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第3話 転生してからの日

 俺が異世界に転生して二日目、


 俺は自室の薄汚れたベットから起き上がる。

 そしてボロボロの服に着替え、欠伸を一回してから扉を開けて井戸へ赴く。

 何故井戸へ赴くのかと言うと、料理を作るために水が必要だからだそうだ。


 なので水を汲み取りに行く。

 何で俺なのか知らないけど・・・・・


 文明が発達していないこの世界では水道も通ってないし、暖房や家電製品なんてものは皆無だ。

 だから全部自分たちでやる。人力だ。


「う~、さぶ。」


 寒い空間、冷たい床、凍える風、そんな中俺は冷え続ける体を両手で擦りながら少しでも体温を上げようとスリスリしながら廊下を一人歩いている。


 皆も良くやるよね。


 そしてここで忘れてはならないのが、井戸に行く前にちゃんと食堂で空のボトルを二本持っていかなければならない事だ。


 俺は寒いのを我慢して素早くボトルを回収する。


 そして俺は井戸に着いた。 

 昨日のように雪自体は降ってはいないものの外は極寒である。

 鼻水が凍り、筋肉も寒さで委縮して声を出すのも大変だ。


 寒いです。凍死する。異世界半端ねぇ!

 誰か助けて!!!


 俺は早く孤児院の中に戻りたいので、井戸の脇にあった桶を手に取り、中へと落とす。


「よっと、」


 バシャン!


 水の音がしたら桶を引っ張る為のロープを持ち、腕に力を入れて引き上げる。


「ふっ!重っ!なにこれ、予想以上に重いんだけど。」


 早朝からちょっとした力仕事をするので腕に力が入らない上に、筋力が寒さの影響により衰えている要因も相まって上手く引き上げることが出来ない。


 それにしたって重い!

 金属の類でも入っているんじゃないの?


「う~~~~~~~~~~~~~~!よいしょっっっと!」


 歯を力強く食いしばりながら有りっ丈の力を込めて俺は引き上げた。

 水が溢れるか否か、というギリギリの量の桶が地上へと出た。

 今にも零れそうである。


 ふー、水を汲むだけで精一杯とは、子供の力は何と弱々しいんだ。

 前世の俺も大分非力だったけど、この体はもっとだな。


「筋トレでもしようかな。」ボソッ


 それからやっとの思いで引き上げた水をボトルの中に入れて、颯爽と食堂へと戻っていく。


 ダッシュでだ!!!!


