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第27話 凱旋!!!

「凱旋だ!!!!!」


 一人のエルフがそう叫ぶ。

 声からして男性だ。

 その叫びはこのエルフの樹海全体を駆け回った。


 多分だが、声量を上げる魔法を使ったのだろう。

 俺達は互いに嫌悪感漂う黒いオーラを引っ込め、声のした方へと全員体ごと向ける。


 そして、この場に居る女性エルフの一人が「まさか、長様が帰って来たの?」と言った。

 その言葉は次のエルフからエルフの耳へと渡り、反応していった。


「長様がとうとう長い遠征から帰って来たんだ!!!!!」


「おお・・・おおおおお!今夜は祭りですな!!」


「俺達の長様が帰って来たぞおおおおお!」


 皆、それぞれ独特な盛り上がり方でテンションを上げる。

 一体何が彼らをそこまで騒ぎ立てるのか、


 なんだなんだなんだ、何が始まったんだ???

 ここへ迷い込んできてからと言うもの変な目にばっかり合ってる気がするが、今回のはまた格別だな。

 足をバタバタさせながら両手を上げて動き回ってやがる。

 こいつらホントにエルフか?

 さっきまでのお前らは何処へ行ったんだよ。


「長様が帰って来たという事は・・・そいう言う事ですよね。アル!」


「あぁ!今からこの樹海は盛大な祭りになるぞ!!」


 祭り??

 今からここ祭りになるの?


「早く行きましょうよ皆。」


 そう言って、エルフの皆は枝へと跳躍して声のした方角へと大急ぎで移動して行った。

 俺が助けた少女のエルフをおんぶして、

 一人取り残された俺は、特にやる事も無いのでエルフ共の後を着けていく事に、


 ・・・・色々と分からないけど、あそこまでエルフを騒がせるんだ。

 ちょっと気になるな。

 よし、バレない程度について行ってみるか!!!


 静かにエルフ達の後をこっそり尾行する。

 無駄な音を立てず、気配も出さず、忍者の様に城の中へと忍び入るようにして、





ー----------------





 ~エルフの里・中央~


 ここは、エルフ達の住む家が密集している地帯。

 デカい樹木が入り混じり、とても幻想的な雰囲気を見せつけるような素晴らしいファンタジーな光景である。

 虹色に輝く光虫という虫類が辺りをゆっくりと徘徊していて、数多の動物たちが植物やキノコ、木の実などを美味しそうに食べている。


 そんな地帯に驚きを隠せない程の常軌を逸しているエルフ達が密集していた。

 まるでコミケ会場の中の様に、

 そして、その中にはダークエルフというエルフの亜種的な種も交じっており、一般エルフと仲良く交流している姿がチラホラと見える。


 とても微笑ましい光景だ。


 そんな密集状態のエルフ達だが、その中の一人が人差し指を東側へと指し、一際目立つ大声で言葉を発する。


「あっ!あれはガイダ様だ!!!それと他の御仁もお見えになったぞおおお!!」


 周りのエルフ達もその言葉に釣られて東側を見る。

 すると、複数人の革防具を着たエルフ達が数多ある樹木の間から姿を見せる。

 大弓と小弓をそれぞれ持ち、背中には100本は入りそうな程のデカい矢筒を背負ってエルフ達の前へと出ては、右手の甲の側を皆に見せつける様に握り拳を作り、腕を掲げる。


 そうすると、「おおおおおおおおおおおおお!」と大歓声が起きる。

 その歓声っぷりは空気を振るえさせる程の大熱狂っぷりだ。


 みんな顔を真っ赤にする程の勢いと全身に汗をかくレベルで騒いでいる。

 そして、その大熱狂という名の中華鍋の中に、火に油を注ぐが如く、もっと白熱させる材料を投入させる。


「我々は今回の遠征でついに、ついに!!!約120年間もの時の中で散々苦しめられてきた【暴れまわる一つ目大蛇(デストロン・スネーク)】を討伐することに成功したぞ!!」


 そう言って、魔法で浮遊させているのか【暴れまわる一つ目大蛇(デストロン・スネーク)】とやらの首ちょんぱ姿を皆に見せつける様に前へと突き出しながら動かしていく。


「我らの勝利だ!!!!」


 その言葉は周りのエルフを歓喜の渦に引きずり込む。

 血液が沸騰し、段々と熱気が漂ってくる。

 そうとう嬉しいようだ。


「うおおおおおおおおおおおおおお!!!!」


「さすがは長達!!我らの勇者だああああああああああああ!!」


「きゃあああああああああ!素敵よレイズ様!!!」


「長殿おおお!!今度一杯どうだ!久しぶりに飲もうや!!!!!」


 何あれすごっ!!

