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第33話 何でもない日

 祭りが終わって一週間後、

 あれから物腰が柔らかくなったルーファスとフランクに接している。

 昨日あった嫌な出来事、この土地に来て俺が驚いたこと、感動した事など心に思っている本心を曝け出してお互い本音で話し合う。

 ルーファスは以前の人間を憎む濁った目では無く、晴れ晴れとした白い潤った目をしている。

 そんなルーファスは朝から俺の姿を見るなり友達の様に気軽に話しかけて来た。


 丸くなったものやなルーファス。

 俺は嬉しいよ。


「エマ!」


「ルーファス、何か用なのか?」


「いや、お前も最初の時と比べると大分此処での生活にも定着してきたなと思って、」


「そうでもないよ。確かに以前よりは生活に順応して来たと自負してるけど、やっぱり食事面はキツイかな。朝・昼・晩、一週間の野菜生活はさすがに応えるよ。幾らこの土地の野菜が美味しくても。あ~~タンパク質が取りたい。お肉食べたい。」


「ケーラからも聞いたと思うがエルフはベジタリアンなのでな。基本的に野菜しか食わん。それに、それが自然と共に生きるエルフ族の習わしであり最高の食事なのだ。自然の恵みを頂いて明日も元気に生活が出来るようにと、」


「つまり、」


「ここに居る以上野菜しか出ない。それ以外の献立が無いのだ。」


「嘘でしょー---!」


「ホントだ。」


「それに肉や魚の類はエルフの舌には合わないのだ。人間や他種族とは味覚が違う。」


「ぬ~~~」ガクリ


 俺は肩を落として気も落とす。

 生物が一日を生きる上で一番と言っても過言ではない楽しみの一つと言えば食事だ。

 だがここでは・・・全部野菜。


 これにはさすがに気分も落とす。

 明日の献立を予想しなくても野菜が出ると分かっているのだから、


 バシッ!バシッ!


 そんな時、水風船が割れたかの様な爆発音が俺の耳を刺激してきた。

 聞き耳を立てて、音の鳴った方へと首を傾ける。


 バシッ!バシッ!


「あれは、」


 音の出所を発見した俺の目の前には、大勢のエルフが弓矢を飛ばしていた。

 デカい樹木の幹の表面に的の絵を書いて中心部分に狙いを絞って射っている。


 バシッ!バシッ!

 バシッ!バシッ!


「弓か・・・」


「やって行くかエマ?興味があるなら参加させてもらおう。」


「いいの?人間の俺なんかが参加しても、」


「構わない。それから自分の事を、なんか、とか言うな。お前は自分で思っている以上に凄いやつだ。この俺にまぐれでも一勝したんだからな。胸を張れ、」


「そうか、」


 バシッ!バシッ!


「さぁ行こうか。」


「おう!」


 今となっては他愛のない話をしてお互いの距離が縮まって行くのを確かに感じ取り、俺達はワクワクしながら向かう。

 そして俺達は弓を取り、矢筒ごと持って練習場で実際に射ってみる事に、


 ルーファスがまずお手本を見せてくれる。


「いいかエマ、弓ってのは集中力と腕力、距離感と空間把握能力が必要になる武器だ。我が同胞たちは皆弓を練習する事によりこれらを鍛えている。」


 そう言ってルーファスは言葉の終わりと同時に弓を撃つ。

 綺麗に真ん中へとジャストヒットした!


「おぉ~~!よし、俺もやるぞ!」


 気合十分で俺も試しに弓矢を飛ばしてみる。

 しかし…弓矢を飛ばす以前の問題で、、、弦を引く為の腕力が足りてない。


「重い、、、引けないぞルーファス。」


「エマ、身体強化魔法で腕力を上げろ、マシになるはずだ。」


 ルーファスからのお有難い助言を聞き、俺は身体強化魔法を使って腕力をアップさせる。

 そして弦を引いて狙いを定める。


「ん~~~~、」


 スッ!


