第36話 最終確認、そして開戦!!
決戦の日、
あれから二日後、バリケードの進捗具合は無事に100%に到達した。
全ての方角に対して30mの壁を作り、その他にもトラップや迎撃防衛システムも感無量で準備万端。
迎え撃つ準備は出来ている。
何回も試して計算されつくした非の打ち所が無い迎撃要塞。
いつどの方角からモンスターが来たとしても死角など無い完璧なる要塞へと成り果てた。
俺の知っているエルフという種族はこんな感じのものは作らないと記憶しているが、どうやら俺の妄想や物語が間違っていたようだ。
現実何があるか分からないモノだな。
まさかエルフの口からシステムなんて近代的な言葉が出るとは6日前は考えられなかったもんな。
思わず驚いちゃったよ。
それから、俺を含むエルフ達総勢36,000人は現在里の中心部にて集まっている。
今日が決戦の日だからだ。
皆の指揮を上げようとか作戦内容の再確認とか、俺達の荒み切っている心を鼓舞しようとしているのだろう。
まぁ、決戦前には必要だよな。
指揮上げをしておかないと恐怖に呑まれて本領が発揮できなかったり自信を無くして立ち止まったりとマイナス面を曝け出してしまうことになる。
だから上げておいて損は無い。
「しかし、周りを見てると凄い装備だな~、弓は当然として大剣って、エルフってそんな豪快な武器使ってたっけ?あれで攻撃された日には暫く痛みの余韻が残りそうだ、恐ろしい。」
首を動かして絶えず左右を確認すれば、全てのエルフが革の防具を装備している姿が視認できる。
当然"魔鉱繭虫"の糸で編んでいる特殊な服を着ているエルフ達も居る。
それと数々の武器も持ってる。
近接隊の人達は剣、盾、槍、ナイフ、
中・遠距離隊の人達は杖、弓、等の各種武器を携え、戦う気満々のフル装備だ。
そんな、スケールの大きいワンダフルでファンタスティックな現実に目を奪われてしまう情景は俺の心を震え上がらせる。
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『各隊の現状』
・ルルイヤ率いる【巨影の樹木】5,000名。
魔鉱石を惜しみなく使った大盾を背中に背負っている。それと【巨影の樹木】は防御力に定評のある守り専門の部隊。
今作戦では一番大事な役を担う事になるだろう。
・ミューシャ率いる【癒しの包容】1,000名。
ボーリング玉位の大きさがある魔力球と言われる空気中に漂う魔力を自動的に集めてくれる特殊な水晶玉を杖の先端に取り付けて回復する魔法のステッキを装備。
【癒しの包容】は部隊名の通り、後方から皆の傷を癒す役割を持っている隊。この隊が全滅したら大量の血が流れること間違いなし、だがこの隊の者がいる所では傷を即座に癒してくれる。
・エリュリャ率いる【恵みの雨】3,000名。
背中に二個、腰に一個の矢筒を装備して大量の矢を降り注がせるために弓を専門としている超遠距離部隊。
雨の如く降ってくる矢の本数は数千本を余裕で超える。
活躍してくれることを願う。
・ガイダ率いる【烈日の炎熱】11,000名。
バランスの取れたオールラウンダ隊。近接、中距離、遠距離と全てをこなす。
全ての隊の中で一番安定性に優れていて臨機応変な行動が出来る。
・レイズ率いる【銀矢の風】6,000名。
この隊は近接が半分、弓隊が半分という遠近隊。だがこの隊の強みは近接戦闘の抜きん出た実力。
近接をメインにしているエルフ達は全員双剣で、弓をメインにしているエルフ達は強力な魔法弓を放つ。
・ルーファス率いる【緑の大地】10,000名。
こちらは魔法を主に使う魔法専門の超攻撃力万能隊。魔導士を主として構成に入れ、回復もこなせて攻撃力は随一。
連携の取れた魔法攻撃戦法は敵を攪乱させ、火力で押し切る殲滅隊でもある。
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すげぇ、やっぱり改めてこの数のエルフ達を一度に見ると自分という存在がちっぽけな者だという事を思い知らされるような感覚に陥れられるかの様な気分になる・・・
言葉も出ないよ。
こんな場面の中に俺がいて、周りにはファンタジーな住人がいて敵と戦おうと集まっている。
漫画やラノベの主人公はこんな世界にいてどういう気持ちだったのだろうか、
今更になって異世界に転生して来た現実を疑わずには入れらない感情の波の中、つくづく思いを巡らせながら周りをキョロキョロ見渡す。
すると、前に各隊長とカーチェが見張り台の上に上がろうと、梯子を上っている姿が確認できた。
一番上がカーチェ、そして各隊長たちと言った順番だ。
カーチェたちは見張り台の上へ上り切ったら早速と言わんばかりに口を開く。
端的に目的を話す。
話の内容は、作戦についてだ。
俺も二日前に伝えられた通り参加している。
自分なりに準備もして、心のコンディションもばっちりだ。
それに、前日にルーファスからなんと!"魔鉱繭虫"を使った服を俺に見繕ってくれて、新しい装備もくれた。
とても有難いプレゼントだ。
サイズもぴったりで動きやすい。
俺の為に作ってくれたのかな?
