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第31話 勝敗後と祭りの準備

俺はただ・・・泣いて嘆く事しか出来なかった浅ましい自分自身が許せなかった。

    見たくもない光景を見て・・・何も出来なくって、、、身体が恐怖心に負けて動かなくって、

 ひたすら地に蹲り、俺の心の中には"足掻く"・・・その行為が抜け落ちていた。

                   自分の命が恋しかったんだと思う。

     死にたくなかったんだと思う。

皆が思う程俺は強くない。

              優しくも無い。

自分の命優先で目の前で奪われていくエルフの命を傍観していた卑怯者のエルフ。

             それが俺だ。

                       だけど、そんな俺が許せなくって人間を恨むことで過去に立ち向かう勇気を得ていた。

               俺は何してんだろうな・・・・・・・


ルーファスは目を覚ます。


「俺は・・・・・負けたのか。」パチッ


 ルーファスは大の字で地に寝転がり、呆然状態で負けたことに対して静かに確認する。

 するとそこに、金髪碧眼の幼女がルーファウスの傍らに短い脚で歩いてくる。


「やはり負けおったか。ルーファス。」


「その言い方だと初めからこうなる展開が読めていたみたいですね。」


「当然じゃ、其方も知っておろう。ワシが能力者だという事を、」


「えぇ、良く知ってますよ。その能力、【真実を晒す心眼(ウェールス・コルクス)】。発動させている時はどんな嘘や隠し事、誤魔化しも効かない真実のみを晒す心の眼。あの人間が能力者だって知ってたんですよね。」


「はっはっは!よく覚えておるではないか。その通りじゃ、あの人間の小僧の目を覗き込んだ時から知ってたぞ。よもや能力者だったとはさすがのワシも吃驚仰天だったがのぉ~~!」」


「その能力の所為で小さい頃にどれだけ悟らされたか、」


「あの時は楽しかったの~~~!お主があまりにも涙ぐんで魔法を教えてくれと乞うておった時がワシの唯一の楽しみであり娯楽だったのがの~~、もうそんな姿を見れないとは残念じゃ、」


「・・・・・・・・・・・」


「・・・・・・・・・・・」


 暫くの沈黙が続く。

 天を見上げながら、燦然(さんぜん)とする太陽が徐々に沈んでいく様を大人しく見守る。

 そんな中ルーファスは、容姿端麗の幼女に話しかける。


「・・・・俺は何で負けたんでしょうか。人一倍努力してきたつもりなのに、」


 ルーファスが負けた理由を長に問う。

 が、長は遠慮という言葉を知らないのか、相手のしんみりとした態度をぶち壊す、ストライク狙いの直球ストレートで相手に伝える。


「そんなもんワシに聞かれても知るわけないじゃろ。」


「そこは嘘でも、良い言葉の一つや二つ言う場面でしょ。」


「そんなもんは知らん。長々と話すのは嫌いなのじゃ。」


「あなたという人は、昔と変わってないですね。」


「当たり前じゃ!それがワシというエルフだからな、」


「はいはい、」


「しかしお主、あの人間と戦って変わったの。」


「何を馬鹿な事を、」


「いやいや、変わりおったで。自分の中にある思いを全てあの人間にぶつけたお陰じゃな。濁った目が無くなっておる。それにほれ、あっちを見てみぃ、」


 長が顎をクイッと前へと動かし、ルーファスに「あっちを見ろ」という合図を送る。

 その合図が伝わり、ルーファスは上体を起こして長の望み通りに見て見る。


 するとそこには、大勢のエルフ達に囲まれた俺の姿があった。


「さっきの戦いすごかったね!!」


「熱い勝負!魂が震えたよ人間さん。」


「さっきの魔法私にも教えて!!」


「うむ、あれほどの戦闘を見たのは久々だ。私も心震えて修行に明け暮れようか、」


「次は俺たちと手合わせしないか?お前ならいい相手になるぜ。まぁ、俺ほどではないがな、」


「かっこよかった。」


 先程まで罵詈雑言の限りを尽くし、散々暴言を吐いていたエルフ達が笑顔を見せた。

 忌み嫌っていた負の感情も嘘のように無くなっている。

 四方八方を大勢のエルフ達で囲まれているので何処に視線を向ければいいのか戸惑っているが、ハッキリと声色から分かる嬉々とした明るい声と表情は、俺に温かい気持ちを与えてくれた。


「あの人間は仲良くエルフ達と接しておるぞ。お主にはまだあの人間が野蛮で薄汚い奴に見えておるのかのぉ。」


「・・・・・なるほど」ボソッ


「ん?何処へ行くルーファス。」


「どこでもいいでしょ。一人になりたいんですよ。」


 ルーファスは傷だらけの身体を持ち上げて、樹海の中へと静かに一人消えて行った。


「全く、お主は底抜けな努力家よな。悔しいなら悔しいと言えばよかろう。」




 場面は変わり、円を描くように囲まれている俺は騒がれていた。

 抱き付かれたり、必要以上に体を触られたりと色々と得な体験に満足していた。

 するとそこに、一人の小さなエルフとその親であろうか?

