともできない。

 立ち上がるだけで精一杯。

 しかし、全てを出し切って第4陣を突破することに成功した。

 朧げな視界になる直前まで頑張って戦い抜いた。

 皆へとへとだ。


 今のところモンスターの気配は窺えない。


「あの小隊長・・・これで全て・・・倒しましたかね?凌ぎ切り・・・ましたかね?」ハァハァ


「さぁな・・・」ハァハァ


「疲れました小隊長~~~~クタクタです。」ハァハァ


「あぁ、この戦が終わったら・・・酒でも一杯飲みてぇな。」ハァハァ


「私も飲みたいです~~、」ハァハァ


「だがまだだ、まだすべてが終わったわけじゃねぇ。向こう側は今も戦っている最中だ。呑気に喋っている暇はない・・・だが、今は体と魔力を休めるんだ。回復隊は魔力が戻り次第同胞たちの傷を治癒して回ってくれ、」ハァハァ


「わ、わかりまし・・・・た。」ハァハァ


「弓もゼロ本。魔力は底を尽きて体力も気力も残っていない。そして目の前には死体の山。良く戦えましたね・・・たった3,000人ぽっちで、」ハァハァ


「だな・・・」ハァハァ


「ふぅ~~、私このまま地面と一体化しそうだよ~~小隊長~~~、冷たくて気持ちいです。」


「そうだな・・・」


 そんな感じで激戦区を潜り抜け、安堵で長閑(のど)やかな優しい世界に浸っていると絶望を臭わせる声と気配が樹海の奥側からジリジリと漂ってくる気配がしてきた。


「なんだ?いやな気配がするな・・・まさかな、」


 その嫌な気配は大当たりである、と証明するかのように偵察隊エルフからもこのタイミングで報告が入る。


「(南側防衛を任されている同胞さん、強力な個体を複数発見しました!!群れで来ています。もう一踏ん張りお願いします!)」


「・・・・・」


 その報告を聞いたエルフ達は(つぐ)む。

 シーンとした空気が流れる。

 何故ならその報告一つで第5陣が進行中との情報を一瞬で脳が理解したのだから、

 モンスターの進軍がいまだ健在だと悟ったからだ。


「早速戦闘準備かよ・・・」


「立つことさえやっとの状態なのに、」


「こんなの酷過ぎるよ、」


「一体どれだけいるって言うんだあああああああ!」


「狼狽えるな!我々は今日この戦に勝って明日を生きる。我々の帰還を待ってくれている同胞たちがいる。こんな所でやられるわけにはいかない。立ち上がれ、武器や魔力が無くなっても気概で負けるな!最後まで足掻いて次へ託すんだ!」


 この言葉を最後にモンスターは姿を現し、堂々と大群を見せつける!

 怯えている顔が見えるモノの、此処で立ち向かわなくては里は壊滅。

 エルフは声を上げて立ち上がった。


「うおおおおおおおおお!やればいいんでしょ!やれば、」


「その意気だ!!行くぞ!!」


 覚悟を決めエルフたちは一斉に飛び掛かる。

 青褪めた顔は抜けてはいない。

 絶望もしていた。

 だがこの絶望は()()()()()でもあった。


 ズゴオオオオオオオオオオオオオ!!


 モンスターが密集している中心部分で大爆発が起きた!!

 爆炎の中から声が聞こえてくる。


「よく耐えてくれた同胞たちよ、そしてその心意気、感服する。素晴らしい、」


 やけくそで飛び込んでいくエルフ達の耳に優しく囁くような声が聞こえる。

 この絶望的状況を一瞬で打破する事の出来る可能性を秘めたような明るい声のトーンだ。


「皆の者、一斉発射!前の奴らを蹴散らすのだ!」


 うおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!