 俺は矢を飛ばした。

 だが飛距離が伸びずに僅か数センチ程度の距離で落ちた。


「初心者なら最初はこんなもんだエマ。いきなりやって出来るわけない。気に病むなよ。」


「わ、分かってるよ。もう一回!」



 2時間後・・・



「全然当たらない。あれから一時間以上やったのに一本も当たらなかった、だと・・・」


「エマは弓のセンスが皆無だな。魔法重視の魔術師タイプって所か、」


「弓のセンスが・・・皆無。」


「どうしたエマ。」


「何でもない・・・ん?あの人たちはどこかで、」


 どれだけ練習しても矢が上手く飛ばずに項垂れていた所、俺は隣で同じく弓の練習をしている二人の美人エルフ達を視界に収める。

 既視感がある二人だ。

 一人は長い金髪にふくよかな体系で、もう一人は前髪ぱっつんのほっそりとした一見真面目そうな性格のエルフ。


「姉さん、弓ってのはこうやって力いっぱい弦を引き、落ち着いて狙いを定めて、軽く離す。これだけよ。さぁやってみて姉さん。」


「わ、分かったはアルル。」


 どうやら俺達と同じ関係性みたいだ。

 一人は出来て、一人は弓の扱いが下手なコンビ。


「ふん!」


 姉さんと呼ばれているエルフが弓矢を飛ばした。

 しかし俺と同じ飛距離、同じ軌道で矢が落ちた。


 なんだかあのエルフとは仲良くなれそうだよ。っていうか思い出したけどあのエルフ達って俺を拘束したあの姉妹エルフか!!

 思い出した!思い出した!

 確かに居たな~~、でも今の俺は不審者じゃなくてお客様みたいな立ち位置だから拘束されて連行されることはないだろう。


「もう姉さんったら仕方ないわね。ほら私が教えてあげるわ。仕方なくね、」


「ありがとうねアルル。」


 前髪ぱっつんエルフはポンコツエルフの背中に合わさるようにして一緒に弓矢を飛ばす個人レッスンを行う。

 二人羽織みたいな感じだ。


「いい姉さん。しっかりと左手で本体を支えながら右腕全体に力を集中させる。矢を引きやすいように足とか姿勢、ポーズも工夫して・・・・・・!?」


 姉妹同士チャーミングな姿で一緒に一本の弓矢を飛ばそうと頑張っている画。

 微笑ましい光景である。

 俺とルーファスはニコニコしながら温かい目で二人を見守っていた。

 しかし、俺達が飛ばす視線のレーザービームに勘付いたのか、素早く振り向いた。


 彼女は気付かれるや否や口を尖らせて頬を赤らめながら「な、何見てんのよ!土に埋めるわよ馬鹿共!!」と言ってきた。

 物凄い迫力ある怒号だ。


「怖っ、」


「いや~別に二人の時間を邪魔したくて見てたわけじゃないんだ。」


「じゃぁ何で私たちをスケベな目で見てたのよ!」


「見てないし、」


「見てたでしょ!特に姉さんを舐め回すように、」


「だから見てないって!!」


「落ち着けエマ、そしてアルル。俺達はただ純粋に弓矢を飛ばす練習をしに来ただけだ。いやらしい目で見てなんかない。」


「アルル、こう言ってることだし許してあげようよ。喧嘩は良くないよ。」


「そ、そうね。確かに私ムキになりすぎてたわ。」


 どうやら場が落ち着いたようだ。

 それにしてもちょっと見覚えがあるから見つめてただけなのにあそこまで怒るかね普通。

 あのエルフ短気すぎでしょ。

 それに怒るポイントが違くない?


「ねぇねぇ君君、」


「うん?」


「あの時は悪い人って決めつけて捕まえちゃってごめんね。ホントは私も反対だったの。いくら人間でも子供を捕まえるなんてどうかしてるって、でも・・・」


 ふくよか体系のエルフが俺に話しかけてくる。

 そのエルフは謝罪の気持ちで胸がいっぱいらしく、可愛らしい仕草で俺に「ごめんなさい。」と再び誤ってくる。

 何回も頭を下げて、


「もう過ぎた事だから気にしなくていいよ。」


「ホントに!!あと私はウルリカ・キルルっていうの。よろしくね!で、あっちが私の妹。ウルリア・アルル。本当は凄く気の良い子のなの。仲良くしてあげてね。」


 彼女は意図してやってるのか無神経なのか、自己紹介をして来るのと同時に俺の両手を包み込むように握って来た。

 手がぷにぷにしててとても女の子らしい肌触りだった。


「え//あ、はい///」


 バシッ!!