 複数人のエルフが遠征とやらから帰還しただけで、あんなにも盛り上がるものなのか???


 俺は樹木の陰に隠れてこっそりとその様子を窺っていた。

 甲子園やサッカーWカップのように白熱して盛り上がっているその有様を、

 誰にも見つからない様に樹木が一括している所で、


 それにしても、あのエルフは何ものだ?

 あんなに多くのエルフ達を騒がせて、お前らはアイドルか何かなのか?


 俺が目の前の信じられない様な光景に目を奪われながら一人語っていると、遠征から帰って来たであろう一人のエルフがセンターに立った。


 そのエルフは金髪の短いショートヘアーで碧眼の目を持ち、ぷにぷにしていそうな白い柔肌に緑の動きやすそうな服と白いマントを着用している体の小さい女性だ。


 というか、あれ・・・幼女じゃね?


「皆の者、静まれ!!!!!!」


 幼女が皆を一瞬で委縮させて強制的に黙らせる。

 その見た目からは想像も付かない程の大迫力だ。


「今回は皆に一つ大事な報告を話しておかねばならん。心して聞け!」


 報告?

 一体なんだ???


「ワシは長々と話すのは皆も存じている通り嫌いじゃ。だから、手っ取り早く済ます。最近火山を根城にしているワイバーンの動きが活発になってきており、その影響で周りに住む動物や魔物などが触発されて混乱を(もたら)しておる。つまり、ワシが言いたい事はただ一つ。その混乱がこの地、エルフの樹海にまで届きうるというものだ。もしかしたら、最悪死人も大勢・・・・」


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 皆は黙る。

 先ほどまでのテンションとは打って変わって雰囲気が一変する。

 まるで陽から陰、白から黒、天と地の様に対になっている感じだ。

 それ程までに今の空気はシーンとしたものだった。


 今やエルフ達の心は水面の様な平行線ではなく、荒ぶる大海。

 心を焦らせ、動揺させる。


 だがしかし!

 ここで幼女のエルフは皆を鼓舞する。


「だが、恐れることはない!!我らの前にあるこの巨大な魔物。【暴れまわる一つ目大蛇(デストロン・スネーク)】。この凶悪モンスターを狩ってきたワシらより秀でものは居ない。恐れるな我がエルフ族よ!!我らは自然の戦士。緑と共に共生している以上負けはあり得ん!!突き進め!若者たちよ!震え上がれ!大人たちよ!我らは誇り高き自然の戦士、エルフ族!!」


 そして、この演説が効いたのか、再び自信と心の気概を取り戻し始める。

 エルフもダークエルフも心に炎を灯して狩人の血を騒ぎ立て始める。





 これぞ、まさに()()()()()





 あんな幼女がまさかここまでやるとは、

 見た目は幼女だが、中身はここに居る誰よりも大人ってやつでしょ絶対。

 あの振る舞いはたかが10年程度生きた者が出来る芸当ではない。

 完全になれている人の話し方と人心掌握スキル。

 上手い!!


 俺は素直に感動していた。

 他人の心理を理解した上で、尚且つあそこまで雰囲気と熱気を持っていけることを、


 それにしても、俺はこれからどうすればいいんだろ?

 帰ると言っても帰り方なんて分からないし、逆に下手に動けばそれこそ命が危ない。

 人食い植物や魔物なんてものも普通に出てきそうだし、

 ホントにどうしようか・・・・

 もしかしたら帰れないのかな?

 いやいやいや、大丈夫。

 帰れるよ、きっと・・・・・


 自信を無くしていき一人陰鬱な空気を醸し出す。

 だが、そんな俺のネガティブな暗い気分を忘れさせるような発言が、広場から不意に飛び出て来た。

 その発言は俺にとって緊張を更に高めるものだった。


「それと、通信魔法で聞いたんだが、このエルフの樹海に人間の子供が紛れ込んでしまった。という情報を耳にしているんだが、誰か居場所は分からぬか?もし、知っている者がおれば長の部屋へと連れてまいれ、」


 話したい事を全部話せたのか、幼女のエルフはそのまま正面へと向かって歩き出す。

 そして、周りがざわざわと音を立てる。


 だが、そんなエルフ達よりもっとざわざわしている者が陰にこっそりといた。


 なっ、俺がここに居るっていう情報は遠征組とやらの耳にもう届いているのかよ!

 それに通信魔法って。

 確かにそんなものあったら光の速度で伝達するよな。

 しかし、俺はこれからどう動けばいい。

 今まで通りにケーラさんの家へ行って過ごせばいいのか?