 その声の正体はルーファスであった。

 俺がいる転移組の集団が第5陣の後ろ側から攻撃をする。


「レイズさんはまだまだ暴れたりないな~、」


「俺もだ。さぁ楽しいパーティの始まりだぜ害虫ども!」


 切り込み隊長のレイズが第5陣の真ん中へと剣を両手に向かって行く。

 剣には赤いオーラを纏わせ、一振り二振りとモンスターを斬り倒し、素早い身のこなしで柔軟な動きをする。

 モンスターはレイズに攻撃を与えることが出来ずにやられる一方。

 レイズは無双して、後方に残された俺達に突破口を作る。


 そこにガイダとルーファスが道を広げる形でモンスターを派手な攻撃魔法で蹴散らす。

 後ろからは有りっ丈の支援攻撃もしてくれている。

 俺も負けずとモンスターを積極的に魔法で倒して行く。


 ルーファスが言うにはこれでモンスターウェーブは最後らしいけど、肝心のワイバーンが見当たらなかったんだよな。

 此処に転がっているモンスターの死骸を見ても翼こそ生えているが、俺が火山で見たワイバーンの姿とは全く違う。

 そもそも「触発されてモンスターが来た」と言っていたからいなくとも不思議じゃないけど、やっぱり心のどこかで不安要素というか引っ掛かるものがある。


 疑懼(ぎく)するところがある俺は、それでもモンスターの本質や特性を理解した上で的確な属性、的確な相性で魔法を行使する。


 それから3時間が経過。


 敵を全滅させた。

 強力な個体もいたが、集団戦闘になったらエルフには到底敵わない。

 第5陣を突破したのだ。

 もし、少しでも来るのが遅れていたら今頃里は逃げ惑うエルフ達で溢れかえっていたに違いない。

 それを考えると恐ろしいが、俺達はやったのだ。

 遂にこの戦に終止符を打つことに成功した。

 これで終わりだ。

 突然モンスターが現れることは無いし、トラブルもない。

 ワイバーンの事についてちょっと気がかりな事はあったが、今は万事解決。

 あとはケーラさんが待つ里へ戻るだけだ。


「何とかなったみたいで安心安心。一件落着だなルーファス。」


「ふっ、そうだな。今度こそエルフ達の為、力になれた。」


「あの~、ルーファス隊長。」


「どうした?小隊長殿。」


「隊長は超広範囲転移魔法でサンリュー山にいたと思うですが、何故このような所へいつの間に来られたのですか?」


「それは・・・」


 何故俺達がこんな所に居るのか?と疑問に思う者も沢山居るだろう。

 なので此処は簡単に俺が説明する。


 結論から言うと、()()()()()

 ボロボロの状態で偵察や陣形を組みながら、


 時は少し遡る。


 あれから俺が上級モンスターを倒し、ルーファスや各隊長たちも六体の上級モンスターを倒し、傷だらけになり、大量の犠牲を払いながらも最後には意地と虚勢を吐いてなんとか勝つことが出来た。

 これもルーファスの指示があり、他の皆も命がけで奮闘してくれたお陰だな。

 周りの雑魚モンスターは俺の能力を使ってあらかた一掃した。

 全ての雑魚モンスターを狩ることは出来なかったが、それなりに倒すことが出来た。

 だが、その対価としてかなりの魔力を持って行かれた。


 上級魔法が10発。

 能力が4回。

 体内に内包している魔力の量を感じるに俺が力を使えるのはこの辺りが妥当な数値だ。


 しかし、モンスターを全滅させた。

 この結果には天晴である。

 俺も戦いに貢献した甲斐があったと言うものだ。


 そしてそれからは少し体を休めたんだよな。

 動けない者、傷を負ったエルフ達全般をミューシャ率いる回復隊の恩恵で治癒したり、体力や気力、魔力なども休む事により、もう一戦どんぱち出来る状態にまで持って行った。


 そしてその後。

 ルーファスの奴が「魔力が回復して転移魔法が使えるようになった。そして同胞たちの力で里へと帰還する事も出来るのだが、あえてここは徒歩で帰還する選択肢を取る。」て言ったんだよ。


 逆立ちしても分からない意味不明な回答だ。


「転移魔法で帰った方が里の為にもなるし、全快全治とまではいかなくとも加勢も出来るし、戦力にもなる。

 そっちの方が安全策だと思うのだが、」と俺は疑問をぶつけてみたんだ。


 すると、「俺は同胞たちの力を信じている。一刻も早く加勢に行きたいのは山々だが、ここは徒歩で里へと帰還することにより里の防衛隊と挟撃する形が取れる。奴らの背後を取れるチャンスでもあるんだ。」と答えてきた。