 そして寒い思いをして俺は食堂へと辿り着いた。

 すると、もう何名かは起きているようで、椅子に座っていたり食器を並べてくれている子供の姿が映る。


「おはよう、エマ。」


「おはよう。」


「おはようエマ!」


「ん、おはよう、アルフィー。」


 金髪ちゃん、もといアルフィーは俺が転生して初めて会ったあの子だ。

 何でも俺とアルフィーは同い年らしく、見た目の割に母性が強い。

 よく赤ちゃんの面倒を見てくれている。


 ここは孤児院だから捨て子の赤ちゃんがたまに玄関前に置かれることがある。

 だから、自分の親の顔も一生知ることのない赤ん坊をシスターは自分の家族のように愛情を込めて育てている。


 赤ちゃんを捨てるなんて酷いことをするもんだ。

 有り得ないぜ。


 そしてそんな赤ちゃんの面倒をよく見てくれるのがアルフィー。

 シスターもこの事ばかりは凄い助かっているそうだ。主に労働力面で、


「」ぶるぶる


「エマ震えてる。」


「あ~、早朝から外に出ていたからな。」


 次からはあらかじめ水を溜めておこう。

 ていうか段々お腹すいてきたな。

 異世界の料理は昨日の晩に食べたけど、味が薄すかった。

 貧乏生活だから仕方ないけどね。


「おう、お前ら。もうちょっとで出来るから待ってな。」


 俺が昨日の食事について語っていると突然キッチンから男の声が聞こえてきた。


 茶髪で長身、お調子者でよくシスターに頼まれごとして孤児院の肉体歯車としての機能を立派に全うしている人物。

 この男の人はルイ。

 この孤児院で一番の年長者で子供たちの遊び相手を良くしてくれている。

 なので子供たちからは良い印象を持たれている。

 大好きなお兄ちゃん的な意味で、


「エマちゃ~ん、水を汲み取って来たら~カウンタに~持って来て~。」


「おう、」


 その隣にいるのはシーク。

 前髪ぱっつんの茶髪で、語尾に〇〇~、と着けるのが特徴的な大人な女性。

 そして、唯一の癒し系でもある。

 そんなシークは、ルイの次に年上で皆のお姉さん的ポジション。

 シークは基本的に掃除とか家事をよくしてくれている。

 なので彼女がいるだけでこの孤児院は清潔さを保っていられるのだ。


 じゃあ、他の人達は何をしているのかって?

 それは言わずもがな。

 みんな好き放題やって、好き放題に孤児院内を汚している。

 俺もその内の一人らしいがな。


 そんな二人は今皆の朝食を作ってくれている。

 朝食を作るのは毎日この二人ではあるが、掃除とかは当番制で交代交代でやるそうだ。


 だけど例外が一人いるんだよね。

 先程簡単に説明したが、あの、のほほ~んとしてそうな性格の人。


 シークのことだよ。


 当番でもないのにあの人掃除とか毎日やってんのよ。

 生真面目もいいとこだと思わないかね諸君。


 ー--------------------------------

 ルイ&シーク 月曜日

 ↓

 クリス&エマ 火曜日

 ↓

 アルフィー&コロン 水曜日

 ↓

 シスター 木曜日

 ↓

 イズナ&クラスティー 金曜日

 ↓

 エマ&アルフィー 土曜日

 ↓

 ルイ&クリス 日曜日

 ー--------------------------------



 当番表はこんな感じだ。

 だけどパッと見て分かる通り、同じ人が2回やる事になっている。

 ではなぜ2回なのかと言うと、この当番表は全てくじで決めたものだからだ。

 この当番表は今年1年間有効なもので、この冬が終わり春になるまでずっとこのままだそうだ。


 くそ、何2回引いているんだこの体の元の持ち主。

 学校の掃除当番決める時に一番やりたくないトイレ掃除をくじで強制的にやらされる気分だぜ。


 だが、幸いなことに今は冬。

 律義に春から冬が終わるまでの期間を連続でやるわけでもないし、その分次のくじが楽しみでならない。


 ふっ、俺のガチャ運があるからな。

 どんなゲームのガチャでもそうだった。

 俺は意外にガチャ運がいい。


 もちろん持っているアイテムやキャラクターを当てる時はある。

 しかし!ここぞという時に俺は欲しいものが当たるラッキーボーイ。

 この運を持ってすれば何も当番がダブル事なんてないでしょ。ハハッ


「エマ、料理出たから運ぶの手伝ってくれ。」


「は~い。」


 俺は料理を運ぶためにボトル二本を食堂のカウンターに置く。

 隣にはルイ達が置いたであろう料理を運ぶアルフィーや他の子供たちが見える。


 さて、昨日はスープとパンと言う質素な料理だったが今日の朝食は・・・・・





 ー---------------------





「また、スープとパン・・・・・」(゜-゜)


「仕方ないだろ、うちは貧乏なんだ。飯が食える時点で有難いと思わなきゃ。」


「そうよ~エマ。ここにいる皆がこうして食べていけるなんて事~、他の孤児院だったらありえないんだから~。」


「なんで?」


「いい~、他の孤児院は主に町中や王都にあるものなのよ~。だから生活費とか~、土地代とか~、食費とか~、税金その他諸々、払わなければならないものがいっぱいあって~、生活するだけで精一杯~。もちろんその分ご飯を食べていける程のお金は銅貨二枚程度なの~。中々周りも支援してくれない状況だし~、それに比べれば今の私たちは恵まれているわ~。」