だとしたら超嬉しい!!
この新しい装備。というか短剣。
こっちは何の変哲もない括れたナイフだけど無いよりはマシだな。
これはまた良い土産話を貰ったな。
いつになるか分からないが、孤児院へ帰った時にあいつらの反応が楽しみだ。
そのためにも戦って生き残らなければな!!
因みに相性と親密度の関係で【緑の大地】というルーファスが隊長を任されている部隊に配属され、今回の戦で皆の力になれる様に頑張る所存だ。
しかし、周りからは「何故ここに人間がいるんだ?」という珍妙な生物でも見るかのような視線が俺の皮膚に突き刺さる。
痛い痛い痛い、
皆に見つめられると何か心臓が寒いというか、段々と緊張してきて体温が上がるんだが、
何か恥ずかしい!
俺一人だけ完全に場違いな存在ではあるが、ケーラさんとその他のエルフ達の命を守る為に俺も一肌脱ぐ。
「諸君、よくぞ集まってくれた。」
ガイダ・クロノイが最初の言葉を務める。
男らしい覇気と迫力のある声をしている。
「今もこうして俺が喋っている間に接近しているモンスターは偵察隊の最新情報だともう間もなく目的地点へと辿り着くらしい。なので俺からは手短に一言言わせてもらう。」
息を整え36,000名のエルフ達に向かって声を上げる。
「恐れるな我が同様よ、迷わず進め!!」
ガイダが軽く挨拶を済ませると、おおおおおおおおおおおおお!という大歓声が里を覆いつくす。
周りにいた動物たちはその声に反応して遠くへ走り去ってしまう。
そしてその言葉を最後に一歩後ろへ下がり、カーチェへとバトンタッチする。
「では皆の者、時間が無いのでな。作戦内容を伝えるぞ。
まず手始めに36,000名の部隊を偏って分ける。
36,000名~30,000名を出陣枠として編成し、残った6,000名の同胞たちはこの里の防衛を行ってもらい戦えないエルフ達を守ってやって欲しい。これはとても責任ある役割だ。全うして欲しい。
そして、30,000名の出陣枠である同胞たちはさらに半分に分かれてもらう。
各方角に15,000名で西側と南側から進行して来るモンスターを真正面から堂々と立ち塞がる様に衝突して欲しい。
そしてそこからは耐えの時間だ。
巨影の者が前衛へと躍り出て敵の足を止める(両サイド)
敵は流れの速い渓流の如く、流れる力で後ろから押し寄せて来るだろう。
向こう側も当然攻撃してくる。
だが耐えてくれ。
この作戦はお主らの働きに全てが掛かっていると言っても過言ではない。
此処で作戦の土台であるお主らが競り負けたら根底から崩れ落ちる。
意地でも踏ん張って欲しい。
そして、その活躍を無駄にしない為に魔導士部隊の諸君。君たちが本作戦の要だ。
お主たちは転移魔法を使って出来るだけ多くのモンスターをサンリュー山へと転移させる役割がある。
一度に一片のモンスター達を転移させることが出来ないのが痛手だが、少なくとも数は減らせる。
だから盾の諸君は転移魔法が発動するまでの時間耐え抜いて欲しい。
そこまで出来たら第一作戦成功だ。
勿論両サイド行ってもらう。
しかし、転移魔法陣内に入れなかったモンスター達は迷わずこの里目掛けて突き進むだろう。
だが心配はいらない。
この為に6,000名のお主たちを残したのだから。
此処からは籠城戦だ。
里で作ったバリケード、迎撃用兵器、トラップの数々を上手く駆使して死守してくれたまえ、
何を利用しても構わない。
だが、西側方面は湖がある。
我らが生きる為の生命線だ。
だから、こちら側の方面ではルルイヤが指揮を取る事になる。
あとの作戦内容は現場指揮官であるルーファスとルルイヤに任せてある。
指示に従ってくれ。以上だ。」
カーチェが本作戦の内容について話し終えた。
今カーチェが伝えたことは最終確認だ。
皆には既に事前の作戦が通達されている。
しかし、不安や懸念と言った心の迷いや気懸かりなどの要素が自分たちを惑わせる。
なので、ここからはルーファスの出番だ。
一気に心の迷いを晴らす。
「我々エルフは昔から自然と共に共存共生してきた誇り高き種族の一種。
何時いかなるピンチでも五感や知識、経験してきたことを活かして乗り越えて来た。そして今回もまた等しく、気高く生きて明日もまた平和な日常を取り戻す!
