第2話 魔法を使ってみよう
俺何にも状況が分かってないんだけど。
何もわかってないのに返事しちゃったけど大丈夫なのかな?
孤児院内の時は概ねの事は理解したと思っていたけど、全然理解してなかった。
「さあ、まずは魔法の基礎的な事からやりな。この鍛錬にはちゃんと意味のあるものだから私が直々にひよっ子のあんた達を見てやっているんだ。有難く思いな。」
え?今この人魔法って言った。
ならさっきの大爆発も魔法なのか。
よし!分かった。
いったん落ち付こうか俺。
意味の分からない事でいっぱいで頭がパンクしそうだ。
まあ、人の頭がパンクする事なんて有り得ないけど、
雪がしんしんと降ってくる冬の季節の中、俺はシスターの言う通りに魔法を放とうとしたが、大前提として魔法の放ち方を一ミリたりとも知らない。
どうするのこれ?
魔法の基礎的な事をやりな、と言われても基礎の基の字も知らないぺーぺーですけど。
「どうした?早くやりなよ。」
「え、ああああ、はい、」
とりあえず形から入ってみるか?
ここは魔法という概念がある世界だから、どれだけ無知でも火を起こす程度は出来るはず、
兎に角ここはダメもとで魔法を発動するようなワードを、
詠唱ってやつが必要なんでしょ。
分かってるよ。
伊達に漫画やラノベを読んでないって。
魔法の発動の仕方すら知らない俺は、なんとなく漫画知識でそれっぽいポーズを取りながら見様見真似で詠唱を唱えてみた。
よ~し、やるぞ。
「闇の炎を纏いし漆黒よ。その炎は地獄の業火。全てのものを焼き尽くさんとする魔神の炎。ならば、我が前に現れし者は只の一人もおらず。大いなる邪悪な炎は全てを飲み込む津波。来たれ!【闇炎の津波】!!」( ・`д・´)
・・・シーン・・・
「」(゜-゜)←シスター
「」(゜-゜)←金髪ちゃん
「」( ;∀;)←俺
やめろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
ただ俺が恥かいただけじゃん。
めっちゃ恥ずかしいんだけど。
いや、わかっていたけれども、想像以上だわ!
あ~現状把握が完璧に出来ていない上にこの羞恥!
生涯に残る黒歴史確定じゃないですか!
やめろ!なんだその顔は!
その「何言ってんの」とか「キモイ」とかそんな下等生物を見るような目で俺を見るな!
仕方ないだろう!こちとら初心者なんじゃ!
魔法の使い方なんてものは全く分かんないんだよ!
「エマ、あんた・・・」
え?何、聞きたくない!聞きたくない!
どうせこっ酷く言われるんだろ!
言わなくても分かるんだよ!その目を見れば!
その可哀そうなペットを拾う時のような優しい目をしていれば!
「あんた、何を言っているんだい。」
ほらね!言った通りだろう!
俺の事可哀そうな奴とか痛い奴とか思ってるんだ!
次に喋る言葉は大体こんなんだろう。
『あんたって本当に痛い奴だね。プークスクス。』
想像するだけで不快だぜ。
俺は今すぐにでもこの場から逃げ出したいという感情で胸がいっぱいだった。
ところが、シスターから放たれた言葉により俺は正気に戻る。
というかちょっと意外な事を聞く。
「詠唱は強力な魔法を使う時にだけ言うのであって、お前みたいなアマチュア魔法使いのぺーぺーが唱えても仕方ないだろう」と、
「・・・どういうことです?」
「いいかい、詠唱魔法と言うのは町を破壊する規模かそれ以上の超越魔法級とか世界魔法級あたりの魔法でしか使わないものなんだよ。だからお前は無詠唱で魔法を放つことから始めるんだ。わかったかい!」
「YES、マム!」
へー、驚いた。普通詠唱魔法と言うのは無詠唱魔法より下の段階であると思っていたから意外だ。
それにしても超越魔法級と世界魔法級か、
一体どれだけすごい魔法なんだろう?
なんかワクワクする!
漫画やラノベ、アニメなどの二次元の存在であった魔法という概念が今この世界にあるのだから、ワクワクしないわけないじゃん!
