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第39話 迎撃戦!!

主人公は登場しないので、それでもご了承ください。


 南側、現状の防衛は上々と言える。

 転移させることが出来なかった残りのモンスターが雪崩のように攻め入って来るのに対し、エルフの隊は弓矢や魔法やトラップやらで上手く対抗していた。

 中・遠距離弾幕が飛ぶ。

 そんな中、半径30m程度の煙幕をモンスターが地響きと共に複数発動させる。

 地面に描いていた煙幕魔法陣を踏んだことにより自動的に発動したのだ。

 その煙幕魔法陣は所々に散りばめられているのであらゆる所から戦隊モノの登場シーンを思い出させるかの様なドドン!と下から突き上げるタイプのスモークが噴出する。

 すると、身体に纏わり付く特殊な白い煙がモンスターを包み込んで視界を制限させる。


「今だ!放て!」


 合図と共に弓兵(アーチャー)隊が樹の上から矢を射ってくる。

 煙幕を押し通り、銀の鏃が皮膚を抜けて血肉に刺さる。

 周りを白色で覆っている為にどこから矢が飛んでくるのか分からない。

 後ろには里があるのでエルフ側は手を緩めることを知らず、無慈悲な矢を淡々と飛ばしていく。

 そのため、モンスター達は只の的当てと成り果てている始末。


 グアアアアアアアアア!!


 悲痛な声を表に出す。

 エルフ達に訴え掛けて来ているのか、煙幕の内側からは弱々しく消えていく残響だけが聞こえてくる。


「いいぞ、そのまま放ち続けて殲滅させるのだ。里に一歩たりとも近づけさせはせぬ。ロープを切れ!」


 手刀を振り下げ、位置にスタンバっているエルフに合図を送る。


「ちゃんと当たってくれよ。」


 シュパッ!!


 並行枝に括り付けてあるロープを手に持っていた短剣で切る。

 すると、それに連動して剣の雨が降ってくる。

 複数個所だ。

 予め設置していた凶悪なトラップの一つ。



 グアアアアアアアアア!!


 どうやら見事に当たったらしい!!

 弓矢に加えて剣までもがモンスターを襲う。

 上から串刺しにされて胴体を貫通するほどに深々と刺さる。

 モンスターに痛覚という感覚があるのかは知らないが、見ているこちら側の感想としては痛々しい。


「いい位置だ。よくやった。」


「はい!」


 小隊長からお褒めの言葉を貰い、感極まりながら一人のエルフが嬉しそうに返す。

 そして煙幕が晴れると血だるまになった赤いモンスターの姿がたくさん確認できた。

 どうやら、初手に攻めてきたモンスターの第一陣はすべて倒すことに成功したらしい。


 因みに最強の迎撃兵器はまだ使っていない。

 未使用だ。

 何故なら射程が届かないからだ。

 "上級魔砲・宝魔"の射程距離は大体約15m程度。

 今エルフ達が第一陣と戦っていた場所は30m先の距離である。

 したがって足し算すると15m程余り、まだ撃てない状況にあるのだ。

 まぁ、それはそれで平和に事を収めることが出来た、という証なので最強の迎撃兵器さんの出番は無い方が良い。


 そして直ぐに、第二陣が来ているという報告が通信魔法より促される。

 モンスターの流れは止まらない。

 喜び合っている場合ではない。

 第二陣は第一陣よりも足が遅いモンスターが迫る。

 当然だ。

 足の速い個体は一目瞭然、俊敏さに長けてる個体であるからして早く里へと辿り着く。

 だが、第二陣のモンスターは予測するまでもないが、足が遅い分頑丈で重い攻撃を放ってくる防御型(タンク)的なモンスターが出て来ると推察する。

 そして案の定その予測とやらは的中したようだ。

 奥の方からは図体がデカくて頑丈なモンスターがわんさかと来客なさった。

 対処しなければ一気に通過される。


弓兵(アーチャー)隊、攻めて来ているモンスターに照準を絞れ、」


 ギギギギギギギギギギギギ


 同胞たちは矢を引き絞り、一斉に射撃態勢に入る。

 モンスターの進行ルート直上に数千名のエルフが木陰に潜んでアサシンのように静かに獲物を狙う。

 狩人だ。

 今のエルフ達は密かに獲物を狩る狩人の目をしている。

 そして時暫く、第二陣がまたもや大群で姿を現した。


「放て!!」


 小隊長が見つけるや否や、この場にいるエルフ達全員に向けて攻撃命令を下す。

 すると、タイミングを合わせた弓矢が揃って飛来してくる。

 モンスター視点からすれば地獄だろうな、

 なにせ、逃げ場がない遠距離攻撃が千万無量で迫ってきているのだから。


 シュパッ!シュパッ!シュパッ!