「な、なるほど。」


 俺とシークが普段の孤児院の現状を話し終えたタイミングで残りの子供たちが朝食を食べに食堂にやってきた。

 皆お腹を空かせているのだ。


 さて、俺もとっととこの質素な朝食を運ぶとしますかね。



 数分後



 料理はもう既に机に置かれている。

 なので後は食べるだけだ。



 さらに数秒後



 ボロボロな木製の椅子に皆が座り、シスターも椅子に座り、自分達の手前側に平等に置かれた料理を食べようと皆腹を空かせて待っている。

 俺も昨日からお腹を空かせている。

 昨日の晩御飯と同じようにスープとパンのみだったからだ。



 お肉食べたい。

 でもあんな話聞かされたら贅沢なんて出来ない。

 これで我慢しよう。



 俺がそんなことを思っていると皆両手を合わせて合唱し始めた。

 これはシスター曰く祈りだそうだ。

 毎日ご飯が食べられることに対しての有難みを天の神様に伝えるため、日本で言うところの()()()()()()に該当するものだ。


 俺も元日本人としてそこのところはきちんとするつもりだ。皆も黙ってやっているので俺もそれに習って手を合唱させる。

 ・・・・・・・なんか、黙祷(もくとう)みたいだな。


 合唱すること約10秒、


「さあ、食べていいよ。」


「「「「」」」」ばくばくばく


 速っ、めっちゃ食べてる。

 相当お腹減っていたんだろうな。


 シスターからの合図が出た瞬間、子供たちは流れるような動きで木で出来たスプーンでスープを掬い、無言で口の中まで持って行きパクパクと頬張っていく。

 パンは千切りったり、そのままがっついて食べる子も居るので性格が出るね。


 ま、そんな事どうでもいいや。俺も食~べよ。


「」ぱく


 うん、薄い。味が薄くてやっぱり食べているような気がしない。

 例えるならあれだ、白米だ。

 白米だけをネチネチといつまでも噛んでいるだけの味がする。

 とにかく本当に味が薄いんだよこのスープ。

 パンはカッチカチだし、とてもじゃないけど美味しく食べれるかと聞かれたら無理の一点バリよ。

 でも他の孤児院に居る子供たちの事を思うとこんな味の薄い食べ物でもおいしく食べてあげないと、と言う思いが込み上げてくる。


「」ばくばくばく


「お、いい食べっぷりじゃないかエマ。」


 当たり前よ!


 質素で少量の朝食を食べること約3分、


 ふー食べた。

 食べたっていっても腹は膨れてないんだけど、

 ん~、でもやっぱり味を濃くして欲しいな。

 でも贅沢だよな~、

 こんな貧乏生活送っているのに・・・・・。

 この世界の料理に関しての知識を学んで孤児院で作ってやるというのも一つの手か?


 後々考えてみるか。


 それから昼夜共に特に何もない平和な日常を過ごした。

 特に魔法も使わず、今の俺は社会の労働歯車から解き放たれた一匹の妖精。

 寒い気候ではあるが、その後一日中自室のベットで惰眠を貪った。












 ~場所・???~


「ねぇ〇〇〇。」


「はい、何でしょうか〇〇〇様。」


「私達っていったいどれくらいまともに食事をとっていないのかしらね~。覚えているかしら~。」


「確か1億年と少し、だったと記憶していますが、」


「あら、もうそんなに立っていたの。私達の身体は食事を必要としない身体だけど~、どんな質素な食事でも久々に食べてみたいわね。〇〇〇。」


「いえ、自分は別に、」


「相変わらず寡黙な人ね。・・・・人じゃないでけど、」


ここまで読んでくれてありがとうございます!!

面白いと思ったら評価をしてくれとやる気が出ます!


これからも頑張りますのでよろしくお願いします。

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