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第34話 緊急会議

 ~緊急会議室~


 室内を彩る様々なインテリアが飾ってある一室。

 そこには、四角い長方形のテーブルを挟んで向かい合うように各隊長たちが座っていた。


「おいおい緊急会議ってどういうことだよ。いきなり呼び出されて大事なトレーニングが出来なくなっちまったぜ。」


 《「烈日の炎熱」隊長、ガイダ・クロノイ》

 《総勢11、000名》


「一日くらいなんですかガイダさん。それに、何でも偵察隊の一人がモンスターの影を見たとか、それも複数。」


 《「巨影の樹木」隊長、ルルイヤ・パーソン》

 《総勢5,000名》


「物騒ですね。」


 《「恵みの雨」隊長、エリュリャ・バナー》

 《総勢3000名》


「戦いが始まったら皆さんを全力で癒しますよ!」


 《「癒しの包容」隊長、ミューシャ》

 《総勢1000名》


「良い心意気だな。期待してるよミューシャ。」


 《「緑の大地」隊長、ルーファス》

 《総勢10,000名》


「それにしてもこうやって皆と話せるなんてレイズさん嬉しいよ。」


 《「銀矢の風」隊長、レイズ・サラビオネ》

 《総勢6,000名》


 異色のメンバーがここに集う。

 彼ら彼女らを此処へ招集したのはある理由の為、

 それはワイバーンの齎した影響が里の近辺まで迫って来ているという情報を掴んだ故、


 互いに顔を見合わせて、隊長たちが談笑する。

 毎日会っている間柄では無いにしろ、お互いの関係は良好だ。

 ちょっとした茶目っ気やジョークなんかも会話の間に混ぜ込んでコミュニケーションを取っている。


 そんな、明るい雰囲気で包まれている部屋の中、一人の幼女が入ってくる。

 金髪で緑色の衣装に身を包んでいる碧眼娘。


 この里の長、カーチェだ。


 皆はテーブルに置かれたお茶を一啜りしながら気分を落ち着かせる。

 するとさっきまでの明るい雰囲気が一変して静寂が訪れる。


 カーチェは入って来るなり上座の位置へと移動する。

 そこから椅子を一歩引き、人形を乗せるみたいにポスっとカーチェが座った。


 その場にいるエルフ達六名は、カーチェを見るなり隊長らしい責任感と緊張感を持った堂々とした顔つきになる。

 一回息を吸い、肺を圧迫しながら息を吐く。

 そこからカーチェは目を見開き口を開く。


「では皆の者、まずは此度の緊急招集に集まってくれた事に感謝する。それで会議というのは偵察隊に所属しているエルフの一人が多数の魔物を発見した、というものだ。南、西方面から多種多様なモンスターが入り混じって迫って来てる。結構速い速度だ。数は不明。しかし千は超えるモノと思え、これは非常に由々しき事態である。それでお主らにはその対策を考えてもらおうと急遽呼んだのだ。」


 六名の隊長たちを眺め回す。

 目線の先には個性豊かな人物たちが座っている。

 図体がデカい者から小さい者まで異彩の念を漂わせている。


 その中で、エルフにしては筋肉隆々でゴツイ体躯を持っているエルフが自信満々と言った感じで意見を言う。

 ガイダ・クロノイだ。


「長殿、向かって来るならば武力を持ってして向かい打つ以外ありませんでしょう。こちらも数では負けてはいない。俺なら部隊を上手く利用して全滅させられるぜ。」


 そして、もう一人のエルフが追随するように便乗して乗っかって来る。

 レイズ・サラビオネだ。


「その通りですよ。私の剣ならば一時間もかかりません。絶対倒しますよ。この愛刀【二角死が穿つ霊剣(ツインホート)】で、」


「ふむ、しかし大局を見ていない戦い程不利になった場合は取り返しの着かない事になるであろう。」


「「大丈夫です。気合で何とかしましょう!!」」


「あなた達ね~、何とかなるわけないじゃないの。もっと未来を予測した意見を言いなさいな。」


「そうだな、エリュリャの言う通りだ。自分達の持っている力を過信し過ぎると逆に全滅させられる。だから俺はちゃんとした方法論の元、作戦を立てて確実にモンスターの数を減らしてく。これしかないと思います。」