 シュパッ!シュパッ!シュパッ!


 手、足、胴体、背、首、(すね)等に、放たれた矢がぶち当たる。

 両手をクロスにして防ごうとしているモンスターも見られるようだが、生憎と両手で防げるような(やわ)な弓矢ではない。

 魔力を集中的に込めた特殊な矢。

 一見すると、ただただ普通の矢に思えるのだが、実は鏃には魔力の塊を纏わせていた。

 なので普通の矢と見ていると痛い目を見る。

 貫通性、攻撃性がアップしているのだ。


「魔導隊用意!」


 魔導隊のエルフは杖を前へと掲げて魔力を高める。


「撃て!!」


 迫って来るモンスター達の侵攻ルートに向かって魔法の弾幕を張り、ついでに迎撃魔法陣がフルに起動してはそこら中で魔力の放射が開始される。

 迎撃魔法陣はモーションセンサー式で、モンスターの持つトゲトゲとした独特な魔力と豪快な動きに反応し、自動的に魔法陣から魔法が放たれるように設定している。

 その威力は抜群とはいかなくとも、ダメージは与えられる程に火力はそこそこ高い。

 これは第一陣の時に実証済みである。


 この様にして、南側の防衛はまずまずと言ったところだ。

 しかし油断をすることは許されない。

 まだ戦いは終わっていないのだ。



 ー-----------------



 一方西側方面は・・・


「近接隊は迷わず斬り込んで行け!そしたら必ず後方支援で君たちを援護してくれる。

 それから魔導隊は味方が前衛で戦っていることを忘れずに誤射だけはするな、弓兵(アーチャー)隊はなるべく強そうなモンスターと手前側のモンスターを的確に射貫いていけ、

 回復隊は積極的に回復させて、味方を少しでも早く戦線復帰できる状態に戻してくれ。

 南方面より同胞の人数が少ない分、巨影の者が向こう側に全ている以上君たちが頼りだ。

 自慢の耐久力と根性を見せてくれ!」


 西側方面の戦場地形は湖近くの平野である。

 背の低い樹が歪曲(わいきょく)を描いてぼちぼちと生えていて、開けている場所だ。

 そこで現場指揮官を任されているルルイヤは指令を出しながら上手く戦っていた。


 乱れることの無い連携の取れた完璧なコンビ―ネーション戦闘。

 完璧な配置からの攻撃、統率の取れた動き、モンスターの血を浴びながら攻防のバランスが取れた戦いを繰り広げていた。

 ここは里から離れている為にトラップなどの二次攻撃は無い。

 しかしルルイヤは冷静な思考で大局を見ており、戦闘が開始して一匹たりとも後方へは行かせていない。

 というか、後方には直ぐそこに湖と里がある。

 此処でやられたら西側方面はガラ空きになり、モンスターにとっては恰好のいい攻めルートの誕生である。

 それだけは避けたいルルイヤはこの場の誰よりも気を周囲に配っている。

 恐ろしい集中力だ。


「右翼隊、斬り込みが甘い!もっと大胆に、そして視野を広く突っ込め!

 魔導隊と弓兵(アーチャー)隊は後方支援がまだまだ甘い!拙い!

 命を懸けて最前線で戦ってくれている前衛の同胞たちを死なせてしまうぞ。

 もっと気合を注入しろ!