 しかし、その光景が面白くないのかアルルと言われている妹エルフが急いで止めに入る。

 手刀で俺達の繋がりを断絶する。

 そしてアルルは俺に突っかかって来て「いい、ルーファス様に勝ったからと言っていい気にならないでよね!!」と強く念を押すように捨て台詞を吐いては、姉を連れて猛風の様に慌ただしく立ち去る。

 喋る隙も許さない怒涛の言葉攻めだ。

 俺達の言動を遅延させた。



 ー------------------



「ルーファス、弓の練習もうちょっとしていい?」


「構わん。」


 嵐の子が去った所で俺はもう一度だけ弓の練習をすることに、

 ルーファスもそんな俺に律義に付き合ってくれている。


 それから俺の練習は夕方まで続いた。

 夕暮れ時、太陽が西から東へと沈み込む時間帯だ。


「はぁ、結局あんだけ練習しても当たったのはたった一本だけ、落ち込むわ~~~」


「弓は一朝一夕で如何にか成るものでもない。一発当たっただけで大金星だ。」


「その一発もギリギリ的の外周なんだよな~~」


 夕日が射すオレンジ色の世界でトボトボと萎える背中を45度に曲げながら、軟弱な姿でケーラさんが待つ家へと帰宅する。


 つもりだったのだが、目線を前の方へ向けると気になる物があった。

 ログバリケードとトゲトゲとした木柵、その他諸々。


 俺が今いる地点はこの樹海の西側なのだが、その西の門の前を30m位の木柵で囲み、ログバリケードも引いてある。

 というか今建築中だ。

 大勢のエルフが丸太を持って来てはせっせと働きアリの様に仕事をしている。

 魔法も使って作業効率を高めたりもしていた。


「ルーファス、あれは何?また祭りの類でも始めるつもりなのか?」


「違うよエマ。あれは最近活発化してきた対ワイバーン用の防衛壁だ。いつ襲われても大丈夫な様に見ての通り建築中だ。」


「ワイバーン・・・?」


「そうだ。ここんとこ何故か動きが忙しなくなってるワイバーンの動き。この春の時期ならば子を産むために交配するのが普通。しかし、今期のワイバーンはどこかおかしい。予測不可能な動きで周りに被害を与え、周りの魔物やら動物などに悪影響を与える。次第にその区域に生息していた生き物たちも触発されて動き回り、樹海の生態系が崩れかけている。一体何がワイバーン(あいつら)を掻き立てるのか、」


 確か初めてカーチェと出会った時にもそんなこと言っていたような気がする。

 火山を根城にしているワイバーンが周りに悪影響を齎しているとか何とかって、

 この防衛壁はその為にか、


 作りが美しく、この樹海に住むエルフの独特な建築センスに見とれていると、後ろから不意に話しかけられた。

 俺の知らない女性の声だ。


「やっほー、人間君。」


 その女性は白髪で綺麗な碧眼をしているダークエルフだ。

 二刀流使いなのか、腰に剣を二本携えている。

 かっこいい女騎士って感じだ。


「レイズ・・・何だお前こんな時間帯に、まだ若輩者を指導している時間だろ。」


「ルーファス、久々にちゃんと話すと丸くなったものだね~、あの頃のルーファスは尖ってたから近づきにくかったんだけど、今は晴れて万々歳だな!ははっ!」


「何が万々歳だ阿呆レイズ。いいからとっとと自分の職に戻れよ。沢山の生徒たちが泣いてるぞ。」


「それなら心配無用だルーファス。私はわざわざルーファスに勝ったこの勇敢なる人間君を間近で見る為に毎日の訓練や指導を早々に切り上げて来たんだからな、」


「ご苦労なこった。」


「???」


「エマに軽く紹介しとくよ。こいつはレイズ・サラビオネ。総勢6000名の部隊。『銀矢の風』を率いる隊長の一人で、阿呆だ。」


「へぇ~、」


「阿呆じゃない!で、人間君。私はとー-ても君の事が気になります。興味津々です。だからこのレイズさんとお話ししようよ。」


「唐突ですね。」


 ()くしてダークエルフの女騎士は三つの話題を棚に上げて、3時間もの時を費やす会話へと持ち込んだ。

 ふざけんな!!!


 ~主な話題~

 ・エルフの樹海に来る前は何処に居たの?