 親子と思われるエルフ二人が他のエルフ達の密集から割って入ってくる。


「君は確か・・・あの時助けた女の子。」


「あ、あの、」


 割って入って来たのはなんと!腰まで届く金髪の後ろ髪を持ち、透き通ったアクアマリンの様な薄水色の瞳を持つ少女。

 そう!超巨大なイノシシに襲われている時に守ってやった女の子だ。

 その女の子は何か言いたそうにもじもじと両手を擦り、躊躇っている。


 緊張しているのかな?


 そんな女の子に同じ金髪の髪でショートヘアーを持つ楚々とした大人の雰囲気を醸し出すエルフが少女の背中を軽く叩き、後押しする。


「ほら、自分の気持ちを人間のお兄さんに言ってごらん」


 勇気と決心がついたのか、目を見開き小さなお口を開ける。


「あのとき助けてくれてありがとう!!」


 緊張を振り切って、女の子はデカい声で自分の気持ちを伝える。

 なので俺は、その気持ちに答えるようにして、


「そんなの当然じゃん!」


 ニコニコの笑顔で女の子に返した。

 すると、女の子の表情が変わり、顔に喜色が現れた。


 嬉しかったようだ。


「あの、私からもその件につきましてはホントに感謝しかないです!娘を救ってくれてありがとうございます!!」


「と、当然の事をしたまでですよ。だから頭を上げてください。」


 深く頭を下ろして謝罪するお母さん。

 娘を救ってくれた事に対する態度が半端じゃない。

 相当俺に対して恩情が湧き出ている。

 あれから何回も謝罪の言葉を繰り返す。


 困り果てた表情で落ち着かせるも、お母さんはそんな俺に頭が上がらない様子だ。


 俺は別に神とか仏の類じゃないんだけど、

 そんなに誤られてもどうしたらいいか、


 周りのエルフ達の大半は、俺が一人の女の子を助けた事実の事を知らないみたいだが、その中の複数人が一部始終を視認していたらしく、畳みかける様にあの時のかっこよさについて唱えてくる。


 樹海の中に響き渡るようにして、


 気が付くと、今度はルーファスと俺の熱い勝負の話ではなく、俺のかっこいいエピソードを広めて語っているではないか。

 治安を維持するために長年訓練を積み重ねてきたエルフの隊が敵わなかった超巨大イノシシを黒い鎌一本で倒したとか、ピンチの時に颯爽と駆けつけてくれた勇敢なるヒーローだとか、勇者だとか、


 そして、あの時見た俺のかっこいい雄姿を他のエルフ達に熱く語りたいのか、いよいよ嘘100%の捏造エピソードまでもが出てきた。


 そして一躍人気者になり、男性、女性関係なく憧れの的となった。

 つまり、最底辺の好感度から最高潮の好感度へとウナギ登りで昇格し、俺への信頼度がカンストしたのだ。


 そんな俺に対する話題で盛り上がる中、一人の男性エルフが俺へと話しかけてきた。

 そのエルフは他のエルフ達とは違い、暗い色をした肌に(はかま)姿で草履を掃き、和装をしている白髪のダークエルフだ。

 俺と同じ位の見た目で、同世代という感じがする。


「あのエマさん、ですよね?」


「は、はい。」


「僕はマロンと言います。唐突で申し訳ないんですけど、よかったら、祝いの祭りに参加しませんか?ていうか、絶対参加するべきです!!」


「え?」


 自己紹介をしてきては顔を近づけて必死に懇願して来る。


「祭り?」


「はい!」


 過去を遡って行くと確かに祭りって言っていたエルフがいた気がするが、そもそも祭りって何するんだ?

 普通に食事とか花火とか屋台とか出したりするのかな?