まあ、現在進行形でやる気は徐々に減少して行っているけど。
「エマ、もう一度基礎的な事を教えるから頭に叩き込みな。この世界で自分の命を守る二つの内一つの手段なんだから。」
「命を守る?」
「そうだ。この世界は弱肉強食の世界。弱いものが淘汰され、強いものが勝つという絶対の理論。この世界で生きていきたかったら強くなりな。エマ。」
「は、はい。」
なるほど、自分の身は自分で守れってことね。
大体この世界の事がわかってっきた。(嘘)
「エマ、お前は今皆から大分後れを取っているんだい。その分厳しく行くから覚悟しな!」
「はい!」
こうして俺はシスターから色々と魔法について習った。
まず魔法を使うための必要な要素は4つある。
1、自分の中の魔力を感じる。
2、具体的なイメージ。
3、魔力を集中させる。
4、魔法を飛ばすイメージ。
大体こんな感じだ。
さっきの俺はこの工程を全部綺麗にフッ飛ばして今世紀最大の恥をかいた。
だから、もうあんな思いをしないために俺は頑張って覚えるよ。
数分後
「ふんっ!」
ボッ
「おおおおおおおおお!付いた、火が付いたよ!」
「あんたねぇ、そのぐらいで喜んでるんじゃないよ。そんなの暖を取るくらいしか使い道がないよ。」
ぐっ、う、うるさいな。こちとら二次元の要素が今俺の掌の中にあるんだよ。
魔力という概念。そして魔法。
憧れが詰まったこの素晴らしさはこの世界の住人であるお前たちには分かるまい。
今の俺はとても感動している。
たかが火を人差し指で付けただけ、
たかが魔法を少し使えただけ、
結構!
俺は誰が何と言おうとも感動している。
折角だからもっと試そう。
面白い魔法の一つくらい思いつくかもしれない。
魔法の扱いは結構簡単に出来た。
多分だが、この体の元の持ち主が魔法の扱い方や魔力の操り方についてちょびっと心得があったようで、真面目に話を聞いていればすんなり出来た。
マジ感謝感激です。
ありがとう。
更に数分後・・・
「ふんす!」
ビリビリビリ
「ほお、中々面白い魔法だね。掌全体に電気を纏わせる魔法とは、けど使い道なさそうだね。」
「これからですよ。」
面白い魔法を、と思ったけど、いざとなったらどんな魔法を使おうか迷ってしまうから思考がまとまらない。
なんか参考になるような魔法や要素があればいいんだけど、
俺が「ん~」と唸り、頭を悩ませていると奥の方で三人の男女がかっこいい魔法を使っていた。
それぞれが違う属性の魔法を使い、同じ対象を攻撃する。
【ルクーンボール】
【創生の帝剣・光大剣】
【風斬り舞い】
遠くに見える4m位あろう岩があの魔法の連発ですっかり粉微塵になり、雪もその反動で弾け、地面にデカいクレータを作って地形を凹ませてしまった。
あそこまでかっこいい魔法を使えるのは今までこの世界で生きて来たからか否か、
どちらにせよ、俺のかっこいい魔法を思い出す良いアイデアの参考になるのは間違いない。
もっと俺に魔法を見せてくれ~
「【水弾】!」
一人の女性が遠くで魔法を放つ。
水属性の魔法だ。
バシャンッ!バシャンッ!バシャンッ!
ほお、あの水の魔法で孤児院の屋根に積もった雪を狙い撃ちしてるのか。
命中精度を上げる訓練かな?
でもこんな寒い季節で水は駄目なんじゃ、
バシャンッ!バシャンッ!バシャンッ!
あの魔法便利そうだな。
俺も覚えてみようかな?
10m程離れた位置に見える女性が放っている水魔法を参考に、俺はあの水の弾丸を飛ばす魔法【水弾】と言うものを覚えて見ることにした。
えっと、あの魔法を使うためにはまず水をイメージして、そのイメージしたものを次は勢いよく飛ばす感じで魔力を放出する。
「ふん!」
バシャン!