 ・好きなのも、趣味、嫌いなもの、人

 ・人間という種は普段何をしているの?

 ・剣は好き?

 ・この樹海を見てどう思うか、


「ほぉうほぉう、なるほどなるほど。エマ君はなんというか・・・普通だね。」


「普通で悪かったですね。」ピキピキ


 長い話に付き合わされて若干キレ気味に返答する。

 対するレイズは他人を馬鹿にしたような笑い方で一人納得して場を流す。


「大体聞きたい事は聞けたかな。」


「レイズよ、もうウザ絡みは止せ。それに、お前だってどうせ指導が早々に終わったと言っても建築に力を注げと長様に言われてるんだろ。」


「鋭いね。当たりだよ。でも今私休憩時間貰ってるんだよね。だから後もうちょっと猶予があります。なので残りの時間はまたレイズさんとお話ししようよエマ君。」


「・・・」


「エマ君?」


 俺の視線は今、レイズさんやルーファスではなく別のエルフに向いていた。

 重力の向きが逆に働いているのか、蝙蝠の様に逆さまで寝ていたエルフ。

 そのエルフはこの樹海の中でも特に目立つ見た目と特徴的な装備をしていた。


 背中に杖五本を常時浮かせている金髪の女性で、ベースが白色の服に二本の赤のラインが引いてある。

 中心部分に赤い宝石を嵌め込んだ銀のティアラを頭に被っている。

 とても優雅で気品を漂わせた雰囲気を纏っている美しいお姫様の様なエルフだ。


 そんなエルフに俺は自然と引き付けられて見入っていた。

 どうやら二人も気付いたようだ。


「あ~あの娘はね、なんとこのエルフの樹海NO.3の実力者、リーガル・ウイルター。今は寝てるようだけど彼女強いんだよ。ルーファスより強んだよ。」


「最後のは蛇足だろ。」


 NO.3・・・見た目は可愛いけど、とんでもない所で寝てんな。

 逆さで寝るって、忍者か何かかよ。


「はぁもう時間か。悪いけど私は業務に戻るよ。長様から怒られるのは心に傷だからね。」


 そう言って、レイズさんは戻り際に手を振りながら仲間たちと総出で西側防衛設備の建築を再開した。

 この世界のエルフの人口は極めて多い。

 皆が思っているより遥かに多い。

 だから五日もあれば基盤だけは作れると思う。


「さて、俺も帰ろうかな。ケーラさんが心配してるし、」


「ならここでお別れだな。俺は実力をつけるために鍛錬でもするよ。」


「真面目だね。」


「思わず不覚を取ってしまい負けてしまったからな。お前に。だから次は負けない様に精進する所存だ。覚悟しておけ、」


「望む所よ、」


 夕日が完全に沈む時、俺とルーファスは別れた。

 俺は西へ、ルーファスは南へ向かって歩き出す。





 そして時刻が過ぎて、




 真夜中。

 一人の偵察隊エルフがモンスターの影を発見した。

 それも多数。

 沢山の数だ。


 暗闇に染まった暗黒空間の樹海の中から呻き声が聞こえ、白く光る視線がこちら側の姿をまさぐる様に覗き込む、そんな感覚に引きづり込まれる。

 そんな殺伐としそうな空気の中、偵察隊エルフが固唾を飲んで情報を伝達させる為に魔力を込める。


「これは緊急事態だ。直ぐに長様へお伝えしなければ、」


簡単な人物紹介。


名前、ウルリカ・キルル

長い金髪にふくよかな体。

性格はおっちょこちょいで何をするにもダメダメ。姉という立場なのに妹に世話を焼いてもらっている。

得意なこと、料理。

趣味、植物観察。

好きなもの、お花。


名前、ウルリア・アルル

前髪ぱっつんの金髪ショート。ほっそりとした体形に真面目でツンデレな性格。それと他人には言えない秘密が・・・

得意なこと、弓。

趣味、姉の観察!?

好きなもの、姉。


名前、レイス・サラビオネ

褐色の肌にスタイルの良い体付き、腰には二本の剣を携えている。

『銀矢の風』では、皆の面倒見の良いお姉さん的ポジションで気前が良く明るい性格。

得意なこと、近接戦闘。

趣味、剣の刃を磨くこと。

好きなもの、甘いフルーツ。



ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからもよろしくお願いします。

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