 確かに挟撃するってなると聞こえはいいが、帰還時間もあるしエルフ達が倒されていたら元も子もない。

 それに、エルフ達が満身創痍で戦えないって言う可能性もある。

 その考えは早計だと俺は思った。

 完全にその案が裏目に出る事だって十二分に有り得る話だからだ。

 だけど結局ルーファスの案に乗ることになってしまった。

 疑問を持つ者も居ただろうが、今までの活躍を顧みるに皆もルーファスを信じているのだろう。

 そして徒歩で此処まで来た。


 と大まかな()()()()はこんなところだ。


 ルーファスがいかに真面目で仲間思いってことが分かる話だ。

 それにしても此処まで来るのが長かったな、

 みんなクタクタの身体を無理にでも引っ張って歩いてたもん。

 辛そうな顔してたもん。


「なるほどそうでしたか、助かりました。ルーファス隊長。並びにガイダ隊長、ミューシャ隊長、レイズ隊長。」


「ふむ、それから自力で戻ってきたのはサンニュー山から戻ってくる過程の中でモンスターの影を見つける為でもあったんだ。まぁ確認できなかったがな、」


「それはそれは、ならもうモンスター共は攻めてこないという事ですね!ならばあとは里へと戻るだけですな!」


「そうですね、」


「ていうか今気付いたんですけどエリュリャ隊長が見当たらないようですが、一体何処へ?」


「あぁ、エリュリャ率いる【癒しの雨】はルルイヤの所へ行っているよ。心配はいらない。」


「はぁ、」


「ああああああ!さすがのレイズさんも今回は疲れたよ。」


「おいおい情けないなレイズ。俺はまだやれるぜ。」


「はいはい、脳筋野郎は違いますね。はぁ~疲れたよエマ君。癒して~~、」


「うわっ!そんな汗だくな身体で近寄らないでよレイズさん!!!!」


「いいじゃん!スキンシップだよ?」


「可愛く首を傾げても駄目です。それにそんなベタベタしたスキンシップなんて取りたくない!!って近づいてくるんじゃないよ!」


「エマ君!!」


「【水弾】」


「ぶはっ!」


「あ、あああぁぁぁぁあぁレイズさん大丈夫ですか?」


「全然大丈夫だよミューシャちゃん。」


「なら良かったです。癒します!!」


「ふぅ~~生き返るわ~~。」


「なに馬鹿やってんだレイズ。それからエマ。この阿呆に付き合わなくていいからな。」


 前から思っていた事だけどルーファスってレイズさんと絡むとき異様に顔つきが怖くなるんだよな。

 過去に嫌な事でもされたのか?

 虐められていたり苦汁を()めさせられたのかな?

 ゴミを見るかのような面倒くささ120%オーバーの顔でレイズさんの事めっちゃ見てるし、

 やはりこの二人の関係は何か切っても切れ離せない特別な関係があるのかもしれない。

 これはいつか聞いていたいものだ、

 レイズさんに、


「しかし隊長殿、当たり前の事ですが大量の犠牲者を出してしまいました。私の監督不行届です。」


「・・・確かに今戦で大量の犠牲者も出してしまった。それは私も同じだ。だがこれは分かっていた事態。彼らの為にも強く生きねば、いつまでも過去を憂いてはいられまい。」


「はい・・・・・」


 大量の犠牲者を出してしまった。

 だがこれが戦だ。

 戦場だ。

 戦いだ。

 始めから犠牲者を出さずして勝つ事なんて有り得ない。

 現実は非常である。

 綺麗ごとを並べて勝つなんて甘ったれた考えの通用しない現実だ。

 しかし、全てのモンスターを討伐することには成功した。

 そして里を守ることが出来た。

 守られた命は確かにある。


 その事に対してエルフ達は今更になって涙を流す者や黙りこくってしまう者も居た。

 他人事の様な感想を言ってしまうが、仕方のないことだ。

 しんみりとした空気が流れた。


 そんな中、俺は未だに信じられない記憶を思い出していた。

 恐い記憶だ。

 目の前で見方が殺されていく光景が夢にでも出て来るんじゃないのかってくらい怖かった。

 ホントに今更な事だけど、思い返していくと救えた命や報われなかった命が沢山あって、俺が彼ら彼女らの為にもっと力になれたんじゃないだろうか?