 でも他のエルフ共は迷わず来るだろうし・・・・・あああああ!

 考えても分かんねぇ!

 とりあえず、暫く様子見してそれから考えよう。


 そう言って、俺は陰に紛れながら再びエルフ達を見守る体勢になる。

 だがそうは問屋が許さない。

 いきなり二人の美人エルフが自由落下運動に従って降ってきたのだ。


「はっ!!!」


 思わず声が出る。

 俺は仰向けに固定されて馬乗りにされる。

 手足を精一杯ガムシャラに動かすが、胴体に体重を掛けられているので動けない。


「さぁ、大人しくなさい。」


「そうですよ。人間さんは悪い種です。無駄な抵抗は止めて大人しく捕まりなさい。」


「嫌だ!!!」


「子供だからって手加減なんてすると思わない事ね。私たちがやられた痛みはこんなものじゃない。」


「そんな事俺に言われても知らないですよ!」


「姉さん、もう魔法で気絶させた方が良いよ。」


「でも、ちょっとかわいそう・・・・」


「姉さん!!!!」


「はうううう!」


 二人の姉妹エルフは緊張感のないやり取りをする。

 そして俺は今も抵抗中だ。


 くそっ、全然抜けねぇ!!

 腹辺りを押さえつけられてるから息がしずらいし、いくら抵抗しても脱出できる気がしねぇ、

 だけど、諦めるわけには!!!

 おりゃああああああああああ!!!


 俺はこの後も必死に抵抗したが、脱出できるはずもなく。

 だが、偶然か奇跡か、俺が抵抗する反作用なのか、上に乗っかっている姉?の方のエルフの豊満に育った果実の様にデカい核ミサイルが上下にお揺れになっている。


 そしてその光景を目に焼き付け、ダウンロードからのインストールをする俺!!

 脳の中でその映像を何回もリピートしてこの喜びを味わう。


 素晴らしい!!!!エッチだ!!!!!!!


 若干気のせいか分からないが、妹の方が粗大ゴミを見るかのような嫌悪感を抱く目で見下してくる。

 完璧に表情が浮き出ているその顔で、


 だが、ここまで来たらもはやお得みたいなところあるもんね。

 ありがとうございます!!!!!!!!!!!!


 それからと言うもの、無駄な抵抗は一切合切諦めて大人しく捕まり案の定連行された。

 特に後悔はない。

 やれる事を全部やってご褒美まで貰えたのだ。

 悔いはない。




 ~エルフの長の家~


 ここは約8000年の時を生きる大樹木。

 この樹海の中で一際も二際も目立つ、相当古くて大きい樹木だ。


 長の家はまさにこの中にある。


 エルフの家は何処も樹木の中に家を作り、そこに住んでいる。

 中でも長の家は周りから見れば、光栄・憧れ、そんな言葉が当てはまるくらいに尊敬もされて滅多に入る事の出来ない黄金宮殿みたいな所。


 そんな中、俺は魔法で両腕を拘束されたまま連れてこられた。

 最悪。

 だが、後悔はないんだ。うん。

 ケーラさんにまた心配かけちゃうな。でも、


「長様。お連れしました。例の人間の子供です。」


 扉の表面をコンコンコンと三回ノックする妹エルフ。


「もう来たか、」


 扉が開く。

 その中から出てきたのは、なんと先程の幼女のエルフ。

 彼女がエルフの樹海の長であった!!


「おう、ご苦労じゃったな。じゃが、ここからはワシとそやつとの対面話じゃ。悪いが暫しの間、二人っきりにしてくれんか?」


「そ、それは危険です!いくら子供でも相手は人間。忘れてしまったわけではないでしょ長様!人間がこの地に過去何をしたのかを、もし長様の身に何かありでもしたら、」


「大丈夫じゃ。心配はいらん。」


「で、ですが、」


「心配はいらぬ申しとる。」


「わ、分かりました。」


 気分を落ち込ませ、小さい背で帰って行く妹エルフ。

 姉エルフはそんな妹エルフの縮こまった体にそっと手を置き、長の家から離れていく。


 相当ショックだったんだろうなぁ、断られたのが、

 何故か一瞥された時に舌打ち的な物が聞こえた気がするが、俺は聞かなかったことにしよう。

 うん、それがいい。


「さぁ入れ、人間の子よ。」


「は、はい。お邪魔します。」


 長エルフの部屋に俺はお邪魔する。

 一体どんな事を聞かれるのやら、



 緊張する!!!!!!



ここまで読んでくれてありがとうございます。

面白かった、続きが読みたいと思った人は評価をお願いします。


これからも頑張っていきます。

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