 ここは異世界。

 前世の世界ではなく、異能という概念がある世界だ。

 もしかしたら、普通じゃない何かなのかも・・・


 考えれば考えるほど俺の知っている常識的祭りから遠のいて行き、世紀末の様な発想に変身していく。

 どうしたらこうなるのだ・・・


 と、そんな時、

 俺にわかりやすく丁寧に少年エルフが説明してきた。


「祭りって言うのはですね、遠征から帰って来た長様たちの疲れと胃の中を癒す為に毎回行われるハッピーな行事の事ですね。」


「へぇ~~」


「主に遠征組が主役で楽しんだりするものなのですが、今回は特別枠という事で、周りのエルフ達の魂を震えさせて名を知らしめたエマさんにも主役になっていただき、僕たちの祭りに参加していただきたいな~という事です。」


「なるほど、」


 俺が頷いて興味深そうに聞いていると、後ろから一人の女性の声が聞こえてきた。

 若い声だ。

 この勢いに便乗してくるつもりだろう。

 なので俺は後ろをゆっくりと振り向いた。

 そこに居たのは、


 長だ。


「おぉ、それはグッドなアイデアじゃな。」


 愉快な表情を浮かべながら歩いてくる長は、俺がこの催しものに参加することに対して大いに賛成派のようだ。


「はっはっはっはっは!良いぞ!良いぞ!お主も参加せぇい、というかもう皆には伝えておるでの。参加しないなんて選択肢はないぞ。」


 横暴だ!

 強制的に参加を余儀なくされるとは、これがパワハラというやつか、

 恐ろしい。


 そんなやり取りをしている最中にも、遠征組がエルフの樹海に帰って来た時から既に祭りの準備は進んでいる。

 着実にではあるが、木材や料理その他諸々の材料や食材を調達してきては、広場に運んで行って組み立てて行く。

 俺もその準備を手伝おうと名乗りを上げたが、突発的に周囲から拒否の二文字が大々的に飛び上がった。


 手伝う事はそんなに駄目な事なのだろうか?


 理由を聞くに、今回の特別枠という事だから休んでいてくれ、という事らしい。

 『しきたり』で負った戦闘疲労やら傷だらけの俺をエルフ達なりに気遣ってくれたのだろう。


 なので俺はお言葉に甘えて、そこら辺に落ちている丁度いい大きさの枝に腰かけて、作業風景を見守る。


 中央を見ると、樹木から取って来たであろうデカい丸太を丸々一本運んで来ては、キャンプファイアーとかでやる"火祭り"の準備をする。

 綺麗な正四角形になるよう丸太を積み重ねていき、中に燃えそうな落葉や乾燥した薪などを放り込んで行く。

 左側を見て見ると、長方形の形をした木製デスクを大量に、そして、幅広くスペースを使う程のレベルで並べていく。

 出来た料理や皿、フォークやスプーンなどを並べる為であろう。

 右側を見ると、大太鼓が10個用意され、小太鼓やその他の楽器までもが的確な配置に並べられていく。


 エルフの数を考えれば、まだまだ楽器が出て来ることは明白だがな、

 というか、どれだけデカい祭りをする気だよ!


 ズキズキと傷が痛みを主張して来るのを我慢して、徐々に変わっていく風景を眺め続けていると不意に体が癒される感覚がした。

 戦いの末負ってしまった痛みが消えて行くような、そんな感じだ。

 なので、身体の異変に気付いた自分は周りを見渡す。

 すると、いつの間にかケーラさんが隣で回復魔法を掛けてくれていた。


 ケーラさんが口を開く。


「これで二回目ですね、エマさん。」


「は、はい!そうですね、すみませんなんか。二度も同じ展開になっちゃって。」


「良いんですよ。子供には元気な姿のままでいて欲しいですし、」


 美しい天使の様な笑みを浮かべてニッコリと笑う。

 その笑みは、俺の穢れた心を浄化する程の神々しい光り輝く満面の笑みだ。


 眩しい!!

 こんな人がスンのお母さんだとっ!

 何と羨ましいんだスン!!

 家のシスターババァと交換してくれないかな?

 そしたら孤児院の中も部屋と一緒に綺麗になるんだけど、どうかな?


 そんな感じで、笑顔が似合うケーラさんの笑みと共に催し物の準備を眺めていて思ったことがある。

 もしかしたらこの祭りは俺が思ってたより規格外で盛大な、大きい祭りなのでは?という事だ。





 何やかんや数時間が経った。






「では、今から遠征組+エマ様の為の宴会祭りを開催したいと思います。存分に楽しんで行ってください!!此処にて祭り開催です!!!」



 こうして、綺羅星(きらぼし)満点の月夜の中で燃え盛る炎を皆で囲みながら酒を飲み、食事を食べ、娯楽や笑いの絶えない楽しい祭りがここに開始したのだ!!!


ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからも頑張っていきます。

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