 活躍出来たんじゃないだろうか?

 なんてことを思ってたりした。


「でも今はしんみりとしている場合じゃないよな。笑顔で待っているエルフ達の元へ帰らなきゃ、」


「そうだ、エマの言う通りだ。戦には勝ったとはいえ我々が暗い様子を取っていたら同胞たちが心配するぞ、もっと元気出せ!」


 今は失ってしまった命より、明るい気持ちで帰還して皆に盛大な凱旋を送ること。

 俺の言葉で思い出したかのように皆に伝えるルーファス。

 そして全員前を向いて仲良く帰ろうと歩を進めた。


 のだが、里の内側からは何故かメラメラと真っ赤に燃え上がる炎が支配していた。

 驚愕の光景を目にした。

 目を疑う光景だ。

 信じたくない光景だ。

 何度も疑問符を頭に思い浮かべ、脳が混乱する。


「えっ・・・なんで炎が立ち上って・・・」


「皆は大丈夫なのか!?」


「ルーファス!!」


「分かってるエマ!」


 一体何があったんで言うんだ。

 確かにモンスターは倒した。

 カーチェの作戦とルーファスの作戦はモンスターに有効的で見事突破したはず、


「なのになんで・・・まさか!?」


 東側や北側からモンスターが攻めて来ていたのか!?

 だとしたら里の中はもう・・・・

 いや、諦めるな。

 まだ戦えば何とかなるかもしれない。


 みんなは慌てて里の中へと戻る。

 すると、エルフの里は灼熱の炎に支配された地獄の様な燃え盛る集落へと変貌していた。

 炎の海が絶えず周囲のモノを焼き尽くしている。

 逃げ惑うエルフ達。

 倒れているエルフ達や泣いているエルフ達までいる。

 阿鼻叫喚。

 生き地獄。

 だが、死人は奇跡的に出ていない。


「なんだよこれ・・・モンスターの影は今のところ見られないけどどうしてこんなことに・・・」


 目の前の泥梨(ないり)な光景を脳で処理する事を拒んでいるかのように整理が追い付かない。

 俺は心慌意乱であった。


「とにかくまずは助けを求めているエルフ達の元へ行かねば、とうかケーラさんは大丈夫なのか!?」


 思い出したかのように走り去って行き、俺はケーラさん家へ爆速で走って行く。

 そして約23分で辿り着いた。


「・・・・・分かっていた事だが、」


 燃えていた。

 ケーラさんの家が燃えていた。

 最早このレベルにまで到達したら鎮火させるなんて事は出来ない。

 燃え広がる。


「ここまで炎の魔の手が侵食すると助けられるかどうか不安だけど、」


 大驚失色な面持ちで俺はケーラさんの家へと赴く為に駆け上がる。

 しかしその必要は無かったようだ。

 何故なら・・・


「エマさん!」


「ケーラさん!!」


 二人は再会を果たしたのだから。


「良かった無事だったんですね。」


「エマさんこそそんな傷だらけになってまで。」


「いやいや覚悟してたことなので、」


「あっ!思い出しました。今はそんな事をしてる場合じゃないんですよエマさん。助けにいかないと!!」


「ちょ、何ですかケーラさん急に、」


「長様の所へ向かってくださいエマさん!!長様が・・・」


「???」


 ケーラさんの言いたい事が分からなかった。

 だけど何となく予想は出来る。

 こんな状況だ。

 怪我の一つでもしているのだろう。


 なので俺は「言いたい事は何となく察しました。ですのでケーラさんは安全な所へ避難を、俺はカーチェさんの所へ行きますので、」と言い残し、走り去っていった。


「・・・・違うのエマさん。長様は、」





 ー------------------




 無慈悲な炎が里を燃やし尽くす中、俺はケーラさんの言う通りカーチェさんの元へと走る。

 向かっている場所は勿論カーチェさんの家だ。

 8000年以上生きる巨大な樹木。

 そして辿り着いた。

 すると家の手前側で地に丸まっているカーチェの姿を確認した。

 恐る恐る俺は近寄る。

 一体何があったのだろうか?


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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