「うをぉおおおおおおお!?!?」
どういうことだ?掌で作った水が拡散して形を崩したぞ。
というか爆発した!!!
ん~~~~~、ちゃんと飛ばすイメージはしていたし、何がいけなかったんだ?
バシャンッ!バシャンッ!バシャンッ!
引き続き【水弾】を飛ばす為に掌に水球を作るが、飛ばす時に限って何故か形が纏まらずに外側に向けて勢いよく爆発する。
「やっぱり水が拡散して上手く使えない・・・」
助けてくれ・・・
頭を抱える問題に直面していると、黒い修道服に身を包んだシスターが俺の元へとやって来ては助言をしてくれた。
「エマ、あんた少し力みすぎじゃないか?」
「力み?いや全然力なんて入れてないですけど、」
「いや、入れてるね。あんたのその魔法。水をイメージしすぎて魔力のコントロールが出来ずに勢いよく外側に向けて魔力を放出しているね。それが原因だ。」
「ん?」
「はぁ、魔法と言うのはね、イメージすれば使えるようになるわけではないんだ。魔法と言うのは魔力あってのもの。さっきのあんたの魔法は水だけを飛ばすイメージに集中しすぎたからダメなんだ。魔力のコントロールが疎かになっていたよ。魔力とイメージはセット。ほら、もう一回やってみな。」
えっと、つまりさっきの俺は水だけを前へ飛ばすイメージをしすぎて一番大事な魔力コントロールが出来ていなかった、という事なのか?
確かに言われてみればそうだったような。
まあ、考えても分からないしシスターが言った通りやってみようかな。
まず、魔法を使うためにはイメージが必要。
俺が使うのは【水弾】と言う魔法。
そのためには水をイメージする。
イメージしたら掌に魔力を込めて魔力を水に変換する。
そして次が問題点!
前へ飛ばすイメージをしつつ、魔力のコントロールを疎かにせずに水球の中の魔力を操る感じで飛ばす。
「行くぞ!!」
俺は目の前の雪が積もった木に向けて手を翳す。
イメージと魔力コントロールをしっかりと意識して、
【水弾】!
俺は魔法を一発放つ。
バシャン!ドサッ!
「で、出来た・・・出来た!魔力のコントロール自体ちょっとコツがいるけど、出来たぞ!!」
俺が飛ばした【水弾】は目の前の木に当たり、バシャン!と水飛沫と共にその反動で木に積もった雪がドサッ!と一括して落ちてきた。
俺は転生してから初めてのまともな魔法【水弾】を覚え、めっちゃテンションが上がっていた。
両脇を閉めて腕をL字型に曲げつつ「よっしゃ!」と歓喜する。
「感覚を忘れない内にもういっちょ!」
【水弾】【水弾】【水弾】【水弾】【水弾】!
数時間後・・・
「あれ、体に力が入らない。どうして?」
「あんた、魔力切れだよ」
「魔力切れ、あ~そっか、確かにそういうのもあったっけな~、忘れていたよ。」
テンション爆上がりで魔法を考えなしに連発していたからか、いつの間にか魔力切れを起こした。
すると唐突に身体が重くなる感覚に襲われる。
身体全体が鉛になったかの様な、鈍重な感覚。
俺はバタリと雪が積もった地に体を埋める。
ちょおおおおおおお冷たい!風邪引く!!
誰か引っ張り上げて、お願いします。
「全く世話の焼けるガキだよ。」
「へックション!」ぶるぶる
寒い。
明日朝起きたら、風邪になっていました、なんて嫌だよ俺。
まったく、冬なんて季節に転生して来るなんて運のない奴だよな。
体の震えが止まらない。
早く暖かい所へ行かないと、
という事で、
こうして俺の一日目が魔力切れで雪に埋もれるという形で終わったのだった。
~場所・???~
「段々とこの世界にも順応してきている様ね。」
「はい、ですがまだ力が足りません。」
「そうね~。こればっかりは彼の頑張り次第ね。」
「それと、選ばれますかね。」
「えぇ、きっと選ばれるわ。果たしてそれはどんな力なのか・・・ウフフ、想像するだけで笑いが込み上げてくるわ。」
「それは何よりです〇〇〇様。」