「ルーファスらしい考えじゃな、」


「チマチマ作戦なんて立てずとも、自慢の魔力と各々が研磨し切磋琢磨して培ってきた技量や経験を活かせば例え群れているモンスターが襲ってきたとしても問題はない。力で押せる。」


「無理だ。そんなの最初の内でしか通用しない。向かって来てるモンスターの正確な数も分かってないのに無謀過ぎる。無理無茶無策。」


「むっ、、」


 ルーファスに正論を言われて委縮してしまうガイダ。

 正しいからこそ何も言えない。

 気分を入れ替えて再びルーファスが口を開く。


「長様、先ほどモンスターが入り混じっていると仰っていましたけど、その中にはやはり上級モンスターはいるんですか?」


「偵察隊の報告によれば、今確認できている中では六体だ。」


「六体、してそのモンスターは、」


「"アラナイム"、"ダラジャ"、"蓬炎蝶"、"サンクローバー"、"ジャスマンハンド"、"ネイコブラ"だ。全て南側方面から進行しとる。」


 そのモンスター達はこの地で言わずと知れた上級モンスター。

 単体で町をも破壊する事の出来るボス級モンスターである。

 どの個体も隊長クラスの実力と厄介さがあり、一筋縄ではいかない強力な個体。

 そんな上級モンスターがこの里に迫って来ているというのだ、


 他のエルフ達はその事を聞いた途端、身の毛がよだつ様な悪寒を覚えた。

 この報告一つで場が僅かに凍ったのだ。


「それは本当なのですか!?その六体がいるって、しかも全て南側だなんて!」


「ワシが聞いた報告では確かな真実じゃ、」


「そんな事って、」


「と、とりあえず地形を利用して戦わねぇとな。真正面からの特効バトルは自殺行為だって今わかったよ。しかし、雑魚敵がいるってのを含めるとキツイ戦いになるな、」


 ガイダがエルフの樹海の地図を机に提示して、皆の前で真摯(しんし)な面持ちで表明する。

 いつものガイダなら脳筋思考で、ガンガン行こうぜ!くらい言いそうなものだが、流石に相手が相手だけに悪ふざけは止める。


「東側や北側は来ていないんですか?長さん」


 ミューシャが念の為にもう二つの方面からモンスターの進軍が来ていないかを確認する。


「今のところは大丈夫じゃ、来ていない。そもそも北側にはゼノ王国という砂漠の国がある。上から来ようものなら国境の手前側で攻撃されるだろうし、ワイバーンの影響はそこまで届いてない。東側についてはわからん。様子見じゃ、だが油断は出来ないじゃろうな。だからワシは里の防衛や見張り、偵察などにも人員を割きたいと考えている。」


「なるほどね、でもどうする?西側方面は私達の生命線がある。南側方面は凶悪モンスターが六体いる。どっちを選んでも里に防衛や見張り、偵察に人員を割くとなると人手が不足するんじゃないかしら?」