 回復隊の皆は前へ出過ぎだ。君たちが倒されたら此処の防衛力は激減してしまう。

 あくまで自分の身を第一に考えた上で行動してくれ、」


 戦局は優勢ではある。

 しかし、ギリギリだ。

 常にギリギリの状態を保っており、余裕がない。

 ルルイヤは引き続き、脳の回路を回して戦局を見守る。


 すると、


「あれは・・・モンスターか!?あんな所に、これは不味い!」


 見てはいけないものを見てしまった。

 いや、寧ろ発見してラッキーだったのかもしれない。

 これは見過ごすことの出来ない要因だ。


「木陰に紛れて戦場の隅っこから突破するつもりか。だがそうはさせん!」


 平野の隅っこ。

 ルルイヤは視界の端っこで樹の中に紛れる様にして地を駆ける複数のモンスターを確認した。

 狼型で俊敏さに長けるモンスターだ。

 ルルイヤは指揮を任されている立場ではあるが、魔法を発動させて巨大な光の壁を作る。

 幅30m、高さ30mの正四角形の壁だ。

 間一髪のところでルルイヤはモンスターの突破を防いだ。

 しかし、魔力の消費量を見るに長くはもたない。

 ゴリゴリと魔力が減って行く。


 生まれつき魔力量が少ないという要因と防御魔法しか使えない要因も相まって、倒せる場面でモンスターを倒すことが出来ないのは非常に苦しい。


 しかしルルイヤはモンスターを通さない為に粘って守りぬくつもりである。

 隊長らしさを感じさせる素晴らしい心意気だ。


 だが、


「(これは不味い、長くこの場所に留めておきたいが、僕の魔力量から感じ取る限り絶対に魔力を枯渇させて侵入を許してしまう。何か手を打たなければ・・・でも何をどうやって、俺以外の皆は命令通り指示に従って動いてくれている・・・・・・)」









 ー---------------------









「時間切れか、」


 ルルイヤは3分間という短い時間でタイムオーバー。

 数十匹のモンスターを通してしまった。

 このまま素直に直線ルートへ進めば湖がある。

 その奥には里があり、入門させるわけには行かない。

 だからまだ手が届く内に守ろうと、魔法を行使する。

 しかし魔力が枯渇してとてもじゃないが魔法を発動させることが叶わない。


「(くそっ、一発でもいいから撃て!放て!)」


 どれだけ力んでも魔力は回復しない。

 どれだけ凄んでも魔法は答えてくれない。


 しかし、此処でルルイヤの頬をかすめ取る程の矢が通過する。

 そして目撃した。一本の矢を!


「すみませんルルイヤ隊長!ですが、」


「いえ、ナイスタイミングです!」


 後方の状況にいち早く気付き、里のピンチに気付いてくれたエルフ。

 矢を飛ばして一体目のモンスターを穿ってくれたエルフ。

 ウルリカ・アルル。

 姉妹エルフの妹の方だ。

 弓を構えて矢を放つ。

 その弓矢は風を切って数十匹いるモンスターの後頭部をヘッドショットする!!

 ウルリカ・アルルはエルフの中で結構上位に位置する弓の名手。

 その見た目からは想像も付かないであろう腕前だ。

 実際に隊長各の一人であるガイダ・クロノイはアルルに弓矢の腕前で敗北している。

 相当の実力と腕前を兼ね備えている。


「助かったよアルル。」


「いえ、里にモンスターを侵入させてしまったら帰る所が無くなってしまいますので、」


「ふっ、」


 ルルイヤは静かな笑みを浮かべて立ち上がる。

 魔力は完全に無くなってわけではない。

 今なら魔法一発は放てる量まで回復している。


 だからと言って、特に何もできないが・・・




 ー-------------------




 南側方面、


 ズドン!ズドン!と鳴り渡る重い音。

 先程までの戦いとはまた違う戦闘音だ。

 一体何の音なのだろうか?


 それは"上級魔砲・宝魔"である。

 遂に投入したのだ。

 最終迎撃兵器を、


 あれから事が進んで第二陣を突破して第三陣目に突入していた。

 状況は先程までの余裕がなくなっており、ウェーブを重ねていく程モンスターの戦闘力が上がり、厄介になりつつある状況だ。

 俊敏さに加えて防御力も申し分なし、

 攻撃性もレベルアップして手に余る。

 数々のモンスターは一匹一匹複数の群れで行動して我が同族たちを翻弄していた。

 その所為で後方へと徐々に後退させられていく。

 そしてとうとう里までの距離13mという距離にまで近づいた。

 だが、この距離は射程内だ。


 "上級魔砲・宝魔"の射程範囲内。


 一発でそのモンスターを偏差撃ちして体を木っ端みじんに吹き飛ばす。

 たった一撃の魔砲でだ。

 これが対モンスター用最終迎撃兵器"上級魔砲・宝魔"の力。

 どれだけ防御力が高いモンスターだろうとこの"宝魔"の前では無力である。

 バリケードの真上から全体を俯瞰(ふかん)し、"宝魔"を撃って寄与してる。


 しかし此処で思わぬハプニング的報告が脳内に伝わる。


「(皆さん伝令です!これより南側約20m先に全長46mクラスの『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』が進行中!速度から考えるに十分もしない内に到着するでしょう!皆さん気を付けてください。ご武運を、)」