その為にはまずやらなければならない事は何だ?
震える事か?惨めに蹲る事か?臆する事か?いや、違う。それは戦士らしく最後まで戦い抜くこと、
闘気を纏って武器を持てば立派な戦士。
恐怖を克服して己が闘志に変えろ!!
立ち上がれ我がエルフ族!
無知なモンスター共に思い知らせてやろう。狩られるのはお前らの方だと、」
此処からでも明確にわかる程に震えているエルフや恐怖の波に吞まれているエルフが熱い闘志を心に灯した。
気持ちと気概が蘇る。
その勢いは衰えることを禁じ得ない。
俺から見ても分かる。
ルーファスは彼ら彼女らを立ち上がらせたのだ。
奮い立たせたのだ。
これが自然に住むエルフ族。
そのギラついた目からは一切の恐怖は感じ得なかった。
そうして戦の火蓋は切って落とされた。
「皆の者!武器を掲げろ!開戦だ!!!!!!」
うおおおおおおおおおおおおおおお!!
うおおおおおおおおおおおおおおおお!!!!
鬨の声を里全域に浸透するレベルまで高めて行き、自分自身を押し上げていく。
士気が高まり、気持ちが上がる。
懸念点も一切の曇りもない快晴の様な青々とした心の世界で毅然とした態度で立ち向かう。
憚る事を知らない悠々とした心構えだ。
西門と南門がガラガラガラと開き、大きな樹木の中を駆け抜けていった。
食料は持った。
水も持った。
この戦は短期決戦を強いられる戦。
あまり時間を掛けてはいられない。
この場にいるエルフ達は精鋭であり、弓の名手ばかりが揃った強者ばかり、
モンスター如きに後れは取らない。
背中で受ける気迫を追い風に、俺はルーファス率いる【緑の大地】に所属しているエルフ達の後を着いて行き、里から離れて戦場へと向かう。
大丈夫だ。
いきなりの事でパニック状態になった事はあっても、自分が死ぬ未来やネガティブな事を考えないようにしてきた。
それに、こんなにもエルフ達がいる。
勝てる。勝てる。勝てる。
息を整え、俺も最終的な覚悟を決めて戦へ向かう。
その時の俺の顔は、エルフと同じ戦士の目をしていた。
~南側・火山~
灼熱の憤慨山に一人の女性が何者かと通信していた。
その者の正体は不明であるが、よからぬ会話をしているのが手に取る様に分かる内容だ。
「そっちはどうだネイバー、」
「えぇ、順調よ。あれだけ暴れ回っていたワイバーンが嘘みたいに大人しくなったわ。」
「そうか、でどうだ。」
「良い感じ、試しに操縦してみたけど以外にも乗り心地が良かったわ。これならアレにも使えそうね。まぁ、何やら周りに被害を与えてしまった気もするけど問題はない。」
「それで、お前はどうするんだ?帰って来るのか?」
「いいえ、せっかくだから操縦テストも含めてエルフの里を襲ってみるわね。」
「お前はいつもそうだな。力に魅了されてないで早く済ませろよ。」
「分かってるわよ。すぐ終わるから、」
ここまで読んでくれてありがとうございます。
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