「それは分かっておる。だが万が一にも他方面からのモンスター侵攻に気付かず、里の者どもを危険な目に合わせるわけには行かぬのじゃ、」


「なら、作戦が必要ですね。でもその前に皆の持っている情報を開示し合いましょう。地形や案など、それと現状の再確認からです。」


 冷静な判断で今やるべきことを明確にして一つ一つ丁寧に処理していくルーファス。

 流石はエルフの樹海NO.4だけはある。


 情報を一旦整理して頭の中をリセットする。


 今俺達が居るのはエルフの里だ。

 直径30kmの大きな里。

 そして、その里を中心に東西南北の方向にそれぞれ正門がある。

 つまり通れるルートが四か所あり、逆もまた然り、

 現在その四か所の内、南と西方面から千を超えるモンスターの大群が迫って来ている。

 個体はバラバラ。

 個体差とか関係なしにこっちへ向かって来ている。

 六体の凶悪モンスターも居る。

 このまま何もしなければ里はモンスターの大行進で踏み荒らされて死者も出る。

 攻撃も放たれ地獄になることは間違いなし、


 それと、モンスターにはそれぞれランクという位がある。

 これは人間が勝手につけた強さランキングだと思えばいい。

 一番上からWUS、SSS、SS、S、A、B、C、D、E、Fと分けられている。


 F~Cランク。

 駆け出し冒険者でも十分倒せるレベル。


 B~Aランク。

 里や町に被害を齎す危険な存在。


 S~SSランク。

 天災級モンスターの出現。


 SSSランク。

 世界に多大な悪影響を齎す超天災級。


 WUDランク。

 世界崩壊級の神域・超天災級。


 モンスターランクの界分けはこんな感じ。

 あの上級モンスター達はBランク魔物だ。

 こうして表すと大したことないじゃん、って思うかもしれないが相当強い個体なのは間違いない。


 そして話は変わって、次は各方面の地形についてだ。

 まずは西だ。

 西方面にはデカい湖がある。

 直径70m位の巨大な湖が、

 そして、その湖を囲むようにサバンナの様な小麦色の野草が「これでもか!」と主張して来る程に生い茂っている。

 戦う場所の立地としては状況に委ねられると言っても過言ではない。

 分からないのだ。

 明確な数が分かっていない以上「どのくらいその場に止めておけるのか?」という予測しかできない。

 それにエルフという種族の事を深く熟知しているならば平原は「よくない」と思うのが自然である。

 更にこの湖は毎日エルフ達が水浴びや生活に必要な分の水を確保したりする憩いの地でもある。

 だが同時にエルフ族にとっては生命線。

 水場は此処にしかない。

 だから、もしモンスターがこの地を荒そうものなら今のエルフの人口を考えるに、エルフは水不足で全滅する事だってあり得る話だ。

 雨には期待できない。

 いつ降るかも分からない天候の事なんていちいち気にしてられないからだ。

 つまり今回の戦いでは西側は絶対守りたい方面の一つ。

 いや、絶対に守らなければならない。


 北側は砂漠の国、ゼノ王国がある。

 しかし、ここからモンスターが来ることは無いだろうと踏んでいる。

 何故なら、北側の樹海はワイバーンの悪影響が届いていないからだ。


 東側は樹海なのに開けた平原がある。と言っても30m程の面積だ。

 特に障害となる要素もなく、凸凹でもなく、単純に衝突する戦いに持ち込むならばこの地は優良な地形と言えるだろう。


 そして南側には火山がある。

 一番ワイバーンの影響を受けやすい位置方面だ。

 恐らくだが、この方角から来るモンスターの数はエグイと思う。

 しかし、マイナス面の事ばかりではない。

 南側の道はルートが途中で極狭になる道があり、不安定である。

 且つ、西側や東側と違ってジャングルの様に生い茂っている樹木がそこら中にあり、エルフのホームグラウンド。

 上から矢の雨を降り注げさえすれば一方的に数を減らせるというメリットがある。

 巨大な岩や洞窟なんてものもあって、戦うなら絶好の場所なのだ。

 戦い方次第では時間稼ぎにも壁にもなるし、一方的に樹の上からタコ殴りにすることも可能。


 そして、その南と西の間を直線で結ぶ中間地点にはデカい山がある。

 いくつもの山が重なる様に盛り上がっている山。


 その名は、サンリュー山。


 独特な地形と生い茂る不規則な樹木の密林が絶え間なく伸びている奇想天外の山容水態、

 此処には元々多くの動物たちが住みかとして生息している安住の地。

 だが、ワイバーンの活性化と共にその姿を隠した。

 遠征で調べて分かった事実である。

 しかし、立地としては南側と同じく戦いやすい場所であり、足止めも容易くできる優良な土地。

 エルフにしては戦いやすい地形をしているのは間違いない。


 ここまでを再確認して現状を一旦把握する一同。

 そこから良案を出す。


「それにしても両方から同時に攻められるとは、何とも皮肉な運命よ。」


「でもやるしかない。僕たちには逃げ場なんてものはない。此処でやらなきゃ居場所がなくなるだけ、向かい撃つしかありませんね。」


「我らがエルフ族らしい戦い方、地形を利用した多角的攻撃。相手を翻弄し攪乱(かくらん)する。いつもやってることです。」


「南側については細道を通っている箇所を狙って挟撃する形で攻めればモンスターの足くらいは止められますね。」


「そうだな、だが、一方通行な侵攻ルートならばまだ可能性はあったが、やはり二方面侵攻というのがキツイ。どうにかならんものか、」


「ならば一か所に集めればいいのでは?」


 エリュリャが自然な形で割り込んで来る。


「出来るわけないだろそんな事、脳みそがお釈迦になったのか?一つにまとめようとすればそれこそ樹木を薙ぎ倒して同胞たちの力で無理やり開通させるしかない。たとえ実行したとしても時間が掛かる。大量にな・・・その位わかるだろエリュリャ。」