「『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』だって!?」


「そんなモンスターも居るなんて聞いてないぞ!!偵察隊からの報告ではまだモンスターの大群が迫って来ているらしい。そこに『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』とかいう上級モンスターも加わったら"宝魔"で倒せるかどうか、」


「弱気になるなよ!大丈夫だ勝てる!俺達は誇り高き戦士なんだから、」


 『一つ目巨人鬼(サイクロプス)

 それはモンスターの中でも随一の巨体を持つ上級モンスター。

 普段はその見た目に惑わされて狂暴なモンスターと勘違いする人が大勢いるが、実のところ非常に温厚なモンスター。

 だが、ひとたび怒らせれば手の着けようが無いくらいに暴れ回わり、棍棒を振り回して滅茶苦茶にするとんでもモンスターでもある。

 その被害レベルはA級に属する程である。


「どうしてこのタイミングで『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』なんて出て来るのか知らねぇが、どうやら運命の神様というのは悪戯が好きなようだな。だが、やるしかねぇ!とりあえずは目の前の雑魚モンスターを片付けてからだ。」


「分かりました。」


 そしてエルフ達は綿密な連携攻撃を反復した。

 矢を放って、様々な属性の魔法攻撃で相手を縛り、穿ち、爆発させる。

 魔力の消耗量は長時間戦闘ぶっ続けだから豪快に減って行く。


 そして8分程が経った。


 樹海の奥 

 地震でも起きているのか、地面がぐらぐらと揺れる。

 小石や砂利などが一定間隔で宙に浮いては落ちてを繰り返している。

 大地の震えが止まらない。

 一体何が起きているのか?


「ついに来たか、『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』」


 一人のエルフがそう呟くと、樹海の中からぴょっこりと顔だけを出してこちらを見据える一匹の超デカい大鬼がいた。

 全身青緑色の体色で筋骨隆々の体型、手には棍棒を持っており原始人みたいな恰好をしている上級モンスター『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』の登場だ。

 そう、この大地の震えは『一つ目巨鬼人(サイクロプス)』の歩く足音である。

 巨体故に地面に伝わる(ニュートン)は常軌を逸脱しているからこその現象なのだろう。

 まさに歩く地震である。


「『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』が来たぞ!撃て撃て撃て!!」


 まだ余っている魔力や弓などを使い切るつもりで一斉発射する。

 しかし、その全ての攻撃は無駄に終わった。

 全然ダメージどころか掠り傷すら追わないダイアモンドの様に硬い皮膚と筋肉は魔法を受け付けず、矢を弾く。


 だが、あんなにも沢山の攻撃が無力に終わったというのにも関わらず、数千人のエルフ達の顔に絶望の表情は見えない。

 一部を除いて、


「やはりこの程度の攻撃では効かないか、ならば仕方ない。対モンスター用最終迎撃兵器"上級魔砲・宝魔"の力を今この時を持って存分に味わうが良い!」


 ズドオオオオオオオオオオオオ!!!


 『一つ目鬼巨人(サイクロプス)』が棍棒を天にまで届くのかと錯覚させるかの様に高く掲げて、地面ごと俺達を割る勢いで振り下ろす。

 だがそうはさせんと言わんばかりに"上級魔砲・宝魔"必殺の三点バースト式複数連弾が『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』を襲う。


 そして辺りを轟かせる程の轟音を連発して鳴らし、爆風が辺りを黒色に染め上げる。

 風の影響により黒煙が吹き飛ばされて晴れる。

 そして黒煙が過ぎ去った後にあったものとは・・・上半身を軽く吹き飛ばされた『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』の死体であった。


「よし!」


「なっ、マジかよ・・・。これが"上級魔砲・宝魔"の力・・・生れて始めて見た。」


「ふっふっふ、どうだ凄かっただろう。今の攻撃は。それもそのはず、我々の里を幾度となく助けてくれた最終兵器だから。この程度は当然やってもらわないと困る。」


「はぁ、」


 下半身だけとなった『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』は後ろ向きに倒れた。

 土飛沫と土煙を辺りに発生させる。


 "宝魔"の力を再び周りに思い知らせ、記憶の奥深くに刻み付けたところで『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』の死体を足場にモンスターの大進軍が再び活動を再開する。


 『一つ目巨人鬼(サイクロプス)』を倒したことにより、第三陣を突破して第四陣が始まろうとしているのだ。

 開幕だ。

 終わらない戦いにエルフ達は苦渋の顔を表に出している。

 最初の時と比べれば歴然の差で苦い顔をしていた。

 だがそれにも関わらず、エルフ達は武器を握って戦う覚悟を決める。


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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