「失礼極まりないエルフね、」


 しかしこの提案はあながち無駄な発言では無かったらしい。

 その何気無い提案はカーチェの脳内に一つの閃きを起こした。


「なるほど、一つに・・・な。」ボソッ


「何か思いついたのですか長様。」


「あぁ、最高の作戦を思い付いたぞ。これならいける!少々強引なやり方になるがな。」


「聞かせてください長様。」


「良いじゃろ。耳を傾けてよく聞け。」


 悪戯好きな子供の様な無垢な顔を浮かべて一室の中に作戦内容が伝わった。

 その内容は誰も考え付かない様な天才の発想。

 確かに強引な内容ではあるが、無理では無い面白い作戦だ。


 やってみる価値はある。

 二方向から同時に攻められている状況下で、ある一室に笑い声が聞こえた。

 自信とやる気に満ちた生き生きとした笑い声だ。


「だがまだ足りぬ。であるからしてワシがこの作戦を更に完璧に仕上げてやる。」


「あんな想像の斜め上を行くような作戦でも倒せないの?」


 ミューシャがやや不安そうに聞く。


「いや、そうでは無い。ただ我々にはある男の力が必要なんじゃ。この作戦の決定打となりうる第三の武器。必ず必要となる場面が来る。エマを本作戦に参加させるのじゃ。」


 その言葉を聞いた途端驚く一同。

 硬直状態の者も居る。

 「一体何を言いだすんだ!?ありえない、」って感じの顔だ。

 さっきまでの笑い声が嘘のよう無くなり、物音一つ出さない沈黙の空気が場を支配した。

 しかしそれは当然の事だとも言える。

 エルフの樹海に突然現れた人間の子供に協力を仰いで助けを求めるなんて、矜持が高いエルフにとっては屈辱以外のなにものでもない。


「それは正気ですか?カーチェ殿。」


 控えめな声のトーンで恐る恐る物怖じしてカーチェに問う。


「無論じゃルルイヤ。エマにはそれだけの価値と力がある。そしておまけに能力者でルーファスにも勝った逸材。お主も風の噂で知っておろう。実力的には信用しても良いじゃろ。」


「しかし、」


 過去の出来事がまだ頭から抜け落ちずに心から人間を信用していないルルイヤ。

 どれだけ周りが認めても完全にエルフ達全員が心を許したわけではない。

 当然不快に思う者や恐怖を抱く者もいる。


 ルルイヤはその内の一人である。


「人間なんていれて大丈夫なんですか?」


「大丈夫じゃ、ワシの能力は知っておろう。」


「それはそうですが、」


「俺は良いぜ。長殿が認めた人間。面白そうだ。俺は賛成だ。」


「レイズさんも賛成。どんな能力を所持しているのかお姉さん気になっているし、」


「俺も賛成に一票。エマは悪い奴ではない。」


「あら、私も別に構わないわ。いつまでも昔の事に拘っていられないから、それにそんな小さい器はしていないのよ私。」


「なら私も、」


「え!?正気ですか・・・僕はまだ信じきれてないんですが、」


「大丈夫と言っておろう。あやつは心が穏やかで面白い人間だ。そんなに思うなら一度話したらいい。」


「・・・・・そうですね。」


 こうして俺の知らぬ間に戦に参戦することが決まった。

 後々知るであろうこの事実を受け止めた時、どういう反応をする事やら、

 そして、緊急会議はその後も話が進み、深夜の3時まで念入りに話し合い、終了した。


 各隊長が部屋から出る瞬間、カーチェは皆の耳に聞こえる様に「防衛設備の建設作業を迅速にせよ、」と伝える。

 モンスターが訪れるまでまだ1週間ある。

 それまでに完成させるようにとの通達。


 カーチェは自然な流れで無理難題を押し付ける。



ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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